カルみと リクエストより
目の前で攻撃を庇う🎃君の話
シナリオネタバレあり
@popo_trpg_ss
滲む視界で、浅い呼吸を繋ぎながら痛む腹を押さえる。
出血は酷いが、幸い動脈を掠ってはいないようだ。そう内心分析して、安堵の息を吐こうとした時、そんな神無の顔に影が差した。
無表情を浮かべる縞斑は、神無の前に膝をつくと両手で彼の傷口の圧迫止血を始める。痛みに小さく唸る神無に向かって、縞斑は口を開いた。
「……なんで庇ったの。」
神無の今回の負傷は、縞斑に向けられた銃口の先に飛び出したからだった。
放たれた銃弾の数発は刀で弾くことに成功したが、そのうちの何発かは防ぎきれずに彼の体を掠めたのだ。
その後神無は倒れて一瞬意識を失っていたが、その間に縞斑が残りの敵を掃討したらしい。辺りに動く物の気配は見当たらなかった。
「なんで、俺を庇ったの。」
黙ったままの神無に焦れた縞斑が、再び問い掛ける。ゆるりと視線をそちらに向ければ、小さく唇を噛んで俯く縞斑の手は震えていた。
相棒とその妹を失ったあの日から、彼は置いていかれることに一種のトラウマを抱いている。
致命傷を免れたものの、神無の負傷は当たりどころ次第では死んでいたかもしれないものだった。
「……てきが、多かった、から」
「…………。」
「おれより…だらだらせんぱいが、無事でいたほうが……勝率が、高かった」
敵の数は多く、得物が一対一となる神無の日本刀では掃討に骨が折れた。一方縞斑のサブマシンガンならば、一度に多くの敵を相手にすることができる。
ならば、より多くの敵を倒すことができる縞斑の怪我を避けることこそ、神無が優先すべき行動だった。
神無の言葉に縞斑はぐっと唇を噛む。彼を傷つけたと分かっていながら、しかし神無はその行動に後悔などなかった。
「それに……おれが、見たくなかった、だけ」
「……え?」
「…あんたが、撃たれるとこ…みたくなかっただけだよ。」
好きだから。その一言だけを飲み込んで、僅かな傷の残る縞斑の頬に神無は手を伸ばす。
力無い彼の手のひらが辿り着くより早く、縞斑はその手を掴んで自らの頬へと寄せた。
「………今、神無ちゃんの庇われたくないって気持ちが嫌と言うほど分かったよ。」
「はは…おれは、でぃーのが…絶対庇いたい、きもちが……わかった。」
彼だってきっと、大切に思う自分に傷ついてほしくないから、その身を挺したのだ。
今なら、そんな彼の気持ちが神無にも分かる気がした。
「もう二度と、こんなことしないで。」
「……やくそく、できない。だってあんたも……同じ状況なら、動いてたろ。」
縞斑もきっと、自分のことが好きだから。
飲み込んだ言葉は、自惚れではなく確信だった。お互いの気持ちを知りながら、彼らは歩み寄れずにいる。
ぐっと息を呑む縞斑の様子に、いつもの嘘でもつけばいいのにと神無は小さく笑うと、片手で彼の服を引いた。
身を屈めた彼の体を抱き締めて、血に汚れることを申し訳なく思いながらも語り掛ける。
「…だから、つよくなろう。」
「……。」
「お互い……ゆずらないだろうから。」
守られなくてもいいほどに、きっとそうであっても、自分は彼が危険に晒されたら迷わず庇うだろうけれど。
視界が滲み、意識が遠のく。処置は間に合ったが、痛みが強制的な眠りへと神無を誘おうとしていた。
うとうとと瞼を閉じる神無の唇に、ふと柔らかい感触が触れた。それが一体何か、考えるより先に耳元で縞斑の声が囁く。
「絶対に死ぬなよ。」
あんたを置いて、死なないよ。
そう安心させてやりたいのに、体が重くて一言も発することができなかった。
「…ちゃんと、起きたら君が好きだって言うからさ。」
頭を撫でる優しい手のひらに促されて、神無は意識を手放す。
次に目を開けるときには、心の底から安堵した彼から、願ってもいない幸せな申し出をされることを知らずに。
終