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私が煙草をやめれた理由

全体公開 Δドラヒナ 4279文字
2023-03-04 05:50:23

つき合っているΔドラヒナで禁煙の話です。隊長が喫煙している描写は公式にはないのですが、どういう訳かファンの間では喫煙者として書かれているという。なんとなく、私もそんなイメージがあるので、禁煙をテーマに書いてみました。
私自身は非喫煙者ですが、周辺に喫煙者が多いので彼らから聞いた内容を参考にしています。
なんとなくですが、「ペットを飼う」「彼女が非喫煙者」で本数が減る傾向にあり(外に吸いに行くのが面倒だから)、「結婚した」「子供が出来た」「夢中になれるものが出来た」で成功した(健康面、金銭面で相手との将来を考えたから。イライラするので吸っていただけで本当は好きではないから)人が多かったですね。なので、こういう感じになりました。
2023/01/29に上げました。

Posted by @kw42431393

 「えっと、これでいいのかな?」
 ヒナイチはコーヒーメーカーからポットを外すと、立ち上るいい匂いにうっとりと目を閉じる。
 「悪魔の様に黒く、地獄の様に熱々でえーと、ジョンの様に甘くって。」 
 コーヒーをカップに注ぎながら、ヒナイチはクスッと笑う。今日は、お互いやっと取れた休日だ。
 どこかに出掛けないか、と言われていたのだが、最近激務だったドラルクを気遣ったヒナイチは、家でゆっくり過ごそうと提案したのだった。今頃、ドラルクはリビングのソファでジョンを吸いながら、一緒に見るクソ映画を選んでいる所だろう。テーブルには、彼女がいつも楽しみにしているクッキーが置かれ、あとは彼女がコーヒーを持っていけば、上映会もといおうちデートの始まりである。
 「あ、フィルター捨てなきゃあれ?これは。」
 キッチンのゴミ箱を開けたヒナイチは、首を傾げた。



 クソッタレ勤労勤労
 今でこそ冗談で言えるし、合間合間でサボりも出来る。パトロール報告に来るヒナイチに振る舞う、手作りクッキーを焼く時間も捻り出せているのである。
 しかし、ドラルク隊が結成された当初はそうではなかった。飛び級で大学も警察学校も卒業し、多少『吸血鬼対策課創設者の孫』と言う看板が後押ししたとはいえ、20代半ばで隊長に就任できるものではない。虚弱体質を補って余りある、頭脳と突出したダンピールとしての探知能力が評価された結果だ。
 初めは嬉しかった。吸対に入った当初からの「自分の能力を使って市民を守る」意志を遂行しやすい所に来たのだと。
 配属された隊員達も少々変わっているが、優秀ですぐ脱ぎたがったり、ヒステリーを起こしやすい所がなければ連携も取れていて働きやすかった。マナー、フォン、にく美が入ってくる前だから、悩みの種と言えば人手不足であるという事だろう。
 ドラルクは当時から曲者ではあったが、まだ若かった。手を抜ける所は抜き、やるべき所はやる、というスタンスが出来なかった。
 隊員は早番と遅番があるが、隊長ともなれば、報告書の審査に部下へ指示も出さねばならない。場合によっては現地にも赴くし、上役や他所の吸対、ギルドとも、連絡や連携に動き回らなければいけない。結果、殆どの時間を署で過ごす事になる。
 一隊員の頃は早く帰って、ジョンとクソゲーをしたり、料理をしたり、同僚と遊びに行ったりも出来たのにそんな時間さえ削られていく。

 クソッタレ勤労勤労

 呪う様ににボヤきながら、いつの間にか覚えた煙草をふかすようになったのはいつからだったか。



 「ただいまぁ。」
 やつれた顔で玄関を開ける。今日、というよりもう昨日だ。朝8時から署に赴いて、現在の時間は深夜2時。まだ片付ける雑務はあったのだが、希美くんが「やっておきますので、休んで下さい。」と言ってくれなければ、まだ隊長室に籠っていたのではないだろうか。
 本当にできた仲間に恵まれたものだ。彼女には、お礼に何か作って持っていかなければ。

 ドラルク様、大丈夫かヌ?

