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2014/7/7 七夕の夜に 2

全体公開 2 2 1076文字
2014-07-08 00:02:44
Posted by @satomi8429

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 さく、さく、さく。
踏みしめるたび、積もった落ち葉が柔らかく音を立てる。このあたりは茅の刈り跡がそこここに点在していた。気をつけないと罠のように突き出たそれらに足をとられる。男は二本の脚と細く長い杖で、注意深く斜面を進んだ。

 茅跡が笹の群生になり、笹の量を竹が凌駕し始めたあたりにそれはあった。背の高い竹林の向こうに見える簡素な小屋。刈り入れ時期に使うのであろうその小屋に、今は人の気配はない。ぐるりと周囲を見て回り、竹を並べた足元と薄くではあるが茅を葺いた屋根を確認した。当面の寝床としては充分だ。
 男は荷物をおろすと、壁にもたれて座り込んだ。腹は減っていなかったが、約束は約束だ。そう自分に言い聞かせ、携帯している巾着から干した米を取り出す。口に放り込みながら、誰に見られているわけでもないのに律儀なものだ、と自嘲する。しかしこれだけは破ってはいけないと決めていた。この約束を守ることで、いつまでもあの水を使わないことへの後ろめたさを拭おうとしているのかもしれない。
ほとんど壊れて大きく開け放されている扉の向こう、遠い空が暮れていく。

 食事を終えるとそのまま床に横になった。
このまま自分はどこまで行くのだろう。逃げたいのだろうか。これ以上?何から?目をそむけたままの問題の答えには永久に届かない。
詮ない思考だ。もう寝よう。
そう思って寝返りをうったその時、近くでばさばさっと音が聞こえた。鳥の羽ばたきではない。そして、続けて聞えてきた鈴のような笑い声に確信する。
「娘娘!」
がばりと起き上がり振り返ると、しかしそこに女神の姿はなかった。かわりに扉の向こうに積みあがっていたのは白い小山。
紙?」
不審に思いながら拾い上げると、それは白い封筒の山だった。どれも封には几帳面な緘の字が記され、それでいて差出人も宛名も書かれていない。女神のいたずらには慣れていたがこれはまた新しいな、と思った。自分宛かもわからないものに気が引けるとも思ったのだが、他に手がかりが全くないので、しかたなくそのうちの一通の封を開けてみる。
と、そこに記された文字の懐かしさに、男は思わず目を見開いた。


次から次へ俯いて文字を追う男を、さらさらと音を立てる竹林のはるか上から無数の星が見下ろしていた。





***
前回の続き。今日は七夕でした。
七夕伝説って中国由来らしいですね、知らなかった。

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