ヒナイチくんと紅葉って似合うなぁ、とTLに流れてきていたイラスト達を見て、ヒナイチくん視点で書いたものです。新書ページで表に出すつもりで書いてたのですが、携帯壊れて時間経ってから最後まで書くと、何故かしっくり来なくなったので、安定していた所までベッターに上げます。
ちゃんと締めれたら、後半も上げるかもしれません。
半端ですみません。いや、ほんま。
@kw42431393
涼しくなってきたし、皆でどっかに行きたいね。夏の遊園地みたいな賑やかなのもいいけど、のんびり紅葉狩りなんてどうだろう。
そんなあいつの一言から、ロナルド達に合わせて私も有給を取った。2泊3日で行ける、のんびりできる所か…最近、忙しかったからそういうのも悪くない。ブドウ狩りとか温泉饅頭とか美味しいものがある場所がいいな、と言えば、相変わらずだね、と笑われた。
「私だってもう子供ではないんだぞ」と文句を言うと、「ハイハイ」と頭を撫でられる。確かに、200歳越えのお前から言わせると子供かもしれないが…付き合い始めてそこそこ経つのに、子供扱いされると不安になるんだ。
なあ、ドラルク。私はお前といて満足だが、お前は私といて満足しているだろうか…。
「あれ?この撮影パネル…」
「なになに?どこか良さそうな所が見つかったかね?」
いつもの監視任務に来た事務所で、私はクッキーとお茶を頂きながら旅行雑誌を見ている。紅葉狩りの特集をパラパラと眺めていると、見覚えのある物が目に留まった。
「いや、観光地にある顔を入れて撮影するパネルがあるだろ?これ、ロナルドじゃないか?」
どれどれと、エプロンを外したドラルクが横に座って覗き込んできた。
「ち、近いぞ。ロナルドが帰ってきたら…っん。」
「照れないの。最後まではいってないけど、これよりもっと恥ずかしい事をしてるでしょ?」
ドラルクはしな垂れかかる様にしながら、ついでにうなじを甘噛みした。前の逢瀬の事を揶揄されて、むくれる私などどこ吹く風で、こいつは肩に顎を乗せた姿勢のまま雑誌を改めて見ている。
「ああ、ここは三賀の里じゃないか。サンズ女史の故郷だよ。」
「サンズニャンの?」
「そう。前、彼女が忍者免許の更新に帰郷してね。ついでに、ロナ戦のネタに詰まっていたロナルドくんと取材に行ったのさ。ちなみに、彼は名誉くノ一に認定されたんだよ。」
「そういえばあったな。くノ一服を部屋着にしていた時期が。」
「あれはどうかと思ったけどね。ロナ戦に書いた事で町おこしに貢献したんだよ。」
「なぁ、ここに…」
そう言いかけた時、ジョンとヴァミマに行っていた家主のロナルドが帰って来た。
「ただい…お前らなあ、俺んちでイチャつくのやめろって言ってるだろ。」
最近、見慣れてきたので呆れた顔をするロナルドに、ドラルクが手招きをする。
「おかえり、見給え。ほら、ここ。君が写ってるぞ。」
「三賀の里じゃん。ってか、くノ一服の俺か。町おこし、成功してたんだな。」
特集のページには、今紅葉が見頃である事やくノ一体験、兵糧丸作り体験、温泉にブドウやなし狩りもお勧め、とある。
「紅葉狩り、ここにしないか?俺、あそこのおばちゃん達にまたに会いたくなってきた。なになに、この時期注目されている…」
「樹齢500年ご神木の紅葉は、一見の価値ありですよ。」
その時、聞き慣れた声が窓の方から聞こえてきた。振り返ると窓枠にピンク色の髪が見えている。
「もう、サンズさん。いつも言ってるじゃないですか。窓からじゃなくてちゃんと玄関から入って下さいよ。しかたないなぁ。」
「にゃ!す、すみません!」
ロナルドは窓際に行くと、彼女を抱きかかえて室内に引っ張りこんだ。近頃、彼らも付き合い始めたので、恒例の行事となりつつある。人の事は言えないが、半田といいここの来訪者は玄関からまともに入らない者が多いらしい。
「サンズ女史、いらっしゃい。まぁ、こちらに座り給え。お茶でも淹れよう。」
「サンズニャン、久しぶりだな。クッキーもあるぞ。」
「ドラルクはともかく、お前までなに実家並みに寛いでやがるですか!?仕事しろよ、公務員!」
「し、仕事だ。これも監視対象を油断させ、懐に潜り込む為の…うん、美味しい。」