 肩に乗っているジョンが、心配そうに顔を覗き込んできた。君こそ、ずっと私の仕事につき合ってて疲れただろうに。
 「ああ、ジョン。やっと帰れたよ。ビール、一緒に飲むかね?」
 次の出勤まで5時間はある。8時に出勤するまでは、アルコールも抜けているだろう。運転する訳ではないしね。
 冷蔵庫から冷えたビールと、作り置きのおかずを皿に盛ってテーブルに向かう。料理は私の趣味だ。だから、激務でも自炊は続けている。
 ただ、さすがに最近は手の込んだものが作る時間を捻り出せなくて、時短料理や、作り置きおかずをアレンジしたものが増えてきたのは無念だと思う。
 ジョンを膝に乗せて、缶ビールのプルダブに指をかけると、プシッという小気味良い音が鳴った。ジョンの分を小さめのグラスに注いで、一人と一匹でボンヤリとテレビに見入る。
 やっと1日が終わった、という寂寥感が湧く。これを片付けてシャワーを浴びて、眠りにつけば数時間後には新たな1日が始まるのである。
 さっき、電話でやりあったクソッタレ本部長の台詞がふっと脳裏に浮かんだ。
 「その位で音を上げるのか?私やドラウスの時代は、もっと酷かったぞ?」

 喧しい!やってる事は、ブラック企業と変わらんぞ!少ない人手と、お粗末な設備の現場で走り回ってる隊員達の事を考えてみろ!
 
 何度も言うが、ドラルク隊のミカエラくん、ゼンラくん、希美くんは優秀な隊員だ。前者二人は少々性癖に難があるが、全員実力は申し分なく、何よりこの街を守りたいという意志が強い者達だ。もう少し、勤務状況や環境を改善してやって欲しいものだ。
 ああ、思い出すとクサクサしてきた。片手が習慣的に煙草を探る。胸ポケットに手がかかった時に、ジョンの暖かい手が触れた。

 ドラルク様、今日はもう1箱だヌ。

 そういえば、そうだった。あのヒゲから仕事を増やされて、クサクサして結構吸っていた事を忘れていた。帰るのがここまで遅くなったのもそのせいだったな。
 「そうだったね。じゃあ、ジョン吸おっと。」
 「ヌヒヒィ。」
 膝のジョンを抱き上げて、腹毛に顔を埋める。ジョンのお腹は、焼きたてのメロンパンみたいな芳しい匂いがしていて、癒しに一番効果的なのだそれなのに。
 「ごめんね。ジョン。」
 
 ドラルク様?どうしたヌ?

 ああ、罪悪感。幼い頃から、ずっと私に寄り添ってきたこのマジロのお腹に、かすかに煙草の臭いが移っていた。ジョン自身は、煙草が好きではない。でも、私の隣にいたいから我慢していたのだろう。君の体にも悪いのに。
 「禁煙しないとね。」
 そう思うのは簡単だが、やるのは勇気がいるものだ。残りのこの一箱というのが曲者で、これを吸いきったら辞めようと思う。クサクサすると、うっかり買っている。今日日高いので捨てるのは勿体ないと、その一箱をポケットに入れている訳だ。
 ジョンには申し訳なかったし、健康が心配だから、吸う時はベランダや外に移動する様になった。だから、確実に吸う本数は減った。しかし、辞めるまでなかなかはいかないものだ。それが
 「ギルドマスターの妹のヒナイチです!よろしくお願いします、ドラルク隊長!」
 憧れの眼差しで私を見上げる少女の姿。
 「兄貴みたいな畏怖い吸血鬼になるんだ!」
 突然転がり込んで来た台風の様なお子様。

