ワンドロ、企画で書いたもの3点置いてあります。
ひとつめは自分たちのツムに遭遇する話。
ふたつめは幼少期にジャミルから大きな声を注意された話。
みっつめはGW最終日のふたりの過ごし方をチラ見する感じの話。
@yutacoappon2
甘やかす/似た者同士
放課後、部活へ行くためにジャミルとカリムは一緒に廊下を歩いていた。
「じゃ、また後でな!」
カリムが角を曲がろうとしたとき、前方から黒い影が飛び出してくるのをジャミルは見逃さなかった。咄嗟にカリムの腕を引き、自分の方へと抱き寄せて衝突を回避した。
「へ? ジャミル?」
「なんだ、今の」
カリムにぶつかりそうだった黒い影は、勢い余って壁にぶつかって床に落ちていた。ジャミルはカリムにその場から動かないように言い、注意しながらそばに寄った。刺客の飛び道具け何かだろうか。丸っこい手のひらサイズのものが転がっているが、よく見てみると目を回して倒れている。とりあえず、生き物ということはわかった。人差し指と親指でつまむようにして持ち上げ、手のひらに乗せて改めて見るとカリムにそっくりだった。
「カリム……?」
「え、なんだ?」
「お前、授業で変な生物作ってないか?」
「作ってないぜ……って、ジャミル! うしろ!!」
カリムに言われて振り返ると、今度は別の黒い影がジャミルに向かって突進してきた。先程のカリムに似たヤツよりすばやく避けられないと判断して、飛び込んできたものを右手で受け止めて捕まえた。
「ジャミル、大丈夫か?」
ぱたぱたと慌てて駆け寄ってくるカリムに動くなって言っただろうと声をかけため息をついた。右手で捕まえたやつがめちゃくちゃに暴れるので、カリム似のものをカリムに持たせ、両手で持つことにした。
「コイツ、オレにそっくりだな」
「ほんとに覚えがないんだな?」
「あぁ。あ、気が付いたみたいだ。大丈夫か?」
先程まで目をぐるぐるまわしていたカリム似の丸い生き物が目を覚した。指でツンツンするとくすぐったいようで、カリムの手のひらで転げ回っている。
「ははっ、コイツかわいいなぁ。寮に連れて帰るか」
「ダメだ。とりあえず、クルーウェル先生の所に相談に行った方がいい」
「えぇ~……」
「そっちはいいかもしれないが、こっちはすごく暴れてるんだ」
「外に出たいだけじゃないか? ジャミル、手緩めてやってくれ」
「ダメだ。暴れたり逃げたりしたらどうする」
そんなやりとりをしていると、一瞬の隙をついてジャミルの指の隙間から丸っこいジャミルにそっくりな生き物飛び出してきた。勢いよく飛び出てジャミルの顎にクリティカルヒット!
「いっ……!」
一瞬怯んだジャミルだったが、すぐに体勢を立て直し、胸ポケットからマジカルペンを取り出して攻撃態勢に入った。
「燃やしてやる」
「わー!! ジャミル待て待て! ストップ!」
丸っこいジャミルはカリムの肩に着地し、腕を移動して手のひらの丸っこいカリムの元にたどり着いた。何やら説教をしているみたいだ。
「……こっちは俺に似てるな」
「かわいいなー」
カリムが丸っこいジャミルを撫でようとすると手を払いのけられた。
「あははは、ホント似てるな」
その後、丸っこいカリムとジャミルはカリムの手のひらで大人しくしていた。クルーウェル先生のところで話を聞くと、自分たち以外にも同様のことが起きていること、原因がわかるまで自分に似たツムと呼ばれる生き物を各自面倒を見ることを伝えられた。
「じゃあ、寮に連れてっていいってことだな」
「はぁ、そういうことだな……」
「やったー! そうと決まれば今日はツムたちのために宴だな!」
宴と聞いてカリムツムは飛び跳ねて喜んでいた。一方、ジャミルツムはというと、やれやれという顔をしてジャミルと同時にため息を吐き、互いに目が合うのだった。
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大声/泣き声
これまでのジャミルの世界は家族とアジーム家関係者が中心だった。年齢が一番近いのと、主従関係にあったことからほとんどカリムと遊んでいた。しかし、それは世界の広さをまだ知らなかったからで、エレメンタリースクールに上がるとカリム以外の一緒に遊べる存在ができた。それも、一人じゃなくてなん人も。
