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Eden

全体公開 2387文字
2019-02-21 08:45:02

La fine del mondo の続き。プロローグ。

Posted by @acbh_dmc4

この世界でただ一人、己が何者であるのか、ここがどういった世界であるのか気付いてしまってから、深い孤独に震えながら必死に抗ってきた。
何度も繰り返す己の人生を、どうせなら大きく変えてしまおうとしたことは何度もあった。
手当たり次第敵味方構わず手をかけ、刃を振るってみたが、罪もない者たちに手をかけると、必ず時のループに引き戻された。
己の辿って来た道を大きく外れる事をすれば、最初からやり直しになってしまう。
そして同時に私の中に、私ではない何者かの意思があることにも気が付いた。

それはとても不快なものだった。
私が行う選択は、どれも『私自身』の選択ではなく、私の記憶をベースに何者かが選んだものだった。
まるで神にでも弄ばれるような、私の心を何者かに蹂躙されるような不快感。
そして何度も、何度も繰り返す中で、私は徐々に記憶を保持し、ここが私の生きて来た世界ではないことに気が付いてしまった。
何度目かの、いや何人目かの『デスモンド』の気配を感じた時、私は目の前にあるエデンの果実を使用してこの不快な世界を逃げ出した。

手にした林檎は辺りを一変させ、黄金に輝く神々が出現し、遥か昔に起こった天変地異を訴えた。
だが私にはこの神々の予言すら、何の意思もない無意味なもののように思えた。
まるでかみ合わない会話を遮るように、私はその者たちの破滅を願い、手にした林檎を天に掲げた。

辺り一面がガラスのようにひび割れ世界が崩壊し、薄暗く不気味な空間が瞬く間に広がる。
そして掲げた林檎は私の体に溶け込むように掌に沈み、私の体に薄い光の幕を張りながら消えた。
思考は今までよりも一層クリアになり、常に感じていた不快感もなく、そして私は全ての記憶が揃っている事に気が付いた。

それから私はこの何もない空間を彷徨い歩き、“私の世界”の他に幾つもの世界が存在することを知るに至った。
それは伝説のアサシンであるアルタイルの世界であったり、そのもっと“未来”にあたるコナーという青年の世界であったり。
様々な国や時代を生きたアサシン達のメモリーを見物していった。

現行で再生されているメモリー達の中で、何故だか私の世界だけ3等分に区切られ存在した。
繰り返し再生される私のメモリーは、時に複数同時に進行し、エデンの欠片に関わった時期を中心に何度も何度も、辺り一面の空間をそのメモリーが埋めていた。

宛もなく、なんの目的もなくぼんやり空に展開されている若い自分を眺めていて、ふとこの私をこちらに呼んでみようと思った。
記憶の中の私は孤独に震えていたから、同じ存在であればこの虚しさを埋められるのではないかと思ったのだ。

適当に目についたメモリーの前に佇む。
宿敵ともいえるチェーザレを塔の上から突き落とした瞬間に、その過去の私の居るメモリーへと腕を突っ込んだ。
男の胸倉を掴み、私だけが存在する空間へと引きずり出したとき、男の体が粉塵と化して崩壊してしまった。
その時コレはメモリの箱庭の中でしかその存在を留めることが出来ないモノなのだと理解した。
男をこちら側に呼ぶには、男を操る外の人間の意識を追い出すだけでは足りない。
男をその姿のまま留める為に、メモリーという世界から独立した入れ物を用意する必要があった。

私が吸収したエデンの林檎は、データの外へと出るための入れ物の役割を成す。
それと同じものを作り上げ、私と同じようにアニムス内での肉体を与えればオナジモノとして存在できる筈だ。

私にはまだ世界を構築する程の力がない為、まず“エツィオ”の身体を安定させるための世界を探した。
誰も使っていない、アニムスに慣れるためのトレーニング用に作られた真っ白な世界。
長いこと誰も使用していない舞台だ。
ここならば途中で何者かがエツィオに入り込むこともないだろう。
まずは姿形を作り上げ、そしてエツィオの基本となるメモリーを書き込んだ。
中身のない人形のようなエツィオに、過去の経験則からどのような行動をとるか演算出来るようにする。
だがこれではまだバグの域を出ない。
アニムスのシステム内で自由に動けるようにするには、やはり私が取り込んだ力が必要になる。
林檎の創造には相当の負荷がかかり、ともすれば外の世界に気取られる恐れがあった。
長い時間、細心の注意を払って私が取り込んだ林檎をもう一つ作り上げた。

何とか完成した林檎をエツィオへとインポートすれば、まるで拒絶するようにエツィオの身体がのたうった。
酷く苦しむようにその身を痙攣させ、身体が不安定に消えかかる。
何とか安定させるように、彼の身体に触れて彼の身体を崩壊させているコードの綻びを探った。

彼の震えが止まると同時に彼の身体から黄金の光が溢れだし、4つの光の玉が弾き出され、3つは四方に飛び散り、一つだけが彼の真上に止まった。
ゆっくりとその光の欠片を彼に馴染ませる。
すると消えかかっていた彼の身体が安定し、顔色も僅ながら良くなった。

しかし、他の欠片が何処かへと飛び散ってしまった。
少しずつ、分割してやれば負担も少なく取り込むことが出来るかもしれない。

安らかに眠るエツィオを眺め、ゆっくりと彼の髪を梳く。
あと少し、もう少しで私は孤独ではなくなる。
きっとこの子が私の渇きを癒してくれる。

「待っていろ。すぐにお前を目覚めさせよう」

私は期待に薄く微笑んで、愛しい彼の額に口付けを落とした。


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