オーダー66のあと、フードを目深くかぶった男が店主の語るジェダイの記憶を聞く。
アンソロの原稿から途中で削ったパートを修正したものです。
@syuu_29
街中のホロネットニュースは繰り返しコルサントのジェダイ聖堂が燃えているのを映している。ジェダイの叛乱を報じるのに忙しいようで、ラジオにしたって内容はほとんど同じだ。銀河帝国が成立した今、手のひら返しの偏向報道を指摘するものはいない。
どこもジェダイの話ばかりだね、と店主がつまらなそうに言った。
「仕方がないよ、大スキャンダルだ。まあ、いつかは――こうなる気もしていたが」
思わずこぼすと、店主のほうは意外そうに返した。
「そりゃ、ずいぶん疑い深いんだね」
そう言いながら、店主は貨幣の数え直しを終えて卓上に並べた。それを雑に確かめてから懐に収め、白々しく見えないように意識しながら彼はジェダイを貶す言葉を選んだ。
「どうだろうな。ジェダイなんて、元々うさんくさい連中だっただろう?物心のつかない頃から親元から子供を引き取って育ててるなんて、いかにも怪しいじゃないか。だいたい、軍に混じっていたのもおかしい。みんなそう言っていたよ」
「でも、あれはなにもジェダイが始めた戦争じゃない。それにずいぶん活躍してくれたよ。こんな辺鄙なところでも世話になった。あれだけ大きい戦争じゃ、ハイパースペース航路の変更でこっちにだって影響はあったんだよ。ジェダイが解決してくれて輸送船も元のコースで来るようになったけど。それにうちじゃすっかり子供らがジェダイになるんだって棒を振り回して真似してたもんだから、今はやめさせるのがもう、そりゃ大変で。ニュースを見ろって言ってもね、ジェダイがそんなことするわけないって大騒ぎなんだから」
見たこともない子供だというのに姿が目に浮かぶようだった。彼には思わず髭の中で唇が緩んだ自覚があった。
「ああ、なるほど。やんちゃな盛りか」
「そう。大人の言うことは全部気に食わない年頃でね、店の手伝いもしないんだから」
店主は彼が思わず笑ってしまった本当の意味には気づかなかったようだ。目元に落ちるフードの影をこれほどありがたく思ったことはない。
ジェダイの存在は銀河中に知られている。それは長い歴史の中で先人たちが続けた平和への奉仕の賜物と、戦争によって変わったジェダイのあり方のどちらも理由になるだろう。
戦争がはじまってからのジェダイ騎士は共和国の騎士とも見做されるようになり、主立った活躍をすればニュースでも名前と顔が大々的に報じられるようになった。
その中でもオビ=ワンとアナキンは最も有名な二人になってしまった――きっとこんな話を聞けば、アナキンは喜んだことだろう。彼はちくりと胸が痛むのを無視して考えた。
自分たちの名前や姿がどれほど拡散され、広まったかは定かではないが、ジェダイを真似して剣を振り回すような遊びが、このアウターリムの惑星にまで広まったというほどだ。警戒し足りないということはないのかもしれない。
帝国の支配にハットが甘んじるとは考えにくいが、敵対している間柄とも言えない。そもそも帝国兵はどこにだって現れるし、誰を信用できるわけでもない。
そもそもが、すでに手配書が出回っているかもしれないと警戒して、大きな街を避けたのだ。こんな場所でのやりとりを余計な足取りにされてはたまらない。
彼はさりげなく指先を向けると、フォースの流れに意識を集中させて、店主に言い聞かせた。
「お前は船の売り手がどこから来たかを忘れる」
「――あたしはあんたがどこから来たかを忘れる」
そうして復唱を聞き届けると、すぐになんでもないように手を下げ、店を出た。