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通常ヴァンパロ×険悪ヴァンパロ5

全体公開 6163文字
2018-07-17 21:49:44

一斉放出中。飛び飛び&めっちゃ途中で終わる。

Posted by @acbh_dmc4


目を覚ますと、見覚えのない天井が見えた。
僅かにダルさを感じたが、体を起こして辺りを見回す。

ぼうっとした頭で記憶を辿ると、俺は領主やマキャベリ達に秘宝で術をかけたことを思い出した。
領主の冷たい目を思い出す。

まるで俺の世界のヴァンピーロのようだった。
ふるりと身が振るえ、思わず体を抱きしめる。
すると、見計らったかのように部屋の扉が開き、領主が入ってきた。

「君が私やマキャベリに何かしたらしいことはわかる。だが、命を狙うものではなかったようだな。目的が何か、正直に話せば手荒な真似はしない」
「貴方を手に入れたかった。俺の恋人になって欲しかったから」

領主が少々驚いて俺を見つめる。
そして眉を顰め、何事か考えるような素振りをする。

「私を手に入れる?」
「ああ、貴方を愛しているんだ。貴方が欲しい」
……ならば血を寄越せと言えば応じるだろうな?」
それは、俺の心を確かめる為か?」
「君の全てを見させてもらう。心も、過去も全て。私は君が気に入ったのでな。一目で、君を私のものにすると決めていた」

ベッドへゆっくりと近づいてくる領主は、常の優しい雰囲気は微塵も感じられなかった。
領主が、俺を虐げたあのヴァンピーロに重なる。
彼が近づく度に、背筋が凍り、震えが走る。
俺は何かを間違えてしまったのか。
領主の心を俺に向けさせようとして、あのヴァンピーロをこの世界に呼んでしまったのか。
領主が直ぐに触れる距離まで近づいた。

「そのように震えて、私を愛していると言うのは、どうやら詭弁のようだな」
……あ、ちが

声が出ない。
俺はまたこの男に虐げられるのだろうか。
ヴァンピーロが俺の肩に手をかける。
力任せにベッドへと体を押し倒され、仰向けになりヴァンピーロを見上げる。
冷酷に嗤う目の前のヴァンピーロが、ゆっくりと俺に顔を近づけた。

「記憶を奪っても、それを補うものは多々ある。私の息子を残しておいたのは失敗だったな」

耳元で厳しい声を掛けられ、次いで額に指で弾かれた鋭い痛みが走る。
思わず痛みに呻き、額を押さえると、頭上から鼻で嗤う声が聞こえた。

ヴァンピーロを見上げると、常の領主がそこに居た。
呆れたように俺を見下ろす。

「トラウマを刺激してしまったようで悪かったな。だが、正直今回ばかりは私も怒っている。
今後は一層君に注意を払うとしよう。私は絶対に君のものにはならない」
「だ、騙したのか?!」
「先に手を出したのは君だ。少々強めの灸を据えるのは当然だろう?」
「一目で俺を気に入って、ものにするんじゃないのか?」
「君に記憶を奪われて、君を見た瞬間は確かにな。そして私は妻がヴァンピーロであったなら容赦なく奪っていた。使役すればいくらでも心を私に縛り付ける事が出来るからな。ああ、きっと君の世界の私はその部分が強かったのだろう。だが、君の心を縛らないところを見ると、奥底では対等に君と愛し合いたいと思っているのかもしれん」

そっけなく俺から退いて、ベッドから降りるとまた俺を注意深く観察する。
領主に脅えて見せてしまった事が恥ずかしくなり、不貞腐れて恨み言を呟く。

……怖かったアンタが、あのヴァンピーロになってしまったのかと」
「自業自得だろう。それに、多分本質は変わらない」
……

先程の領主を見て、違うとは言えなかった。
多少あのヴァンピーロよりは理性的ではあったが、まるであの男のような振る舞いに俺は内心凍りついた。
まだ僅かに手が震えている。
その震えを落ち着けるように、手を撫でる。
領主はそんな俺を見ても特にフォローすることなく、少々気まずそうに眺めるだけだった。

