こさかな
@pandanokurage
美穂が帰った後
夜ご飯を終えて、部屋で勉強していると
菜:〇〇〜
〇:ん?
菜:ちょっとお話したいんやけど
〇:うん
姉ちゃんが控えめにやって来た
菜:、、うち、なんかした?
〇:え?
菜:その、、〇〇に嫌われとるんかなって
〇:別に、嫌ってないよ
菜:でも冷たい感じがして、、
〇:普通だから、話ってそれだけ?
無性に会話を続けたくないと思った
菜:えっ、そうやけど
〇:じゃあ、僕は勉強しなきゃいけないから
そう言って机に向き直ると
菜:うちがアイドルやから?
背後から小さな声が聞こえた
〇:、、、
菜:アイドルやから嫌いなん?
〇:いいから出てってよ!!
菜:っ!?、、ごめん
核心を突かれた言葉
無意識に叫んでしまった
こうなっては勉強なんて頭に入らず
ただただノートを眺めているだけ
隣の部屋からはすすり泣く声が聞こえる
僕は悪くない
そう言い聞かせることしかできなかった
耳を塞ぐためにイヤホンをつけて
机に突っ伏して心が落ち着くのを待つ
そのまま気づけば朝になっていた
〇:、、はぁ
ため息から始まる一日
今日も休日でよかった
スマホを確認しようと机を見た時
ふと1枚のメモが目に入った
そこには小さな文字で
「ごめんね」
この4文字が書かれていた
まず間違いなく、書いたのは菜緒
昨晩のことで話すのは気まずいが
このメモの意味を知る必要がある
本能的にそう思った
コンコン
試しに姉ちゃんの部屋をノックするも返答はなく
玄関の靴を見てみれば、既に家を出ていた
電話をかけてみるも応答はなく
頭の中では、昨日の姉ちゃんの言葉とこの4文字が離れなかった
何もせずに
何もできずにただ時間だけが過ぎていき
夕方の5時
ブーッ、ブーッ
1本の電話が
〇:もしもし
美穂:〇〇くん?
〇:はい
美穂:落ち着いて聞いてほしいんだけど、、
美穂:菜緒がアイドル辞めるって
〇:はっ?
美穂:マネージャーにはまだ言ってないらしい
〇:、、、
絶対僕のせいだ
僕が向き合わないで、あんなことを言ったから
美穂:何があったかは知らないけど、〇〇くん次第だよ?
〇:、、はい
美穂:前に言ったこと忘れてないよね
〇:後悔、、しないように
美穂:そう、あとは頼んだよ
気持ちがこもった美穂の声
どう考えても、僕が悪い
せっかく菜緒姉ちゃんは仲良くしようとしてくれたのに
一方的に突き放した
何をどう伝えるべきか
まず何から話すべきか
どんな顔で菜緒姉ちゃんに話しかければいいのか
様々な問題が発生する中
1つも答えを出すことができず
ガチャ
菜緒姉ちゃんが帰ってきてしまった
何を話すか決めていなくても
体は自然と姉ちゃんの方へ
菜:あっ、、ただいま
ソファに座っていた姉ちゃん
〇:、、、おかえり
違う
僕が言いたいのはそんな事じゃない
せっかく夢を叶えてアイドルになった姉ちゃんが
アイドルを辞めようとしている
のんびり挨拶なんてしてる暇はない
菜:実はな、うちアイ、、
〇:ごめん!
菜:えっ
〇:ずっと嫌だったんだ、姉ちゃんと比べられるのが
菜:比べられる?
〇:姉ちゃんはアイドルになったのに、僕は何もできない
菜:、、、
〇:それを周りに言われる度に自分が嫌になって
本音を口に出せば出すほど
どんどん視界がぼんやりしていく
〇:姉ちゃんは悪くないのに、姉ちゃんに八つ当たりして
あぁ、泣くほど辛かったのか
目からこぼれる涙に改めて苦しんでいたことを自覚する
〇:ほんとに、ごめんなさい
姉ちゃんに頭を下げると
カーペットに数滴のシミができているのが目に入った
菜:〇〇、、
ギュッ
名前を呼ばれ頭をあげれば
僕の体は菜緒姉ちゃんに包まれた
菜:よく我慢したね
〇:、、えっ?
菜:〇〇は悪くない
〇:でも、僕は、、
菜:〇〇はうちのこと嫌い?
〇:嫌いじゃない、好きだよ
菜:よかった、、うちも〇〇のこと大好きやから
〇:、、、
菜:世界で一人だけの、うちの大切な弟や
いつぶりだろう
僕は声を上げて泣いた
小さい頃から、何かあると姉ちゃんはハグして慰めてくれた
だからかな
こんなに落ち着いた気持ちになったのは
この日の夕飯の時
姉ちゃんは母さんに僕の思いを全部伝えてくれた
母さんは僕に謝ってきたが
そんなことはどうでもいい
今なら別に比べられたって何も思わない気がする
菜緒姉ちゃんに比べて僕は何もできない
優れている点はない
それでもいいんだ
菜:〇〇!
〇:なに?
菜:今日一緒に寝てもええ?
〇:うん、いいよ
これもいつぶりかな
まさかこの歳になって一緒に寝ることになるなんて
菜:もっとこっち!
〇:はいはい
布団の中で密着する僕ら
菜:最近〇〇冷たかったやん?
〇:まあ、うん
菜:彼女でもできたんかなぁって思っとった笑
〇:そんなわけないじゃん笑
こんなお姉ちゃんがいるんだ
彼女なんてできるはずがない
菜:ほんまに、ありがとう
〇:、、僕の方こそ、ありがとね
もう二度と傷つけるようなことはしない
そう誓った、なぜなら
菜緒姉ちゃんは僕の大切な
世界で一人だけの最高のお姉ちゃんだから
end