eudaimonia tale短編集
@tales9424au
目次
セクシーコンテストお疲れ様でした
┗ 一問一答形式(🧬)
僕らの行く末に
┗
我が子と我が子のお酒の話
┗ Wrack Tale × eudaimonia tale
シャルエがタートルネックを着ている理由
┗
ゆめをみてたの
┗
セクシーコンテストお疲れ様でした
Twitterにて行われた企画に参加した際のSSです。
Q.セクシーコンテスト、お疲れ様でした
🧬「ほーい。何が何か分からんうちに始まって、分からんまま終わってたけどなぁ」
Q.分からなかったんですか?
🧬「まあ他のやつが知らん間にエントリーしてたみたいでな…オイラ、ラボ篭りっぱなしだったしさぁ」
Q.でも、グリルビーズにいましたよね?
🧬「……そりゃ、まボーンろし(まぼろし)でも見たんじゃないか?」
Q.惜しくも一回戦敗退となりましたが
🧬「まあまあ、オイラセクシー売りにしてるわけじゃないしなぁ…でもま、相手が悪かった…ってとこじゃないか?」
Q.というと?
🧬「似た顔に言うのもなんだが、相手のあの雰囲気こそセクシーってやつなんじゃないかと思ってな」
Q.これからの目標をお願いします
🧬「目標も何も、なぁ…ま、コツコツと地道に実験を重ねてバリアを作るよ」
Q.地上には出ないんですか?
🧬「お前さん、わかってて聞いてるだろ?」
Q.では最後に、投票してくださった皆様に一言お願いします。
🧬「あーーーー…投票ありがとな。ま、オイラは負けたけど他のオイラやエントリーした奴らも応援してくれよな。……いつかオイラたちの世界で"アンタ"に会えるのを楽しみにしてるぜ」
Q.ありがとうございました
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僕らの行く末に
シャルエが自分の住んでいるスノーフルとは違うスノーフルに迷い込むお話。
気づけばボクの目の前には、見覚えのある風景が広がっていた。
キラキラと輝くイルミネーションはとても眩しく、そして懐かしいものだった。今となっては見ることもなくなっていたその輝きを前に、シャルエはただ呆然と立ち尽くす。
「…ここは、どこ?」
彼にとって、見慣れていたはずの風景が頭の中をかき乱した。知っているはずなのに、知らない。
「ここは、ボクが住んでるスノーフルじゃない…!」
シャルエが住んでいるスノーフルの町はこんなに活気付いていなかった。"WELCOME"と書かれた旗に飾られたイルミネーションに、モンスターたちの笑い声。子供たちの走り回る足音も彼の住むスノーフルでは見られない光景だった。
ではなぜ見慣れている風景なのか。それは、彼が生きている今より十数年ほど前。まだシャルエたちが地上へと出る前までのスノーフルと同じだったから。
シャルエは走り出す。地上へと出て、ニンゲンとの争いが起こり死んでしまった仲間たちがここにはみんな居た。元気で過ごしている仲間たちと久しぶりに話がしたい。笑い合いたい。
けれど、何かおかしい。
「どうして、誰もこっちを見ないの!?」
まるで、シャルエが立っている場所には誰も、何もいないかのようだった。道のど真ん中に立ち尽くしているというのに誰も何も言わない。触れてこない。
シャルエを除くスノーフルのモンスターたちは言葉を交わし、互いに触れ、そうして生きているはずなのに。
ここが自身の住むスノーフルとは違うからなのか。自身の存在を認識してもらえない悲しみにシャルエが視線を落とすと同時に後ろから聞こえる声。
「おや、パピルスじゃないか」
「…ッ!」
不意に呼ばれた自身の名前。とうとう自身を認識できる仲間が現れたのかと嬉々として振り返るが、彼の希望はすぐに打ち砕かれる。
そこには、ショップの店員と楽しそうに会話する"パピルス"がいた。
「パズルは完成したのかい?」
「うんッ!ところで、サンズを見なかった?」
