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「問答と雨」

全体公開 2123文字
2019-06-04 12:45:15

やまない。

ノートもとらず、ワープロも起動せず、青年と少女が2人。薄暗い研究所の、ぽつんと明るい待合室にいた。ただただ人のいない問答を繰り返し情報を流している。雨の音が周りに漏れることを隠した。美味しそうだった惣菜も全て消え、そこには残骸だけが残っていた。
声と声だけが淡々とそこにあった。

Q. ミーム汚染の内容は?
A. いつか終わりがくる、というものだと思う。何に対してかはふんわりしていた。
Q.終わりに対しての哲学と言えば?
A.(検索)いわゆる「死」の哲学?広義過ぎて絞りきれない文脈。
Q.終わらないと救われない、まで調べると?
A.(検索)……終末論?
Q.終末論のデータは?
A.https://privatter.net/p/4145153
Q.差出人は不明のまま?
A.そのまんま。
Q.祖久世さんは組織にいると言っていた?
A.非営利団体の哲学人組織。つまり、終末論さんはその組織にいる可能性が。
Q.……終末論がいて、勝手に語っても問題なさそうな組織は?
A.確実に違法なのはわかる。組織化されている時点で裏組織だろう。そのうえ、終末論がいるということはこちらの住所が割れている。
Q.事件当時、彼が握っていたと思われる情報は?
A.中にいる哲学人、通常マニュアル内容、警報を鳴らし警備をすり抜けていたのでその情報。
Q.その情報に対しての処分は?
A.行われていない。
Q.警備更新は?
A.来週か、再来週の月曜。
Q.彼自身はそれに参加するか?
A.心当たりが多すぎるから来るでしょう。そもそも情報源。
Q.パラダイムは?
A.戻って……来る。今週の半ばから。
Q.担当は?
A.才藤さんとソフィアさんとセオくんとイミュくんと……そこら辺の方々。
Q.対応マニュアル系は
A.……変わってないし、まだ通らない。
Q.祖久世さんの状態は?
A.逆戻り。
Q.こっちの状況で影響を与えそうな点は?
A.
パラダイムが起きないこと、
田町君が彼の研究を続け始めたこと、
ソフィアさんがネチネチしているところ、
私や超自我さんと会うこと。

Q.これによって改善されるかもしれない症状は?
A.
パラダイムとの決着(最悪の場合でも、それ以外でも)

逃亡の場合
組織内での居場所確保など
詳しくは不明

投獄の場合
社会復帰サポート
カウンセリング強化
正常認知の支援
ミーム汚染の解消 など

Q.捕まえられる?
A.分からない(サポートが未知数)
Q.できる対策は?
A.
マニュアルの振り返りを促す
設備の故障がないか確認
周りの強化(多分、出来ないかも)
見回りの人数を増やしてもらう
Q.僕らはなにか出来るか
A.私はその場に居合わせるべきではない(被害妄想により敵対視されるのが1番大変)
超自我さんもダメかも(1回攻撃的になった相手は止めるには難しい)
Q.取締課の1部に言うべきか
A.それは相談してもいいかも。
Q.シアさんに言ったらなんとかなる?
A.とりあえず言ってみるのはいいかもしれない。
Q.あかねさんは?
A.それこそ、いたら「私が情報を流して防いでる、じゃましてる」証拠になっちゃうからだめ。もし時間がわかるなら、その30分前にそばに置いて身体から出てもらう。

「じゃあ、僕は安全マニュアル等の確認と付近の監視に重点を置きつつ仕事しますよ。他の人にも連絡しつつ、あ、できれば警備人数もいじれるといいんですけどね。蝶野さんが言うと変かもしれませんが、僕が言うなら問題ないですから。」
超自我の話しかけ方は極めて業務的だった。しかし、その手は机に伏せっている蝶野の頭を撫でていた。
珍しく蝶野が返事をしない。
…………凹んでおくのも必要ですからいいですよそれで。僕の能力がごめんなさい、呼ぶかどうか迷ったのはそれなんですよ。」
超自我は手をとめない。
蝶野は超自我の撫でている手を感じつつ、されるがまま、何も言わずそこにいた。
……蝶野さんは頑張りすぎなくらいですよ」
彼の声は彼に似合わず棘を失って、羽毛のような柔かさをはらんでいた。
と、蝶野は急に言った。
……これは、冗談なんですけど」
「はい」
「私の中に、貴方が知らない、例えば、人肌が恋しいような面があったとして」
「それはまた、id的な面だ。」
「ええ……例えですよ?」
「そりゃそうでしょう。そして、もちろんそれもその人ですよ。」
……また勝手に読み取って。」
「すみません、『仕方の無い人』なんですよ」
蝶野は超自我の撫でている手を止めた。
……なら、どうして」
超自我はその手を離そうとして意図を読み取り、その場に手を留めた。
「どうして、でしょうね。」
蝶野は残された指の数本を握った。
……
超自我はその指を組み替えて手を握った。
……大丈夫」
蝶野は何も言わず、そのまま握りしめた。
超自我は、もう片方の手を重ねた。
……きっと大丈夫ですよ。」
降り出した雨は勢いを増していた。止む気配がない。様々な考えも、理想も、ざわめきも、二人の間でさえもそれは止まなかった。ただ、過ぎるのを待つことしかできなかった。


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