@akirenge
【ボウルタウンで朝食を 3】
エステルはポケモンバトルが好きではない。
嫌いではないのだ。かといって大好きで戦い続けたいかというとそうでもない。ネモのように四六時中、乗り気ではないのだ。
乗り気ではないのだが、ポケモンバトルの才能があった。この場合の才能とはそれをこなせる力、どうにかできる力なのだけれども。
あったのだ。
母親が事故で入院をしていた時に面倒を見てくれた姉のような存在であるセリスは”好きなことと出来ることとやれることは一致しない時があるからな”と話していた。
ポケモンバトルは好きではないが、状況によるが嫌いではないのだ。
「……コルサさん。へ……元気な人で頼りになる、かな」
変な人ではなく、元気な人というようにしている。
コルサはエステルによっては始めてポケモンバトルをしたジムリーダーである。
アカデミーの課外授業でジムチャレンジを選んで、出発するとしたら一番近いジムはセルクルタウンのカエデか、ボウルタウンのコルサになる。
二人のジムはちょうど反対方向にあるので手短にバッジを二つ集めるとしたらどちらかと戦ってから、テーブルシティを突っ切って反対側へ行って戦う。
やることはいくつもあったので年子の弟であるディートと相談して……いくつかはディートが受け持ったことでエステルは手伝いの認識だが……
先輩であるペパーの手伝いをまず行った。大きなガケガニと戦って勝った後で近場にあったのがボウルタウンだったのでコルサとまず戦ってみることにしたのだ。
最初にディートがジムチャレンジをして成功した。エステルはその間、パルデアケンタロス集めを頑張っていた。パルデアケンタロスは三種類いて、
とても見分けづらいが、頑張った。三種類全部をゲットした。
ディートが先に受けたのはエステルはポケモンの捕獲をしたかったからで、コルサの情報については聞かなかった。エステル、頑張ってねとディートに応援をされて、
ジムテストでキマワリ集めをやって、こなして、コルサとポケモンバトルをすることになったのだが、
「風車から落ちて着地するとは思わなかった」
悲鳴を上げて変な人が、変な人がいる!! と叫んだ。
誰が変な人だとコルサは反論をしたが風車からこちらのジムテストを監視していて、成功したら落ちて着地なんて変な人だ。
ポケモンバトルはエステルが勝利をした。テラスタルをしたポケモンと初めて戦ったのだが、性格が悪いとなった。
ディートはアカデミーの生徒会長にしてチャンピオンクラスの一人であるネモが推薦をしてくれたのでテラスタルオーブを貰ってポケモンをテラスタルさせられるが、
エステルの場合は推薦だった。レホール先生に推薦された。歴史の先生だ。
朝になったが、コルサは起きてこない。モデルになれと言っていたのでなっていたが途中で眠くなったので寝た。
寝ている間も作品を作っていたのだろうかとなる。コルサとの生活も慣れた。
「カレーを作ろう」
朝食のカレーを、二日はしのげるカレーを作ることにした。食事作りは大変なのだ。
パルデア地方は飲食店が豊富だから買って食べれば問題はないが、栄養価は大事である。その点、カレーならば栄養が取れる。
コルサのドレディアがコルサの財布を持ってきた。長財布だ。最近はクレジットカードやらスマホのアプリで払うこともできるが現金は持っておけばよいとは聞いた。
スーパーで買い物をしていた時に掲示板で朝市がやると書いてあったのだ。そこでならば諸々の物が買えそうだ。コルサのオリーヴァも隣にいてくれる。
彼等はコルサが本気を出すときのポケモンだ。ジムリーダーは挑んでくるポケモントレーナーに対しては持っているバッジによって加減をしている。
コルサのアマージョとコルサのキノガッサ、コルサのウソッキーの強い方が留守番は任せておけというようにしていた。
ジムテストで戦ったコルサのウソッキーも買い物についてきてくれるらしい。
三匹とは多いが、これぐらいでいいだろうとはしておいた。
「ガラルで、油断はするなって言われていたもの」
ディートがとてもとても尊敬している最強のジムリーダーが二人に教えてくれた。
