カルみと 要素は薄め
通過シナリオネタバレあり
@popo_trpg_ss
ゆっくりと瞼を開く。
降り注ぐ柔らかな日差しを、煩わしいと感じるようになったのは、いつからだろうか。
もう数えることも忘れてしまった。数え続けたら、気が狂ってしまうと思ったから。
あと何回、間違えるのだろうか。
あと何回、同じ台詞を言えばいいんだろう。
あと何回、あと何回。
彼を救えるまで、あと何回?
助けてと、無様に叫びたかった。
忘れないでと、縋って泣きたかった。
けれど口を噤んだ。歯を食いしばった。
叫んでも、縋っても、何も変わらない。
背負って耐えることが、自分の罪だと思ったから。
もしもあの日、あの場所で出会わなければ。
もしもあの日、彼の腕を引かなければ。
もしもあの日、一緒に行こうと誘わなければ。
そんなもしものひとつでも変わっていたなら、彼がこの呪いに巻き込まれることはなかったのに。
ちらりと隣に立つ彼に視線を向ける。
不思議そうな表情で祠を見つめる彼はふと、違和感を覚えた様子で額に手を当てた。
「…痛む?」
「あぁ……うん、ちょっとね。」
今回の世界で、彼が痛むのは頭なのだろう。
頷く自分の胸が刺すように痛んだ。それがループの代償なのか、罪悪感によるものなのか、もう分からない。
「…じゃあ、この世界はもうだめだな。」
「え……?神無ちゃん、今なんて?」
ぽたり、頬を伝い落ちた雫に彼が目を見開く。
「…なんで、泣いてるの?」
彼の声に誘われて自分の頬へと手を伸ばせば、指先に濡れた感触があった。
嗚呼、また自分は泣いているのか。
涙なんて枯れたと思っていたのに。
だって、泣いても何も変わらないから。
「なんで…だろうな。」
呟いた声は震えていた。
彼の手が伸びて、頬に触れる。
手袋越しに伝わる熱が離れていくことが惜しくて、その手を必死に捕まえた。
「…神無ちゃん……?」
「………けて、」
ぽつり、呟いて両手で彼の手のひらに縋る。
直前にどうにか飲み込んだ言葉は、幸いにも彼には届かなかった。
「神無ちゃん、どうしたの。」
とめどない涙を流しながら何も言わない自分に対して、困惑する彼はどうにか落ち着かせようと震える肩を撫でた。
ふらりと一歩を踏み出して、胸に顔を埋める。
驚いたように息を呑む彼だけれど、拒絶はされなかった。一度懐に入れた人間には、優しい彼だから。
「……ごめん。」
「…かみ、な……」
「ごめんな、だらだら先輩。」
次はちゃんと、上手くやるから。
呟く言葉に彼は再び目を見開く。
彼が何かを口にするより先に、きつく目を閉じた。目尻から零れ落ちた雫が地面に落ちた。
再び、二人は新たな世界に吐き出される。
柔らかな日差し。人の気配のない山奥。
変わらない、何百回目の世界。
「………あれ…?」
僅かに眉を顰める彼を横目に、浅く息を吐く。
『ーーーあぁこれだ、この祠だ。
ぱぱっと調査するから、だらだら先輩はそこで待ってて。』
終