「俺が嫌いになったのか」
……甘やかすのを止めただけだ。君は妻ではない。似ているから情に絆されていたが、今回の事で踏ん切りがついた。
同情はするが、それだけだ」

肩をすくめて見せる領主に俺は溜息を吐く。
彼に脅えてしまったのは確かで、今彼が欲しいかと問われたら言葉に詰まってしまう。
俺は歯噛みして領主から顔を逸らすと、領主は暫く休めと一言残して部屋を出て行ってしまった。

****


彼が秘宝の力を完全に使いこなせなかったのは不幸中の幸いであった。
彼に妻の記憶を忘れさせられ、マキャベリとユスフを回収して休ませる際に、息子が私ににこやかに駆け寄ってきた。
そこで記憶の齟齬に早々に気がついた。

記憶をなくし、目覚めてから見上げた先にいたエツィオに、私は激しい欲望を覚えた。
ヴァンピーロで、手元には奪ったものらしい秘宝が握られている時、私は密かに歓喜した。
この男は私の好きに出来る。
ヴァンピーロの、いや教団の定めた法に背く行為をしたヴァンピーロは、必ず処罰を与えなければならない。
その役目にこの私自ら関わり、彼を手にすれば彼を自由に出来る。

―――――私の物に出来る。

彼の動きを止めるのは簡単だった。
手の中の秘宝を弾き上げ、彼の伸ばされた白く滑らかなその手首を拘束する。
宙吊りにされ、焦燥に駆られた彼の表情は、とても美しかった。

一先ずなにか呪詛を掛けられたマキャベリとユスフを介抱する為、私はユスフの屋敷へと向かった。
屋敷の使用人にマキャベリとユスフを任せると、奥から息子が駆け寄り、不思議そうにマキャベリ達を見つめた。

息子はとても妻に似ている。
先程捕えたヴァンピーロと息子が、そっくりである事に疑問を覚える。
この子の母親は一体誰だったか
確かに私の息子であると言う記憶はあるのに、まるで妻の存在だけを切り取られたかのように思い出せない。
そして捕らえたヴァンピーロが秘宝を持って居た事を思い出す。
その前後の記憶があやふやで、頭の強い痛みにふらついていた事を思い出す。

秘宝で彼が私達に何かをしたのは明白だ。
秘宝の護り手であるユスフが倒れた今、宝物庫の鍵を持っているのはこの私だ。
あの男が掛けたらしい呪縛を解く為に、もう一度宝物庫へと向かい、秘宝を手にする。
秘宝から当時の情景が映し出され、先程のヴァンピーロが私に向かい、秘宝を掲げて私から妻の記憶を消し去ろうとしていた。

その記憶は、きっととても大事なものだ。
凍て付き始めていた私の心を溶かす、暖かいものだ。

秘宝に願い、私は封じられた記憶の紐を解いた。

幸せな日々の記憶が湧き水のように浮かんでくる。
今すぐ彼の姿を見れない事が、こんなにも心をかき乱す。
そして、私の記憶を捻じ曲げてでも、私を得ようとしたこの男を、とても哀れに思う。
虐げられ、苦しめられ続けてやっと逃れたのに、私は彼を追い返そうとしている。
私に恋をしたのだと、切なさに心を焦がす彼の真摯な訴えは、もしかしたら元の世界に帰らせない為に、導き出した術なのかもしれない。

だが彼の望みを叶えてやる事は出来ない。
私が愛しているのはただ一人、あのエツィオだけだ。

林檎を持ち出し、ユスフの屋敷へと戻る。
眠っているユスフとマキャベリに、それぞれ林檎の力を使用して記憶を戻す。
これで目覚めれば彼らは常の通り、動けるようになるだろう。
しかし、一歩間違えば彼らの頭部は破壊され、灰となってしまう所だった
彼らを失うことは、我らアサシン教団にとって相当の打撃だ。
あと少しでテンプル騎士団を掃討できるという時に、二人を失えばこちらが不利になる。