ポケモンバトルの才能はあってもまだ子供だ。世の中にはいい人ばかりではないし、相手は見極めるようにしろ、とか振る舞い方も聞いた。
何せ自分はキレてナンジャモに圧勝したのだ。全世界放映された。今は動画は配信停止になっている。
テーブルの上に朝市に行ってきますとメモを残して、エステルはポケモンたちと共に朝市に買い物に出た。
ボウルタウンは花の街だ。
朝市も花の苗が売っていた。コサジタウンの実家の花壇に植えたりしたらよさそうだとなる。落ち着いたら一度実家に帰ろうかとはなる。
帰らないのは実家に行ったら引きこもりそうだからだ。
朝市の会場ではテントが張られ、出来立ての野菜が並ぶ。カレーはどんな野菜を入れても煮込めば何とかなるので万能だ。
ジャガイモと人参と玉ねぎは買っておく。ソーセージが売っていたのでこれも買う。高すぎるものは買わない。
使っているのはコルサの金だ。
「お嬢ちゃんにはおまけだよ」
「ありがとうございます」
茄子を追加してくれた。これもカレーに入れる。米も買っておいた。ウソッキーに持たせた。朝市は屋台や民芸品も並んでいた。
芸術の街らしく、その場で絵を描いてくれるとか、置き物もある。瓶詰めのジャムやコンフィチュールを売る店もあった。
「エステル」
カレーの材料を買い込み、隠し味のジャムを買おうかとしているとコルサがやってきた。
「コルサさん」
「起こせばよかったものを」
「寝ているみたいだったので」
寝ている者を起こすことは忍びない。
ウソッキーが米を見せていた。コルサのポケモンが三匹ついてきているなとなったが彼の手持ちに二匹のポケモンがいた。
アマージョ達だろう。
「ジャムを買いたかったのか」
「カレーに入れたくて」
「キサマのカレーはとても美味しかったぞ」
褒められて照れる。カレーの他にも料理は出来るが、カレーをほめられることが一番うれしい。
「夜中まで、制作を?」
「良いアイディアが浮かんだ。キサマにも見せてやろう。キサマをモデルにした像をだ」
――どんなのだろう?
とエステルは自信満々のコルサを見上げて、楽しみにした。コルサの芸術は個性的だ。オリーヴァをモデルにしたらしい像は
遅れてオリーヴァと気づいたが。コルサさんだ、ジムリーダー、と声が聞こえる。
(目立ってる……)
ディートがいれば盾にしているところだが、いない。ドレディアがいたので盾にする。後ろに隠れた。
「ドレディアからはみ出ているので、オリーヴァにしておけ」
ドレディアの身長は百十センチ、エステルはそれ以上に身長があるのではみ出てしまうのだ。なおmディートはエステルより身長が高いので盾になる。
コルサたちと共にジャムの店へと向かう。カレーの甘味を入れるのにはジャムがいいのだ。
朝市は賑やかだ。ボウルタウンの住民の他にも観光客もいる。
「ボウルタウンは、賑やかだなって」
「イベントはいくつもやっているからな。ジャムはどれがいい」
「イチゴとか、……オリーブのジャム」
「カエデが特産品だと言って持ってきたのがあったはずだ」
「……ジャムなんだ」
「ジャムだが」
「珍しいものに見えたんだね」
どのジャムにするか選ぼうとすると、オリーブのジャムが目に入る。オリーブと言えばオイルなのだが、ジャムにもなるらしい。
ガラルでは見たことがなかった。カエデはセルクルタウンジムリーダーで、セルクルタウンはオリーブの町だ。
店員らしい三十代ぐらいの女性が応対をしてくれる。エステルは何度も頷いた。
「メンブリージョ……?」
「マルメロは分かるかい」
「クインズ」
「そうそう。それを固形にしたジャムだよ」
ガラルではクインズという。カリンの一種だ。メンブリージョはクインズを固形にしたジャムらしい。
ということはマーマレードだろうかとなる。ジャムとマーマレードの違いは水分だ。コンフィチュールもだ。
「チーズにかけると美味いし買っておくか。来客用に」
「……お客さん来るんだ……」
「エステル。ワタシの家にも来客は来るぞ。来るからな」
来るんだと言ってしまったのだが、コルサの家を訪問する者がいるのだろうかとなってしまっていた。何本かジャムを買うことになり、
