2022.12.11開催ラザ唯△ウェブオンリー『LAYJAM』展示
ネオンフィッシュのお仕事がらみでVR脱出ゲームのテストプレイに参加する3人のお話
※ページ順はバラバラなので選択肢に沿ってお進みください(ゲームブック風味)
第2ステージの謎解きを追加した完全版+書き下ろしを足して2024夏発行予定です。がんばる。
@samipan_now
1.
「脱出ゲームぅ?!」
仁科さんに呼ばれて、休日の予定を聞かれて、内容も聞かずに二つ返事で了承したあと。思ってもみない行き先を告げられて声が裏返ってしまった。
「そんなに驚くとは思わなかったなあ」
何でもネオンフィッシュのお仕事の関係らしい。
とあるイベント用VR脱出ゲームのテーマ曲とBGM等の依頼が来ていて、クライアントから折角だからテストプレイにも参加してくれないかとお願いされたのだと。
ゲームの構成上、三人組じゃないと参加できないということで私にお声がかかったらしいんだけど。脱出ゲームなんて初めてだし、何だか難しそう。刑部さんとか桐ケ谷さんとかの方が絶対向いてるのに。
「脱出って言ってもVRだから、実際に閉じ込められたり体力使うわけじゃないから大丈夫だよ。それに男三人でなんて不毛でしょ。だから悪いけど付き合ってよ、朝日奈さん」
「でも私みたいな部外者が行ってもいいんですか?」
「それは大丈夫だよ。体験できるのは一部だけらしいし、君の音も使ったって笹塚が言ってたからある意味部外者でもない」
またですか、と思わず口が滑ってしまった。
笹塚さんは私のことフリー素材か何かだとでも思ってるんだろうか。まあどのみち仁科さんに文句言っても仕方ない。せめて変な音が使われていないことを祈るしかない。
「どうかな? 拘束時間は一時間くらいらしいから、終わったらお礼に美味しいケーキご馳走する予定なんだけど」
「行きます!」
気付けば考えるより先に口が返事していた。あまりの勢いに仁科さんに爆笑されてしまって恥ずかしかったけど、ケーキの誘惑の前にはしょうがないと思う。
その日、仁科さんは他の打ち合わせも入っているため、現地の最寄り駅で待ち合わせすることになった。
都内だし初めて行く所だからと早めに出たら、乗り換えがスムーズで予定より早く着いてしまった。約束の時間まではまだ三〇分近くある。駅前をぶらぶらして時間をつぶそうかな。
15≫▷東口に向かう
11≫▷西口に向かう
2.
一歩進むとすぐに曲がり角が現れた。
分かれ道はなく左左右と進むと、前方に袋小路が見える。
右側には道が続いており、すぐそこでまた分岐しているようだった。
9≫▷袋小路を確認する
19≫▷右に行く
3.
道なりにしばらく進んでいくと、曲がり角が現れた。
右に曲がってみると、奥は袋小路になっているようだ。
用心深く目を凝らすと、何かがきらりと光った。
「ここ、何かあるね。折角だし触ってみようか」
仁科さんがマジックハンドを伸ばすと、目の前にQRコードが表示された。笹塚さんがタブレットで読み取ると、水色のカギの絵が現れた。

「番号が書いてある。……247、登録っと」
「迷路の中に番号の振られたカギだなんて、何だかダンジョンぽいね」
初めて見つけた手掛かりに俄然ワクワクしてきた。さあどんどん行きましょう!
14≫▷分岐まで戻って次へ
4.