エツィオの眠る寝室へと向かい、彼には少々強めの灸を据えようと決めた。

彼の脅え様には心を痛めた。
私がテンプル騎士団の者に対するような冷徹な態度で彼に接すれば、彼は恐怖に身を震わせた。
絶望的な顔で私を見つめる。
一度私が彼に触れれば、彼はビクリと大きく体を揺らし、小さな悲鳴を漏らした。
酷く怯える彼が気の毒で、もう少し続けようと思っていたが止めた。
彼の耳元でもう既に術が解けている事を告げ、彼の額を指で小突く。

驚き目を瞠って私を見上げる彼が、ホッと息を吐いたのが分かった。
精一杯の虚勢を張って、拗ねてみせる。
その姿がいじらしくも思えたが、妻を裏切ることは出来ない。
彼にとっても、これ以上期待を持たせては酷だ。





暫くユスフの書斎で林檎を片手に、知識を探っていた。
色々な情景が、浮かんでは消えた。
そしてやっと、妻を取り戻す方法を手に入れた。
林檎を握り、その知識の光を閉じる。
今すぐにでも妻を迎えに行きたい。
だが、ここに居るエツィオを彼の世界に居る私に、虐げさせるわけにはいかない。
一応彼の世界の私が、正しい心と彼を慈しみ、共に歩むことができるのか探るために
ヴァンピーロの過去を探った。
しかし、一度招いた不幸は酷い連鎖を続けてしまった。
時と共に、その時の悲しさは薄れただろうが、怪物として育ってしまったのだ。
これを矯正するのは不可能だろうと、結論を出した。

そして今ここに居るエツィオにも、辛い思いはして欲しくない。

視界の端に、インク壷と羽ペンを見止めて手を伸ばす。
勝手に悪いとは思ったが、ユスフの机を漁り、羊皮紙を見つけて机に広げる。
再度林檎を片手に触れて、知識を受けてはペンを走らせた。

どの位経ったであろうか、夢中で羊皮紙に向かい書き物をしていると、ノックの音が部屋に響いた。
一拍遅れて音に反応し、顔を上げる。
部屋にユスフとマキャベリが顔を出し、私に礼を言った。

「マキャベリ、ユスフ、もう大丈夫なのか?」
「ええ、問題ありません」
「少々頭がボンヤリしますが、何とも」

二人の調子は元に戻っているようで、一先ず安堵の息を吐く。
ユスフが机へと近づくと、私が書き連ねた羊皮紙の山に目を丸くした。
書類を纏めて二人へと向き合う。
これからエツィオを迎えに行く、その手筈を二人には話さねばならない。

「ユスフ、すまないがあのエツィオの世話を頼む。ここなら彼も安全だろう。他のヴァンピーロと一緒に彼を鍛錬してやってくれ」
分かりました」
「マキャベリ。お前にはもっと大変な事を頼む事になる。暫し、フィレンツェでの仕事を休み、ローマに滞在してもらいたい」
「ローマに?何をなさるおつもりです?」
「私も妻が飛ばされた世界へと向かう。私の代わりに向こうのヴァンピーロがこの世界に送られてくるだろう。
お前にはそのヴァンピーロを殺してもらいたい」

マキャベリが驚いて目を剥く。
珍しくうろたえた彼が、私に無茶な事だと抗議の声を上げた。

「そもそも、私が導師を抑えられるわけがないでしょう!殺すなんて!!それこそ返り討ちにあってしまいます!」
「マキャベリ、そうさせないために、ヴァンピーロの力を抑える装置を作る。力を最大限に抑えられるようにする」
「それに、導師、もし向こうの世界のヴァンピーロが死んだとして、貴方はこちらに戻ってこられるのですか?」
………

無言でマキャベリを見つめる。
この世界に帰ってこれない可能性のほうがはるかに高い。
だが、私はどうしても妻に逢いたい。
別れなければいけないというのなら、私はこの命を投げ出すだろう。

