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#燭へし版真剣創作60分一本勝負 お題「ひとのからだ」

みえろ🦋双騎ありがとう
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2015-08-22 23:32:21

ひとのからだ


今日は一日待機だった。
歌仙と二人で帰還する部隊の出迎えの任に就く。

三条大橋へと出撃していた部隊が帰還する。
部隊長の長谷部以下、部隊の皆の表情は晴れない。
今回もまた敵本陣を落とせなかったようだ。
重傷の薬研が部隊から外れて手入れ部屋へ入った。
交代に平野が入り、もう一度出陣する。

再び部隊が帰還する。また途中撤退だ。
敵本陣目前にして長谷部が重傷を負ったのだという。
長谷部は前田と平野の2人に引きずられるようにして戻ってきた。
手入れ部屋に入ったと思ったら、すぐに出てきた。
どうやら主は手伝い札を使ったらしい。
回復した長谷部が部隊を率いてまた出陣する。

三度めの帰還。
今回も途中撤退だ。
長谷部が重傷の前田を腕に抱えていた。
一緒に部隊を出迎えた歌仙が受け取り、手入れ部屋へと運ぶ。
今日の出陣は終いだと主から告げられる。

***

「今日の出陣はもう終わりだよ」
もう一度出陣しようと準備をしていた長谷部に、燭台切は主の言葉を伝えた。そうか、と返事をした長谷部は少しだけ悔しそうな表情を見せる。三条大橋の攻略にはずいぶんと手こずっている。今日こそは、という思いがあったのだろう。
「長谷部くん、怪我してるね?」
長谷部の身体の正面には、運んだときについたのだろう前田の血の痕があった。だがそれ以外に、背中に赤いものが見えた。
「大したことはない」
「いま手入れ部屋は空いてないんだ。手当てをするから僕の部屋に来て」
それだけ言うと、返事を待たずに燭台切は踵を返した。背後に長谷部のついてくる気配があった。

長谷部が防具を外し、カソックを脱ぐ。白いシャツ一枚になると、背中を走る切り傷がはっきりと見える。長谷部は何も言わないが、おそらく重傷だった前田を庇った際に負ったのだろう。
燭台切は血で張り付いたシャツを脱がすのを手伝った。
「ひとのからだは柔いな」
長谷部を座らせ、その背の傷を洗っているときに、長谷部がぽつりと言った。
「柔いが、このからだは何度でも、何度でも元通りになる。主の命ずる限り、戦い続けることが出来る。主は、なんと素晴らしい身体を与えて下さったのだろう」
答える言葉を見つけられずに、燭台切は黙って手を動かし続けた。

「終わったよ」
「……ああ、ありがとう」
長谷部の言葉は覚束ない。どうやら、座ったままうとうとしていたようだった。
「疲れているだろう? 休んでいきなよ」
「ああ、助かる……」
本人が思っているよりも、長谷部はずっと疲れていたのだろう。そう答えるや否や、目を閉じてしまった。ともすれば倒れてしまいそうな長谷部の上体を、燭台切は自分の背に寄りかからせる。
力の抜けた長谷部の身体は、少し丸めた燭台切の背にぴたりと添った。
「柔い、か……。だからこそこんなこともできるのだろうね……」
二人が刃と刃だったなら、こうはいかなかった。
首に吐息を、背に普段より少し高い体温を感じながら、燭台切はひとり呟いた。


2015.08.22


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みえろ🦋双騎ありがとう @segmenterin
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