@lxh_bochi
ふっと、無限の意識は浮上した。完全な覚醒ではなく、まだ夢に片足を突っ込んでふらつくみたいな、つまりまだ半分眠っている心地だった。
しばらくうつらうつらと天井を向いて目を開けたり閉じたりを繰り返し、懐があたたかいのを不思議に思ってのったり視線を動かす。薄がけの綿毛布が、無限の胸のあたりで膨らんでいる。熱源の正体を思い出した無限は首を動かすと、彼の頭に頬を当てた。無限の胸に乗り上げて、肩を枕に眠る風息は体温が高くてあたたかい。布団の下で無限の腰に手を回しているらしく、どこかしこもぽかぽかしていた。
頬を柔らかな猫っ毛にくすぐられながら、無限は意識を巡らせる。今日は休みで、慌てて起き出す必要はない。風息の予定は、起きてから聞けばいいだろう。きっとひどく疲れているから、今は穏やかに寝かせてやることにする。起きたら、洗濯しなければいけないものがいくつもある。はたして今日は晴れの日だろうか、と天気予報を思い出そうとするが、ぼやけた頭ではうまく浮かんでこなかった。寝室には遮光のカーテンをかけているから光もほとんど入らず、外がどんな様子かも見てとれない。雨音がしないかと外の音に耳をすませてみても、風息の頭に近いからか呼吸と、血液のめぐるゴウという音しか感じ取れない。
まあ、どんな天気でもいいか。無限はあきらめて風息を抱き込んだ。くうくうと気持ちよさそうな寝息に、また深い眠りに誘われる。
晴れだったら風息の服もシーツも干せるけれど、曇りだったら近くのランドリーに行ってもいい。風息には無限の服を着せて連れて行ってやればいいだろう。雨だったら、もうなにもせず、あたたかいものでも飲みながら風息と話してもいい。風息の幼馴染のことや、無限の仕事風景のことや、これからのことについて。
面倒なこともあるだろう。風息は一度家に帰らなくてはならない。進学のことだってまだ決まったわけではない。色んなものをみて知った結果、あの町で生き続けることを選んだっていい。もちろん出ることだって。どちらにせよ、快いことだけでは済まないことは確かだ。
それでも、たぶん、なんとかなる。天気が晴れでも雨でも曇りでも、また嵐が来たとしても、風息は自分で逃げることも立ち向かうことも選べるだろう。その横には無限がいることもできる。風息がまた自分で立てるまで手を繋いでやってもいいし、二人で溺れて苦しんでもがいたっていい。
春の嵐のなかで風息は泣き叫んで、もがき続けて、やっと無限という名前のついた晴れ間に出会った。無限も同じだ。これから生きていくのだったら、どうしようもない面倒事や苦しみは避けられないだろう。それでも二人で同じ小舟にのって、沈んだり晴れ間を見つけたりしながらやっていけばいい。それしかないのだ。
また、無限の意識がとろとろ沈んでゆく。ベッドの小舟でシーツにくるまった二人は、カーテンの隙間から差す一筋の朝陽さえ知らないまま、微睡みの中で寄り添っていた。