MayThe4thDayだからささやかなものを書いた
パドメに見透かされるアナキン。二人を見守るオビ=ワン。
@syuu_29
灯した明かりで足下を照らすように、ジェダイはフォースの暗黒面を退けようと試みてきた。あらゆる予防線を張り、試練を乗り越えるための心構えを説き――つまりは守るべき規則が多いということだ。
近頃はオビ=ワンでさえ、それを認める。アナキンの減らず口に彼はたびたび小言を言おうと開いた口を閉じ直し、わざとらしい咳払いさえする。
アナキンとしては、自分の指摘にそのように彼が気まずげな咳払いするのは楽しいことだった。それはオビ=ワンがパダワンたれと弟子の頭を押さえつけてきた手を緩めたことがわかる仕草でもあるからだ。
彼の背を超えた時も、彼から一本取ってみせたときも、こんな態度をとられることはなかった。認めて欲しくて「どうです」と示してみせるたび、オビ=ワンときたら眉をはねあげるだけだった。自惚れと期待の入り混じったまなざしで自分を見つめるパダワンの気持ちなどわかっているだろうくせに、彼はいつも冷ややかな目で見つめ返すのが常だった。もちろんすべてにおいてというわけではない。それでも、アナキンが望むように褒めることはほとんどなくなっていた。
だが、それこそが彼にできる最善であったのかも、とアナキンが思い至るようになったのは最近のことだ。
彼にうぬぼれを指摘されるたび反発していたからこそ、今になってそれがわかる。アナキンがまるで気に留めなかった忠告そのもの。右腕を切り落とされるまでわかろうともしなかったそれ。
彼が時折露骨にぎこちない視線運びをするものだから、はっきりとわかるというものだった。弟子の右腕を切り落とされた原因が自分の指導の至らなさにあると彼が勝手に責任を引き受けていることが。
もちろん、とんでもない間違いだ。オビ=ワンを無視して一人で挑んだのは、自分が彼より優れているとうぬぼれていたからこそだ。
それでアナキンはオビ=ワンの視線が右腕から逸らされるたびに気付かないふりをして、なんでもないような軽口を叩いてみせた。やれ最近でたスピーダーの性能がどうの、ガンシップの修理を見学させてもらっただのと他愛もない、ジェダイとは関わりのない話ばかりを選んで、彼の意識を雑談に引き込もうと試みた。それこそオビ=ワンがアナキンに忍耐や慎み深さを教えようと繰り返し挑んできたことを思えば、苦にもならないほどの努力に過ぎない。
それをオビ=ワンもようやく理解してくれたのだろう。
このところの彼は力を抜いて微笑んでくれるようになった。弟子が脈略なくくだらないことを言い出しても眉をひそめることは稀だ。彼は軽口を叩くようになった。それこそアナキンからすれば不器用この上ないやりとりだが、少なくとも弟子を笑わせることができるぐらいには上達している。
二人は明日からの遠征任務のために遅いランチミーティングを終えて、ジェダイの居住区に向かって歩いているところだった。オビ=ワンの部屋を通り、それからパダワンに割り当てられた区画に向かう。その経路を取ろうと打ち合わせるまでもない、お決まりの道のりの最中だ。そして近頃では一番の雑談の場でもあった。
そうして互いに戯れ合うようなやりとりが増えた自覚があった。少なくともアナキンにはそうだし、オビ=ワンの自覚がないとも思えない。それはふいに目があった時の微笑み、あるいは軽口を咎めずに乗ってみせる彼の態度が表している。
だから今、オビ=ワンの表情が言わんとすることもちゃんとわかった。
「おっと、これは失礼」
視線にアナキンが白々しくも手で口元を隠せば、オビ=ワンはため息をついて見せたが、唇はすぐに笑みで崩れた。「まったく」とまるで怒っていない声音で彼は呟く。
涼しげな灰青の瞳がいかにも物言いたげに細められ、思慮深い唇は髭に埋もれたまま二の句を躊躇う。そうした仕草に自分の唇のはしがすっかり上がってしまうことは、繰り返し指摘されている。今ではわざわざ指を添えてみなくても自覚できるというものだった。
彼からそうした表情を引き出したことが嬉しくて、アナキンは思わず調子に乗る。
「マスター、先日流れた勝負の報酬ですけど」
「勝負?」「ほら、僕の方が早くついた」「いいと言う前に飛び出しただけだろ」「でもあなたのファイターについた虫だって払い落として差し上げました」「あれはお前でなくR2の手柄だ」「彼はパドメ――アミダラ議員から正式に譲り受けて僕個人のものになったんです。つまり、僕の手柄でしょ」
マスター、と懇願するように言えばオビ=ワンの足が止まった。
「なんです」
「忘れるところだった」
ちょうどオビ=ワンの自室はもうすぐそこに迫っていたところだった。彼は「少し待て」と自分の部屋に駆け入り、そのままアナキンを招くでもなく通路に置き去りにした。そしてすぐに部屋から戻ってきて「これを」と小さな手提げを差し出した。
アナキンが素直に受け取れば、実にシンプルでロゴの一つもないが、手提げのなかにはラッピングされた箱が一つ。リボンも見当たらないが、ひと目で有名店のものだろうとわかる折目正しさと高級感がある。オビ=ワンらしくはないものでもある。
「なんです、これ」
「先日のお礼を持っていってくれ。ほら、お茶に誘っていただいただろう」
「でしたら、マスターがご自分でお返ししたほうがよいのでは。それか、これからならこのまま一緒に」
「お前からのほうがきっと彼女も喜ぶ」
体が強張る弟子を見逃すかのようにオビ=ワンは瞼を伏せた。それこそ何でもない話をするようで、その言葉に緊張しているのはアナキンばかりだった。
「ああ、それで今日は手土産持参なのね」
パドメは自分の膝の上でため息をついた夫の額を撫でて頷いた。
議員の多くが滞在するアパートメントの一室、パドメの寝室でアナキンは室内着に着替えた彼女の膝に甘えるようにくつろいでいた。
「でも、薔薇は僕からだよ」とアナキンは言い添えて彼女の顔を見上げた。
「ええ、わかってる――彼が私に花を送るとは思わないもの」
彼女の顎先にアナキンが義手の指先を添えると、パドメは慣れたもので身をかがめて彼の望みを叶えた。
そしてそんな風に彼女と唇を重ねると、ようやくアナキンは肩の力が抜けた。
「それで、バレてると思うかい?」
「わからないわ。あなたのほうが彼をよく知ってる」
でも、とパドメは「見守ってくれるつもりなのかも」と希望的観測を付け足してから、意地が悪そうな顔で不服げな夫に尋ねた。
「まさか、叱られたかった?」
だからアナキンは思わず両手で自分の顔を隠した。違うと言い返せば嘘になる自覚があったからだ。
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ぎこちなくてすまないがこれが今年のMayThe4thDayにかこつけたささやかなものだよ。
なんの繋がりもないし蟹ではないけど、これも去年と同様に「蟹を食べてほしい…」という動悸によって書かれた。
……いや引き続きなんの話かわからんと思うのですが、この私が蟹を…とか言ってるのはグリッドマン ユニバースから来ており、今回の場合はオビ=ワンはきっともう一緒に蟹を食べてはくれず、賞味期限を守りなさいと諭して送り出すだろうな〜というイメージによるものです。かつては一緒に蟹を食べたのに…(別の幻覚)です。もう本当に何の話だ。
おそまつさまです。