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光条

全体公開 7388文字
2023-01-30 01:43:42

坊ちゃんとムワリムさんのお話 ※蒼炎本編前の過去妄想 ※割と具体的な怪我の描写があります

Posted by @wtnbear

「くそ! うろちょろと……!」
「追え! 逃すな!」
 朔の日も近いベグニオン帝国内、ある領主の邸宅は淡月たんげつの代わりに煌々とした篝火や松明で照らされ、足音と甲冑の擦れる音がそこかしこで響くほど物々しい騒ぎになっていた。夜中に忍び込んだ一団が隠されていた地下牢を暴き、そこに収容されていた奴隷を引き連れて逃走したという。偶然にも見回りの兵士が逃げる盗人どもの最後尾と鉢合わせて小競り合いとなったが、異常に気付いて到着した増援の数に敵わないと思ったのか、四散するようにして森の中へと逃げていった。
 牢屋から逃げたのも、それを手助けしたのもみな、鳥獣へと姿を変えられるラグズと呼ばれる種族である。普段はヒトとほとんど同じ姿形をしているのであるが、獣の姿となればその強さは文字通り常人を逸し、生身ひとつでは到底敵わない。ただ、変化へんげが出来る時間には限りがあるらしく、変化さえしていなければ変身をしない人々と何ら変わりはない。騎馬も少なく、竜騎も持たない領主の兵団は、変化せずに逃げた数人に狙いを定めて仄暗ほのぐらい夜の森を駆けていた。

 いま、彼らの眼前を走る子供も狙いを定められたうちのひとりだ。屋敷からはかなり離れた場所まで来たが、それでもまだ捕まえられずに追い続けているのは標的が体の小ささを活かし、茂みに隠れるように飛び込んだり、木の隙間を縫うようにして森を縦横無尽に走り回り、兵士たちを翻弄しているからであった。それでも十数人ほどの小隊は執拗に目の前の子供を追い回している。赤い髪を靡かせながら逃げる少年は時折、後方を確認し、まだ消えない兵士たちの姿に眉根を寄せた。
「しっつこいなー! そろそろあきらめろって!」
 暗闇でも目立つ橙色のマントがひるがえると同時に、翠の旋風つむじかぜが追手に襲いかかった。予想だにしていなかった攻撃に前方が将棋倒しとなり、砂煙に視界が利かず右往左往する一隊へ二発目の風の魔法ウィンドが撃ち込まれる。兵士たちは折り重なるように倒れ込み、数人を残して動かなくなった。
 砂のもやが晴れ、運良く攻撃から逃れた男たちは周囲を見回した。そこかしこで倒れている部下たちの向こう側にはまだ、追いかけていた子供がこちらの出方を伺いながら立っている。
「あの子供、ラグズではなく魔導使いか! ベオクのくせに、半獣の肩を持つとは……!」
「さては、奴隷解放軍の一味だな!」
 ラグズとベオク。獣に姿を変えられる人とそうではない人。このふたつの種族は各々の国と文化を持つが、対立の歴史は長く、その遺恨は深い。特に、ラグズはベオクへ隷属した時代があった。その頃に制定された奴隷制度は撤廃されてからしばらく経つが、一部の貴族間では未だ秘密裏にラグズを奴隷として使役している。
 そんななか、帝国領内では最近、その奴隷を逃す手引きをしている一団が夜な夜な現れると専らの噂となっていた。ラグズ奴隷解放軍と名乗るその集団は元奴隷のラグズを中心に構成されているらしいが、その中にただひとりベオクの子供、それも魔導使いマージがいるというのだ。ラグズのような獣風情に手を貸すベオクがいるものかと男たちは嘲り笑っていたが、目の前の子供は奴隷解放軍、唯一のベオクと特徴が一致する。
「ふざけてるのはそっちだろ! 解放令を無視して、いつまでもラグズを奴隷にして!」
 魔導士の少年は声を荒げて反論した。だが、追手を仕切っていると見られる壮年の男ふたりはその正論に耳を貸さず、目の前に落ちている手柄をどうしようかと互いに目配せで確認した。
 これはとんだ儲けものだ。先程まではこの子供がラグズだと思い、魔導攻撃が飛んでくるとは考えなかったから遅れを取ったに過ぎない。ラグズは化身されると厄介だが、魔導使いとはいえベオクの、それも子供の細腕では大人の力に敵うまい。此方人等こちとら、夜中に面倒事を起こされて辟易しているのだ。領主には屋敷の警護について怒鳴りつけられ、今は部下も地面で伸びて使い物にならない。とっ捕まえたら憂さ晴らしに遊んでから引き渡してやる。双方は少し下卑げびた笑みで頷くと、少年を挟み撃ちにするように散開して襲いかかった。

