X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです

感傷

全体公開 アナオビ 4 1655文字
2025-07-08 18:43:08

タトゥイーンで暮らすオビ=ワンと、彼を助ける直感

Posted by @syuu_29

直感は時折、人の形をとった。
それでオビ=ワンは見ないふりがうまくなった。愚かな願望だ。そう認識しては感傷を手放す。
だが、直感は自分を守るものでもある。完全な無視もできない。そもそも突然現れるものだ。だから、度々彼は認識せずにはいられなかった。自分の執着の、その形を。

オビ=ワンは水を汲んだ容器を注意深く持ち上げながら、岩場に身を潜めた。岩陰にぴたりと張り付く間際に、ここまで水滴の足跡が落ちていないのも確認しておく。そして『直感』の指さすほうを見つめる。
なにしろ用心が必要だった。近づいてくるのは動物の気配ではない。サンド・ピープルだろう。
激しい交渉の甲斐があり、彼が住処と定めた水分農場の跡地に彼らが現れることはもうない。しかし先ほどオビ=ワンが水を汲んだ水場は違う。明確に彼らのテリトリーだった。
つまり自分の方が盗人で、侵入者である自覚がある。襲われても文句は言えまい。オアシスは共有財産になりえないものだ。
やはりこんなことはやめるべきだろう。真面目に水分凝結機のパーツ探しをしよう、とオビ=ワンはそのまま周辺をうろつく彼らが立ち去るのを待ちながら考えた。
それはタトゥイーンに暮らし始めてから先送りにしてきた課題の一つだった。まだ水を運ぶ体力も腕力も余っている今はいいが、そのうちに老いはやってくる。サンド・ピープルのほうだって、いつまでこのひとりぼっちのジェダイを恐れてくれるかはわからない。
だいたい、こんなことに時間と神経を研ぎ澄ませているよりも彼にはもっと重大な使命がある。それを思えばささやかな一人暮らしに十分な程度の水分抽出の手段はそろえるべきだろう。
農場の跡地には装置の名残こそあれど、大半のパーツがなかった。肝心の冷却コンデンサも残っておらず、ほとんど一から組み立てるようなものだ。しかし装置をまるごと買う蓄えも、ツテも今の彼にはない。いずれにしろ町に出るか、ここを通っただろうジャワに交渉して得るかするしかない。そのうえに別に機械いじりを好まないものだから、どうにも腰が重かった。
サンドピープルの姿が遠目にも見えなくなると、彼は水を蓄えたタンクを両手に持ち、ジャンドランドの荒野へ戻る道をたどり始めた。
これといった直感の訴えもないので、ジャワの船を探すのは再び明日に先送りすることにした。
このところの彼はそんな判断ばかりしていた。しかし子供が大きくなるまでの月日はあっという間だが長い日々だ。当然、ここで過ごす日々は長くなる。立て続けにトラブルの種を抱え込みたくはなかった。

「起きて、マスター」
その直感はいつだって、不意に現れる。それこそ聞こえるはずのない声で、時折彼を眠りから引き起こしさえするのだった。
不意に落ちた声にオビ=ワンが目覚めると、深く眠りについてしまっていたようで、陽はすでに高くなっていた。そして家の周辺にはこちらをうかがう獣たちの気配があった。
オビ=ワンはほとんど無意識にライトセーバーを手に取り、窓からそっと外の様子をうかがった。玄関先から飛び出し、するどく光刃を起動して今にも飛びかかろうとしてきた獣の一匹を切り捨てる。
間髪を入れず、あぶない!と警告する声が聞こえる。それに、家の中からこちらを見ている小さな影も見える。
それは彼を目覚めさせたのと同じ幼い声だ。現実には存在するわけのない幻に違いない。
オビ=ワンは飛びかかってくる獣たちから身をかわしながら、その姿を意識しないよう目をそらす。
時折訪れるその直感はこうして人の形をとる。それこそ今のように、かつての弟子の姿を。
それは子供で、青年で、時によってその姿を変えて、こうして彼を救ってくれる。それこそ何度手放しても心の内から湧きあがる未練そのもの。不意に訪れ、助ける一方で心に影を落とすもの。

だが、彼が自分を呼ぶ声の記憶はもうずいぶん遠かった。だからこんな声だったかを疑えば、オビ=ワンにはもうわからなかった。なにしろ二度とは聞けない声だ。確認のしようもない。


投稿にいいねする


© 2026 Privatter All Rights Reserved.