@kokei_pic
☆ フェリ→レス、ディミ→レス、クロ→レス要素があります
☆金鹿ルートで比較的早い段階からスカウトされたフェリクスの話です 支援会話などネタバレご注意ください
☆青獅子ルートクリアして爆泣きして金鹿ルート始めて死ぬ気で全員スカウトしたら青獅子スカウト組のセリフがいちいち抉ってきたから書くしかなかったんです
☆書くしかなかったんです
☆捏造いっぱい
☆途中で終わります
☆なぜならこの後を書くと必然的に辛い場面を書くことになるぞ……? となったので…… キリのよいところで上げて置こうかなと 尻叩きかねがね
☆FEは覚醒くらいしかクリアしてないにわかが書いておりますので、何か表現のおかしいところあったらそっと教えてください
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印象的だったことがひとつある。
未来の主であったはずの猪は、フェリクスが学級を移ると事後報告したとき、意外にもすこし気分を害したような顔色になったのだ。しかし奴はすぐにそれをおさめた。だからわざとからかうように言ってやった。
「お前こそ級を移りたいんじゃないのか?」
「……馬鹿なことを言うな」
彗星のように現れた謎多き金鹿の担任は、級を越えてさまざまな生徒たちを刺激した。武芸に秀でるものを実力で圧倒し、智謀戦略に長ずるものが唸るような采配をとった。物静かで愛想がないようにみえるが、生徒に分け隔てなく接し食事やティータイムに誘い、だれの話でもじっくりときく。多弁では無いが必要な言葉を尽くす。
青獅子の級長もその例に漏れず、彼女を慕っていたように思う。まず、彼の怪力をものともしない教師というのが、彼の人生で初めての存在だったのではないだろうか。
フェリクスが彼女に興味をもったきっかけも、ディミトリが悔しそうに彼女にどうしても勝てないとこぼしたからだ。彼女がただ者ではないという噂は聞き及んでいたが、そこまでのものなのかと。そして彼女が闘技場にやってきたときに軽い気持ちで手合わせを願い出て、見事に完封されて。
剣の道を極めたいと望んだフェリクスが、彼女――ベレス・アイスナーからさらに沢山のものを学びたいと考えるのに、そう多くの時間はかからなかったのだ。
◇
青獅子から金鹿への移籍は新鮮で、充実したものだった。所属の差から軋轢が生まれぬようにと引かれた線の役割は了解しているが、ことフェリクスにとっては厭わしくもある王国の家同士の繋がりがなく、自由な雰囲気のコミュニティは気楽で居心地がよい。
もちろん同盟の中に生きるものたちの中にはそれぞれ積もったものもあるだろうが、教室全体の空気は青獅子のそれより明るくカラリとし、時々散逸過ぎるきらいがある。イングリッドあたりなら統率のなさにイライラしそうだ、と思うほどだ。
「それはクロードの責任ですね」
「おいおい、何を言うんだよリシテア。俺はまとまりのない金鹿の学級 を日々必死に取りまとめている誠実な級長だっていうのに」
「そういうところですよ」
フン、と鼻を鳴らされ、クロードはわざと大袈裟に肩をすくめた。もちろん彼はまったく堪えていないし、彼女もそれをよくわかっている。じゃれあいのようなものだ。それが理解出来るくらいには、この学級に馴染んだということか。
「……っと、勉強中だったか。すまんすまん」
「フェリクスが理学に目覚めたんですよ。クロードもどうですか?」
「ほう? わが金鹿の学級 随一の剣士が理学も使えるとなれば、戦略も拡がる。ぜひものにしてくれよ」
背中をポンと叩き、クロードはニヤリと笑う。食えないところもある男だが、人心掌握という観点ではかなり優秀だ。つねに周囲の流れを読み、良いこともそうでないことも無駄なく活かしていこうとする、才能。
――その爪の先を煎じて、あの猪に飲ませた方がいいんじゃないだろうか。
そんなことを考えた。
「だいぶ馴染んできたね」
クロードが去り、リシテアが自室に本を探しに行ったところでベレスがやってきた。こちらの手元を見て、薄く微笑む。彼女に指導内容の変更を願い出たのは、つい先週のことだ。