 少年は慌てる様子もなく、自分に向かってくる男たちを真っ赤な双眸まなこで捉える。ブオンという風切音。頭上から振り下ろされた槍を後ろに跳躍してかわし、追撃するもう一本の槍も転げて避けた。その勢いのまま土埃から逃げるように起き上がったところへ、続けざまに槍が一直線に少年の胴へ向けられる。しかし、刺し貫こうとしたその槍は勢いよく木の幹を穿ち、すんでの所で逃げおおせた少年はあっと言う間に男たちから五歩ほどの距離を取っていた。
 足の速い獣のような移動距離にその姿を見失った両人が標的を視界に入れると、少年は掲げた右腕を勢いよく振り下ろした。片方の男の足元へ魔法陣が浮かび上がったかと思えば、瞬きする間もなく上空から真っ直ぐに紫電が落ちる。雷鳴をかき消すような耳をつんざく叫び声。隣で同僚が黒焦げとなったことに残った男は短い悲鳴を上げ、狼狽した。そうして恐怖でよろめいた背中に、男よりも大きな塊が鈍い音を立ててぶち当たる。完全に無防備だった背中からの衝撃に兵士長は呼吸を止め、受け身を取ることすら出来ずに木の幹へ思い切り体を叩きつけて気を失った。
 図体の割にしなやかな着地をする黒い影。木の根元で泡を吹く男から少年の方へ振り向くと、暗闇の中で金色こんじきの瞳がぎらりと輝いた。大きな塊はのしのしと歩きながらその姿を現す。鎧の隙間から煙を上げる男の横を通り過ぎ、月光に照らされたそれは緑の体毛を持つ大きな虎だ。靡く毛先がきらきらと輝きだし、その光が体全体に行き渡る。輝きはみるみるうちにヒト――ベオクの形を取った。
「坊ちゃん、ご無事ですか」
 落ち着き払った低声が静かに鼓膜を震わせる。先程の男たちよりも二回りほど大きなラグズの男は、自身の半分ほどの背丈の少年の前に立った。大男は坊ちゃんと呼んだ少年のつま先から頭の先までを眺め、衣服が土埃に汚れているだけであると認めると、ふうとため息つきながら嗜めるように言葉を続けた。
「もう囮作戦はなしですよ。その身に何かあれば、私は……
「わかったわか……! ムワリム、危ない!」
 釘を刺され、不貞腐れるようにそっぽを向いた少年の警告に急いで目線を追う。顔を左へ向けると木陰の向こうに魔導士がひとり、その手には赤い羊皮紙の本がちらと見えていた。それを確認したと同時に体を強く押し退けられ、半歩後ろへ足をつく。視界はオレンジ色の布で覆われ、マントの向こう側でぱっと閃光が瞬いたかと思えば、間髪を置かずに熱波を伴う爆発音と少年の呻き声が聞こえた。布と肉の焦げる臭いが爆風に乗って辺りに拡散される。
 化身を解いた直後を狙う輩がいたらしい。ラグズは化身をしていない状況でも特別、頑丈であるとかそういうことはない。化身をしていない状況で不得手とする攻撃に晒されればひとたまりもないのだ。とりわけムワリムのような虎や猫に化身する獣牙族ラグズが苦手とする炎の魔法ファイアに狙われようものなら、命があるかどうかは運頼みと言っても過言ではない。だからこそ少年は彼を庇うため、全力で虎男を突き飛ばしたのだった。
 途切れ途切れの詠唱ののち、お返しと言わんばかりに雷の魔法サンダーが敵に落ちた。焦げ臭さが木々の隙間に充満する。よく利く鼻には辛く、決して慣れることのない戦の臭いに気持ちが騒めいた。これさえなければ、あの魔導士の存在に気付くことが出来たのに。
「坊ちゃん!」
「これくらい平気だって!」
 威勢のよい返答とは裏腹に爆発の衝撃で姿勢を崩した主人あるじを受け止め、その体を見て息を止めた。焦げて破けた防具から覗く左肘から下、その皮膚は水疱混じりに赤く爛れている。握力を無くした手から魔導書がばさりと地面へ落下した。目を当てるのも痛々しく、腰に着けていたポーチから急いで傷薬を取り出し、患部を隠すように覆い当てる。あなたが傷付いてどうするのだ。不甲斐ない。敵を見つけられなかったのは私の落ち度だというのに。
 護るべき対象が自分を庇ったことに驚きながら、同時に湧き出した怒りに総毛立って持っていた石を握り潰した。蒸発するように石から湧き出した霧を呼気と共に取り込むと化身するに十分な気が体に行き渡り、即座に姿を虎へと変えて敵に飛びかかる。月の明かりも少ない薄闇の中で浮かび上がる瞳と長い牙に、敵は詠唱を止めてすくみ上がっていた。
 普段であれば魔導書を噛み千切り、その身に危害を加える真似はしないのだが、今はそんな手加減など出来るわけもなく、勢いに任せて鋭爪をその胸元に食い込ませた。肉を抉り、裂き、その下の骨を砕く鈍い感触。手に染みつく命の温度。断末魔に似た叫び声が静かな森へと響き渡り、魔導士は血を噴き上げて力なく地面へと倒れ込んだ。
 手から落ちた魔導書を食い破り、少し先で仰向けに転がる対象に目線を落とす。絶命には至っていないが確実に深傷ふかでを負わせたことを確認すると、獣の姿のまま小さな主人への元へと駆けた。くるる、と心配そうな鳴き声で擦り寄る。赤髪の少年は彼から受け取った傷薬を火傷の箇所へしっかりと当てており、そこはもう先程のように溶けそうな皮膚ではなくなっていた。
「他の追手も巻いたから、ここにいるんだよな」
 その問いに首を縦に振ると、背に乗ることを促すように少し伏せた。よし、という声と共に少年が背に跨り、ひとりと一頭は新たな追手が来ないうちに大急ぎでその場を後にした。

