霧凍と拳銃と師匠
@lianmiso
武器に拳銃を選んだら引かれた。
「貴方ならわかるでしょう。見た目の暴力性、重み。平和ボケしている人にはちょっと刺激が強いかもしれませんがねぇ。」
避難勧告が面倒臭い時は足元に一発撃てばいい。逃げなくとも動きくらいは止められるだろう。
師匠なら賛同してくれる。
予想を裏切り、目の前の師匠は山で間違えて渋柿を食ったような顔だ。
「魔術、呪術とか操る一族は現代兵器を舐めてるから、牽制の効き目が薄い。」
「私の弾丸は特別性です。普通のタマとは違うのですよ。舐めているならば、ふざけた考えごと吹っ飛ばせるじゃないですか。」
「刃物は魔除けになるんだが、銃は………」
「銀の弾丸とかあるじゃないですかぁ。貴方が知らないわけないでしょう?どう言われようと私は銃で行きますからねぇ。」
師匠が銃が嫌いと聞いたのは、会社内で打ち合わせをしていた時だ。
普段兄の言葉を聞き流すが、師匠のことならば無視できなかった。
「銃の発砲音が聞こえる時、必ず嫌な事が起きるからだそうですよ。路地裏でも烏島の山でもどこでもね。銃声なんて物騒ですが、都会に行けば今の時代どこでも聞きますから、不思議なものですね。あ、烏島は都会じゃなかったですね。おぉい、もしもし?霧凍くん?聞いてます?反応ないと兄さん、寂しいですよ?」
通りで兄がたまに空砲を事務所で撃ち、にやけ面をしている訳だ。喧しいからやめてほしい。しかし、その割に師匠は無反応だ。仕事中は自分でも銃を撃つ。
「仕事に好き嫌い持ち運ぶ方が阿呆だろ。選択肢選べる方が贅沢。贅沢は敵!そう俺は教えなかったか。そうか。じゃあ修行のやりなお」
軽快に片手でくるりと銃を回し、体育祭のスタートのように上に向けた。晴れやかな笑顔を見せる師匠の修行は朝昼夜関係の無い雨天決行のサバイバルだろう。絶対にごめんだ。
「仕事があるので。」
自分がいなくなったら誰が書類仕事をやるというのか。誰かさんたちがめちゃくちゃにした他者との連携、取引をしているのは誰だと思う?胸の辺りまで上がって来たのを飲み込んだ。
師匠は銃が嫌いと湊に話してみると、腕組み、海鳴りを思わせる唸り声を上げる。
「どうしたんですかぁ。さっさと答えなさい。」
「柳くん、銃声で曲作ろうとしてたから、嫌いってわけじゃなさそう。」
師匠の親友の証言にひとつの結論に辿り着いた。
私に銃を持たせたくなかったのではないか、と。
考えてみれば、銃を眺めていると脳の中の歯車が錆びつく時がある。あれは一体?
真正面から聞いても師匠は語りはしないだろう。どう聞き出したものか。
霧凍は机の上の銃を睨みつけた。