案内のスタッフさんが、道すがら簡単なルール説明をしてくれた。
準備時間は十分、それが過ぎるとカウントダウンが始まり、六十分以内に脱出できればクリアとなる。部屋の中は一応安全に配慮した作りになっているが、立ち上がったり動き回ったりしないように。部屋にあるものは何でも使ってOK、などなど。
案内されたのは廊下のつきあたり、六畳程の殺風景な白い部屋だった。座り心地の良さそうな大きなソファが部屋の中央にある。壁際のテーブルの上にはヘッドギアが三台あり、それぞれの横にタブレット、レバーのついた箱、マジックハンドが置かれてあった。
参加条件にあった『三人組じゃないと参加できない』というのは、三人それぞれに別の役割が必要という理由なのだそうだ。
スタッフさんが扉を閉めたのが、準備時間の十分開始の合図となった。
笹塚さんと仁科さんは、早速テーブル上のものを手に取って、用途や仕様の確認を始めた。
「タブレットはたぶん謎解き用だろうな」
「そうだな。そしたらそれ、笹塚頼めるか」
「ん、わかった。なあそれマジックハンドだろ、何に使うんだ?」
「使い道はわからないけど、少なくともゲームに関係ないものは置かないんじゃない?」
「どうだか」
見てても仕方ないので私も触ってみることにした。VRも脱出ゲームも初めてなので何がどうなるのか色々想像するだけで楽しい。
「このレバーのは何ですか?」
「ジョイスティックコントローラーだな。部屋の入口に迷路の絵が貼ってあったから、たぶんこれを操作して進めろってことだろ。バーチャルなのに随分レトロなコントローラー使うんだな。社長の趣味か?」
ちょっと待って、いま何かすごく重要なこと言ってませんでしたか。部屋の入り口に貼ってあった……何?
「あったね。俺の方からはちらっと見えただけだけど、笹塚は最短ルートも覚えてるんだろ」
「まあな」
「えっ、そんなのありました? 迷路って」
「じゃあ、とりあえずコントローラーは朝日奈さん、マジックハンドは俺でいいかな」
「えー待ってください。責任重大では?!」
「あんたは指示通りに動かすだけでいい。なあこれもう装着していいか。どんな感じか早く試したい」
「じゃあ朝日奈さんはこっち、真ん中座って。はいヘッドギア被せるよ、」
笹塚さんはヘッドギアとタブレットを抱えてどっかりとソファに腰を下ろした。仁科さんに促されて私も座ってみると、ソファは思った通りふかふかでしっとりと沈み込む感じが最高に心地いい。立っちゃダメと言われなくても離れたくなくなってしまう。
ヘッドギア越しに周りを見回してみると、ただ元の部屋がそのまま映し出されてるだけで特に映像が流れるとかではなかった。ふと手元に目を落とすと、何だろうこれ。
「……あっ!」
「ごめん、痛かった?」
「違います、コレこのじょい、す?」
「ジョイスティックコントローラー」
「そうそのコントローラーなんですけど、確か箱には何も書いてなかったのに、今見たら前後左右の標識が出てます」
「へえ、VRと連携させてあるのか。俺のところからは見えないな。仁科、そっちは?」
「うーん、俺の方は特に変わったところは無いかな」
「こっちも変化なしだ。各自何か気付いたことがあれば逐一報告して」
ちょうど三人がソファに落ち着いたところで、開始の合図がなる。と同時に目の前の映像が変わった。それまで映し出されていた明るく白い部屋とはうって変わって、天井が低く少し薄暗い通路のような場所に見える。
「思った通り迷路っぽいな。ふん、壁には触れない、っと。朝日奈、前に進んでみて」
「はい。えーっと」