「見てないねえ。またどこかでサボってるんじゃないの?」
「もう、オレ様が目を離すとすぐ……」
すぐ目の前で交わされている会話が、とてつもなく遠く聞こえる。これではっきりした。ここに、彼の居場所がないことが。
ここにはシャルエではない"パピルス"が居る。この世界にとって、シャルエは異物なのだ。居た堪れなくなって、シャルエはまた走り出す。握りこぶしに力を入れると、革手袋がキュ、と鳴った。早く帰りたい。自身がいるべき世界へ。
「随分と格好いい服を着てるんだな、パピルス」
「…へっ」
顔を上げると、声の主と目があった。ニ、と笑った相手は真っ直ぐにシャルエを見つめている。
「お前さん、別の時間軸のパピルスだろ」
「……兄ちゃん、ボクのこと見えるの?」
「ああ、見えてるぜ。年取ったか?成長したな。どうしてここに?」
「わ、わからない……。にいちゃ…」
久しぶりに兄に会った嬉しさと、誰かに認識してもらえた安堵から涙が込み上げた。今まで、何があっても人前で涙を見せることはしなかったシャルエの頬が濡れる。
元の世界では自身も兄も忙しく、顔を見る機会が減っていたこともあってかサンズの顔がとても懐かしく感じた。
サンズはシャルエの姿を見て少し考えた後、そっと口を開く。
「時間はなさそうだな」
「え?」
「……頑張ったな、パピルス」
シャル絵の服の裾を引くサンズ。それに従ってその場にしゃがみ込むと、サンズの手がシャルエの頭に触れた。
「兄、ちゃん」
「お疲れさん。お前はよく頑張ったよ」
なにが、という間も無く視界が白く染まっていく。ぼんやりとぼやけていくサンズの姿にシャルエは慌てて口を開いた。ダメ、これだけは言わないといけない。
「兄ちゃん…!地上に出ちゃ‥‥!!」
首筋に、鋭い痛みが走った。
『僕らの行く末に』
気づけばボクの目の前には、ニンゲンの足があった。
自身より小さいはずのニンゲンに見下ろされていることから、首を切り落とされたのだとシャルエは気づいた。先ほどまでのはきっと走馬灯というものだったのだろう。あれは、過去のスノーフルだったのだ。
悔しい。"ボクら"の行く末がこんなになるなんて。知っていたら地上になんて出なかった。たとえ地上へと出てニンゲンと争うことになるのが運命だったとしても、最後の最後にこうしてニンゲンに殺されなきゃならないなんて。
「……オレ、さまは」
不気味な笑みを浮かべこちらを見下ろすニンゲンに、シャルエは笑った。泣くのでも、怒るのでもなく。
「オレさまは…貴様を、信じてるぞ…」
きっと、これで終わりなんかじゃないって。ボクらの行く末にハッピーエンドがあるって。
ニンゲンと一緒に、笑い合える未来があるって。
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「「うちの子たちが飲み会してたら、どうなるのかな?」」
これは、それぞれの世界にいる不思議な羊と不思議なえびしゅうまいの一言から始まった、奇跡のお話。
『我が子と我が子のお酒の話』
いつも客なんてひとりもいない店だが、昔からそうだった訳ではない。かつては、毎日毎日飽きもせずに訪れる常連たちの笑い声で賑わっていたこともあったのだ。
そんなこの店がこうして静まり返り、店主がグラスを拭く音だけが響くようになった理由は一つ。常連たちが皆、十数年前の争いで塵と化してしまったから。
けれど、今日は違った。店に響く笑い声、グラス同士がぶつかり鳴る音。カウンター越しに見えるその光景は、昔を思い出させるものだった。
「たまにはこういうのもいいね」
「ここんとこ、こうして楽しく飲むって機会がなかったからなぁ」
「楽しいからって、飲みすぎちゃダメだよッ!」
カウンター席で言葉を交わし、酒(ひとりはホットチョコレートだが)を飲む三にんぐみ。
そのうちのひとりであるエストはいつもより上機嫌で、彼の左隣に座る弟、シャルエの背中へと腕を回していた。
