救いのある死ネタを目指して書いた「祝福された呪縛」を書いた後、やっぱりシュンとなってしまったので、幸せしかない話を目指しました。妊娠しているドラヒナ夫婦とロナサン夫婦が同居している事務所にウスミラ夫妻が遊びに来る話です。
捏造だらけですんで注意して下さい。
2022/09/24に上げました。
@kw42431393
「ほんと、器用なもんだ。」
ロナルドは、机に並んでいるベビー服を摘まみ上げた。どれも丁寧に、しかもデザインもシンプルながら凝った仕様となっている。
「フフフ、我ながらよく出来ているだろう?存分に畏怖り給えよ。」
ドラルクは、さらにもう1着作る気の様で、今度は赤い布を手に取った。
「絵心ねえのにな。なんで、型紙切るの問題ねえの?って思ってる。」
「カーッ!分かってないなぁ。私の絵だって素晴らしいだろう?見給え、このデザイン画を。これだから、5歳児は…スナッ!」
「ヌー!!」
煽った直後に、ロナルドのデコピンでドラルクが塵になる。
「デザイン画って、お前がいつも描いてるシマウマの柄が変わっただけだろうが。ほんと、それからできた服がこれだからさ、驚いているんだよ。」
ロナルドは、持った服とデザイン画とやらを見比べる様にする。確かにそこには、いつもドラルクが描いてるシマウマ(?)がフリルの付いた柄になってる?イラストが描いてあるだけだった。が、本人には設計的な何かに見えるらしかった。
「シマウマちゃうわ、よく見ろ!子供の絵だし、あと、すぐ殺すな。折角の服が塵まみれに…」
「何を騒いでいるんだ?」
床下の扉が開いて、ヒナイチが姿を現した。
「おや、ヒナイチくん。そろそろご飯にするかね?足元に気を付けて…。」
ヒナイチに手を差し伸べようとして、バランスを崩したドラルクが塵になる。
「おいおい。」
「私よりお前の方が気をつけろ。ほら、階段まで塵が落ちてしまっただろう。」
ヒナイチが塵を拾うのに屈もうとしたのをロナルドが止めた。ヒナイチの腕を取って事務所に引き上げる。
「危ねぇから、先あがれよ。ったく、ドラ公の塵、これで全部か?」
「すまないな。梯子だったら下まで取りに行くのが大変だった。」
「改築してもらっててよかったな。梯子だったら、お前とサンズさんが遠慮してても俺達が床下に移ってたわ。」
ロナルドは、事務所に出てきたヒナイチを改めて見下ろした。
(こいつ綺麗になったよな。そうだよな、そろそろ24になるんだもんな。)
鍛えられたスレンダーなスタイルはそのままに、女性特有の柔らかさが加味されいると言おうか、何より…
「ロナルドくん、人の奥さんジロジロ見ないでくれる?今月中にはお母さんになる身なんだからね。」
再生したドラルクが、ヒナイチをマントの中に囲いながらジト目で言う。ヒナイチと付き合う前から独占欲は強かったが、手に入れてからはロナルドでも引くレベルで嫉妬を露わにする事が多くなった。
「んな訳ねえだろ。へんなじゃあるまいし、妊婦に欲情せんわ。だいたい、あと3カ月もしたら俺のサンズさんも男の子生まれるんだからな。」
ヒナイチがこのロナルド吸血鬼退治事務所の床下に基地を作ったのは、もう5年も前の事になる。元々ドラルクの監視任務の仮眠室だったのだが、パトロール明けにここに来て、寮に帰るのが深夜を回るのはザラだった。
初めこそ、毎回ドラルクが寮まで彼女を送って行ってたのだが、いつの間にか夕食を共にする様になり、ほぼそのまま住み着く様になった。
サンズが起こした事件が元で、一度オータム流建築術で改造された秘密基地だが、ドラルクと所帯を持つにあたって、さらに拡張されたのだ。時期をほぼ同じくして、ロナルドとサンズも所帯を持っているので、今や事務所と床下の二世帯住宅となって4人と1匹で暮らしている。そして、今月中にはヒナイチが女の子を、3カ月後にサンズが男の子を出産する予定となっていた。
「まぁまぁ、二人共。ちょっと喉が渇いて飲み物を取りにきただけなんだ。ところで、これは…?」
「そうそう。見てくれ給えよ。手芸屋さんに寄ったら布が安かったのでね、ロナルドくんの子の分も作っちゃったんだよ。」