「ジャミルー!! おかえりー!」
「カリム様、危ないですよ」
一緒に過ごせる時間が減ったからか、カリムはジャミルが帰ってくるとバルコニーから身を乗り出し、ぶんぶん手を振って出迎えていた。そしてここからはカリムが就寝するまで質問責めにあったり、今日あった話を延々と聞かされたり、遊びに付き合ったりしなければならない。その行動はジャミルにとって最近では煩わしく感じるようになっていた。
「ジャミルー!!」
長い廊下に響き渡る大声で名前を呼ばれたかと思えば、走ってきてハグされた。
「今日も学校楽しかったか?」
「耳元で大声出すなよ」
「わるいわるい、嬉しくてつい」
体を離し、改めてどうだったか聞くと「いつもと変わらない」と返答があった。今日も楽しかったんだなとカリムがうんうん頷いていると、ジャミルが口を開いた。
「あのさ、帰ってきたときにバルコニーから叫ぶのやめて欲しいんだけど」
「え? なんでだ」
「うるさいの好きじゃないし、大声で名前呼ばれたくない」
後から追い付いてきたお付きの大人に話を聞かれて、カリム様がせっかく出迎えてくださっているのに従者の立場でそんなこと言うのはどういうつもりだと説教された。
「と、いうわけでカリム様は今まで通りで大丈夫ですからね〜」
「でも、ジャミルがやめて欲しいって……」
「カリム様は旦那様に似てお優しい! しかしですね本来、従者は主人に意見することはありませんので聞く必要ございません」
未来のアジーム家当主にニコニコ笑ってゴマすりをするお付きに苛立ちを感じた。主人だったら何してもいいのかよとジャミルは心の中で舌打ちをした。
また続くのかとうんざりしていたジャミルだったが、翌週からカリムがバルコニーから叫ぶことはなくなった。相変わらず、手を大きく振ってはくるけど、ジャミルはそれに手を上げて返していた。
ある日、ジャミルはいつものように学校から帰ってきてカリムがいるはずのバルコニーへ視線を向けたが、姿がない。珍しいなと思いながらドアを開けると大人たちが慌ただしく動き回っていた。
「なにやってんの?」
近くにいた大人に聞くと、カリムがかくれんぼをしたいというので付き人と学習の時間のあとに始めたが、見付からずみんなで探しているということだった。ジャミルはため息を吐き、鞄を置くとカリムが隠れそうな場所を順番に回った。かくれんぼは幾度となくやっているので、隠れる場所の心当たりはあった。そのうちのどこかにいるだろうと、慌てることなく、さがしていった。しかし、そのどれにもカリムはおらず、ジャミルは眉をひそめた。
「カリムー! いたら返事しろ!!」
声を張り上げ名前を呼んだ。しかしながら、その呼びかけに返事はない。まさか、また敷地外に行ったのではと思い、庭に出た。
「カリムー!!」
叫んでは耳を澄まし、カリムの声がしないか確認する。日が暮れてきて、視界があまり役に立たなくなってきた。音を頼りにと思い、呼び掛けて音を聞いてを何度か繰り返しながら歩いていると、風の音に混ざって微かにどこからか音がする。ジャミルは目を閉じて聴覚に集中した。
「……ぅ、ジャミ、ル…」
泣き声まじりの小さな声で名前を呼ぶ声が聞こえた。
「こっちか」
ジャミルが足を向けた先にあったのは、横向きになった中型の冷蔵庫。一台故障したから明日業者が取りに来ると、今朝誰かが話していたのを思い出した。
「カリム!!」
ドアを開くと体を丸めて小さくなって泣いているカリムがいた。
「ぁ……ジャミ…」
「バカ! なんでこんな所に隠れるんだ!」
手を差し出して中から引っ張り出した。電源が入っていなかったとはいえ、この時期は夕方から夜にかけては気温が落ちるため、カリムの手は冷たかった。カリムの話によれば、隠れ場所を探していたらちょうどいい箱があって入ったものの、ドアを閉めたら開かなくなってしまったらしい。
「それならいつものバカでかい声で助けを呼べばよかっただろ」
「だって、ジャミルがうるさいのは嫌だってこの前言ってたし……」
この前のことは意外とカリムの中で残っていたようでジャミルは目を丸くした。でもたしかに、思い返してみればあのときからバルコニーでも廊下でも叫ばなくなったことに改めて気が付いた。