「ここへ来る前、食堂でディミトリに会ったよ。君を心配してた。仲良くやってると言ったら、ちょっと驚いた顔もしていたけど」
「……フン。あいつめ、余計なことを」
「このぶんなら、心配なさそうだね」
休日の金鹿の学級 の教室に、コツ、コツ、と靴音が鳴る。ベレスはリシテアが座っていた椅子に、ちょこんと紙包みを置いた。首を傾げると、「内緒」と指を立てる。
「さっき買ったばかりのお菓子。丁度リシテアが好きなやつがあったから。他の子には内緒ね。戻ってきたら伝えておいて」
覗き込むように言われて、内心動揺してしまって歯噛みした。柔らかで剛く、豪胆で細やか。その彼女が用意した贈り物に、フェリクスが覚えたのは少し重たいおかしな気分だった。リシテアが隠していた甘味への嗜好を彼女が知っていたこと。彼女がリシテアに特別に用意したという事実。それらに、腹の底がどうにもいまいち、納得ができないような。
――それがいちばん近いのは、嫉妬という感情だ。
◇
ぽつぽつと雨が降る。
石畳を濡らし、木々を潤し、涙を濯ぐように。
◇
ガルグ=マクの崩落以降、士官学校に通っていたものたちは否応なしにそれぞれの戦乱に巻き込まれていった。フェリクスも紆余曲折ありながらもフラルダリウス領へ戻り、そして暫くしたのち……王都フェルディアにおいて、ディミトリ=アレクサンドル=ブレーダットの処刑が執行されたことを知らされたのだった。
「それで、最近はどうだ?」
「お前な……目立ちすぎだ、阿呆」
「王国領の貴族たちと諸国同盟領の間の折衝をするのは、俺の大事な仕事だろ?」
「抜け抜けと」
フラルダリウス領にいくつかある砦を巡回しているフェリクスのところに、レスター諸国同盟の若き盟主がひょっこりとやってきては雑談をしていくことがあった。これが事前通知なく、飛竜に乗ってふらりとやってくるのでフェリクスはいつも文句をつけるのだが、クロードは意に介さずニヤリと笑うばかり。おそらくこの行動そのものが何かに対する牽制であり布石なのだろうが、いいように使われているようで腹立たしい。
「こちらは変わりないぜ。強硬派のジジイどもも、いっとき危うかったがひとまずはひっこんでくれてる。あとはローレンツが意外といい仕事をしているな。……あと、うちにも処刑の報せが届いた。ディミトリの」
「ああ」
きっと聞かれるだろうと構えていたのに、思っていたよりも尖った声の出し方になってしまう。するとクロードは深く椅子に座り直し、色の濃い肘掛にもたれるようゆっくり脚を組み替えた。
「思ったより落ち込んでいないな。いや、失礼。誤解するなよ。長い付き合いだったんだろう? 落ち込んでいないはずがないとは思ってるんだぜ」
「……フン」
「おかしな事を言ってもいいか、フェリクス。……俺はアイツが、ディミトリが死んだとはどうも信じられないんだ」
「何故、……そう思う」
「フェルディアの顛末は聞き及んでいる。正直、手際が良すぎてあからさまなほどだと思ったよ。エーデルガルドの動きを待っていたかのように摂政、前王兄リュファス=ティエリ=ブレーダットが誅殺され、時を同じくしてファーガスに戻っていたディミトリがその罪に問われた。もっともらしい動機とやらもあるそうだが、まともな審判もなしに、よく進めたもんだ。まったく神聖ファーガスは優秀な司法機関をお持ちで……おっと、そう睨むなよ」
クロードはいったん息を吐き、肘置きをコツコツ、と中指で叩いた。
「しかしそれなら、次に行われるのは公開処刑でないとおかしい。民衆に、ブレーダットの血の最期を大々的に知らしめるはず。ここまで周到にコトを進めたヤツが、秘匿処刑なんてチンケな逃げを打つハメになった、それはどうしてか、ってな。ただの勘と言ってしまえば勘だが――なによりあの賢明なディミトリが、前王兄を手にかけるような愚策をとるなど、とても考えられない」
それは――可能性のひとつとして考えられていたことだった。
しかしまさかそれが、目の前の若き盟主、金鹿の級長の口から語られるとは思ってもみなかった。
「……酔狂なことを考えるのは、王国のものだけかと思っていたんだがな」
「ははは、酔狂か!」