できた服を並べると、色違いが何着もあるらしい。
「お~、サンキュな。実質2人共ここで育つんだから、お揃の服着たら双子みたいになんのかな?このクソ砂に似てない事を祈るぜ。」
「どこがじゃ!私、小さい頃儚げな美少年だったの知っているでしょ?」
「それが、人を煽る極悪面のおっさんになった事を知っているからだな。」
二人がじゃれあっているのを横目に、ヒナイチが1着1着広げて見る。そして、自分のお腹に手を当てた。
「ヌヌヌイヌ。ヌヌンヌヌ。」
「ふふ、何でもないよ。また、この子が蹴ったんだ。嬉しいのかな?」
「ほら、これなんか子供達に似あうと思わないかね?」
じゃれあいから戻ってきたドラルクが、明るい茶色とピンク色のベビー服を見せた。
「うわぁ、ジョンじゃないか。」
「ヌヌヌイヌ。」
「マジすげぇな。可愛いが渋滞しそうだ。」
ジョンを模したアルマジロの服だった。
「あと、これとか。これもどうだね?」
ドラルクは、さらに見せてきた。
「可愛いな、鼻息丸まで!」
「こっちはメビヤツか。なんか、俺まで楽しみになってくるわ。」
「ヌヌヌンヌ。」
「ビッ?ビッ。」
自分の名前が聞こえたので、メビヤツがロナルドの元に寄って来た。
「おぉ、メビヤツ。これ見ろよ。お前そっくりのベビー服だってよ。」
「ビッ。」
「こいつを着た俺の子達と遊んでやってくれな。」
「ビビッ!」
了解!という様に、自分の周りを回るメビヤツを、ロナルドは優しく撫でた。
「フフフ、メビヤツも嬉しそうだ。お前はいつもながら器用だな。早く着せてやりたいぞ。」
目をキラキラさせるヒナイチを見て、ドラルクは満足げに笑う。そして、隣に腰かけると彼女のお腹を撫でる様にした。そのまま軽く口づけする。
「ん…さっきからご機嫌らしい。早く会いたいな。」
「あぁ、待ち遠しいね。安心して私達の元においで。」
ジョンと気を利かせたロナルドが、夫婦の側を離れようとすると、今度は窓の方でガタガタと音が鳴った。
「ただいまです~。」
「おかえりなさい、サンズさん。もう、玄関から入って下さいよ。危ないなぁ。」
ロナルドは窓から入ろうとしている妻のサンズを抱きかかえると、中へ引っ張りこんだ。
「はわわ…ロナルドしゃんにお姫様抱っこ…サンズちゃん幸せ過ぎます。」
一緒になって結構経つが、どうもこういう所は変わらないらしい。その反面、いきなり大胆になるサンズの振り回されるのをロナルドは、元々満更ではなかった。
(俺のカッコ悪い所も含めて好きって言ってくれるもんなぁ。)
ロナルド自身、自己肯定力が実は低いのでどんな姿もキラキラした目で見てくれる彼女の言葉は嬉しかった。
「ん~、今日もサンズさんいい匂いするぅ…。」(ギリギリまでオータムの仕事するっていうから、俺心配です。)
ロナルドは、降ろした彼女を抱き締めながら、彼女の髪に顔を埋めた。最近は、「好きな人の体臭はどんな香水よりも香るものだ」と言ったドラウスの気持ちが分かる気がしている。
「実際、おっぱいの匂いいい匂いだし。」(落ちないか心配だから、今度からちゃんと玄関から入ってきてくださいよ。)
「ろ、ロナルドさんの胸も足もいい匂いですよ。」(心配させてすみませんです。いつもの癖でつい。)
「2人共、心の声と逆逆。」
「相変わらず、変わってるなサンズニャンも。」
「ヌー。」
「いや、洗濯してる側から言うとロナルドくん汗臭いもん。足の匂いはないわ。」
甘いムードから帰って来たドラルク達が彼らを呆れて見ていると、事務所の方からチャイムの音が鳴った。
「おや、お客さんかな?」
「これ、ヒナイチくんは座ってなさいよ。ロナルドくん達が戻ってくるまで私が対応して…」
「ドラルクー、ヒナイチくん!パパが会いに来たよ~!」
いきなり、事務所の扉が開いてドラウスが二人を抱き締めた。今日は入れ違いにならなかったので、テンションがいつもより高くなっている。
「お父様!いつもアポを取ってと何度言えば…」
「お父上、ちょっ…苦し。」
ドラウスは、二人を話すとテンション高めのまま背後を見やった。
