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手のかかる竜子公

全体公開 ドラヒナ以外のお話 1 15 4482文字
2022-11-30 07:32:25

 順序が逆になってますが、ドラウスさんの誕生日にウスミラ馴れ初めのお話です。苦労人のノースディンの視点。しれっと成立済みのドラヒナとつき合いたてでオロオロしてるロナサン描写が入ってます。
 例の如く、捏造だらけです。とりあえず、ドラルクさんが生まれる100年ぐらい前の日本の長崎が舞台。この頃、赤穂浪士の討ち入りとか富士山の噴火があったそうです。話のテーマ決まってから、こういうのを調べるのが一番楽しいです。
2022/11/20に上げました。

Posted by @kw42431393

 「どうしよう。ドラ公、ヒナイチ、俺何にも用意してねえ。」
 「君も懲りないね。」
 「気にしないだろうから、大丈夫だと思うが。」 
 「ヌー。」
 別に事件が起きた訳でもなく、珍しく変態も出なかった平和な夜だったので、ホッとした瞬間ロナルドは大事な事を思い出した。
 「明日、サンズさんとデートなんだけど、全然計画立ててなくってさ。」
 「デートだからって毎回なんで気負うのかね。普通に食事して、遊園地か映画でも見てくればいいだろう。」
 「そのパターン、前回してるからさ。アドリブ利かない奴って軽蔑されるんじゃないかって不安になんだよ。」
 「利かないのはいつもの事だろう。サンズニャンに限って、それはないな。」
 そんな不毛な会話を窓の外で聞いていた男がいた。
 「久しぶりに弟子をからかいに来たんだが、入りづらくなったな。」
 ドラルクの師匠のノースディンである。相変わらず、誰が見ている訳でもないのだが格好をつけて、足を組んだ姿勢で念動力で浮いている。
 「ウェーン、やっぱ自信ねえよ。ドラルク、ジョン、ヒナイチ、皆ついてきてくれよう!」
 「初めてのおつかいじゃないんだぞ。自信を持ち給え。」
 「ヌヌヌイ。」
 「この前もそう言うから、ついて行ったらラーメンヘッドの店で、二人でマジニンラーメン食べてたな。」
 
 弟子よ、吸血鬼としては何も目覚めなかったお前だが、そこだけは指導できてよかったと思う。
 ただ、そこの苦労は師匠の私に似たと思うと心中複雑いや、かなり同情するぞ。



