X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです

2014/7/19 ふし遊 張宿生存ルート捏造3

全体公開 1 11 1449文字
2014-07-20 00:07:48
Posted by @satomi8429

いつもは原作優先なんだけど、ここだけは個人的好みによりアニメ準拠です。
原作を自分の都合のいいように大いにねじ曲げた生存ルートなので、苦手な方はご注意ください。
大丈夫な方だけどうぞ。

前の話→https://privatter.net/p/344080
***

【軫宿】


突きたてた凶器を握りしめたまま喘ぐ少年を前に、軫宿は感覚を研ぎ澄ませていた。
苦しげな息の中必死に言葉を紡ぐ姿に、胸がつぶれそうに痛む。できることなら代わってやりたい。せめて苦痛のないように。しかし一方で、彼には気になっていることがあった。
救えば箕宿もろとも助かってしまうからと少年は言う。しかし本当にそうだろうか。他に手はないのだろうか。
そう思うのは、さっき井宿が小さく呟いた「朱い気が」という言葉のせいだった。井宿の言う意味合いにおいて、普段気を『見る』ということはできない軫宿だったが、先ほどの張宿と箕宿のせめぎあいでは、それが自分にもわかるような気がしたのだ。そのくらい、箕宿の気は強烈に禍々しく、張宿の行為は全身全霊をかけたものだったということだろう。
爆発的だったそれは、先ほどに比べれば今はかなりの小ささだ。だが見失わないように注視していれば自分にもわかる。
但し、気取られたら失敗に終わるだろうという予感は、根拠はないが確信に近かった。張宿にも、翼宿にも、おそらく張宿が必死で抑えている箕宿にも、絶対に感づかれてはならない。感情が表情に出にくいことに、今度ばかりは感謝した。

「僕にかまわず、行って下さい」
「ひとりでは寂しいだろう、そばにいてやる」
そう言ってやると、こわばった頬がほんのすこしだけ緩むのがわかった。時折箕宿の黒い気がじわりとはみ出し、しかしそれはすぐに朱い気に飲み込まれる。互いの生命力がおき火のように小さくなった今も、その攻防戦は続いているのだ。肉体の苦痛に耐えながらも、絶対に出してやるものかという確固たる意志が伝わり、あらためて感心する。こんなにも強い子だったとは。その思いを受けたように、ずっと歯を食いしばっていた翼宿が口を開いた。
「お前は、むっちゃ強い男や。こんな、ええ男、見たことない!」
「皆さんに、ありがとうって」
意識を手放してしまったほうが楽だろうに。最期まで付狙う箕宿にも、壮絶な痛みにも負けずに最後の最後まで振り絞り、彼の言葉はそこで途切れた。

――今だ。

最後のひと息、その呼吸が終わる寸前に軫宿は叫んだ。
「翼宿、どけ!!」
覆いかぶさり胸に突き刺さったマニ車を引き抜くと、そこへ大きな掌を当てる。
黒い気は一瞬前に消えていた。張宿の気も蝋燭の炎のようにほとんど同時に揺らいだが、それが消える直前に軫宿が能力で割り込んだのだ。とりあえず止血と循環の確保だけできればいい。
助かってくれ
左手で治癒力を使いながら右手の指を細い首に押し当てる。時間にして数十秒だったが、何時間にも感じられた。微弱ながら触れることを確認すると、あっけにとられている翼宿へ視線をやり、安堵の顔を向けた。
「張宿は、もう大丈夫だ」

あまり動かしたくはなかったが、今にも崩れそうなこの場所にとどまっているわけにもいかない。早く仲間と合流しなければ。そう思って張宿をそっと抱き上げると、それを待っていたかのように足元がぐらりとかしいだ。何かが起こっている。
「行こう」
「せやな」

ふたりが上空の龍をみとめるのは、その数分後のことだった。




《終わり》


投稿にいいねする


© 2026 Privatter All Rights Reserved.