カルみと
付き合ってます(事後) あまあまSS
@popo_trpg_ss
「俺さぁ、」
ふと、まだシーツを纏っただけの恋人がそう呟いた。ベッドの縁に腰掛けて、彼用に作ったついでのココアを傾けながら縞斑はそちらへ視線を向ける。
「うん?」
「甘やかされるのが好き。」
受け取ったココアに息を吹いて冷ましていた神無は、そう言って漸く飲める温さになったそれを一口啜る。
紅い花の咲き乱れた白い喉がゆっくりと動き、ココアを嚥下すると彼は顔を上げた。
「らしい。」
「らしいって、また曖昧な。」
「いや…なんかよく分かんないけど、俺ってそうなんだなって今思った。」
言い出した癖にそう曖昧に言う神無の様子に、縞斑は苦笑いを浮かべながら暖房の設定気温を一度上げる。
剥き出しになっていた神無の細い肩に羽織っていた服を掛けると、彼は再びベッドに腰を下ろした。
「ココア、苦かった?」
「……うん、にがい。」
「ごめんね。やっぱ慣れないことはするものじゃないな。」
いつもよりもちびちびとココアを啜る彼の様子に、縞斑はそう謝る。
先に目を覚ました縞斑は、思い立って神無の作るココアの再現を試みたのだが、全くの別物が完成してしまったのだ。
何が違うのだろうかと考えながら、縞斑は手の中のそれを啜る。いつも神無が振る舞うココアは、甘くて優しくふわふわした舌触りだった。
「これはこれでそういうココアなんだと思えば平気なんだけどさ……だらだら先輩牛乳入れなかっただろ。」
「え、要るの?」
「要るっていうか、俺のココアミルクベースだからそりゃ主要だよ。」
神無の作るココアとの決定的な違いに、縞斑は納得しながらカップを傾ける。
言いながらも飲むことを止める様子はないらしい神無は、小さく舌を出して首を傾げた。
「苦い…というより、粉っぽい?どうやって作ったの?」
「水にココア溶かしてチンした。」
「うわ、ココアへの冒涜。」
「ごめんごめん。それで?甘やかしがなんだって?」
自分の分が悪いと判断した縞斑は、早々に話題を切り替える。上手く誤魔化されてしまったなと考えながら、神無は先ほどの話の続きに戻った。
「だからぁ、俺甘やかされるのが好きだなぁって。」
「昨日の夜みたいな?」
「あーやだやだ、これだからデリカシーなさ男は。」
「ははは、ごめんって。」
じとりと自分を見つめる瞳に縞斑は弱い。大人しく謝ると、神無は若干頬を赤らめながらココアに口を戻す。
そんな彼の姿を見ていた縞斑は、唐突に腰を上げてキッチンへ向かった。どうかしたのかと神無が黙って待っていれば、彼は砂糖の入れ物を手に寝室へ戻ってくる。
「どしたの。」
「甘やかしてみようかなって、さ。」
言いながら縞斑は、スプーンで砂糖を山盛りに掬い神無の手の中のカップへと落とした。
あっという間に溶けて消えたそれを機嫌よくかき混ぜる様子に、神無は思わず口を開けて呆れる。
「なにしてんだよ。」
「まぁ飲んでみなって。」
急かす縞斑に、神無は仕方なくカップへと口を付けた。粉っぽく苦かったココアは、砂糖の甘さで無理やり苦味をごまかした、更に美味とは遠ざかる味に仕上がっている。
「あっっまい。」
「甘やかし。」
「そうじゃないって。」
上手いことを言いましたと言わんばかりに胸を張る縞斑に、神無は苦笑を漏らし首を横に振った。
神無の手からカップを取り上げた縞斑は、自分のそれと共にサイドテーブルに置くと神無の髪を撫でる。
「それで?甘やかされることが好きな神無ちゃんは、俺になにしてほしいのかな?」
「…それ言わせる?」
「聞きたいのが男ってもんよ。」
「察してほしいのが女ってもんだよ。」
「女ではないでしょ君。」
くだらない言葉の応酬は、付き合う前から何も変わらない。その空気と触れる手のひらが心地良く、神無は目を閉じた。
同時に彼の体はぐるりと反転する。ベッドに押し倒された神無は、してやったりという表情で縞斑の顔を見上げ笑った。
「朝からすんの?」
「誘った君が悪い。」
「乗った時点で同罪でーす。」
行為の前とは思えない空気だ。だけれど、それでいい。それがいい。甘ったるい空気など彼ら二人には似合わないのかもしれない。
額を重ねて話をしていた二人は、どちらともなく唇を重ねる。
「あっま。」
「にっが。」
同時に漏れた互いのその声に、二人は思わず声を上げて笑ってしまった。
終