イチゴジャムとブルーベリージャムを選ぶ。
「ドゥルセってジャムも……」
エステルがドゥルセとラベルに書かれたジャムを手に取った時、ふいに別のテントに視線を向けた。
人混みの中、民芸品を売っているテントを物色している二十代の女性観光客の二人組の背後から二十代の男が近づいてくる。男はナイフを持っていて、
分厚い女性の肩掛け鞄を切り裂こうとした。
「それにはスパイスが」
「あの人、ナイフ。鞄を切ろうとしてる」
コルサがドゥルセの説明をしようとしたときにエステルが鋭く言う。コルサやジャムの店の店員もエステルが見た方向を向いた。
スリの手口に鞄をナイフで切ったりすることによって中身を盗もうとするものがある。
「オリーヴァ。オイルをぶつけてやれ。ドレディア、抑えろ」
女性客の悲鳴が上がる。男は逃げようとするが、コルサが指示を出した。エステルから離れたオリーヴァは
穏やかな顔で飛び上がり右手を振ると勢いよくオイルをぶつける。オイルは弾丸のように飛び、男の右手に持つナイフを弾き飛ばした。
怯んでいる隙にドレディアが男にのしかかる。
「オイルが」
「オリーヴァは味方には美味しいオイルを敵には分け与え、岩石をも砕く勢いでオイルをぶつけるのだ」
「岩石破壊オイル……」
「エステル、よく気づいたな」
歓声が上がる。エステルは隠れる対象がなかったのでウソッキーの後ろに隠れた。
『朝ご飯、沢山、もらいました。カレーはお昼ご飯にします』
アカデミーにてエステルとディートの姉のような存在であるセリスはスマホロトムの会話アプリの文章を受け取った。
今日は授業を行う。授業は週に何回か国語を教えている。教える羽目になった。
写真には屋台で売られているピンチョスの櫛が何本も移り、揚げたてのチョコレートチュロスをエステルが食べていた。
メッセージの方にスリに気づいたこと、コルサが優しいし慣れてきたことが書かれている。
最後の方にバッジの方は何とかなるかとあった。
「エステルはカレーが好きだな。バッジは手続きは進めているから今日……明日には何とかしたいが。懸念がな」
手続きの方は進めている。むしろ遅いぐらいだ。動かせないのには理由がある。
廊下で手続きは進めているので連絡を待ってほしいとスマホロトムで打ち込んだ。
「……エステル、カレー好きなん?」
「ボタンさん。ああ、あの子はガラルにいたんだが、とてもカレーが好きだ」
影からボタンが出てくる。ボタンはたまに国語の授業に出てくる生徒だ。エステルとディートはセリスに定期的に連絡をくれる。
ぬしポケモンを倒したとかスター団を倒したとか、これ母親にいたら前者はまだしも後者は騒ぎになりそうなので
こちらに回すのだ。
さん付けをするのは生徒だからである。
「バッジ、エステルの四つ目の手続き、終わらんの? ……ナンジャモが騒いで」
「速攻で謝罪動画を出したらしいが、カブさん関連を下手に言うとガラル住民を殆ど敵に回すからな」
ボダンは黙っている。
ナンジャモが騒いでいるわけではない。むしろナンジャモはエステルをすさまじい逸材と呼んでいる。
ハッコウシティジムリーダー、ナンジャモは動画配信者だ。ジムテストも動画関連だし、ジムバトルも世界中に配信している。
視聴者が満足をナンジャモは意識していて、シビれるバトりと、ナンジャモは言い、どんなものかとエステルが問い返したら、ナンジャモは
ガラル地方を例に出した。ガラル地方のポケモンバトルは物によってはテレビ放映されてた地方でも見られるのだが、
配信でカブのことを枯れてるオジサンと言った。相手はマクワだったが、マクワとぎりぎりで引き分けていた。
カブはエンジンシティのジムリーダーであり、ジムチャレンジの登竜門とされている。専門タイプはほのおで、マクワの専門タイプはいわだ。
「……ほぼじゃない?」
「マクワも人気だしな。さらにユウリとタンポポの決勝の言及で地味なドラゴン使いで技は派手とか言うからユウリも割と地味とか」
ガラルのポケモンリーグはユウリがチャンピオンになってから、最近行われた。チャンピオンリーグに勝ち進んだのはタンポポだった。