「あのな、こういう緊急事態のときは別だからな」
「でもジャミル、小さい声で呼んでもちゃんと来てくれた」
嬉しそうに笑うカリムにあきれながらも、ピンチのときは呼ばれなくても、いつでも行ってやろうとジャミルは思ったのだった。
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長期休暇最終日。
今年のゴールデンウィークはカリムにどこか行きたいや、楽しいことがしたいと言われていた。ジャミルは早い段階で色々とプランは考えていたものの、急に部活の合宿が入ったり、グループワークの課題をやったり、家からの急な呼び出しでとんぼ帰りをしたりとバタバタと日々を送っていた。そんなこんなで気が付けば、いつの間にか連休最終日。食事や身の回りの世話などでカリムと顔を合わせていたが、必要最低限レベルだったため、ほぼ会っていないといっても過言ではない。最終日くらいカリムに付き合ってやるかとジャミルは談話室で起きてくるのを待っていた。
「……」
休みだからゆっくり寝たいし、ジャミルも忙しそうだから連休中は朝起こしに来なくていいぜとカリムは言っていた。
言っていたが……
時刻はまもなく12時になろうとしている。しかし、カリムが起きてくる気配がまったくない。さすがに十分寝ただろうとジャミルはカリムの部屋へ向かった。
「カリム、起きてるか?」
軽くノックし声を掛けるが返事がない。まさか体調が悪いとか、もしかして誘拐にあったのかもしれない。悪い事ばかりが思い浮かんでしまい慌ててノブに手を掛け、勢い良く扉を開いた。
「カリム!!」
ベッドの上に姿はなかったが、視線を右にやると部屋着のまま床にであぐらをかいてこちらに背を向けるようにして座っていた。大きめの声で呼び掛けたにもかかわらず、ジャミルに気が付いていない。カリムが視線を向けている方を見ると、どこから運び込んだのかテレビがあった。さらにそのテレビからケーブルが繋がっており、テレビとカリムの間にある青色の四角い機械を繋いでいる。今度はさっきより近付いて、しっかり聞こえるようにしゃがみ込み、カリムの耳の近くで声を掛けた。
「おい、そのゲームどうしたんだ」
「うわぁ!! ジャミル? ビックリした〜……いつの間に?」
「入るときに声は掛けたぞ」
「わるいわるい、夢中で聞こえなかった」
へらっと笑い、謝られた。本当に悪いと思ってるのか些か疑問だが、それよりも聞きたいことがあった。
「どうしたんだ、これは」
「昨日、暇で散歩してたときにオルトに会ってさ。一人でも楽しめること無いか相談したんだよ。そしたら、ゲームを勧めてくれて貸してくれたんだ」
「ふぅん……おもしろいか?」
「難しいけど、できると楽しいな」
カリムがやっていたのはキャラクターを選んでカートを操作するタイプのレースゲームだった。プレイする様子を少し見ていたが、カーブで曲がるときには体ごと左右に傾けて、コントローラーもまるでハンドルを操作するかのように動かしている。画面の中のキャラクターも壁にぶつかったり、コースアウトして川へと落ちたり、下手くそだったが横目でカリムを見ると楽しそうに笑っていた。
「よっしゃー! 最下位脱出。7位だ」
「そんな変わらないだろ」
「いいんだよ。楽しいから……今度オルトにお礼しないとな」
人間心理として、勝負事には勝ちたくなるものだと思うがカリムにはそれは二の次のようだ。
「ジャミルもやってみるか?」
そういってカリムは自分が持っていたコントローラーを差し出した。しかし、ジャミルはそれを受け取らなかった。
「はは……だよなぁ」
少し寂しそうに笑うと、もう1レースやったらご飯にするよと画面に視線を向けた。さっきまで画面の中央に自分のプレイキャラがいたのに、いつの間にか画面が二分割になっている。カリムが困惑していると、さっきまで後方にいたジャミルが右隣にコントローラーを持って座った。
「い、一緒にやってくれるのか?」
「あぁ。その代わり手加減しないからな。負けても泣くなよ」
ジャミルがニヤリと笑うと、ちょうどスタート開始のカウントダウンがはじまった。
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