 ドラウスが、奥方となるミラさんと出会ったのはドラルクが生まれる100年程前だっただろうか。当時の日本は、吸血鬼が人間にほとんど知られておらず、キリスト教が禁止されていた事もあって、ヨーロッパの様な迫害はあまりなかった。
 丁度、徳川幕府の5代将軍の頃で富士山噴火や元禄地震などの天災が続いた時期だった。世界中を股にかけて遊び回っいや、商売をしてらしたご真祖様は、当時の日本の同胞達の慰問に来訪されたのだ。
 鎖国していたはずの日本で何故我々が自由に入国していたか、だと?そこはご真祖様のお力によるものだ。
 雑な導入だが、かのお方の主宰で、長崎で日本の同胞達との会合が開かれた。正直、私からすれば当時の日本は遅れた文化圏であまり魅力的ではなかったが、ドラウスと言語以外にも箸の使い方から立ち振舞い、その国の礼儀作法を特訓してから挑んだ。
 そこで当時のミラさんと出会ったのだ。漆黒の髪を結い上げ、華やかな振り袖に身を包んだ姿は、異彩を放って美しかった。少し眠そうな瞳と無表情な所は、日本人形の様で愛らしかったと記憶している。
 ところで、ドラウスは息子のドラルクとは違い、幼い頃より努力家だった。強大な竜の血族の時期当主として、周りの期待に応えようとしてあのお方は特にそういう事は気になさらなかったのだがそのプレッシャーによるのかは知らないがドラウスは弟子と違って、素晴らしい実力を持ちながら、自信の弱い男だった。
 「あ、あの今晩の月はそのみ、ミラさんに似て、綺麗っていうか、その。」
 「フフフ。何を言いたいんだ、ドラウス?」
 「エーン、そんな目で見ないでー。気の利いた台詞の一つも言えない私はゴミ虫です。片方だけ穴の空いた靴下。」 
 なんとか、後ろで私が手助けしてこぎづけたデートがこんな感じだ。あまつさえ、彼女の能力で狼に変身させられ、ナデナデされてはしゃいでいる今と変わらないだと?うむ、変わってないのだ、あの夫婦は。
 会合で出会ったミラさんに一目惚れしたドラウスは、ご真相祖さま同様、そこは一途だった。寝ても覚めても彼女の事ばかり言う。紆余曲折あって、彼らがおつきあいする所までこぎづけた。経緯が知りたいだと?
 聞かないでくれ、思い出すだけで疲れがどっと出る。確かに言える事は、無表情で分からなかったが、ミラさんもドラウスを憎からず想っていた事だ。
 言っておくが、私が術を使った訳ではない。ミラさんの能力吸血鬼の能力に干渉する能力は諸君も知っているだろう。あれには、私も痛い目にいや、ゴホン。とにかく、つきあいだしてからも大変だったのだ。
 棺桶から出て一番「口もきいてくれなくなったら、どうしよう」と泣き出すわ、「心細いからついてきてくれ」だの、テレパシーで中継しておいて『無言だぞ、何か話題を出せ!』『そこで押せ!』とアドバイスを送ってもキャパオーバーを起こして「ウェーン、やっぱり無理ぃ。助けて、親友。」と一人で騒いだりする。しかし、その様子を見ているミラさんの顔は日本人形の様な無表情な顔に仄かに笑顔が浮かんでいる事に、私は気づいていた。


 そして、とうとう我々がこの国を離れる時が近づいた。いくらご真祖さまの力が強大とはいえ、簡単に遠距離恋愛が可能な時代ではない。そもそも、頻繁に入国できる訳ではないのだ。だから、ここで彼女にイエスと了解を得て、落ち着いてから迎えに来れる状況を作っておく必要があったのだ。
 「今夜がラストチャンスだ。抜かるなよ、ドラウス。」
 「だ、大丈夫だ。ドンドンドラウス、努力の子。できる、できる。」
 「やめろ、それ言ってうまくいった試しがあまりないだろ。」
 やがて、待ち合わせ場所にミラさんが姿を現したので、私はその場を離れた。いつも通り、テレパシーで中継できる様にだけしておく。
 二人して連れだって歩いているが、元々ミラさんはクールな上に、緊張しているドラウスは引きつった顔をしてほとんど喋らない。イライラするが、この先でプロポーズという大イベントがあるのだ。茶々をいれてまた、騒がせるよりその方がよいかもしれない。
 現在ほど人間の灯す火が多い訳ではないが、唯一海外との窓が開けていた長崎の華やかな街が一望できる丘。美しい満月。下見をしておいたこの場所の雰囲気は、悪くないはずだ。さぁ、行け!
 「なぁ、ドラウス
 「み、ミラしゃん!これを受け取って下さい!」
 ドラウスの緊張した声と共に、念動力で浮かせた大量のヒマワリが周りに降り注いだ。
 999本の意味は「何度生まれ変わっても貴方を愛しています」。
 吸血鬼といえば薔薇だと思うが、あいつはヒマワリこそミラさんに相応しいと言って聞かなかった。「あなただけを見つめる」「崇拝」「情熱」の意味は、確かにあいつがミラさんに向ける感情にピッタリだろう。
 無表情なミラさんが、惚けた顔で空中を舞うヒマワリを見上げている。ヒマワリを手の平に受けた時、子供の様な笑顔になっていたのが印象的だった。数を反射的に数える吸血鬼のサガとして、本数にも気づいているかもしれない。苦労して集めた甲斐があったな。
 『今がチャンスだ。言え!ドラウス!』
 「ミラさん、可愛い尊い。」
 『おい!何言ってるんだ!?この期に及んで、このアホウス!』
 「ハッ。エーン、あまりにも可愛くて我を忘れてたんだー!やっぱり、私はタンスの奥に忘れられた冬服。」
 「ドラウス。」
 「ふ、ふぁい!ミラしゃん!」
 驚いて気をつけをしているドラウスに、頬を染めたミラさんが笑う。これは、まだワンチャンあるのではないか?
 「ドラウス。君は、明日この日本を去ってしまう。」
 「う、うん。」
 「今度いつ会えるか、分からないな。」
 「そんな事言わないでよ、あぁ、やっぱり私は
 「なぁ、今度もう一度来る時は、この出島から私の屋敷に直行してきてくれるか?」
 「え?そ、それって?」
 「君の国では、好きな相手に棺桶の場所を教えるらしいな。私もそうしようと思う。」
 「えっ?えっ?ほ、本当に?」
 混乱しているドラウスに、ミラさんが手で弄んでいたヒマワリを一輪、彼の胸元に差した。
 一輪の意味は「一目惚れ」。つまり、彼女も
 「だから、私を君の祖国に連れ帰ったら、棺桶に私を案内してくれだめか?」
 「ウワーン!ミラさん、素敵。好きぃ!」
 やれやれ、予定とはかなり違ったが上手くいった様だ。ふぅ、とため息をついていると、背後からポンッと手を置かれた。
 「ん?ご、ご真祖さま!?」
 「グッジョブ、ノースディン。いつも、ドラウスがすまないね。お疲れ。」
 振り返ると、ピースをしていたご真祖さまがおられた。初めから、ご存知だったという事か。

