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『恋と愛の境界』

全体公開 了遊 1 4 1155文字
2022-12-10 13:21:31

了遊(付き合ってる)。タイトルについての会話。ちょっと手直し。
#10連CP本タイトルで出たタイトルより。

Posted by @d9_bond

 なんてことはないネット記事の見出しだった。
 『恋と愛の境界は?』というそれは、様々な年齢層の男女のアンケートをまとめたコラムで、大した内容のない、移動中の暇つぶしなんかで読むようなものだ。
 だからこの見出しの問いが二人の間で交わされたのも、ただの睦み合いの一環にすぎなかったのだが。
「ある」
「ない」
 二人は同時に正反対の答えを出し、ベッドの上でしばし見つめあった。
……まあ、お前と意見を違えるのはいつものことだったな」
 淡白な了見のコメントに、遊作が眉を寄せる。
「ちゃんと調べてみろ。違う」
「恋は、愛という広義の一部に過ぎない」
……
 機嫌を損ねたらしく、遊作は半眼になるとくるりと背を向けた。
「遊作」
 呼べば、不服を隠さずちらりと肩越しに目線をくれると、また背を向ける。
「俺にとっておまえは、ほかの誰とも違う唯一なのに」
 遊作としては、恋という形の了見への想いは、互いに心を通じあわせた今も消えずにずっとある。身を寄せ合う時に感じる愛情とはまた違うものという認識だ。
 ふとした拍子に惚れ直すような、何度でも恋をするような感覚は遊作の中でとても大切なものだけに、一方的にというのは少々面白くないのだ。ただでさえ、日々自分ばかり好きになっていっているような気がしているというのに。
「捕え方の相違だな」
 了見は遊作を後ろからつかまえて、腕の中へ引き寄せた。まだ少年らしい薄さを残した体は簡単に腕に納まる。するりと手を絡め、耳元に顔を埋めて触れるだけのキスをする。
「そういうので誤魔化されないからな」
「誤魔化すとは心外だ」
 小さく笑うと、更に機嫌を損ねたらしく遊作は口の端を下げた。そんな表情だって可愛らしい──可愛らしく、愛しく思うばかりだ。
 こんな風に素直にすねたり甘えてみせてくれるのも、本人の言う唯一の存在ゆえの特権だと思うと、了見の内に愛しさと同時に優越感に似た昂揚が沸き起こる。いや、実際優越感なのかもしれない。懐かない猫に似た、この至宝の存在がこの身の愛を求め、甘くねだるその様を世界中の誰も知らない。
「私の内で愛につながる感情は全てお前につながっている。親愛も敬愛も友愛も情愛も信愛も──もちろん恋慕もだ」
 遊作は了見の腕の中でそろりと反転し、向き直る。
……だから?」
「つまり、私の中でお前は他の誰よりも多くの愛を向ける唯一であるがゆえに、恋情もこの愛の一部に過ぎないというわけだ」
 告げれば翡翠の瞳が瞬く。
「──そういうのは、ずるいと思う」
「ずるいも何も最初から私の主張は変わっていないが」
「いいや、おまえらしいずるい言い方だ」
 言葉と裏腹にあっさり機嫌を直した遊作は相好を崩して了見に抱き着くと、その胸に顔を埋めたのだった。


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