@akirenge
【ボウルタウンで朝食を】
パルデア地方、ボウルタウンはまだ温暖な方である。
ガラル地方からパルデア地方に引っ越してきたエステルはそう感じていた。ガラル地方は寒いのだ。
どうにか、パルデアでの生活も慣れてきた。彼女はブラッシータウンに両親と年子の弟と住んでいた。
およそ一年半前にブラックナイト事件に巻き込まれ、母親が大けがをし、後に自身が姉のように慕う女性に助けられた。
父親はマクロコスモス社でガラル粒子の研究をしていて、事件が解決した後も母親が本回復するのと忙しかった父親の代わりに周囲が自分たちの面倒を見てくれた。
テレビで見たことがあるジムリーダーや他のポケモントレーナーとも出会えたしポケモンのことも教えてもらった。
弟もエステルもポケモントレーナーになれば優秀になれるのではないかとは言われていたし、勉強の方も好きだったから、恩人の故郷であるパルデア地方に母と共に引っ越し、
有数の学校であるアカデミーに通うことになった。現在は課外授業中だ。
「あさ……はやい」
スマホロトムで時計を確認する。ポケモンのロトムが入ったスマホはパルデア地方に来た記念に父親が買ってくれたものだ。父はガラルからは離れられない。
ガラル粒子の研究は必要なことだし、父はガラル粒子の第一人者となっていた。
デジタル数字があらわす時間は六時前である。ソファーベットでエステルは目覚めた。側にはコライドンが眠っているし、
手持ちのマスカーニャやパーモットもいてくれた。
「コルサさん……寝てるかな……」
ここはボウルタウンのジムリーダーであるコルサの家だ。
パルデア地方に来たはいいものの、手違いで入学が危ぶまれたが恩人がアカデミーを訪ねにいってくれて、
すぐさま手続きはやってもらえることになったと想ったら手続きにやって食てくれたのはクラベル校長だった。エステルはニャオハを貰い、
ディートはホゲータを得た。生徒会長のネモともあったり、学校に通おうとしたらコライドンとミライドンが海辺に倒れていたりとか、先輩のペパーに会ったりとかした。
コライドンはエステルが、ミライドンはディートが手持ちにした。
アカデミーに馴染んできたころ課外授業が始まって、エステルは弟であるディート共に行動をしていた。今は別行動をしている。
宝物を見つけるというのが課外授業の目的であるが、姉弟でやっていることはジムチャレンジとペパー先輩の手伝いのスパイス探しとアカデミーの不良集団であるスター団を
倒すことだ。弟と共同でやった。
エステルとディートだとエステルの方がポケモンバトルがうまかったが、エステルはポケモンバトルが好きではなかった。
それを知っている周囲はそっとしておいてくれたし、ディートも盾になっていてくれた。エステルは引っ込み思案でネモと戦うのを嫌がってディートがポケモンバトルをしてくれた。
スター団とのバトルはやったけれども。スターモービルは大きなポケモンだと想った。最初は。
ネルケは半ズボンはどうかと想った。アカデミーは老若男女通えるけれども。
ジム戦もこなしていったが四つ目のジムにしたハッコウジムのジムテストがナンジャモの番組出演で、いつもはディートに先に行ってもらってから後でエステルが……弟からは情報は何も聞かなかったが……
やっていたが何とか番組出演を先に終わらせようと番組に出て校長を発見して、ジムテストに合格をしてナンジャモとのポケモンバトルに挑んだ。
「起きているぞ」
「……おはようございます」
挑んだのだが、ナンジャモと会話をした際、ナンジャモはガラル関係の、それもエステルが世話になっている人たちを揶揄した。
それにエステルは怒り、抑え気味にしていた実力を発揮してナンジャモに勝った。弟を盾にし続けていた姉は本気を出した。
エステルに取ってガラルで出会った世話になった人たちは目標でもあった。その場所に行きたいと願った。