前と表示された方向にグイッとレバーを傾けると、一歩二歩とゆっくり歩く位のスピードで両サイドの壁が後ろへ流れていく。壁に模様があるわけではなく、体感もないはずなのに進んでいるように感じるのが面白い。
しばらく進むと、正面に壁らしきものが迫ってきた。見回すと、道は左右に続いているようだ。
「ストップ。右に曲がって」
「はーい」
「そこは左。そう、もっかい左。次は右……」
笹塚さんの指示のままにコントローラーをカチャカチャと動かす。力加減にかかわらず進むスピードが一定なので、進むのも止まるのも曲がるのもタイミングさえ掴めればスムーズにできるようになった。
何回角を曲がっただろう。笹塚さんの的確な指示により袋小路に嵌ることもなく出口らしいドアが見えてきた。本当に一瞬見ただけのルート覚えてるのすごいな。
コントローラーを離すと、ドアにぶつかる寸前で進行は自動的に止まった。
「出口か」
「どうやって開けるの?」
「そういえば俺、全然出番なかったんだけど。マジックハンド使ってみようか」
仁科さんがマジックハンドを操作してドアノブ辺りを触ったり突いたりしているけど、特に変化があるようには見えない。
「……うーん、開きそうにないな。笹塚、どうかした?」
「俺も道案内だけで謎解きしてないなと思って」
「ほんとだ。でも、途中にそれっぽいの何にもなかったですよね」
「……ちょっと待って、思い出す」
進んできた通路の映像はどこか薄ぼんやりとしていて、細部までは、特に足元などはほとんど見えていなかったに等しい。何か見落としがあったとしてもおかしくはない。
「確かこの手の迷路はよっぽど出来が悪いのでなければすべての壁は繋がっているはずだ。左右どちらかの壁に沿って進めば、いつかは出口に辿り着くように作られている。……とすれば、そうか。朝日奈、戻るぞ」
7≫▷来た道を戻る
10≫▷もう少し周りを探す
5.
一歩進むとすぐに曲がり角が現れた。
分かれ道はなく左右右と進むと、奥の方は暗くて見えない。
道なりにしばらく進んでいくと、白いドアがあらわれた。
ドアには何やら文字が書いてある。
『鍵を持っているなら鍵穴へどうぞ』
▷金色のカギを差し込む
▷水色のカギを差し込む
▷紫色のカギを差し込む
7≫▷鍵を持っていないので迷路の最初に戻る
※リンク先で鍵の番号を入力してください
6.
「こっちは行き止まり、か。何かありそう?」
ぐるりと見回してみても特に何もなさそうだ。
仁科さんが念のためマジックハンドで壁やら天井にペタペタと触れてみるも何も起こらなかった。
「それじゃあさっきの道に戻りますね」
12≫▷戻る
7.
「えっ、ここ出口じゃないんですか?」
「多分フェイクだ」
笹塚さんの指示に従い、来た道を戻るべくレバーを右に二回倒して方向転換をする。ただ逆のルートを通っても同じだと思うんだけど、どうするんだろう。
「通ってないルートに何かあるとすれば、袋小路だろ。壁を辿って順に潰していけばいい」
「なるほど。そうしたら今度は俺の出番もあるかな」
「それじゃ行くぞ。朝日奈、次の角を右だ」
言われた通り進むと、正面に壁らしきものが迫ってきた。見回すと、道は左右に続いているようだ。
6≫▷右に行く
12≫▷左に行く
9.
「うわっ、何だコレ落ちる……っ!」
突然大空に放り出されて思わずぎゅっと眼を閉じてしまったけど、そういえばVRなのだから実際に落ちるわけではない。そろそろと目を開けてみると、目の前にはふわふわと雲が広がり、その下には海と小島が見える。
「あーあ、遂にハズレ引いたな」
眼前に『GAMEOVER』の文字が現れた。

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10.