 年月が流れ、二人の間にはドラルクが生まれた。私は、甘やかされた親友の息子の将来を案じて、彼の師匠となり、今に至るのは皆も知っているところだろう。


 「よし。じゃあ、自信を持って、明日行ってくるぜ。」
 「ヌンヌッヌイ。」
 「また、あのスーツで行くんじゃないぞ。」
 「あぁ、マナー講師の時に買ったスーツか。あれは、私でもどうかと思う。」
 「嘘、あれ格好いいだろ?」
 「あと、花束でも持って行ったらどうだね?」
 「花はよく分かんねえから、ロナルドイケメングッズをロナルドイケメンラッピングで贈るのどうかな?」
 「は?半田くんに送ろうとして、やめたあれをかね?バカなの?」
 「だって、サンズさんなら喜んでくれると思って。」
 「あぁ、確かにサンズニャンなら喜ぶだろうが。」
 そう、当時もこんな馬鹿げた会話をしていたな身を摘ままされる思いでノースディンはロナルド事務所を後にした。
 自分の居城に入ると、ナァーンと可愛がっている猫が体を擦り寄せてきた。そっと抱き上げて、自室に入る紅茶でも淹れようかと思っていると、スマホの着信音が鳴った。
 『もしもし、ノースディン?』
 「ドラウスか、どうした?また、何か聞きたい事でもあるのか?」
 『ほら、明日私の誕生日だろう?なんと、今年はミラさんが休み取れたから、一緒に過ごそうって!』
 電話の向こうで、もう分かるぐらいはしゃいだ声がしている。所謂、彼女はキャリアウーマンで、何百年も滅多に会えない日々を過ごしている。尚更、嬉しいだろう。
 「それは良かったな。ゆっくりしてこい。」
 『で、この前夢の国に行った経験を生かして、ミラさんと行こうと思うんだけど、そのなんとかパスだっけ?』
 「あぁ。お前、必要ないと言って、あの時酷い目にあっただろ。今回は、入れておけよ。」
 『それそれ。それの買い方と使い方を教えて欲しいんだけど。おーい、ノース?』
 
 「ニャン?」 
 こめかみを押さえて耐えている飼い主を愛猫が不審げに覗き込んでいた。

 何百年経とうが、お前は変わらないな。もう、嫌な予感しかしないのだが。
 いや、それに毎回つき合う私も私かドラルク、やっぱりそこは私が教え込んでいてよかった。
 ドラウスに似たら、その赤毛のお嬢さんを手に入れるのは、私が手伝ってやる事になるか、もっと苦労したと思うからな。
 


 
 
 

 
 
 
 


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