エストの右隣に座るアレスは、そんなエストと、なんだかんだ楽しそうにしているシャルエを見て、笑みを浮かべている。
ふと、エストのグラスが空になっていることに気づき店主が次の酒を出そうとカウンターに背を向けた時だった。
カラン、という音と共に店の扉が開く。誰かがこの店を訪れたようだ。しかし、誰が来たというのだろう。
この店に訪れる客は、常連のほとんどが塵となってしまってからはエストかアレスだけで、稀にシャルエがホットミルクやホットチョコレートを飲みにくるだけだった。
店主が振り返ると同時に、店に響く低く冷たい声。空中に浮かぶ幾つもの白い骨を店の入り口の方へ向け、エストが言い放った。
「アンタ、誰だ?」
「ちょっと待ってエスト! ……もしかして、カリーナさん、ですか?」
カリーナと呼ばれた女性は「(久しぶりね)」と笑った。
アレスの知り合いである彼女を、店主もまた知っていた。数ヶ月前、突然この店に訪れた見知らぬモンスター。手足の生えたえびしゅうまいに導かれ、気づけばここに来ていたと言ったモンスターが、彼女だった。
「(驚かせてごめんなさい)」
「いや、オイラこそ。驚いたとは言え攻撃しそうになるとは……」
「グリルビーさんとも知り合いなんでしょッ?」
「(以前、ここに来たことがあるの。アレスとも、その時に会ったのよね)」
シャルエとカリーナの言葉に、店主は一つ頷いた。アレスとシャルエの間に座ったカリーナに、以前も出したことがある酒を出し、彼らの会話に耳を傾ける。
「今回もその……えびしゅうまいについてきたんですか?」
「(いいえ。私がよく行くお店の扉を開けたら、ここに繋がっていたの)」
「へぇ……なんとも不思議なことがあるもんだな」
「オレ様もえびしゅうまいに会ってみたいな!」
どうやら、エストもシャルエもすぐにカリーナと打ち解けたようだった。これも、彼女の人柄だろうか。
「そういえば、カリーナさんのところにもスケルトンがいるんでしたっけ?」
「(ええ、兄弟がいるわ)」
「オレ様とエストみたいだなッ!」
「……そうだな」
考え込むエストをよそに、シャルエがスケルトン兄弟の特徴を聞き始める。
兄のランシルは研究所の副所長をしており、見た目はシャルエに少し似ているということ。
弟のアイレムは騎士団の副団長をしており、見た目はエストに少し似ているということ。
スケルトンという、地下世界でも珍しいモンスターがカリーナの知り合いにもいる。そんな事実だけでも不思議なのだが、見た目や家族構成まで似ているとなると偶然とは思えない。
ふと店主がエストへと視線を向けると、彼も同じことを考えていたのだろう。表情は険しくなるばかり。
「その、ランシルとアイレムは来ないのッ?」
「(そうね……いつもなら、もうそろそろランシルが迎えに来る頃なのだけれど)」
「でも、そう簡単に別の世界と繋がるなんてこと……」
あるのだろうか。そう、アレスが続けようとした時だった。タイミングよく開いた店の扉。入り口から顔を覗かせた人影は、カリーナを見るなり「Dr.」と声をあげる。
「やっぱりここに……って、は?」
「ウヒョウ! もしかして、あれがランシル!?」
「(あら、貴方もここに来れたのね)」
「世界と世界の行き来は、随分と簡単らしいな? アレス」
「そう、みたいだね」
紫色のタートルネックに白衣を身につけた、シャルエに似たスケルトン。どうやら彼が、カリーナの言っていた「ランシル」のようだ。ランシルは、見慣れないモンスターとニンゲンを前に、ただ呆然と立ち尽くしている。否、もしかしたら頭の中で、今の状況を整理しているのかもしれない。
そんなランシルを、ふわふわと浮かぶカリーナの手がカウンターへ引っ張ってくる。今すぐにでも説明して欲しそうな顔のまま、ランシルはカリーナの手を振り払うことなくこちらへと近づいてきた。
「はじめましてッ! オレ様はシャルエ! キサマ、とっても大きいんだね!」