「えっ、ここ出口じゃないんですか?」
「多分フェイクだ」
「ねえ、ちょっと試してみたいことあるんだけど、いいかな」
仁科さんが正面のドアではなく側面にマジックハンドを押し当ててぐいと押すと、ぐりんと視界が回転した。
「きゃっ!」
「えっ朝日奈さん大丈夫? 目回った?」
「……い、いま何か足元に」
何かわからないけど柔らかいものがふくらはぎのあたりに一瞬触れて通り過ぎた感触があった。VRが視覚だけじゃなく触覚にも作用するなんて、そんなの聞いてない。
「ああそれ俺。床調べてたら何か触った」
「もう、びっくりしてコントローラー落としちゃったじゃないですかー!」
壊れたらどうしてくれるんですかもう。手探りでコントローラーを拾っていると、今度はわき腹のあたりをするっと撫でられる。
「ひやぁっ! ちょっと笹塚さん、変なとこ触らないで」
「俺は何もしてない」
「ふふっ、いまのは俺だよ。ねえ、もっとくっついてもいいかな」
仁科さんの言葉を受けて笹塚さんも座り直したらしく、二人との距離がぎゅっと縮まり両サイドが密着する形になった。ここへ案内された時と同じで何だかくすぐったい。
顔を上げたはずみでヘッドギアがぶつかり鈍い音を立てた。
「やだ、くすぐったいってば。……あれ? あそこ、なにか光ってます」
「ん?」
「どこ?」
「あ、消えた」
「……そもそも三人じゃなきゃダメっていうのがずっと引っかかってる。一つの仮説として、例えば三人分の視界が重なると見えなかったものが見えてくる、とか」
「ああ、ありそうだね。だから今になってやっと見えたってことかも。やっぱり朝日奈さんを誘って正解だったな」
「はいはい、男の人三人じゃなくて良かったですね。って、もう! こんな時にお触り禁止ですっ」
両側から伸びてきた手が肩や腰にさわさわと触れていく。体を捩るとまたヘッドギアが軽くぶつかり鈍い音を立てた。
「「あ」」
「物理スイッチか若しくは振動検知……仁科」
「ああ」
仁科さんが前方の光っている部分にマジックハンドで触れると、だんだん光が強くなり視界全体が眩しく光り始めた。
22≫▷次へ
11.
仁科さんと待ち合わせをしている西口の改札に向かうと、そこは人の海だった。改札口の内側も外側も見渡す限りの人、人、人。ぎゅうぎゅうに混み合って向こうの方まで床が見えない。それに、いくら都内だからって髪色がカラフルな人が多すぎないだろうか。何だか異様な雰囲気に思えてしまう。通路の方からもどんどん湧いてくる人に押されて、身動きができなくなってしまった。
人が多い所為か何だか電波状況も良くなくて、到着連絡のメッセージも未送信のままみたい。どうしようかと途方に暮れていると、不意にスマホが震えた。
『……ああ、やっと繋がった。朝日奈さん、大丈夫? いまどこ?』
「仁科さん~! 最寄り駅着いて改札までは降りてきたんですけど、すごく人が多くて」
『だよね。そのままちょっと待ってて、いまそっち行くから。無理に動いちゃだめだよ』
ぷつりと切れて暗くなったスマホの画面に、眉を下げた自分の顔が映っている。こんな顔でただ待ってるなんて私らしくないよね。仁科さんには動くなと言われたけど、少しだけ人の少なそうな方へ移動してみることにした。
ホームへ続く通路の方へ、前から来る人を避けながらじりじりと進み、曲がり角の手前にある自販機の所までようやくたどり着いた。自販機が出っ張っている分だけ人の流れが緩やかで、ほっと一息つくことが出来る。
周りの状況を確認しようと顔を上げたら、目の前に見覚えのあるペンダントが揺れていた。
「捕まえた」
腕を掴まれて、そのまま人の流れから守るように引き寄せられる。思わずギュッと抱きつくと、いつもの仁科さんのコロンの香りだ。思いきり深呼吸してみるとすごく落ち着く。
「ふふ、どうしたの。もしかして人酔いしちゃったかな」
少しだけ心細かったのと、無事に会えて安心して気が抜けてしまっただけなんだけど。人の多さに中てられたことにしておいても良いかもしれない。顔を上げないまま頷くと、ぽんぽんと頭を撫でられた。
「だから無理に動いちゃだめって言ったのに。もう少し休憩したら、少し遠回りになるけど東口から出るよ。いいね」
そっか、反対側にも出口があるんだった。仁科さんに手を引かれて東口へ向かった。
23≫▷次へ
15.
