@satomi8429
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がたん。ばさばさばさっ。
子を寝かしつけ、自分も寝支度をして布団に入った途端、異様な音が耳を叩いた。とっさに子を見るが起きる気配はない。起こさぬようにとそろそろと部屋を出ると、燭台を片手に音のした方角―隣室の扉を開けた。
隣は書斎だ。作業中の書類を積み上げる癖があるから、もしかしたら何かの拍子にそれが倒れたのかもしれない。そうだ、きっとそう。
自分に言い聞かせながら音を立てぬようにゆっくり室内を見渡すが、特に書類が倒れた形跡はなかった。やはり気のせいか。泥棒でもなかったようだしよかったよかった、と安堵しながら扉をしめようとし、ぎくりとした。閉めたはずの窓が全開になっている。さらに視線を下に移し、心臓が跳ねた。
「え…」
部屋の右側、窓のすぐ下にあるのは弟の机だ。父の形見のそれは古い木製で、がたがたになった引き出しがついている。いつもきちんとしまってあるその引き出しが、大きく開いていたのだ。
「!?」
空になった引き出しに駆け寄って窓の外に身を乗り出すと、小さく白い何かがひらひらと舞いながら空に吸い込まれていくところだった。
「どうかしたの」
「いや、それが…」
不審に思ってのぞきにきた妻に事情を説明する。
もう一度窓の外を見上げると、そこにはいつも通りの星空が何事もなかったように静かに広がっていた。
《終わり》