「え、いや……Dr. これ一体何が起きて」
「へえ、確かにどことなくシャルと似ているかもしれないな」
「うん。雰囲気も服装も全然違うのにね」
「……人間? Dr. アンタ、人間と何仲良く飲んでるんですか」
「(アレスは大丈夫よ。それよりも、貴方は何を飲むの?)」
半ば強引にカリーナの左横へ座らされたランシルが、彼女の強引さには慣れっこだと言わんばかりのため息をついて、酒を注文してくる。それに一つ頷いて彼らに背を向ければ、後ろから聞こえてくる会話。
「初めまして。僕はアレスで、僕の左隣がエスト」
「オレ様はシャルエだよッ!」
「……俺はランシルです。ところでDr. 俺はグリルビーズに入ったつもりだったんですけど?」
「(私もよ。きっと、どこかでイタズラしている子がいるのね)」
「イタズラって……見たところここは俺たちが住んでる世界じゃなさそうだし、影響とかないんですかね」
ランシルの言葉にカリーナはゆるゆると首を振る。
「(大丈夫だと思うわ。この前ここにきた後も、特に影響はなかったもの)」
「は!? アンタここ二度目なんですか? なんで言わないんですか!」
「カリーナさん、言ってなかったんですか?」
「(聞かれてないんだもの)」
「アンタねぇ……」
がっくりと肩を落とすランシルと、それを見てくすくすと笑うカリーナ。先程まで(特にアレスを)警戒していたランシルも、少しではあるが肩の力が抜けてきただろうか。
彼の目の前にグラスを一つ置けば、ランシルは「どうも」と小さく会釈してグラスを持ち上げた。
「カンパーイッ!」
「(ふふ、元気ねぇ)」
「シャルエ、ちょっとペースが早いんじゃない?」
「まあまあ、いざとなったらオイラが止めるよ」
だんだんと賑わいを取り戻して行く店内。それも、エストたちが三にんで飲んでいた時よりもさらに騒がしくなっているものだから、店主は小さく息を吐いた。
空になったグラスを片付けては、次の酒を提供する。こんなに忙しいのは十数年ぶりだ。
「(でも、せっかくだからアイレムにも来てほしいわね)」
「呼んできましょうか? 説明は俺からしておきますし。グリルビーズに入ったらここにつながってたなら、ここを出ればグリルビーズの外に行けるでしょ」
「なら、カウンター席より向こうの席の方が話しやすいかもね」
「移動するか。ほらシャル、立てるかい?」
「まだ大丈夫だよッ!」
ランシルがカクテルを呷り、足早に店を出て行く。それに合わせて残った数名はカウンター席を立った。常連たちが塵となり、今後使われることはないだろうと思っていたテーブル席に、皆が座り始める。
「連れてきましたよー」
「こんにちは」
「キサマがキシダン? のフクダンチョー? ってやつか!? オレ様はシャルエ! よろしくなッ」
「シャル、早い早い」
思いの外早く合流した、紅桔梗色の服を身につけるスケルトンに走り寄って行くシャルエ。友達が増えた、と喜ぶ彼を見て、アイレムはにっこりと笑っている。
先ほどのランシルと同様に、カリーナの手に引かれるがままアレスの右隣に座らされたアイレムは、小さく会釈をした。その隣には、アイレムを連れてきたランシルが座る。
「(改めて紹介するわね。この子がアイレムよ)」
「初めまして。ワタシ……は、アイレムです」
「僕はアレス。ランシルさんの右隣にいるのがエストで、エストとカリーナさんの間にいるのがシャルエ」
「ま、ほどほどによろしくな」
「ねえアイレム! キサマ、キシダンのフクダンチョーやってるってホント!?」
「うん、そうだよ」
テーブルを超えていってしまうのではないか、というほどの勢いで向かい側に座るアイレムの方へと身を乗り出すシャルエ。自身がロイヤルガードの体調をしているからか、どこか親近感を感じているようで、キラキラとした笑みを浮かべていた。
一方、エストとランシルはいつの間にか「自身を振り回す上司」の話で盛り上がり始める。
「オイラも昔、そう言う上司に困らされたからわかるぜ」