何が面白かったのか、クロードは声をあげて笑った。目の辺りを擦り「悪い悪い」と片手を上げてみせる。
「ディミトリのことだけじゃない。俺はな、フェリクス。じつは先生のことだって、まだきっとどこかで生きているって、思えて仕方がないんだ」
◇
――周年祭の夜。
フェリクスが金鹿の学級 へ移ったあともディミトリを始めとする 青獅子の学級 の友人たちとの交流は続いており、舞踏会ではイングリット、アネット、メルセデスたちと一度ずつ踊ることになった。こうなれば声をかけなければ角が立つかと現在の級友を誘ったが、結果として金鹿の学級 でフェリクスと踊ったのはヒルダのみだった。レオニーは「柄じゃないだろ」と言い、マリアンヌは黙って首を振り、リシテアは「結構です。フェリクス、誘いたくもないのに誘わなくてもいいのでは?」とバッサリと切ってみせた。
痛いところを突かれた。
元来フェリクスは、こういった賑々しいイベントが苦手だ。それなのにイングリットたちの誘いを受けてしまったのは、それは――
「こんなところにいたのか」
「ディミトリ」
舞踏会の喧騒から逃れるようにひとけのない場所へ身を忍ばせていたら、かつての級長が姿を見せた。青いマントは明るい夜の中でもひとつ沈んでみえる。
「…… 青獅子の学級 の級長様が、こんなところにいていいのか?」
「もう舞踏会そのものはほとんど終わっているからな」
ディミトリは少し逡巡したのち、フェリクスが寄りかかったレンガの壁から少し離れたところに背中を預けた。歴史あるガルグ=マクのレンガの色合いはフラルダリウスでよく見かけるものとは違うように思う。イグナーツあたり、そういったことに詳しそうだ。
「最初は心配していたが、すっかり金鹿の学級 らしくなったな」
「……どこがだ」
「居心地がよさそうでなによりだ」
言葉の裏に「 青獅子の学級 よりも」と隠されていそうな言い方に、眉を顰める。否定しようとしたが、できなかった。確かに金鹿の学級 の居心地は良かったからだ。ただそれと、 青獅子の学級 を比較するのは間違っている気がする。
「剣術はもちろんのこと、ほかの技能も多彩で優秀だと、先生が褒めていたぞ。この間の剣術大会でも優勝していただろう。……先生には勝てたか?」
「いや」
「高い壁だ。星のように」
なにか言おうとして、唇を閉ざす。
かたちのよい顎を持ち上げ、ディミトリは夜空を見上げた。夜空に落ちるうつくしい星々に、どうしても手は届かない。
しかしその横顔からは、あのダスカーの悲劇以降にはついぞ見られなかった不思議な穏やかさが感じられた。……否、もっと前からそうだった。彼の心には、いつの間にか彼が追う星ができたのだろう。
――ただひとつの、冷え冷えと輝く極星が。
部屋に戻るというディミトリを見送り、またガルグ=マク内を彷徨った。食堂の辺りではまだ喧騒が続いている。けれど、まだ部屋に戻ろうという気分にはとてもなれなかったので足の向くまま静けさを求めて歩いていたとき、フェリクスは見てしまったのだ。
女神の塔から、担任であるベレスと――そのベレスをいちばんにダンスに誘ったクロードが、手を取り合って出てくるところを。
◇
奇跡などない。
偶然になど頼らない。
五年間の戦乱を生き延びて来られたのは、ただ死ななかっただけだ――とどこかで冷徹な自分が評価する。いつどこでのたれ死んでもおかしくないし、明日ロドリグ が死んだと知らされる可能性だってある。
それでもフェリクスが五年後のこの日にガルグ=マクへとやってきたのは、自分としては半ば義務感のような気持ちからだった。
やり残した課題を提出しに来たような。
意味の無いことかもしれなくても。
誰も現れないとしても、それでもいいから。
(……だというのに)
信じられない光景に、剣を握る手が震えた。
瑪瑙の髪。
薄桃の頬。
引き抜く鋼の鈍色が宵闇に軌跡を描いて、賊どもを切り伏せていく。一撃必殺、けれど血飛沫をかろやかに避けて前へと進んでいく。
「おっ、ひと足遅かったな。フェリクス」
――フェリクスの到着をもって。
記念すべきガルク=マクの千年祭の夜に、五年前の金鹿の学級 の卒業生がすべて、揃ったのだった。