タンポポはジョウト地方から来たポケモントレーナーで去年はユウリに負けている。今年も負けたのだ。
「あの子を怒らせちゃったんだね」
「向こうは知らなかったからな。エステルが世話になった人たちだって」
「馬鹿みたい」
「言葉は厄介だ。――しかし連絡が来ないな。エステルは定期連絡をくれるのだが」
昔からそうだったが、ナンジャモも発言には気を付けていたのだろうが、受け取った者が受け流してくれるとは限らない。
馬鹿みたいには同意せずに、連絡が来ない方に話題を切り替えた。ボタンとエステルは顔見知りとは聞いている。
「エステルからの連絡は来るんだ」
「ついさっき、ナイフを持ったスリを発見してコルサのオリーヴァ達に撃退してもらい、ご飯をお礼に沢山もらったと」
「ちょっ」
「コルさん達は無事なのですか!!」
情報を伝えたら廊下を破壊するような叫びが聞こえた。
アカデミーの美術教員であり、パルデアポケモンリーグ四天王の一人でもあるハッサクが聞いていたのだ。ボタンが怯えた。
「知り合いなのか。ハッサク先生。私はコルサさんについては話にしか知らないが」
「コルさんは小生の友人。何があったら」
「この画像を見ろ。仲良くチュロスを食べているから」
画像を見せておく。コルサとエステルが大量のもらい物の中でチュロスを食べていたしポケモンたちも元気だ。
「戦利品凄」
ボタンが驚いている。戦利品……? とセリスは感じつつも、ハッサクをなだめることにした。
パルデアポケモンリーグの一室にてアオキはタブレットPCに届く文章を読んでいた。
「アオキさーん。何を読んどるん?」
「ナンジャモさんの信者のやりとりですよ。チリさん。ガラルポケモンリーグの関係者が送ってくれています」
彼に話しかけてきたのはパルデアポケモンリーグ四天王の一人であるチリだ。見た目は男性のようだが女性である。
アオキとチリは親しい。アオキはチャンプルタウンにあるチャンプルジムのジムリーダーにして、四天王の一人でもあった。
知っている者はごく一部だが。
セリスは連絡が来ないと言っているが、ナンジャモ関連はアオキがやっているのだ。セリスには言っていない。
ナンジャモの信者と言っているが、ファンではない。ナンジャモからすれば迷惑なリスナーだ。
「アレはナンジャモの発言が悪かったやろ。チリちゃんもポピーが悪く言われたら怒るで」
「それが、絶対にナンジャモさんは悪くはない。悪いのは向こうだとなっているうえにあの子はまだ幼いからと」
「警察には」
「動きがないので。動かせればいいのですが。……セリスさんに伝えると過剰な火力を使うでしょうから。止めています」
ガラルポケモンリーグにはコンピューター関係に強い者がいてセリスとも付き合いがあり動画を見たらすぐに連絡をくれた。
エステルに四つ目のバッジが渡せないのは彼女をボウルタウンから動かせないからだ。
万が一にでも、ナンジャモの信者がナンジャモの名誉を傷つけたエステルが悪いと暴力を振るってきたりすれば彼女は傷ついてしまう。
「リーグ本部の四天王、人間に手持ちのポケモンで『はかいこうせん』打ったって聞いたけど」
「……カントー・ジョウトリーグ?」
リーグ本部とだけ言うとカントー・ジョウトリーグとなる。あそこは本部であり他はすべて支部だ。単にカントーリーグと
呼ばれることもある。打つんですか、とアオキが呟く。
「何ならチリちゃんも協力するで。アオキさんはセリスさんのこと大事に思っとるから、仕事として引き受けたんやろうし」
「貴方は何故」
チリは笑顔を浮かべた。
「チリちゃん、あの子に緑の子って想われとるからそれを何とかしたいってか、ディートの方が名前を教えそびれとって」
「……確かに緑の人とハッサクさんと言っていましたね」
エステルがナンジャモとの勝負の後で配信が全世界に通じているならと、
近況報告としてガラルにいる世話になった者たちに状況を伝えたのだが、チリのことは緑の人と言っていた。
これはディートのが最初にハッコウポケモンジムの受付前でハッサクとチリと出会い、チリは名乗ったのでディートはチリの名を知っていたが、