 ◇◆◇

 地平線の向こうから昇る太陽は赤く、その陽は闇から物の形を明らかにする。浮かび上がるのは一面の砂海と砂埃に黄味がかる晴れた空。人口の多い都市や広大な緑の間に突如として現れる不毛の大地。太陽が昇りはじめると途端に生き物を拒みはじめるその場所は、点在する生存可能な空間を確保出来さえすれば、日中に活動する天敵諸々から身を守るには好都合であった。よって、帝国内でお尋ね者となっている奴隷解放軍はこの辺境の、誰彼簡単には近寄れない砂漠地帯にいつからあるとも知れない廃城を根城としている。
 昨晩騒ぎを引き起こした彼らはその城内に着くや否や、誰の命令もなしにそれぞれが怪我人の手当てと解放した奴隷への対応にあたった。広いエントランスホールが話し声で埋め尽くされる。もちろんその中には、緑の虎に化ける大男と赤髪の小さな主人の姿もあった。
「首領、だ、大丈夫なんですか? その腕……
「ん、へーき! こう見えてもおいら、ベオクの中では頑丈だからさ」
 マントからちらりと見えた怪我に気付いたひとりが、猫耳を垂れ下げながら声をかけた。手には傷薬を握り締めていたが、それは他の者に使うよう指示を出して少年は大広間をぐるりと見渡す。
 ひい、ふう、みい、よ……。怪我人はそこそこいるようだが皆かすり傷程度で済んでいるらしく、今回も軍はひとりとして欠けることなく目的を達成出来たようだ。解放した奴隷も緊張していたり放心していたりと様々だが、こちらも大きな怪我はないらしい。ほか、特に対立や争いなどもなく粛々と事後処理は進んでいる。その様子にそっと胸を撫で下ろすと、首領と呼ばれた少年とその従者は別の部屋にある階段を降りていった。

 赤茶やサーモンピンクが入り混じる岩盤をくり抜いて造られたそこを降りていくと広い空洞に辿り着く。天井となっている岩盤には大小様々な亀裂が走っており、こぼれ落ちてくる砂がきらきらと光に反射していた。まるで光の柱が何本も立っているかのような地下洞には渾々こんこんと地下水が湧き出ており、そのお陰でひんやりと冷えた空気がその身に涼を与えてくれる。この建物を築いた人々もこの水を利用していたらしく、汲みやすいように湧水が円型の槽へ流れ落ちるよう設計されていた。
 少年は左肘から先を、その透明な湧水が貯まる水槽へと突っ込んだ。清らかなその水に爛れた皮膚が冷やされ、きゅっと締まっていくような感覚がする。それでも皮膚の下でじくじくと熱が篭り、その熱でまだ肉が焼かれているような感覚が抜けずに顔を顰めた。傷薬である程度治ると言っても怪我は怪我であるし、痛いものは痛い。腕が冷えていくにつれ、うっすらと引いていく赤みを揺れる水面越しに眺めていた。
 ふと遠くの光芒を見遣る。処置に集中して気付かないふりをしていたが、背中側の空気が重たい。腕は水に浸したままそーっと振り向くと、大男は肩を落として正座していた。目線は地面からぴくりとも動かず、顔は蒼白していると言ってもよい。長く自分を主人として付き従ってくれている彼の心中を想像するのは容易い。さしずめ、自分が油断したせいで坊ちゃんは、とか、その怪我が治らなかったら、とか、思考が悪循環に陥っているのだろう。確かに、この怪我を含めて外傷が完全に治る保証はどこにもなかった。この軍には杖を使える者がいない。杖も魔導もラグズには使うことが極めて難しいらしく、何度か試してみたがどうも上手くいかなかった。