 君達に出会ってからそんなイライラする暇もない。だから、もういらない。



 「ヒナイチくん?どうかしたかね?」
 「わっ!?た、隊長。びっくりした。」
 急に声をかけられて、ヒナイチは飛び上がった。
 「ん?戻って来るのが遅かったのでね。様子を見に来たのだけど。」
 「えっと隊長、煙草辞めるのか?」
 不躾だとは思うが、聞いてみる。正式につき合いが始まって間がない彼女としては、少し気になる所だ。
 「ああ、辞めるよ。君達の体にもよくないし、ロナルドくんも臭いって煩いし。」
 「いや、ゴミ箱に未開封のものが何個かあったのでな。少し気になって。」
 ヒナイチは、ドラルクが喫煙者である事は知っている。ふかしている姿は、大人の男性を感じさせて満更ではないが、匂いはさほど好きではない。気づかぬ内に顔をしかめていたのではないか、と気にしたのだ。
 「フフフ、君が気にしている様な理由ではない。心配は無用だよ。元々、好きで吸ってた訳ではないし吸うならジョンの方がいいでしょ?」
 「それはそうだな。納得だ。」
 時々、ヒナイチもロナルドもジョンを吸わせて貰っている。仕事の合間に、マメにブラッシングをしている事は間違いなかった。
 「それに
 グイッと体を引き寄せられる。身を屈める様にして、ドラルクはヒナイチの首筋に鼻を押し付けた。
 「わっ!?ま、また?んっ。」
 「香水もつけてないのに、いい匂い。最近は、ヒナイチくんも吸わせて貰ってるもの。煙草なんか目じゃないだろう?」
 ピスピスと鼻息が近い所で聞こえて、ヒナイチは身震いをした。成人まで手は出さない、とカズサと約束してあるので、つき合っていると言っても、二人はまだキスとこの辺り止まりなのだ。
 「あっ!も、もういいだろう?ロナルドが来たらどうする気だ?」
 「ああ、ロナルドくんならお部屋の棺桶でちゃんと寝てるだろう。畏怖されたかったら、吸血鬼らしく6時まで寝てなさいって言ったからね。」
 そう言われて、チラリとヒナイチは時計を見る。今は、3時だ。映画を見ても十分余裕がある。
 「子供を寝かしつける父親みたいになってるなそれで納得するロナルドもロナルドだが。」
 「お子さまだからね、彼は。それより、もうちょっとだけね?」
 チュッとリップ音が、耳元でする。腰を巻いていた手が、お尻を撫でた。ヒナイチは、さらに飛び上がる。
 「あんっ!?もぅムッツリなんだから。それに、甘えん坊だな。」
 「そのムッツリな甘えん坊のおじさんに、告白してくれたのは誰でしょう?」
 「私だ。」
 苦笑して、ドラルクの背中にヒナイチが手を回そうとした時
 「ドラ公、ヒナイチ~。畏怖くないって言われそうだけど、寝れないわ。俺もクッキー、食べていい?」
 後ろから、あくびをしながらロナルドが姿を現した。いつもの正装ではなく、赤と白の柄付きパジャマ姿だから、いつも以上に子供っぽさが目立っている。
 「わっ!?ろ、ロナルドこ、これはその!!」
 「ろ、ロナルドくん。君ねえちょっと、空気読んでくれないかね。」
 焦るヒナイチに対して、眉間に皺を寄せたドラルクが恨めしそうな顔を向ける。
 「悪ぃ、起きたらお腹空いちゃってさ。それよりよお前ら何で結婚しないの?」
 「「黙ってろ!この5歳!」」
 二人に怒鳴られて、ロナルドは口を尖らした。

 ちぇ~、だってよ。その方が面白いじゃん。
 俺は吸対の備品だからさ、夜になるとドラ公とジョンのこの家に帰ってくんだろ?ヒナイチもここにずっといてくれたらなぁ、って思うんだよ。
 そしたら、みっぴきずぅ~っと一緒じゃん?
 なっ?そうしろよ!俺、妹いたからさ、子供の面倒みるのも上手だぜ?
 ダメ?へんなの。
 
 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 


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