仁科さんと待ち合わせしているのは西口なので、先に東口の方を探検してみることにした。
改札口の外はロータリーになっており、タクシーがたくさん止まっている。ビジネス街だと聞いてはいたけどちょっと殺風景な感じだ。ぐるりと見渡してみると、信号の向こうにコンビニがある。ひとまず飲み物でも買おうとコンビニへ向かうことにした。
信号待ちをしていると、目の前を通り過ぎたばかりのタクシーが急ブレーキをかけたみたいな音がした。もしかして曲がるところ間違えたとかかな。こんな見通しのいい交差点で駅は目の前だというのに。
「……朝日奈?」
青になった信号を渡ろうとしたら、誰かに呼び止められて急に腕を掴まれた。聞き覚えのある声にびっくりして振り返ると、笹塚さんだった。いま止まったタクシーから降りてきたっぽいけど、どうしてこんなところに居るんだろう。確か仁科さんとは別件の仕事が入ってるって言ってたのに。
「あんた、こんなとこで何してんの」
思ってたのと同じことを言われて思わず吹き出してしまった。
「笹塚さんこそ、現地に直接向かうんじゃなかったんですか?」
「そのつもりだったけど、あんたが一人で突っ立ってるの見かけたから。仁科は? 一緒じゃないのか」
「待ち合わせの時間にはまだだいぶ早くて」
そういえば、駅に着いたときに仁科さんにマインしたのに、返信来てない気がする。確認するとメッセージは既読にもなっていなかった。まだ打ち合わせ終わってないのかな。
「いや、仁科からはもうすぐあんたと合流するって連絡あったけど」
笹塚さんは予定より早く終わったので、タクシーで現地へ向かう途中、私たちを拾おうと寄ってくれたらしい。意外と優しいところがあると思いきや、本人にしたらただ合理的なだけっていうのが笹塚さんのずるいところだと思う。
「そういや西口の近くでテレビかなんかの撮影やってた。結構な人だかりできてたから、向こうに居たらあんたのこと見つけられなかったかもな」
ということは仁科さんは西口の人ごみの中、私のことを探しているのかもしれない。待ち合わせ場所に戻って合流した方がいいよね。
「駄目だ。わざわざ人の多いところに戻るなんて無駄だし、あんたは俺と一緒に行けばいいだろ」
まあ戻りたくても笹塚さんが手を繋いだまま離してくれないので動けないんですけどね。
笹塚さんと一緒に行動するとしても、まずは仁科さんと連絡を取るのが先決だ。マインは一向に既読になる様子がないので、電話してみようかと思っていると、笹塚さんのスマホが着信を告げた。
「もしもし。ん、お前いまどこ? ああ、朝日奈なら目の前にいるけど。なんでって、たまたま見つけたから捕まえた。このまま現地向かうから、お前も遅れるなよ」
相手が仁科さんだとわかって、代わってくれるよう身振り手振りで主張したけど、笹塚さんは一方的に言いたい事だけ言って電話を切ってしまった。一応文句を言ってみるもあっさり無視され、それならと電話をかけようとした手も絡め取られ、私はそのままタクシーに連れ込まれた。
24≫▷次へ
17.
左へ曲がると道はすぐ先で行き止まりのようだった。
いままでと違う点とすれば、前方の壁に何やらもやもやした黒いものが見える。
……何だかいやな感じがする。
「ここ、何かあるね。折角だし触ってみようか」
「あ……やめろ仁科!」
笹塚さんの静止は間に合わず、視界は暗転した。

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18.
