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エンドロールのその先へ。

全体公開 1351文字
2023-02-19 18:22:54

ストリーマーグラセフの救急隊隊長・命田守視点のSSです。思いっきりネタバレが含まれています。
少なくとも1/9以降の配信を見てから読んでいただきたいです。
彼の中にいる、2人の会話。

目の前で起こっている問題に、以前の“俺”ならどう対処していただろう?
どうしたらいいのか分からない。
だから俺は、全てを観察することにした。静観と言った方が正しいかもしれない。
経験をして、理解をして。そこからまた対処を考えていけばいい。
俺は“命田守”でなければならないから。

記憶に穴があっても、それでも俺はこの街の救急隊隊長でいなければならないから。

「なあ、やっぱり無理がないか?」

そんなことは分かっている。
勘のいい人間はすぐに違和感に気付いたようだが、それでも。
皆の望む男を演じなければ。

心に底があるのなら、箱があるとしたら、今“あいつ”は閉じている状態なんだろう。
眠っているという表現が正しいのかもしれないが、今の俺には眺めていることしかできないと思っていた。
最後にあいつは、何をしようとしていたのか。
あの子が言うように、すべてを忘れようとしていたのか?
この街にかかる霧のように、はっきりとは見えない記憶と想い。
過去に向き合うことを怯えていた男の心を、ひたすらに守ろうとした存在を眺める。

『これで君は、本当にいいのか』
『私にはこうすることしかできないから』
二度と戻ってこないかもしれないぞ』
『それでも私は』

――――生きていて欲しい。

それは彼女の我侭でもあり、心残りを昇華するための行為だったんだろう。
誰かを思う心を持っていたのは、眠っている“俺”の方だ。
SMILEと名付けられた俺ではなく、レーサーとして暴れていた俺でもない。
“命田守”という男の方なんだ。

正直、うらやましいと、思う。
でも俺は、それを口にすることを躊躇った。
言ったところでいずれ消える存在なんだ。命田守から欠け落ちた一部だとしても、それは変わらないだろう。

「あなたも大事な、命田守の一部っていうことは忘れないでね」

偶然の産物のような俺に、“彼”の想い人はそう言った。

意識の底から、さざ波が生まれる。
“彼”が目覚めようとしているんだろう。
眠る子供のように体を丸めている男の胸元に、強く光るものが見えた。
光の洪水が周囲に広がって、巨大なシアターのようなものがいくつも浮かんでくる。
出会い、言葉を交わし、時には衝突だってした仲間との記憶。
想いを伝えた大切な人との記憶。
意識を失う直前に手を伸ばして、自分の想いごと手放さないように抱えたままだったとは。

やっぱり敵わないなあ』

近くで聞いているであろう彼女を見る。何とも言えない、照れたようにも困ったようにも見える笑み。
消える、という覚悟はあった。何とか持たせようという気持ちだってあった。
でも、それすらも抱えていていいのだとあの子は言ってくれた。
まさか俺までも掬い上げてくれるとは。

『ああ、完敗だ』

心から笑うとは、こういうことなんだ。
後生大事に抱えているんじゃなくて、今こそ覚悟を見せるときだろう。
目覚めたら、言うつもりだったんだろう?

“そろそろ起きて、おねぼうさん”

“大事な人が待ってるぞ”


ありがとう」


すれ違いざまに、男の背中を軽く押した。

108本の花束に、俺と彼女からの祝福も乗せるよ。
今度こそ、幸せを掴め。手放すなよ、命田守!!


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