「お互い大変だな。少しは大人しくなってほしいんですけどね?」
「(聞こえてるわよ?)」
「聞こえるように言ってるんですよ。あんまり周りを揶揄わないでください」
「(揶揄ってなんかいないわ。ねえ、アレス)」
「へっ!? あ、あの……近……」
「……って、言ったそばから」
彼らの空気は、だんだんと「飲み会」へと変わって行く。かつてこの店の日常であった光景が、十数年ぶりに帰ってきた。そう感じながらいそいそと酒やつまみの準備をする店主。
カリーナの言葉を借りるのならば、きっとこの出来事はいたずら好きな不思議な生き物が、店主の忙しそうな姿を見て楽しむために起こした奇跡なのだろう。
なんて、随分とらしくないことを考えつつ、店主はボトルの蓋を開けた。
「(あら、少し酔ってきちゃったかしら……)」
「大変ッ! オレ様がお水持ってきてあげる!」
「Dr. 純粋な子を揶揄わないでくださいってば」
「おっと、シャルを揶揄うのはオイラが許さないぜ?」
「なんか……博士がごめんなさい」
「賑やかで楽しいから、大丈夫だよ。もしよければ、またきてほしいな」
「もちろん!」
その日、店からは夜が更けるまで笑い声が響いたという。
「なあ、アンタに聞いてもいいかい?」
「(あら、なにかしら)」
店主は火災用出口から外へ。ランシルやシャルエたちは店の正面口から外へ。そうして店内に残ったのは、エストとカリーナのふたりだった。
ドアノブに手をかけていたカリーナは、エストの言葉にゆっくりと振り返る。
「アンタのとこのスケルトン、もしかしてアンタが造ったのかい?」
「(……なぜかしら?)」
それは、ほんの一瞬だった。カリーナの顔から、笑みが消えたような気がした。それでも、エストは言葉を紡ぐ。
「……アンタが、どっかの誰かさんと似てたからさ。オイラもシャルも、そいつに造られたんだ」
「(……)」
「言いたくないならいいんだ。たださ、アイツはオイラたちを置いて居なくなったから」
アンタは、居なくならないでやってほしいんだ。ぽつりと、そうこぼしたエストが俯いて居た顔をあげる。そこには、皆で酒を飲み交わして居た時と同じ笑顔があった。
「なんてな。らしくないことはするもんじゃない。ほら、アンタも帰るんだろ?」
「(ええ。……私からも、一つ聞いてもいいかしら)」
「なんだい?」
少しの沈黙。そして、次に聞こえてきた言葉にエストは息を呑んだ。
「(貴方が、私の名前を呼ばないのは、どこかの誰かさんに私が似ているからかしら?)」
「……さて、どうだかね」
二人は、笑顔のまま扉を開ける。「答え」は得られぬままに。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
Wrack Tale : 夜月星礼様
https://privatter.net/u/yaduki_shorai
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シャルエがタートルネックを着ている理由
目の前には、小さな声で「ごめん」と呟くフリスクと、それを抱きしめている王様のそっくりさん。襲いかかってくるニンゲンたちから逃げるように地下世界に戻ってきたボクたちを、重たい空気が包み込む。
どうにか空気を変えたくて「ダイジョウブ! もう一回地上に戻って、話し合えばニンゲンだって」と言いかけた時、ボクの言葉はフリスクの言葉でかき消された。
「パピルス!!!」
「……ッ」
たった一言、名前を呼ばれただけだった。けれど、それ以上言葉を続けることはできなくて。ボクはそれを飲み込んで、俯いた。
■■■
「……黒い服ッ?」
「そう。本当なら、モンスターのやり方に従ってみんなを弔ってあげたかったんだけど」
みんなの塵、持って帰ってこれなかったから。そう言ったフリスクが、悲しげに俯いた。そんなフリスクの隣には、綺麗に畳まれた数着の服。