一歩進むとすぐに曲がり角が現れた。
分かれ道はなく左に2回曲がってみると、奥の方は暗くて見えない。
道なりにしばらく進んでいくと、また曲がり角が現れた。
誘い込まれるように曲がると、奥は袋小路になっているようだ。
用心深く目を凝らすと、何かがきらりと光った。
「ここ、何かあるね。触ってみるよ」
仁科さんがマジックハンドを伸ばすと、目の前にQRコードが表示された。
笹塚さんがタブレットで読み取ると、金色のカギの絵が現れた。

「へえ、金色だと宝箱っぽいな。番号は……1211」
確かにこれは期待が膨らむ色だ。当たりを引いたかもしれない。さあどんどん行きましょう!
2≫▷分岐まで戻って次へ
20.
一歩進むとすぐに曲がり角が現れた。
左に曲がってみるが奥の方は暗くて見えない。
道なりにしばらく進んでいくと、また曲がり角が現れた。
誘い込まれるように曲がると、奥は袋小路になっているようだ。
用心深く目を凝らすと、何かがきらりと光った。
「ここ、何かあるね。触るよ」
仁科さんがマジックハンドを伸ばすと、目の前にQRコードが表示された。
笹塚さんがタブレットで読み取ると、紫色のカギの絵が現れた。

「番号が書いてある。……331、何の数字だこれ?」
何に使うかはわからないけど、手掛かりを見つけるとテンションが上がる。さあどんどん行きましょう!
8≫▷分岐まで戻って次へ
21.
明るい方へ進んでいくと、黒いドアがあらわれた。
「ついに出口かな?」
「いや、ちょっと待って。……ここ、最初の入り口じゃないか?」
頭の中でルートを検証したらしい笹塚さんが思いがけない言葉を発した。
出口と思ったところから戻ってきたんだから、もちろん最後は入り口に到達するわけですよね。
「ここから出ても仕方ない、さっきの道戻って」
5≫▷戻る
22.
「あれっ、元の部屋に戻っちゃった」
「脱出……出来たのかな」
「いや、失敗だ。あれ見ろよ」
前方の壁に『GAMEOVER』の文字が映し出された.

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23.
目的地はこざっぱりした雑居ビルだった。エレベーターで五階へ上がると、手前のスペースでクライアントらしきダンディなおじさんと談笑している笹塚さんの姿が見えた。別件で仕事が入っていて現地集合だと聞いていたけど、予定より早く終わったみたいだ。
笹塚さんでも営業スマイルとかできるんだなあと感慨深く眺めていたら、鋭い視線が突き刺さった。わたしが失礼なことを考えてたのバレてしまったかな。
「ああ、仁科くん。忙しいとこ無理言ってごめんね」
にこやかな笑顔で仁科さんが挨拶すると、入れ替わるようにして笹塚さんがこっちに歩いてくる。何か言いたげにじっと見据えられるのに耐えられなくてつい目をそらすと、何故か優しい手つきで髪を撫でられる。
「なあ。あんたはこれで良かったのか」
「何のことですか?」
「今日、仁科とデートのつもりだったんじゃないの」
「ち、違いますよ。デートだなんて、そんなわけないし」
確かに、最初誘われたときはそうかなってちょっとだけ期待したけど。数合わせの三人目だってわかってちょっとだけ残念だったけど。ケーキに釣られて来たと思われてるだろうけど。
「でも来たとき手繋いでたろ。……こんなふうに」
いつの間にか右手を取られたかと思うとするりと指を絡めてくる。相変わらず距離感が掴めないひとだけど、先刻からいつもよりもさらに近いんじゃない。
「いえっ、あれはその、たまたまっていうか人が多くて、それで」
「ああ、わざわざ人の多い道を選んだんだろ。仁科のやりそうなことだ」
そうなのかな。でも駅前だからってあんな人混みなかなかないよね。狙って出来るものではない、と思いたい。
「でも……あの、こんな繋ぎ方はしてなかったと思うんですけど」
「そう? 俺はあんたと手繋ぐならこの方がいい」
いわゆる恋人つなぎをした手を見せびらかすように持ち上げて、親指の爪をなぞるように擦られる。ごつごつした大きな手の繊細な仕草に、不覚にもドキドキして何て答えたらいいか分からなくなってしまう。手を繋ぐだけで心地がいいなんてずるい。
「なあに。抜け駆けかよ笹塚」
「どっちが。受付は? もう済んだのか」
「ちゃんと三人分済ませてきたよ。それじゃあ行こうか、朝日奈さん」
クライアントへの挨拶と脱出ゲームの受付を終えて戻って来た仁科さんが、ごく自然な動きで腰に手を回してくる。
両側を頭ひとつ高いイケメン二人に挟まれ、頭の上でバチバチと花火を散らしそうな雰囲気すら感じる。こんなところで張り合わないで欲しいんですけど。
「もう、スタッフさんが困ってるでしょ。ほら行きますよ!」
4≫▷次へ

24.