隣にいるドラルクが、私の口にクッキーを放り込んだ。サクサクしたクッキーの味が口内を満たす。頬が緩んでうっとりした表情になっていくのが自分でも分かる。
「てめー、説得力なさ過ぎですよ!麻薬かなんかか、何トリップしてんだー!」
「フフフ、彼女の胃袋は我が手中にある。君も私のクッキーにひれ伏すがいい。」
私の胃の辺りに手を当てて、芝居仕立てのセリフでドラルクがふざけてみせた。調子に乗り過ぎだぞ、いつまで人に凭れているんだ。でも、おいしい。
「やらねーですよ!サンズちゃんがひれ伏すのは、ロナルドさんだけです!」
「サンズさん。三賀の里の話に戻っていい?」
「ここが三賀の里か。なんかくノ一の里っていうけど、イメージ違うんだな。結構賑やかじゃないか。」
「前来た時は、閑散としてたよ。たいしたもんだ。ねえ、先生。」
「なんか照れくさいな。俺のパネルで写真撮ってる人達が、いっぱいいるしよ。」
「ロナルドさんがロナ戦に書いてくれたおかげで、観光客が来る様になったんです。皆喜んでますよ。」
数日後、彼らは三賀の里に来ていた。そもそも、あの日サンズが事務所に来たのは、忍者免許の更新時期が近いので一緒に行かないか、とロナルドを誘いに来たのだ。
(こんなにオマケが来るとは思わなかったけど、まぁいいです。サンズちゃんは、ロナルドさんと一緒にいれるだけで満足です。)
ブログ時代からのファンで、憧れの人に近づきたくてオータム書店に就職した彼女にとって、ロナルドはアイドルの様な存在だ。絶対的に勝てないロナルドの担当のフクマさんに挑み続けていたが、ドラルクのクソゲーコラムのサブ担当となった事で出会えるチャンスが増えた。そして、最近やっとつき合い始めたのだ。最初の頃の浮かれようときたら、弁舌に尽くしがたい。
「じゃあ、私達、先旅館に行ってるよ~。」
「また後でな。二人とも。」
「ヌー。」
ドラルク達の声でサンズが我に返ると、ポンッと肩に手を置かれる。ニャン!と思わず、飛び上がってしまった。
「じゃあ、俺達も里長の所に行きましょうか。」
「やったー、やっと邪魔者が消えたー(は、はい。こちらです)!」
「サンズさん、心の声と逆ですよ。」
前と違って、観光客が多いから近所のおばちゃん達に囲まれてポケットが兵糧丸だらけになる事もなく、二人は里長の元に向かう。
これから、恋人とののんびりした行楽を期待していた彼らは知らない。賑やかな観光客に紛れて不穏な影がちらついていた事を…。
「ブドウに梨に、栗拾い。皆にお土産がいっぱいだな、ジョン。」
「ヌヌンヌヌ、ヌヌイヌヌ。」
三賀の里に来た翌日、私とジョンはパンフレットを片手に観光農園に温泉街の食べ歩きを満喫した。
これから旅館に戻る頃には日も暮れるだろう。その頃にはドラルクも起きてきているだろうし、ロナルド達も免許を交付されて戻ってくる予定だ。
皆で食事して、温泉に入って、街を散歩して、ご神木の紅葉を見に行って…手にいっぱいの果物を持って、夜の楽しみに思いを馳せる。
旅館に戻って、手に持っている果物を部屋に置いてこようとした時、厨房からよく聞く声に呼び止められた。借りたらしい割烹着に身を包んだドラルクがこちらを手招いている。
「ドラルク?お前、厨房で何をしているんだ?」
「いや、ロナ戦で私がお料理上手なの有名でしょ?昨日、君が美味しいって言ってた郷土料理のレシピを聞いてたら、若い子向けの新作料理と特産品を使ったお土産スイーツの相談をされちゃってさ。今、試作品がいくつかできた所だよ。」
そういう時の彼は、とても楽しそうでこちらも嬉しくなってくる。そして、この顔は味見を頼む時の顔だと知っていれば、尚更だ。早速、味見用の饅頭の切れ端を摘まんだジョンが「ヌッヌ~!」と親指を立てている。
「もうすぐ終わるよ。先に部屋で待っていてくれる?ロナルドくん達が帰ってくるまで、思ったより時間がかかるそうだ。それまで、休憩しておいで。」
ドラルクはジョンを肩に乗せると、私の口元に饅頭の切れ端を持ってきた。反射的に口に入れた饅頭の甘さが、口いっぱいに広がって幸せな気分になる。
「美味しい…いつものドラルクの味だ。」
見上げた先にドラルクの満足げな顔があった。私はこの顔が大好きだ。でも、子供っぽい自分をつい自覚し直して、いつも複雑な気分になってしまう。