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僕らの歴史

全体公開 10 1714文字
2022-11-12 20:17:15

倫竜WEBオンリー「だってふたりは運命だから!」の倫竜版ワンドロ&ワンライコラボ企画作品。
「運命」「衣装」「メロンソーダ」「黒猫誕生日2022」全部一応入れました!
WEBオンリー開催おめでとうございます!ありがとうございます!!!

 事務所から送られたファンレターを、ソファーに二人並んで読む。お供に紅茶の一つも用意したくなるが、万が一にも濡らしてしまっては大変なので、水分厳禁だ。ファンレターを読んでいる間に何か飲みたくなったら、手紙から離れてキッチンまで行き、その場で飲んで戻ることに決めている。
「ねえ、トモ。この手紙見てくれる?」
「俺が見てもいいやつ?」
「当たり前でしょ。これはキタコレ宛の」
 『自分宛てのファンレターは、自分だけで読むこと』というのも、飲み物の件と同様に二人で決めたことだ。
ファンレターという特性上、個人情報が記載されていないか、危険なものがはいっていないかのチェックを事務所が行うのは避けられない。それでも宛名の相手のためだけに書いてくれた文章を、必要以上に他人に見せるのはあまり良くない気がする、という意見が一致した結果だ。
渡された手紙に目を通す。どうやら最近ハニガになってくれたばかりの子らしい。便箋の二枚目に入ったあたりで、竜持がすぐに読んでほしいと渡してきた理由らしき記載を見つけた。当たり前になってしまっていることは、それを当たり前だと思っていない人から指摘されないと気づかないものだ。
「どうして、メロンとさくらんぼなのでしょうか」
 おそらく竜持が気に留めたと思う個所を読み上げてみる。どうやら正解らしい。
「あのフルーツモチーフ使ったのっていつ?」
 フルーモチーフのラペルピンを衣装につけたイベントを、記憶の中から探し出す。アイドルとしての活動も長くなると、なかなか思い出せないことも増えてくるが、それはどうにか思い出せた。ラペルというのはスーツの下襟のことで、そこに空いたフラワーホールと呼ばれるボタン穴に取り付けることのできる装飾品がラペルピンだ。
「SPARKLE*PARTYだったかな?」
「そっか。じゃあ結構経ったね」
 あれは確か十人から、十四人のB-PROJECTに変わった頃のこと。遙日と唯月は同じパイナップルだったが、他のメンバーは全員ことなるフルーツモチーフを身に着けた。竜持はさくらんぼで、自分はメロンだった。これをきっかけにして、ハニガの子たちはメロンやさくらんぼ、そこからさらに組み合わせてメロンソーダモチーフのものを身に着けてくれる子が多くなっていった。自分も竜持もとびぬけてメロンやさくらんぼが好きだと言っているわけでもないので、経緯を知らなければ、確かに不思議に思うかもしれない。
「新しくハニガになった子が疑問に思ってるなら、どっかで話したいな。一番早いイベントって僕の誕生日有料生放送かな?」
「そうだね」
 ハニガのファンクラブに寄せられた『竜持くんのお誕生日になる瞬間を皆でお祝いしたい』という要望に応える形で企画された、ニヨニヨ生放送が直近の予定にあった。最初は無料配信で考えていたのだが、夜叉丸さんに「あなたたちのファン数で無料だと、アクセス過多でまともにやれないわよ」と言われてしまったのだ。
 そもそも本当は誕生日の竜持を独り占めしたかったのだけれど、「もう何年もしてきたでしょ!」と言われてしまえば反論できなかった。
「あの頃の衣装はさすがにもう着られないけど……。ラペルピンは仕舞ってあったよね?」
「そうだね。そのものは無理だろうけど、せっかくだし衣装も改めて作ってもらおうか」
「いいね!何着ようかって悩んでいたところだったし。なんかあの頃の写真とか見たくなってきた。ちょっと取ってくる」
 自室へと消えていく姿を見送る。今度の誕生日で竜持も、成人する前に迎えた誕生日の回数を、成人をしてから迎えた誕生日の回数が追い越す。
 出会った頃の面影はどんどん薄れていったが、思いの強さは反対にどんどん濃くなっていった。もう離れて生きていくことなど、お互いに考えられない。いつか訪れる運命の日まで、共にいられることを願う。
 本当は何年独り占めしたって足りないと思っている。でも、ファンのために一生懸命な竜持も、確かに自分が好きになった竜持の一部なのだ。竜持が戻ってくる前に、衣装の件は夜叉丸さんに掛け合ってしまおうと決めて、スマートフォンに手を伸ばした。


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