「だって、ミラさんがやっと休み取れたんだもん。パパ嬉しくて。」
「お母様も?」
ドラルクが怪訝な顔をすると、そこにはテンション高めの実母も立っていた。
「ドラルク、ヒナイチさん。やっと休みが取れたんだ。もうすぐだと思うと、二人の顔を見たくてな。」
「お母上、お久ぶ…」
ヒナイチが挨拶しようとすると、ミラの目がキラキラした。クールに見えて、ミラも夫のドラウスと似た所があって極端だ。
「「お嬢さん、私達に素晴らしい贈り物をありがとう!!」」
ドラウスとミラがヒナイチがに抱きついた。サンドイッチにされたヒナイチは目を白黒させている。
「ちょっと、お母様まで!ヒナイチくんに迷惑でしょ!?そういうのは、生まれた時にとっておきなさいよ!」
「相変わらず、ドラルクの親父さん達ぶっとんでるな。」
「ニギャー!折角のいいムードが台無しです。」
今度は現実に戻ってきたロナルド達がドラウス達を呆れて見ていた。ロナルドはハンカチを咥えて悔しがっているサンズの肩に手を置くと、でも…と続けた。
「こんなのも悪くないですよね、サンズさん。」
「は、はい!ロナルドさん!」
それから、サンズのお腹に手を当てて「なっ、お前もそう思うだろ?」と息子に語りかけた。そう笑う顔は、5歳児と揶揄される子供っぽい顔ではなく、父親の顔になっていた。
(ロナルドしゃん、やっぱりカッコいい。サンズちゃん、どんどん好きになっちゃいます。)
サンズがロナルドの顔に見惚れている内に、向こうは一段落ついたらしかった。
「ロナルドくん、ごめんね。うちの両親まで来ちゃって。」
「アハハ。おかえり、サンズニャン。なんかよく分からない事になっててな。」
もみくちゃにされたドラルク達が戻って来た。もう既に疲れた顔をしている。
「おー、お疲れさん。で、親父さん達何だって?」
「ほんと、オータムと比べても常識ねえですよ。」
「お母様が出張先から、いい名産を手に入れてきたんだって。その足でお父様と合流してここに来たって訳。夫婦で腕を振るってくれるってさ。」
「その通りだ、ポールくん。それに、君の奥さんにも息子が世話になっているからね。私達がキッチンで腕を振るってあげよう、感謝する様に。」
ご機嫌のドラウスは、愛妻とキッチンに姿を消した。それを見送りながら、ロナルドは苦笑していた。
俺が事務所を持った時は、こんな日が来るとは思ってなかったなぁ。
癪なので言わないが、自分一人の時は、疲れて帰って来てコンビニ弁当食べて、そのまま寝落ちして…最低限の家事しかしてなかったから、あまり褒められた生活スタイルではなかった。
いつ見ても綺麗に掃除された事務所、美味しい栄養管理された食事、騒がしい同居人達が家族になって、俺はサンズさんと結婚して、さらに自分と相棒の子供達が加わって…これ、ドラ公が来たせいなんだよな?
ドラルクを見やると、キッチンの方から聞こえる声に呆れているらしかった。ドラウスの「あぁ、ミラさん気を付けて…」というデレデレの声が聞こえてくる。
憧れの退治人になって、若くして事務所持てた当初は、ギルドの仲間とも疎遠になってた事があったっけ?こいつが来てから、いらねえ仕事が増えたっていうのに、何故だかギルドの連中だけでなく、吸血鬼連中や吸対の連中とも遊びに行く余裕ができて…。毎日面倒事に巻き込まれて、それも嫌じゃなくて、むしろ…
「悪くねぇよな。」
「どうしたんだね?」
思わず漏れた独り言に、ドラルクが怪訝な顔をする。
「いや、お前とコンビを組んでから面倒事多いけど、退屈しねぇなって。」
「感謝し給えよ。このハンサムでキュートなインテリジョイトイなドラドラちゃんに。」
「ありがとう、よっと!」
ロナルドのハエ叩きで、ドラルクが塵になる。が、すぐ再生させながらドラルクは、向こうでママトークに花を咲かせているヒナイチとサンズに目を向けた。
「まぁ、お互い大変だが…これからもっとたのしくなるねぇ。君もそうだろう?」
「まぁな。」
待ってるぜ。だから、安心して俺達の所に来てくれよ。もっと楽しい毎日にしてみせるからな。兄貴が俺にくれたのより、ずっと幸せな毎日にさ…。