 そもそも、杖も魔導もベオクが生み出したものだという。遥か昔、創世の女神からラグズには力が、ベオクには知恵が与えられたらしい。杖や魔導、いわゆる魔力を用いた道具はその知恵の結晶なのだという話を師事した老体からよく聞かされたものだ。つまり、ラグズには既に力が備わっているため、ベオクの知恵に相当する杖や魔導を使うことは即ち、神から与えられた領分を犯すことになり使えない、と考えるのが妥当なのかも知れない。
 ただ、自分はラグズではない。この軍唯一のベオクであり、幸いにも魔導が使える。魔導を究めれば杖も使うことが出来るようになるらしいが、護身程度の手慰みから多少なりとも進歩したとは言え、いま杖を持ってもただの棒切れ同然だ。そのことに、自分はまだまだ未熟だと言われているようで悔しくなる。杖が使えたらどれだけ便利なのだろう。味方の窮地を救えるかも知れないし、傷の痛みも少しは早く改善されるようになるかも知れないし、自分の生傷はこれ以上増えなくなるかも知れない。
「あーあ、おいらだって杖が使えたらいいのに」
 残念そうに呟く主人の言葉にムワリムはハッと顔を上げ、喉元まで出た言葉を飲み込んだ。
 魔導とて生まれつきの才能でここまで使えるようになったわけではないと知っている分、このまま戦い続ければきっと、杖を使えるようになることは決して不思議なことではない。老師を失ってもなおその教えを守り、聞く相手のいない中で考え、研鑽を積む姿を誰よりも間近で見ているからだ。ただ、そんなことが出来るようになったら、主人はもっと危険に身を晒すかも知れない。それこそ元老院議員や上流貴族よろしく、強大な軍事力を持つ貴族のところへ行こうと言い出しかねない。それはどこかで挑まねばなるまいが、近い将来の話ではない。いや、それよりも私は坊ちゃんに……
「聞けば、杖は精霊の力を借りるのではないそうですよ」
「ちぇっ。やっと色んな魔導が使えるようになってきたのに」
 不安と身勝手な願望とを心の底へ押し付け、否定も肯定もしない曖昧な答えで話を逸らした。少年は少し口を尖らせながら腕を泉から引き上げる。素早い応急処置が功を奏したのか、水を滴らせる腕の赤みは一見すると分からなくなるまでに引いていた。ムワリムは立ち上がり、布を優しく当てながら水を拭き取ると、慣れた手つきで薬を塗って包帯を巻いていく。俯いて影になった険しい顔を、少年は真剣な面持ちで眺めていた。
「ひとまずはこれで大丈夫です。そろそろ上へ戻りましょう」
「うん、そうしよう。助けた奴らを早く故郷に帰してやりたいし」
 厚く大きな手が少年の腕から離れた。綺麗に巻かれた包帯を確かめ、腕や指が問題なく動くことに機嫌を良くしたのか、少年は足取り軽く来た道を戻り階段を駆け昇っていく。いつもの通り体が先に動く落ち着きのなさに胸を撫で下ろし、従者はゆっくりと主人の歩みを辿った。踊り場で振り返った少年が高く挙げた手を振りながら早く、と急かすように呼びかける。その屈託のない笑顔が逆光に眩み、すっと目を細めた。