後から来たエステルは初対面のチリに吃驚して隠れてしまい、チリもチリで名乗らずディートも教えていなかったのでエステルにとっててチリは緑の人となっていた。
2≫
目立っている……となりながらもエステルはチュロスを食べ続けた。チュロスはとても美味しい。
警察に犯人は捕まってコルサが警官に状況を話して、周囲も味方になってくれたし、お礼として食べ物などを貰ったし、バッグが危なかった観光客にも礼を言われた。
「もっと誇れ。エステル」
「……そういうの、苦手で」
「初めてポケモンバトルをした時は悲鳴を上げながらも、ワタシとのポケモンバトルをこなしていた。ただ者ではないとは思っていたが」
開いているテントの一角で貰ったものを食べつつ、持って行けそうなものはもっていくことにする。
「こなせます。風車から飛び降りられて何やってるんだろうこの人となっただけなので」
「鮮やかに勝っただけではないか。その才能で。周りも期待しているだろう。特別だと」
才能、と聞いてエステルはチュロスを食べる手を止めた。そのままチョコレートチュロスを咀嚼して飲み込む。サクサクとした揚げたての生地に
チョコレートがかかっていて口の中に粉砂糖が舞う。
「私にとっては出来ることだし、……特別とか言われても、才能とか言われても……困る……周り、怖い……」
「エステル。ポケモンバトルが好きではないのは周りが怖いからか」
何度もエステルは首肯した。
――明日にはエステルが、僕の姉が挑みに来ますがよろしく。ポケモンバトルが好きではないんですが、楽しめると思います。
コルサはそう、ディートから聞いていた。ディートもディートでコルサに勝っている。ポケモンバトルが好きではない。
そうは言いながらも彼女はバッジを四つとっている。
「ネモ先輩とか……いきなりポケモンバトルしたいとか……実ってるとか……ディートは盾」
「アイツか。最近チャンピオンクラスになった」
「才能も……特別も……そういわれても……」
言われてもばかリっているが、エステルにとっては重大なことなのだ。
彼女はポケモンバトルが出来る方だ。出来る方だがエステルはそれが特別なことだとは思っていない。想えないのだ。
何故なら。
「特別と決めるのは周囲だ。エステルにとっては出来ることだ。やれることはエステルにとっては普通のことだ。スリに気づけたのもそうだろう」
「洞察力はある方だって」
「いいか、もう一度言うが、特別とみるのは周りでエステルは普通だ。例えば、特別になりたいなんて言う者がいるとしたら、
それは他者からの評価が欲しいのだ」
例え洞察力があろうが、ポケモンバトルがうまかろうが、エステルにとっては普通なのだ。それが出来るのは当たり前のこと。
特別だ、とか才能だ、と決めるのは回りなのだ。周りが評価をして本人はそれを特別や才能と認識する。
当たり前のことをそう言われてもエステルには困ることなのだ。それを当たり前ではないと認識するのは周りだ。
「……評価」
「特別な者は、特別になりたいなどとは言わん。――こうなりたい。そうなりたいというのだ。エステルはもうすでに進んでいる。
追いつきたいものがいるのだろう」
彼女には目標があり、本人なりに進んでいるのだ。彼女は周囲がはやしたてることに驕ることはない。逆に怖がる。
「いる」
「ならば進め。……動けるようになるまでは動けんか」
「動けるようになったらまた進むので。……才能とか特別とか言われても、それで幸せになれるとは限らないし」
「今のエステルは幸せか? 今だ。未来ではない。今だ。チャンピオンクラスになる気はあるか」
彼女はガラル地方の出身であり、ガラル地方はポケモンバトルが盛んだ。話に聞いたり見て来たりしたのだろう。大成しなかったものたちもだ。
「幸せだし。宝物はまだ分からないけれど、チャンピオンクラスにはなる」
「それでいい。突き進め」
怯えているだけのようでいてエステルは意志が強いし、やるべきことはやる。
「――そうする」
吹っ切れたのか、エステルが肩の力を抜いていた。
「朝食は足りるな」
「十二分に」
コルサとエステルは食べきるだけ朝食を食べて、残りは持ち帰ることにした。
【続く】