目的地はこざっぱりした雑居ビルだった。エレベーターで五階へ上がると、クライアントらしきダンディなおじさんが出迎えてくれた。ずいぶん笹塚さんの表情が柔らかくて、今回のがすごく楽しい仕事なんだってよく分かる。
「それで、彼女が?」
「そうです、例の種明かしがこいつ」
こいつ呼ばわりで雑に紹介されたかと思えば、ぐいっと肩を抱き寄せられて、不覚にもドキドキしてしまった。だからこういうスキンシップを不意打ちでしかけてくるのがずるいんだってば。
頭の上で繰り広げられてるのは、無断で使ったっていう私の音のことに違いない。文句のひとつも言ってやりたかったのに、おじさんは始終ニコニコしてるしスタオケの演奏会にも来てくれた話を聞いてしまったらもう、何も言えず愛想笑いを浮かべるしかなかった。
「ああ、仁科くん。忙しいとこ無理言ってごめんね」
入り口を振り返ると、壁に手をついて営業スマイルを浮かべる仁科さんが立っていた。移動中に少しだけマインでやり取りできてたけど、ちゃんと顔を見られて良かった。
話が弾んでいる合間を狙って、笹塚さんの腕から何とか抜け出してひと息ついていると、紙コップを両手に持った仁科さんがそばへ寄って来た。
「向こうでカフェオレ貰って来たんだけど、どう?」
「いただきます!」
うれしい、甘くてあったかくてほっとする。仁科さんお疲れ気味の顔してるから甘いもの欲しくなったのかな。
「今日はごめんね」
「どうして仁科さんが謝るんですか?」
「だって、ちゃんと状況判断できてれば、連絡できてれば、合流できてれば、さ。ここへ来る間だけでもデート気分味わえたのになって。俺が勝手に期待してただけなのに、君に悲しそうな顔させちゃったから」
確かに連絡取れなくてちょっと心配したけど、そんな顔に出てたんだろうか。ていうか、気分じゃなくて普通に二人で出かけようって言ってくれれば即ちデートなのに。数合わせの三人目じゃなきゃそれでいいのに。そういう回りくどいところあるよね、仁科さんて。その点、笹塚さんはムードとか無いけど要望がどストレートなので反応が簡単でいい。
「結果的に、笹塚に君のこと独占させてしまったから。抜け駆けされたみたいで悔しくてさ」
「誰が抜け駆けだって?」
ぬうっと現れた笹塚さんが私の手からカフェオレを奪って飲み干してしまった。まだ半分以上残ってたのに!
「もうぬるくなってた。今度コーヒー旨い店連れてってやるから」
「スイーツもつけて」
「好きにすれば。…んで仁科、準備できたってさ」
テストプレイを体験する部屋まで、両側を頭ひとつ高いイケメン二人に挟まれて歩く羽目になってしまった。右手は笹塚さん、左手は仁科さん、囚われた宇宙人の気分。
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