~うちの子三連ピックアップガチャ~
R[貯金箱]杉並壱樹より
日常
@lianmiso
「貯金箱か。懐かしいな。」
貯金箱をニコニコしながら眺める湊の手の内からひょいと壱樹は貯金箱を取り上げた。あ、と微かに湊が声を上げる。ずっしりと重みのある陶器製のポストの形を貯金箱は振っても音が鳴らない。
今時の若けぇのにはそぐわない昭和レトロな貯金箱を何故湊が持っているのだろうか。
「商店街の、くじ引きで、当たったんです。僕のはあるし、どうしたら、いいか。壱樹さん、使います?」
「貯金箱ねぇ。」
姉が玄関の靴箱の上に貯金箱を置く姿を思い出した。小学生の頃の休みの日である。
駄菓子屋に向かおうと階段を駆け降りた壱樹が姉に声掛けた。
『それなに?あたらしいおはな?』
『貯金箱。気が向いたら貯金箱にお金を入れて貯まったら、美味しいものでも食べに行こうと思ってるの。』
『おれもやる!』
『じゃあ、一緒にやりましょうか。気が向いた時でいいのよ?お小遣いは自分のために使いなさい。』
貯金箱に自分の小遣いを入れるのはささやかな楽しみであった。姉と比べたら雀の涙ほどだったが、目的に一緒に進んでいくのが嬉しくて無意味に貯金箱を振ったものだった。
あの時もポストの貯金箱だったな、と、手の中の赤を見た。あのポストの貯金箱はまだ家の玄関にある。
「玄関に置いて、気が向いた時に貯金してさ、ある程度貯まったら、霧凍連れ出してなんか食いに行くのはどーよ。」
「それ、いいです!すごくすごくいい……!」
「無理はダメだからな。気が向いた時でいーの!湊の金は湊のだからな。」
ニッカリと笑った壱樹に湊が何度も頷いた。赤いポストの貯金箱は事務所の玄関に置かれ、湊がたまに嬉しそうにシェーカーを思わす勢いで振っていた。
「なんです、それ。」
霧凍に問われ、湊と壱樹は顔を見合わせる。霧凍の無愛想な顔を見ると「秘密」と揃って答えて笑った。
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R[貯金箱]杉並壱樹より