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twinkle light

全体公開 1 46 2543文字
2022-12-15 01:49:05

2022/12/24-25 めぐゆじWEBオンリー「影と火花2」WEBアンソロジー参加作品です。
テーマ◇Joyeux Noël【 聖夜・Xmas 】
平和時空のつきあいたてフレッシュなめぐゆじクリスマスデート

Posted by @sa_kaico

 世界はキラキラと光っていた。

 寒くなってきたな、と思えば街はどこからともなく光りだす。特別観光地でもなく周辺住民が利用するだけというようなただの駅前も、十二月にもなれば街路樹は大抵電飾を巻かれ、雪の結晶やサンタを模ったイルミネーションが飾られたりする。
 かつて過ごした地元の駅でもそれなりに華やかで、ぼんやりと綺麗だなと思いながら歩いていたが、さすが東京規模と迫力が違う。どこへ行っても、商業施設はもちろん駅前や大通りも光っていないところを探すほうが難しい。場所ごとに趣向が凝らされ、白かったり青かったり黄色かったり雰囲気もそれぞれだ。
 共通項は人の多さで、幻想的な光の演出も視界を埋める人波に現実に戻されてしまう。どこへ行っても周りの他人が目に入らなくなるほどは浮き足立てない。
 それは隣を歩く男も同様なよう、というかむしろこちらは進んでも進んでも一向に抜けられない人混みにあからさまにゲンナリしていた。イルミネーションなんかたぶん視界に入っていない。
「どっから湧いてくんだこの人……
「まぁ、俺たちもその一員ですし」
「好き好んで来てねぇんだよ」
 機嫌が悪い。今日街中へ伏黒を引っ張り出したのは虎杖だ。釘崎から彼女が予約したケーキを取りに行く係に急に任命され、虎杖は寮で鉢合わせた伏黒を誘った。今日は授業も任務もなく、各々自由に過ごしていたのだ。
 伏黒としては、休みに虎杖と出かけられるならという軽い気持ちで誘いを受けたが、ひとつ完全に失念していた。
 本日、十二月二十四日、クリスマスイブである。
 恋人に誘われて出かけるところまでは良い。文句なしだ。が、目的と行き先が悪かった。
 釘崎がケーキを予約した店舗は二箇所。元々補助監督の新田と手分けして受け取りに行くはずが、新田に仕事が入った。予約しているふたつの店舗の場所が離れていて予約時間に間に合わないのと、ホールケーキの箱二つは無理、と釘崎が虎杖に連絡したのだ。
「予約もめちゃくちゃ苦労したんだから、間違いなく! 厳重に! 受け取りと運ぶの頼んだわよ」
 と、頼まれた割に凄まれた。尚、相伴には預かれるらしい。二週間ほど前にクリスマス会のお知らせ、と元担任からプリントを渡されていた。伏黒は相変わらずだな、みたいな顔で五条を見ていたので過去にもあったのだろう。
 釘崎から仰せつけられた店は六本木の商業施設内にあった。虎杖ひとりではまず踏み入れないところだ。ひと月ほど前に釘崎が読んでいた雑誌に、イルミネーションやイベント情報が載っていた覚えがある。
「釘崎こっち行かなくていいの?」
「クリスマスイブに一人で行きたくないもん。あ、せっかくだから伏黒誘って行けば?」
 さらりとつつかれた。
「デートらしいことしてないでしょ、アンタら」
 言われたから誘ったわけではない。偶然部屋の外で会わなければたぶん声は掛けなかった。虎杖にはこの人混みの想像がついたし、伏黒が過剰に人の多いところが苦手なのは知っている。
 誘ったら「行く」と返ってきてちょっと驚いたのだ。すぐに、今日の日付か何の日かに気づいてないんだろうな、と思ったけれど虎杖は指摘しなかった。
 別にクリスマスイブである必要はないけれど、せっかく光り輝くデートスポットに乗り込むのなら一緒に行きたい。欲求を優先させた結果、ちょっと読み違えた。
 クリスマスイブの人出を舐めていた。こんな都会のど真ん中の煌びやかな場所に縁がなかったのだから仕方ない。虎杖にはまだ賑やかだなと思うくらいの余裕はあるが、人間がたくさんいる状態がストレスの伏黒は見るからに消耗している。
「ごめん、ここまでとは想像してなかった」
「オマエのせいじゃねぇから謝んな。……時間帯も悪かったんだろ」
 受け取り予約時間は五時半で、今五時をまわったところだ。ついさっき、ちょうどイルミネーションの点灯時間だった。狙ったわけではもちろんなくて、わぁ、とあちこちで歓声が上がって気がついたくらいだ。
 ふたりとも周りからは頭ひとつ抜けているので並んで歩くと割と目立つ。けれど今日に限っては、ここにいる人間はみんな自分のことで忙しく、群衆の中で寄越される人目はほとんどない。
 あちこちで急に立ち止まってはスマホのカメラを構える人間が多発しているせいで、人を避けてはふたりぶつかりそうになったり離れたりを繰り返していた。何度目か、虎杖が立ち止まった女の子を避けて離れる。
 少し大回りして隣に戻った虎杖の腕を伏黒が掴んだ。虎杖は伏黒の顔を見る。
「迷子防止」
 ぼそりと告げられた言葉に虎杖が笑った。
「どっちの?」
……両方」
 人混みに紛れても互いに見失わない自信はあるけれど。
 虎杖は腕を掴んでいる伏黒の手を反対の手でそっと外して、掴まれていた方の手に重ねる。そのまま指の間に指を差し込んだ。立ち止まりそうになった伏黒の手を引いて、近づいた耳許に囁く。
「ケーキ受け取るまで限定な」
 どうせ誰も気にしない。現に今、虎杖は伏黒以外目に入っていない。ここにいる九割以上の人がそんな感じだろう。別に見られてもどう思われても構わない。せっかくふたりで出かけているのだ、苦行みたいに過ごすよりは状況を逆手に取って浮かれてしまえばいい。
 少しでも早くゴールへ近づきたくて人混みを足早にすり抜けていたが、歩くスピードが落ちる。
 触れ合う掌と指先がじわじわと熱くなってくる。勢いで繋いでしまって伏黒を置き去りにしたかな、と虎杖はそっと隣の顔を窺った。
 さっきまでよりずっと和らいだ視線とぶつかる。伏黒でもこんな顔するんだなと新鮮に驚いて、改めて、ああ好きだなと思った。
 視界を染める色が変わる。浮かれたせいかと思ったら、イルミネーションが端からゆっくりと打ち寄せる波のように色を変えていた。煌めく光は高い位置に据えられたひとつの星へと集約していく。
 思わず見惚れて足が止まった。繋いだ手がギュッと握り返される。一瞬騒めきが遠のいた。
 ひとりなら同じところに立っていたってきっと知らなかった。
 光が瞬く。
 暗闇を照らす。
 きらきらと輝く光の中にふたり立てる世界があった。


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