ほかほかしてすやすやするハス探。ハピクリ。
@hirop573
パチパチと暖炉から火花が散る。
ロッジの窓から見える猛吹雪のなか、ノートンは保管されていた薪を焼べながらぼうと見ていた。
現状をいうと、ノートンは今遭難している。
正確には黄衣の王ハスターと。
試合会場で雪原が選ばれ、その際のメンバーとしてノートンは組み込まれていた。もちろん追う方はハスターだ。
しかし、ここでいつもとは違う自然災害が猛威を奮う。
しんしんと降っているはずだった雪は猛吹雪として参加者を襲い、追われていたノートンは方向を見失い一度気を失ってしまった。一瞬意識を覚醒させた際誰かに抱えられている気配を感じ、それがハスターだと分かるや否やまた意識を手放した。どうせ何とかなるだろうと信じていたからだ。
再び目を覚ませば今のロッジで暖炉には既に火が点いており、暖かい毛布が掛けられているのはかの王の気まぐれな優しさだろうか。照れ臭くなってノートンはかぶりを振った。
しばらくするとずるりと触手が生える音が聞こえ、王の帰還が予感される。音の先を見れば空間がねじ曲がり、こじ開けるようにハスターが帰ってくる様が見えた。それが出来るなら僕も一緒に行けないの?といつも思うが生憎と一人用らしい。
「どうだった」
『会場からかなり逸れている。案内人が言うにはしばらくすれば収まるとのことだ』
「他の皆は無事?」
『そうさな。一時見た限りでは数は合っていたはずだ』
「……そう」
とりあえずは生きていられるのだろう。分かっただけでも一安心だった。緊張から解放されたノートンは暖を求めるように身震いして盛大にくしゃみをする。目の前で見ていたハスターは乾いた笑いを零す。
「寒いんだもん」
『人の身には堪える寒さか。…こちらへ来い』
備品として用意されていた大きな椅子に座ったハスターはノートンを手招く。迷いなく近づくのは意図を察したからだ。それほどにノートンにとってはこの環境は限界だった。
『どうだ』
「暖かい。体温も調節出来るとか何さ。変温?」
『降ろしても構わんが』
「嘘うそごめんって。…ありがとう」
抱き上げられ懐に収まればほどよい暖かさとなりノートンの眠りを誘う。うとうとと舟を漕ぎ目蓋が重たくなると、それを促すようにハスターが背中を摩る。まるで子供をあやすようだ。
「やめて…子供じゃない…」
『偶には良い子とやらに扮してはどうだ。今宵は聖なる夜と聞く。贈り物をくれるやもしれぬぞ』
「…いいよ、別にいらない」
『ほう』
か細い声でノートンは呟く。
「あなたが…たくさんくれるから…困って…ない、し…」
『………。…フ、そうか。そうか』
目を閉じたノートンからはゆっくりとした寝息が繰り返されていた。
暖炉の火が爆ぜる音を聞きながらハスターは彼の髪を梳き弄る。この王にとって時間は無限であるが、暇つぶしをするというのも悪くないと思えてくるのだ。
彼が起きるのが先か、吹雪が止むのが先か。
それを知るのもハスターであり、暇つぶしに飽きるまでそれが止むことはないのである。