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ともだちのうた―毛利の場合―

全体公開 1387文字
2022-10-19 22:37:58
Posted by @uk_plus_



 面倒な恋をしてしまった。好きな人が“人気者である”という恋だ。状況は更に厄介で、その人と私はそこそこに仲の良い関係だった。だからこそ余計に見えてしまうのだ、好きな人から見た自分が“特別ではない”ことが。もちろん苦痛も伴うが、それでもその人のそばにいられるなら“仲の良いクラスメイト”でも私はよかった。

 「なんやぶすーっとしとんな!おはよ!」
「じゅっさ本当に朝からうるさいおはよ」

こうして私の想い人はいとも容易く心の平穏を搔き乱してくるのだ。ほら、ただ挨拶をしただけなのに、私の頭を高い位置から撫でて来たりして。やめてほしい。そんなことをされては勘違いをしてしまう。もう全てを知っている私はそうならないように、むくれっ面をして必死に気持ちが漏れないようにするしかない。

「はいはい、今日も一日元気で行こな!」

じゃあなと言いながら寿三郎は自席に鞄を置きに行った。
 寿三郎はとても人好きのする性格だ。関西弁が強くて背が高いことをも気にさせないほどの。だから自分にもたらされること全てが特別でないことは、自分がよくわかっていた。私にしてくれること全ては、彼にとって特別なことではないのだ。
 だからほら、今彼を狙って挨拶に行った子にだって、さっきみたいな調子で明るく挨拶し返す彼がいる。

 「寿三郎おはよ~」
「おはよ、なんやめっちゃ元気やんけ」
「えーわかる?」

聞きたいわけでないのに聞こえてしまう己の耳を呪いたかった。そしてその寿三郎の声音が自分の時とあまり変わらないことに気付いて、勝手に痛んでしまう胸に嫌気が差した。私はその会話をそれ以上聞きたくなくて机に突っ伏し寝たふりをした。

 こんな日々を送りながら、私は日毎寿三郎への想いを募らせるばかりなのだ。それでも私は彼のそばにいられるなら“仲の良いクラスメイト”でもよかったんだ。


―――――――――――――――――――――――――

 もう先ほどの会話は終わったのだろうかと頭を持ち上げ掠れた目を擦ると、私の目の前には何故か寿三郎が座っていた。どうやら突っ伏していた私を見ていたらしかった。

「おわビビった」
……それはこっちの台詞だよ」

突然現れた寿三郎に内心ドキドキしながらも、それが表に出ないように私は平静を装いながら返事をした。すると寿三郎はぐっと私に近寄り、手振りで耳を近付けるように私へ促す。私はそれに更に心臓を飛び跳ねさせながらも、言われた通りに自分の耳を彼に寄せた。

「あんな、自分にだけやで、いっつも元気に挨拶するんわ」

――え?

今彼は何と言ったのだろう。己の耳を疑いながら、見開いた目で寿三郎を見つめると、少し頬を赤らめた彼が首を掻いた。

「お、お前だけ特別ってことやけどあー!もうええわええわ!」

突然席を立った寿三郎の耳は真っ赤だった。これは勘違いをしてもいいということだろうか。


―――――――――――――――――――――――――

「ねえ寿三郎、もいっかい言って」
「もう言わん!」


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