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珍しい日

全体公開 1092文字
2022-10-30 22:10:56
Posted by @uk_plus_



 「トリックオア、トリート」
「待って月光、誰に入れ知恵されたの?」

時刻は午後の八時。私の住むワンルームを訪ねて来た彼氏の月光は、玄関に入るなりそう言って私に掌を差し出してきた。たしかに今日は私の家に来る約束にはなっていたが、いきなりこんな挨拶をするなんて彼らしくないことをしてきた事実に驚いてしまった。そして私の脳裏にある一人の人物が思い浮かぶ。

「はっはーん、さては寿三郎だね?」
……なんのことだ」
「知らんふりしても駄目。わかるんだからね」

 素直な月光のことだ、恐らく寿三郎に私の家へ訪ねることを話した折に“こう挨拶すれば彼女が喜ぶ”とでも言われたのだろう。にこにこ笑いながら月光に話している寿三郎の姿がいとも容易く目に浮かんだ。
 未だに玄関で掌を差し出したまま立っている月光を招き入れて、私はすたすたと部屋に入っていく。それに倣うように月光も私の後ろを着いてくるのを確認して、リビングのソファに座れば彼はまた思い出したように言った。

「それで」
「何?」
「トリックオア、トリート」
「月光さぁ……

まだ終わっていなかったのかと少々呆れた声で名前を呼べば、月光は不思議そうに首を傾げてまた続けた。

「このままでは悪戯をするしかなくなる」
「良い大人だよ?月光……

悪戯って……と更に呆れると月光は私の隣に座りながら再び掌を差し出してきた。私はなんとなしにその掌に自分の手を乗せてにやりと笑って見せる。

「それじゃあ悪戯ってなんなの?」

すると私のその手を握り返して、月光も少しだけ口角を上げてから言った。

「試してみるか?」
「望むところだけど?」

お互いにソファに座り向き合い不敵に笑い合ってから、どちらからともなく可笑しくなってもっと笑ってしまう。すると月光が顔を寄せてきたので薄っすらと目を瞑れば、軽く唇に唇が落とされた。私はその感覚にまたにやりと笑って月光を見上げながら呟いた。

「今のが、悪戯?」
「一応、悪戯だ」

その言葉にけらけらと笑って、私は月光にぎゅっと抱き付いた。今年のハロウィンは少々退屈しなさそうだ。


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「あ、ごめん月光!お菓子あったよ!」
……そうか」

そこには少々残念そうな月光がいた。




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