必ず追いつくと全世界生配信で宣言してから逃げるようにしてバトルコートを出てとにかくコボクタウンにイキリンコタクシーで行って辿り着いた。
コボクタウンは芸術の街であり、美術館もいくつかあり、そこで見つけた絵の前に来て絵を見ていたらコルサが見つけてくれて暫く居てもいいと言ってくれた。
「眠れたのか」
大きく頷く。
ならいい、とコルサは言う。
コルサは妙な人だった。変な人だった。キマワリを見つけてジムテストに合格してバトルコートに行ったら風車から降ってきたのだ。
降ってきて着地したコルサを見たときエステルは叫んだ。変な人が降ってきたと二回ぐらい言った。ポケモンバトルには勝った。初めてのバッジだった。
ペパー先輩の手伝いを最初にしていたので一番近いジムがボウルタウンのジムだったのだ。
ドレディアがコルサの傍らにいた。
「かわいい」
「暫くは動かないのだな」
「動くなって言われた。ディートはチャンプルタウン……だし」
動くなと言ってきたのは恩人の女性だ。現在はアカデミーで教師をしつつパルデア・ポケモンリーグで働いている。ナンジャモ関連のことが落ち着くまで動くなと
連絡があったのだ。ディートの方はハッコウジムを飛ばしてチャンプルタウンのジムリーダーに挑むらしい。エステルのことが落ち着いたらまたともに行動することになった。
それまでエステルはボウルタウンに待機である。
「落ち着くまではいてもいい。キサマがいるとインスピレーションが刺激される」
「……刺激するようなこと、ありましたっけ。やりましたっけ」
「その存在そのものだ。パルデアを置き去りにガラル関係に宣言とはやる」
マスカーニャを盾にしておく。ディートがいればディートを盾にしていた。
「パルデアは置き去りにしてません……置き去りにして勝てるようなところでも、ないです」
「エステル。そういうところだぞ。パンでも食いに行くか」
名前呼びをされている。
コルサに関しては初期のころよりは慣れた。初期のころよりはだ。コルサはエステルの言葉によく笑っている。面白いといった笑いだ。
「パン……サンドウィッチ?」
「好きなものを食え。冷蔵庫は空っぽに近い。補充をせずに使っていたら空になっていた」
「それだと、冷蔵庫は空になるよ」
冷蔵庫は無限に食べ物がわいてくる箱ではない。冷やすための箱だ。冷蔵庫の中身を補充せずに使い続けていれば、空になる。
ポケモンたちにも何か食べさせないといけないためエステルはコルサについていくことにした。
ボウルタウンは花々が咲き乱れた華やかな町である。あちこちにコルサの出世作である『投げやりのキマワリ』があった。
早朝過ぎてどこの店もやっていないのではないかなとなっていたが、イートインがついているパン屋はやっていた。
パルデア地方は飲食店がガラルよりも多めだ。自炊しなくても資金さえあれば生活ができる。
「ここでいいだろう」
「パン屋さん」
「サンドウィッチの他にもいろいろなものがある」
「パルデアはサンドウィッチが流行しているね」
「ガラルだとどうだったんだ」
「カレーです」
年季の入ったパン屋はこんな早朝なのにやっていた。早朝だからだろうかともなる。店内に入れば焼きたてのパンの匂いがした。
パルデアと言えばサンドウィッチであり、パンを買い具材を買い、自分で作ることも出来た。
ガラルで流行している食べ物と言えばカレーだ。そこは即答だ。エステルはカレーが大好きだ。ディートはそうでもないが。
トングとトレーを手に持つ。どのパンも焼きたてだ。エステルはクロワッサンとチョコクロワッサンをトレーにのせる。
「それはエンサイマーダだ」
渦巻き状になっているパンらしきものがあり、なんだろうとなっているとコルサが教えてくれた。
エンサイマーダと言うらしい。種類がいくつかあったが、トルテルというアーモンドペーストが入っているものにした。
買おうとするとコルサが払ってくれた。
「ありがとうございます」
「遠慮しがちだな」
「……性分なので」