 私とあなたが出会わなければ、関わらなければ、未だ残り続ける奴隷制度について憤りを覚えることもなく、あの家で何不自由なく暮らせたのだろうか。逃げるように辿り着いたこの地であのご老体と出会わなければ、その狭い肩に重荷を背負うことも、こうして傷つくこともなく、ひとりのベオクとして生きることが出来たのだろうか。いや、きっと、そうはならない。例え過去に戻り、どの可能性を選んだとしても、あなたは私たちの為に戦う選択をする。あなたは決して、己だけが平穏に過ごせる未来を選びはしない。笑われても、後ろ指を指されても、自分の信じる道を進む。だからこそ、その強い意志にみなは希望を覚え、あなたの描く未来を後押ししようとしてくれるのだ。
 ただそうだとしても、心に嘘をつくことは出来ない。皆の希望とならず、良家の子息として戦いも知らずに安穏あんのんと過ごしてくだされば良かった。従者として、代わりとはいえ親として、その身の幸せを願わずにはいられないのだ。それでも、あなたが傷つく度に心へ暗く影を落とすそれらの願望は、その笑顔で簡単に吹き飛んでしまいそうになる。自分と主人のそれぞれが思い描く幸せ、あちらが立てばこちらが立たない、形が違うそのふたつの板挟みになる。せめて主人の望む道が生死に関わらなければ、こんな葛藤にさいなまされることもなかったであろうに。
「はい、坊ちゃん。すぐに参りますよ」
 堂々巡る思考へ終止符を打つようにかぶりを振り、ムワリムはそう言って微笑んだ。止めた足を再び前へ出し、階段を昇りはじめる彼の背もまた、朝の光に溶けていった。



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