「だから、代わりにニンゲン流でね。ニンゲンは、誰かが死んじゃった時に黒い服を着るんだ」
「そうなのか!」
「うん。パピルスに似合いそうなものを選んでおいたから、好きなのを着てね」
並べられた服を一枚、一枚と広げて見てみる。その中に一つ、白いニットの服があった。なぜか首元がとても長くて、このまま着たら顔が出ないだろうと思える。
「フリスク、これって……」
「ん? ああ、それはね、タートルネックっていう形の服だよ。着たら、首元を折るんだ」
「ウヒョウ! カッコイイ名前だな! オレ様、これにするぞ」
「せっかくだから着てみてよ。きっと似合うよ」
「わかった!」
そう言って、いそいそと着替え始めてみる。……フリスクの言った通り、首元に少しボリュームが出てどこか落ち着く感覚がした。
「うん、似合ってるね。サイズも大丈夫そうで良かった」
「ニェヘヘ」
そっと、右手で首元を撫でてみる。もう、この首を落とさせはしない。この服を選んだ理由の中には、そんな決意も含まれていた。
そんなこと、フリスクは知りもしないのだろうけど。
「……ありがとう、フリスク! 大事に着るなッ」
「うん、こちらこそありがとう、パピルス」
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ゆめをみてたの
オレさまは、地上に出なくたっていい。こんな日が、ずっと続いてくれるなら。
「……ふたりともなにしてるのッ!」
「あっ、パピルス!」
「パイ投げってやつさ。パピルスもやるか?」
ニューホームの奥、謁見の間から漏れる笑い声に釣られて、パピルスはひょっこりと顔を覗かせる。そこには、金色の花とスノードロップの花畑の真ん中で、身体中に真っ白なクリームを纏いながら笑うフリスクとサンズがいた。その珍妙な光景に一瞬止まった思考が再度動き出してすぐ、パピルスは声を荒げる。
「やらないよ! 汚れちゃうでしょ!」
「服は洗濯すればいいんだよ、ほらパピルス!」
「わぁっ!」
飛んできたパイ。やらない、と言ったにもかかわらず飛んできたそれを、パピルスは避けることができなかった。ベチャ、と音がして目の前が真っ白になる。口内に広がる甘い味と、ねっとりとした感触。
「もう! やらないって言ったのに!」
「はは、いい格好だぜパピルス」
「やり返してこないなら、もっと投げちゃうよ?」
「……手加減しないぞッ!」
「わぷっ」
パピルスは二人の足元にあるパイを拾い上げ、勢いよく投げつけた。それはまっすぐにフリスクの顔へと飛んでいき、粘度のある水音がする。ぐらりと後ろに傾いた彼は、その場に尻餅をついてしまった。
「次は兄ちゃんだよッ!」
「お、やるか? パピルス」
「えいッ!」
「はは、狙いが甘いぜ」
拾っては投げ。拾っては投げ。けれどパピルスの手を離れたパイは途中で速度を落とし、空中で止まってしまう。そして、何事もなかったかのようにゆっくりと地面に着地するパイ。
「って兄ちゃん! 重力操作してるでしょッ!」
「これも戦略ってやつさ」
「ズルはだめだよ!」
「ズルじゃないさ……うおっ!」
「へへ、油断したねサンズ」
飛び交うパイ。響く三人分の笑い声。十数年ぶりに感じた「楽しさ」に、パピルスは涙が出そうになった。
今、すっごく幸福だ。王様になってからフリスクは忙しそうだし、兄ちゃんもスノーフルを出ていっちゃった。モンスターの数も減っちゃって、寂しいなって思ってたけど。
オレさまは、地上に出なくたっていい。こんな日が、ずっと続いてくれるなら。
こんな日が、ずっと続いて、くれる、な、ら。
視界が、ごろんと横に一回転した。さっきまで、見下ろすほど小さかったニンゲンが、オレさまを見下ろしてる。あれ、今オレさま、兄ちゃんやフリスクと、パイを投げて遊んでた、はず、なのに、な。
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