@satomi8429
いつもは原作優先なんだけど、ここだけは個人的好みによりアニメ準拠です。
原作を自分の都合のいいように大いにねじ曲げた生存ルートなので、苦手な方はご注意ください。
大丈夫な方だけどうぞ。
前の話→https://privatter.net/p/343705
***
【翼宿】
とっさに二の句が継げなかった。
同じ肉体から出ている声なのに、箕宿のものとはまるで違う。まだ声変わりも迎えていない少年の叫びは、今まで聞いたどの言葉よりも力強く、それだけに切羽詰まって響いた。
意味がわからない。わかりたくもない。仲間を手にかけろだと?
「なに…アホなこと…」
さっきまでこの背中に背負っていた気弱な少年を、自分に燃やせというのか。
「早く!!」
畳み掛ける張宿に、翼宿は大声で返した。
仲間は守るものでこそあれ、傷つけるなど言語道断。
「そんなこと、できるわけないやろが!!!」
「…こんな小僧ごときにわしが抑えられるはずはないわ」
禍々しい響きに我に返ると、張宿の体の周りに黒い気と朱い気がせめぎあっているのが見えた。強大な術者と未熟な能力者の攻防。魔物が足を踏み出すと同時に、張宿が再び血まみれの腕を振り下ろす。鮮血が着物に広がり、魔物の歩みが絶たれた。
「やめて張宿!」
美朱が叫んだ。
「張宿!!」
翼宿も叫んだ。
どうすることもできない自分が歯がゆかった。
そうして少年は、勢いよく振り上げた両手にしっかりと凶器を握り、まっすぐ胸に突きたてる。心の臓は命の源。そのくらいは自分にもわかる。己を滅するのに一番的確な箇所だ。つい先刻七星士であるという重荷を、その苦しさを吐き出した少年は今、それでも己は七星士なのだと振り絞って命を賭した。
何もしてやれない。ただ阿呆のように名前を呼ぶことしか。
俺は、あいつの前に無力だった。
続く→https://privatter.net/p/344420