■唐突にネタメモ。
NMR/季杜
「あなた、以前風俗のようなところで働いたことがあるんですよね?」
目の下にくっきりとした隈を携えた季夜の、ギラっとした目にかち合う。これはだいぶお疲れなのだろう。
先日から取引用の交渉につかう物の卸価格をどうつけるか。本部にかけあうように情報を虱潰しにまわる。そういった仕事は自分より季夜の方が断然得意なのだ。
ものを見る目、使い勝手に対しては、彼の嗅覚は凄い。
平時より美術鑑賞などは好んでいるため、物の何がいいかを考えるのは得ているのだ。
使えれば何でもいい自分は、口出しをせず限界突破しそうな季夜の口に突っ込むものを用意する。
「あー、うん。こういうところ」
自らの胸を服の上から軽く揉む。
こういうところだ、つまり。そこが商売の要である場所。
「ご指名有難うございます~春陽で」
「却下」
これでいいかな、と覚悟を決め、営業モードに切り替え出てきたはいいが、食い気味にテンションダダ下がりの声音に遮られる。
そして深々と、肺の底から出るため息。
そもそも、どういったサービスをしていたのか知りたいと言ってきたのは、季夜なのだ。
女への耐性が少しずつついてきて、今では社交場で腕を絡められても顔色を変えることはなくなった。
「女の身体」を「壊れるもの」と思い、触ることができなかったあの頃からすれば、随分と変わったものだ。
成長し、身体つきも青年としての肉付きと、母譲りのしなやかなラインの美しさ。
何一つ纏わない姿を知っているが、女である自分から見ても、美しいと思える成長を遂げている。
二重に沿う艶やかな睫毛に縁どられた瞳は、スッと流れるだけで香りを残す。
だがしかし、残念ながら、今は目尻にしわを寄せ、不快と顔に刻み込んでいる。
情報収集として潜入していたのは、いわゆるセクキャバという、女性の胸を堪能できる風俗であった。
本番までは禁止されていたので、お触りや、話をしたりお酒を飲んだり、時折はゲームを楽しんだりする、という名目の場所だった。もちろん、本番自体は仕事中にはなかったが、その手前のグレーゾーンは、ターゲットによりにけりで対応したこともある。
今思い返すと件のことがあったりで、散々ではあったが。中には気のいい顧客もいたので、悪い思い出ばかりではない。まあ、任務の一環だったので特別未練もないが。
2023-01-18 01:15:11