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eudaimonia tale本編

全体公開 eudaimonia tale 5736文字
2022-11-27 11:46:23

eudaimonia tale本編



むかしむかし
ちきゅうには ニンゲンとモンスターという 2つのしゅぞくがいました。

あるひのこと
せんそうにやぶれ ちかにとじこめられた モンスターたちのもとに ひとりの ニンゲンが あらわれます。
ニンゲンは モンスターと こころかよわせ かれらを かいほうしました。
しかし ちじょうにでた かれらを まちうけていたのは ニンゲンたちの きょぜつ でした。

モンスターの ことばも きかない ニンゲンたち。
2どめの せんそうが はじまってしまいました。
たくさんの モンスターが しんでいき たくさんの ニンゲンが きずつきました。
かなしみにくれた モンスターたちは ちかへと ひきかえし とじこもります。

それから 10すうねんの ときが ながれ……

イビト山 202X年
それは きょかなく たちいるもの にどと もどることは できない といわれる でんせつの山でした。

おちたニンゲンに なまえをつけてください。

***



 全身を襲う強い痛みと、頬が何かにくすぐられる感覚に意識を取り戻した。どうやらうつ伏せで倒れていたようで、体を起こせば視界に入ってくる潰れた金色の花たち。
 自身が黄金色の花畑のど真ん中で意識を失っていたことに気づいたのも束の間、***は今以前、どこで何をしていて、さらにはどうしてこんなところにいるのかを思い出せないことに気づく。それどころか、自身の名前以外はもう何も記憶になかった。

 何も思い出せないまま、ひとり見知らぬ場所に倒れていたという事実が、***を恐怖に陥れる。自身に行くあてはあるのか、これからどうするべきなのか、もう何もわからない。
 不安に俯き、体を震わせる。今にも泣き出してしまいそうな***が、自身の体を抱きしめるように両腕を交差した時だった。

「げ、ホントにいた」

 どこからか聞こえてきた声。慌てて周りを見渡してみる。けれど、この空間にあるのは金色の花畑と何かの入り口、そして自身の頭上高くにある大きな穴だけ。どれも声を発するようなものではなかった。
 今の声はなんだったのだろうか。もしや、幽霊では……。***をさらに恐怖が襲う。

「ちょっと、ここだってば」

 ここ、なんて言われてもわからない。ブンブンと首を振って、耳を塞ぐ。きっとこれは幻聴だ。一緒に目も閉じ、なんの情報も受け取らないようにその場にしゃがみ込む。
 すると、何かがドン、と***の背中を押し——前に傾いた体は、そのまま金色の花畑へと倒れ込んでいった。

「お前バカなの? そんなことしたってここからは出られないよ」

 先ほどと同じ声が、今度はうつ伏せに倒れる***の頭のすぐ上から降り注ぐ。おそるおそる、視線を地面から上げていって……

「やっと目が合った。こんなんでホントに大丈夫なわけ?」

 ヒュ、と喉が鳴った。目の前には、***を見下ろしながらため息を吐く花が一輪。ため息を、吐く花が……? その、普通ではありえない光景に頭の中が疑問符でいっぱいになる。
 そんな***の様子に気づいていないのか、はたまた気にするつもりもないのか、花は一つ咳払いして貼り付けたような笑みを浮かべた。

「ハウディ! ボクはフラウィ、お花のフラウィだよ!」

 キミの名前は? そう言った花に***は困惑しながらも唯一覚えている名前を伝えれば、花は「よろしく」と笑う。よろしく、なんて言われてもこんな謎の生物とどう関わればいいというのだろう。
 花は握手がしたいのか、手の代わりに一本の蔓を***へと差し出してきたが、この蔓を手に取ってもいいのだろうか。***が困惑し、それに手を伸ばすことができずにいると、フラウィはフン、と息を漏らして蔓を引っ込めてしまう。

「ま、本気で仲良くする気はないし、いいんだけどさ」

 ぽつりと、***に聞こえない声でそう呟いたフラウィが一瞬消えた笑顔をまたもや貼り付け口を開いた。

「キミはここがどこだかわかる? ……わからないんだね、ならボクが教えてあげる」

 そうしてフラウィは蔓を器用に動かしながら、ここがどこであるか。***が今どういう状況なのか。これからどうするべきかを丁寧に語り始める。彼の話から、ここは十数年前に争いに負けたモンスターたちが隠れ住む地下世界で、***は天高くに見える大穴からここに落ちてきてしまったのではないか、ということ。また、ここから出るためには花畑の奥に見える入り口から神殿を抜け、地下世界を冒険しなければならないということがわかった。

「そして、これが一番重要だよ」

 フラウィの蔓の先に触れられた胸元がじんわりと熱を持ち始め、何かが体か飛び出した。それは、黒いハート。柔らかいのか、フルフルと震えている。
 それに触れようと、おそるおそる指先を近づけていけば「ストップ」という声で静止された。

「ちょっと、あんまり雑に扱っちゃダメだよ。それはタマシイ。キミ自身といっても過言じゃないんだから」

 自分自身? ***はよくわからず首を傾げる。そんな様子を見て小さなため息を漏らしたフラウィは、詳しく説明することを諦め「それから」と続けた。それと同時に、フラウィの周りに現れる白い粒。大きさは三、四センチほどだろうか。

「これがラブ。モンスターによって形はいろいろだけど、中身はどれも同じさ。今からこれをキミのほうへ飛ばすから、タマシイで受け止めて」

 受け止める、ということがどういうことかはっきりと理解できない。受け止めようにも、タマシイの動かし方が***にはわからなかった。ただ、あの白いラブと呼ばれた粒は、その名前から危ないものではないのだろうということだけは察することができる。
 どうにかタマシイを動かして、ラブを受け止めようと試みていると、***の様子を見ていたフラウィがつまらなさそうに声を漏らす。

……やっぱやめた」

 ポン、という音と共に、ラブが消えてしまう。どうかしたのかと問い掛ければ、フラウィは呆れ顔で「お前、疑い深いのか単純なのかどっちなんだよ」と呟いた。
 どうやらラブと呼ばれていたさっきの白い粒の正体は、相手を気づつけるための弾幕であり、あれに何度も触れると、タマシイは壊れて消えてしまうらしい。
 自分自身といっても過言ではないらしいタマシイが壊れて消える、ということは……。想像するだけで恐ろしい。

「モンスターに敵意を向けられたら、さっきみたいに勝手にタマシイが飛び出るから……その時は避けたり逃げたりしなよ」

 そういってどこかに消えようとしたフラウィを引き留め、***はずっと脳裏に浮かんでいた疑問を口にする。

「は? なんでやめたのかって? ……もうすぐあいつらがくるだろうし。別にあいつらが悲しむだろうからやめたとかじゃないけど」

 フラウィの言う「あいつら」が誰なのか。その説明がフラウィからされることはなかった。ただ、***が「あいつら」の存在に疑問を抱いていることだけは伝わっていたようで、フラウィは「すぐにわかる」と言い残してその場からいなくなってしまう。
 ひとり取り残された花畑で、***は改めて辺りを見渡す。フラウィが言っていたように、これから自身はここを出るために地下世界を冒険しなければならないのだろう。
 失った記憶も、そのうち取り戻すことができるのだろうか。漠然とした不安に襲われながらも、***が立ち上がり行く先を見るために振り返った時だった。

……おや、君は」

 車椅子に乗ったモンスターと、目が合った。


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