ひなちゃん
@pandanokurage
〇:す、すげぇ
日向坂46、握手会
まだ春は訪れていない寒空の中
こんなにもたくさんの人が会場に足を運んでいる
紛れもないこの事実が
彼女たちの人気を証明していた
そんな中、握手会初参戦
人の多さに圧巻されているのは
僕だけではないはずだ
〇:はやく並ばなきゃ!
負けじと人混みの中に足を踏み入れ
推しのレーンに並ぶ
考えることはただ1つ
陽菜ちゃんに何を伝えるか
伝えたいことなんて山ほどある
その中から選び、且つ短い時間で伝える必要がある
言葉選びが大切になってくるのだ
「いつも応援してます!」
握手会初心者にありそう
ストレートで伝わりやすいが
ありきたりすぎてイマイチな気がする
「釣ってください!」
これも結構言う人が多い印象がある
たしかに目の前で推しが釣ってくれるのは嬉しいし
握手会の楽しみ方としてもいいと思う
ただこれは僕の考えすぎかもしれないが
陽菜ちゃんはそういうのが得意じゃないと思うのだ
やってくれるにしろ、できれば無理はしてほしくない
「〇〇って言います!覚えてください!」
これは握手会場上級者が言いそう
僕はきっと言えない
コミュ障すぎてそんなこと口に出せない
一歩一歩、確実に進んでいくにつれて
指先の感覚がなくなっていく
この手の冷たさは冬のせい
そう思うことで少しでも緊張感をなくそうとした
気を紛らわそうとしても
やっぱり楽しみにしてた分
緊張も収まらない
〇:や、やばい
いよいよ先頭の人が見えてきた
未だに何を言おうか決められない
握手を終えて幸せそうな表情で出てくるファンの人
この人たちは何を言ったんだろう
やっぱりシンプルに伝えるべきか
陽菜ちゃんの気持ちになって考える?
いや、それは流石にやりすぎか
「お時間でーす」
結局考えはまとまらず
次は僕の番
ここまで来るともはや何も考えられない
あと数秒後には陽菜ちゃんと、、、
「お時間でーす」
震える膝を叩き
ドキドキしながら仕切りの先へ
陽:あっ!
〇:えっ!?
挨拶しようとしたら
陽菜ちゃんの方から先に声を発した
しかもどんな意味を込められたのかわからない言葉
〇:は、はじめ、、
陽:君!初めましてだね!
〇:なんでわかるんですか!?
陽:それくらいわかるよ〜!
陽菜ちゃんにとっては初めての人なんて珍しくないかもしれない
でもこんな反応をしてもらえたら
僕にとっては強く印象に残る
それ同時に僕の中から緊張という2文字が消えた
構えている陽菜ちゃんの手に自然と手を合わせる
小さいながらも、温かみがあって包み込まれるような感覚
〇:、、好きです!
陽:陽菜も!君のこと好き!
〇:はっ、、、
心からそう思っていなくても
言葉として返してもらえるだけで昇天しそうだ
「お時間でーす」
陽:じゃあまた後でね〜!
〇:はいっ!
最後は手を振ってお別れ
きっと僕も、さっき見ていた人たちのような顔になっているだろう
しばらく幸福の余韻に浸ったあと
時間を見れば終了時間まであと少し
〇:やば!グッズも見たかったんだ!
ふと我に返り急いでグッズコーナーへ
目に止まるのは直接話した陽菜ちゃんのものばかり
今日だけはと思い、自分の欲しいと思ったものを買いまくった
〇:よかったぁ
陽菜ちゃんと話せて
グッズをたくさん買えて
今日の目的を全て果たすことができた
大きい袋を両手に持ち
人の流れに沿って会場の出口へ
せっかくの記念に
会場に来たことを写真に残そうと
出入口付近で滅多にしない自撮りを
こんな人混みの中での自撮りは抵抗があったが
羞恥心が思い出に勝ることはなかった
〇:よし!
もう思い残すことはない
お世話になった会場を後にしようとしたその時
チョンチョン
二の腕に外部からの接触を感じ
反射的に振り向く
〇:はい?
立っていたのは帽子を深く被った警備員さん
着いて来いと言わんばかりに人の少ない方向へと歩き出した
〇:なんだ?
不思議に思いながらも一応着いていく
僕がなんかしたのか?
その思考が頭の大半を占めていたが
人気のない所へ到着すると同時に
警備員さんのおかしな所に気づいた
〇:(なんかこの人、、小さい)
身長175cmと高くも低くもない僕に対して
彼女は頭一つくらい小さかった
〇:あの、僕何かしました?
無言で立ち止まった警備員さん
こちらに振り向き、深々と被った帽子を取ると
陽:やっほ〜!
〇:陽菜ちゃん!?
陽:しーっ!
大声を出した僕に
人差し指を突き立てて静かにするよう促した
〇:、、、なんで?
陽:言ったじゃん!また後でって!
〇:、、、
フラッシュバックしたのは握手会の最後の方
"じゃあまた後でね〜!"
あの時の僕は何も考えずに
元気に返事をしていたが
よく良く考えればおかしい
〇:もしかして来てくれたファンの方を一人一人、、
陽:違うよ!君にしか言ってないから!
〇:えっ、、えっ?
もう頭が回らない
混乱すると人間はまともな言葉さえ発せなくなる
〇:えっと、、なんで僕に?
混乱が落ち着き始め、やっとまともな質問を
しかし陽菜の答えに
陽:君が好きだから!
〇:、、、えっ?
再び混乱状態に陥る〇〇
そんな〇〇の目の前には
曇りのない笑顔ではっきりとそう言いきった推しがいた
to be continued