夜ロナ。
ロナードは元気に振り回されて欲しい
@hirop573
昼下がり、稽古の休憩がてら腹を満たすために外出したロナードは、見計らったような夜来香の迎えと共にとある木陰に攫われた。
公園の隅、誰もいない静寂が訪れる中で何故か心臓が煩い。
それはそうだ。
なにせ自分の膝を枕にして寝転がっている男がいるのだから。
「…貴方がまさかこれを望むとはね」
不満気に出た声とは裏腹に髪を触る手は柔らかく。何をしても見透かされるだけなので、この反応も案の定夜来香に笑われるだけだった。
「何故笑うのかな」
「あぁ、失礼。機嫌を損ねてしまったと思っていたので…思った反応と違ったな、と」
「そう思っているのなら退いて貰えると嬉しいが」
「そんな勿体無い事を」
「……はぁ」
ひとを拉致しておいて随分な態度だ、とロナードはため息をついた。寧ろこの男といてため息をつかない日が無いのではないかと思い返すぐらいで。
しかし滅多にない状況にこれは役得なのではと感じており、ロナードは好機とばかりに夜来香の髪を触る事にした。
(てっきり身だしなみを気にするタイプかと思っていたが)
整髪料や香りなどを付けて硬くなっているのだろうと思っていたが、夜来香の髪は意外にも自然派というばかりに柔らかく傷んでいない。ここは、そこも、あれも、と陽射しを利用して角度を変えて思わず見つめてみる。
「ロナード」
風が吹いていてもはっきりと聞こえる声にはっとして手をあげた。やってしまった、と思ってもそれはもう遅い。
「…あー、その、すまない。思ったより柔らかくて」
「構いませんよ。…あぁ、その代わりですが」
「!?」
髪に触れていた手を取られ口付けられた。
「手数料としていただきます」
触っている間大人しかったのはこのためか!と毒突きたかったが、開いた口が塞がらなく顔が火照っていては言葉が紡げない。
硬直してしまったロナードを他所に夜来香はどんどんと拍車をかけていく。手のひらから手首、果ては手の甲まで口付けを落としていく。人通りを選ばなかったのはこの男の良心か、はたまた揶揄うために避けただけか。
それは当の本人しか分からない。
「ほら、どうしました。触らないので?」
「触ったら手数料を払うのだろう…しないさ」
「おや。今ならタダ、と言っても?」
少しだけ眠気を纏いながら、ロナードは見上げてきた男の瞳を見下ろし告げた。
それは何度も何度も経験したからこその言葉だった。
「貴方から発する"タダ"や"約束"という言葉はアテにならない。やめておくよ」
降ってきた言葉に、夜来香は笑みを一つ返すだけである。