……殺す以外に方法はないのですか」
「教育したところで、そのヴァンピーロの育ててきた憎しみが落ち着くとは思えないそれなら、居ない方がましだろう」
「納得できません!テンプル騎士団の事についてはどうお考えなのです?投げ出すおつもりですか」
「申し訳ないと思う。だが、指導者ならお前もユスフもいる。それに将来的な戦力として息子がいる。
あの子は私よりも力が強いし、頭もいい。きっと成長すれば大きな力となる筈だ。頼む、マキャベリ。
私には、妻が全てなのだ。彼が居なければ、私は生きていられない」

マキャベリは納得できかねる顔をしていたが、ユスフに止められて渋々引き下がってくれた。
心から申し訳なく思ったが、私は二人に今後の話をして、ヴァンピーロの力を抑える装置を作るため、宝物庫へと降りて行った。


翌朝、ユスフがエツィオにこれからの方針を伝え、魔力の使い方について指導する事を話した。
ユスフがつけば、きっと優秀なアサシンとなることだろう。
彼はヴァンピーロの教育に優れているし、彼自身とても実力がある。
それとエツィオの当面の生活拠点はユスフの屋敷とマシャフ砦に置くが、私の指示でマシャフにある私の別荘を彼宛の名義に変えた事も話した。

始終私とユスフの説明を、感情のない顔で聞いていたエツィオだったが、私が世界を移動し、こちらに彼の憎むヴァンピーロが送られ、そのヴァンピーロを殺すと話した処で彼の態度が変わった。

「ヴァンピーロを殺す?それで、領主はこちらに帰ってこれるのか?」
「いいや。私はもう戻れないだろう。ここは安全だし、マシャフに居れば皆が良くしてくれる。
生活の為に教団から任務を任されることもあると思うが、向こうの世界よりは過ごしやすい筈だ。
任務を受けるのが嫌なのであれば、下町で仕事を探せば良い。マキャベリを頼るのも良いだろう」

エツィオが無言で俯く。
酷く苦々しく唇を噛み、眉根を寄せて目を閉じた。
暫くそうして沈黙していたエツィオが、深く息を吐き、顔を上げた。
その顔に表情はなかったが、意志の強い眼光が鋭く私を見つめていた。

「領主。ヴァンピーロを殺さないでほしい」

エツィオの言葉に思わず目を見開き、彼を凝視する。
彼を酷く傷つけ、穢したヴァンピーロだ。
赦すことなど到底できない仕打ちをした男の命乞いをするとはどうしたことか。
私は思わず彼の肩に手を乗せ、彼の真意を探ろうと顔を合わせた。

「どうしたというのだ?あのヴァンピーロが改心するとは到底思えない。また傷つけられるだけだ」

正直、私は彼にこれ以上傷ついてほしくなかった。
出来るなら、私の手で彼を傷つけたヴァンピーロを葬ってやりたいと思う程に。
エツィオがチラリと私を見上げた。
しかし直ぐに逸らされてしまう彼の瞳は、私には辛さを堪えているようにしか見えない。
思わず彼の肩に添えた手に、力が入る。
彼を説得しようと口を開きかけたところで、エツィオが遮るように口を開いた。

「せめて、人を殺さないヴァンピーロになってくれればいい。ヴァンピーロの教育を望む」
しかし、君も見ただろう?あのヴァンピーロが人に対して心を開く事が
「貴方が手に入らないならそうするしかないじゃないか!」

エツィオが私の手を両腕で払いのけ、叫ぶように詰まった。
怒りとも悲しみともつかない顔で私を睨みつける。
そして絞り出すように苦々しい声で、さらに言葉をつづけた。

「貴方は妻と共に、この世界に戻る気はないんだろう?俺にとっての領主があのヴァンピーロだというのなら、ヴァンピーロを亡くす訳にはいかない……もう、この際嫌なことをされなければそれで良い!」

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