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雨がやめば

全体公開 ォョ関連 24 1542文字
2023-01-01 22:57:22

麒麟児たちの憂鬱 後日談
※読了後推奨※

Posted by @kurato0o

雨がやめば





ショウは広がる青空を見上げて深く息を吸い込んだ。ヒスイにも繋がる空の下にはきっとあの子もいるのだということが、たまに気落ちするショウの心を慰めていた。
「今日は天気がいいですね」
振り返って笑うと、帽子を被りながらウォロが目を細めて天を仰いだ。興味無さげに一瞥すると、ショウの横を通り過ぎて歩き出す。
ウォロと共に行動するようになって一年が経った。拠点としたのは人も寄り付かない村の外れ。お互い外での活動が多かったおかげでヒスイを離れても大きく困ることはなかった。肝心のウォロとは衝突することも多々あるが、基本個人で動いていたふたりというのもあって共に行動することはそこまで多くなく、いい同居人。というよりいい隣人のような距離感で過ごすことが出来ていた。以前のような愛想の良さは無いが、憎悪をぶつけられることも少なくなってきた。嫌悪感は常に感じるが、そこはまあ致し方ないところだろう。
調査に向かうウォロの背を小走りで追う。いかんせん脚の長さが違いすぎるので、少し気を緩めると一生懸命に走らないと追い付けなくなるのだ。広い背中が遠ざかっていくのは、やはり、どこか頭の奥の方がずきりと痛む。出来ることならあまり離れないでほしい。嫌悪感をぶつけられてもいい。離れていかれる方がよっぽど辛い。
ウォロさん、と声を掛けようとしたとき、首元がぞわりとして思わず辺りを見渡す。特にポケモンの気配もなく、杞憂か?と思った瞬間、ドンッと突然頭から雨を被る。
…………
…………
突然のことに思わず沈黙する。ざんざんと音を立てて降り注ぐ雨と光。キュウコンの嫁入りかなにかなのだろうか。半ば呆然としながら前を見ると、ウォロも同じように立ち尽くしていた。
まさかこんな腫れているのに突然雨が降るとはウォロも想定していなかっただろう。ウォロが踵を返すのを確認してから、ショウも拠点に小走りで戻る。
木材をかき集めて造った小屋は一応雨は凌げるものの、雨粒の音が激しく響いていた。ショウは入口で纏っていたものをざっくり脱いで絞り始める。ウォロは今にも暴言を吐きそうな顔付きで戻って来て、乱雑に荷物を下ろした。
「まさかのまさかですねぇ」
…………萎えた」
衣類を懸命に絞りながら笑うと、ウォロは座り込んで帽子を脱ぎ捨てた。不機嫌そのもののその姿に少しだけ頬が緩んでしまう。こうして感情を発露させているところを見るのが好きだ。それはショウが道半ば、心が折れてしまっていたら見ることの出来なかったものだと思うから。
「通り雨みたいですし、雨が止んだら行きましょうよ。きっとすぐ止みますよ」
ばさばさと服を乾かしながらそう告げる。ウォロは衣服も脱がずにじっとりとこちらを睨めつけた。ん?なにかあたしに問題が?という気持ちで首を傾げる。雨が降ったのは流石に自分の所為ではないんですけども。そう思いながら見つめ返すと、徐に腕を掴まれ、勢いよく引かれた。
「わゎ!」
床に崩れ落ちそうになったところを広い胸で受け止められる。頭の中ではコダックが頭を抱えて首を捻っていて、閉じ込められた腕の中でもぞもぞと体勢を整えようとするが、がっちりと捕らえられていてそれも叶わない。
「あのー……、ウォロさん?」
小さくお伺いを立てる。ぎゅっと抱き締められて、よくわからないままに抱き締め返す。じっとり湿った衣服が少し気持ちが悪い気がした。よくわからないけどいいか、と思い始めたとき、濡れた服を捲られて不意に笑い声が漏れる。
「今日はもう調査行かないんですか?」
「萎えた」
「んふっ」
やはり溢れてしまう笑みと、長い間押し殺してきた恋情。いつもより少し冷たい手が肌に伸びるまで、雨が止むまであと少し。


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