性分とはいえ、慣れればそうでもないのだが、コルサは完全になれたわけではない。飲み物としてコルサがカフェオレを注文した。
エステルの分も注文している。カフェオレならば飲める。ブラックコーヒーは飲めないけれども。
イートインコーナーは外にあるのでカフェオレとパンと共に持っていく。丸いテーブルに向かい合って座る。
コルサが注文したのはピザ系のパンやオリーブオイルとバケットだ。
「セルクルタウンのオリーブオイルだ。美味いぞ」
「カエデさんのところの……」
「奴はどうだった」
「……お菓子が美味しかった」
「それ以外の感想だ。ポケモンバトルについてだ」
セルクルタウンはエステルとディートが二つ目に挑んだジムがあった。ジムリーダーはカエデ、パティシエだ。
ジム自体は好きな順番で挑めるがそれでもアカデミーに近いジムから挑むものが大多数だし、パルデア・ポケモンリーグでも
適したコースを出してくれている。パティスリー『ムクロジ』のお菓子はケーキやクッキーも食べてみたが美味しかった。
特にチョコレートクッキーはザクザクしていていいバターを使っていると味わいながら食べたらすぐになくなった。
「抑え気味だった。……最初のジムだからだろうけれど」
「分かっているじゃないか」
「コルサさんより性格は良かった」
「おい」
「くさタイプだからほのおを持っていったら倒すウソッキーだしテラスタルはややこしい」
コルサがおかしそうにしていた。カエデは抑え気味にしていた。推測は出来ていた。最初のジムだからだ。
ポケモントレーナーだって使うポケモンによって実力が発揮できるかは変わってくるし、いきなり最初のジムで落としにかかるのはとなるが、
ガラルではそうだったとなる。テラスタルはパルデア地方限定で使えるポケモンの力を引き出せる能力だ。ガラル地方で言うダイマックスである。
テラスタルオーブを使って一匹限定だがポケモンのタイプを強化したり、変えられたりできた。
ディートを盾にしていたのとネモはディートの力を認めてくれたのでテラスタルオーブを貰えて、エステルは貰えなくても別に良かったが、
後にレホールやキハダによってテストを受けさせられて合格してテラスタルオーブは貰ったし、ジムリーダーたちはテラスタルオーブ前提で戦ってくる。
性格は良かったとしているのはまだ倒しやすかったからだが、かといってカエデが弱いわけではない。
「使いこなせているだろう。使っていないことが多々あるが。ナンジャモ戦はそれを使わなかった」
「――なくても、勝てたので」
「それだ!」
パンを食べようとしたらコルサはまた笑い出した。ワライダケでも食べたのではないかとなる。ナンジャモに対しては使わなかった。
切り札として使わなくても勝てたからだ。コルサを無視してエステルはクロワッサンを口に押し込んだ。
さくりとした歯ごたえ。たっぷりと使われたバターの濃く、噛み続ければ美味しさが口に広がる。
「美味しい」
「ボウルタウンの中でも群を抜いて美味いパン屋だ」
頷きながらクロワッサンをすぐに食べきってしまう。バターをふんだんに使えば美味しいのは当たり前なようでいてパンは技術がいる。
「……今日は、ジムを」
「休むぞ。キサマがいるのだ。創作がはかどる」
「……休んでいいの……?」
エンサイマーダと言うパンを口にしてみた。シンプルな味付けであるが中のアーモンドが美味しい。食べつつ話してしまう。
ジムリーダーの仕事はどうしたのだとなってしまう。パルデアのジムリーダーは兼業者が圧倒的に多いようだが。ガラルの方はそんなにいない。
「創作の方が大事だ」
言い切られた。
エステルはパンを食べきることにした。コルサが創作の意欲が出ているのはいいことだが何故出ているのかを理解できない。
(居候している間、家事手伝いぐらいはしよう……)
ボウルタウンからは動かないつもりだし、コルサの元にいたほうが安全だ。
変な人ではあるが悪い人ではない。エステルはコルサの情報を修正した。
【Fin】