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ゆまさんの作品「青龍召喚翌日」ベースの三次創作

全体公開 2 10 1802文字
2019-09-23 00:18:41

ゆまさんの作品(https://privatter.net/p/4997581)を拝読して湧いてきた妄想を、ご本人の許可を得て出力させていただきました。以前書いた拙作短文とゆまさんの作品前提、拙作軍を引く星宿〜の時間軸の隙間話です。井宿のベースに都ちゃんの作品の井宿も入っています。もうごった煮(笑)

Posted by @satomi8429

関連作品一覧→https://privatter.net/p/5033491
時間軸は、こちらの全員パートの後になります→https://privatter.net/p/4919310

* * *

張宿がいなくなった部屋に、しばしの沈黙が訪れた。
……張宿、大丈夫かしら」
「しっかり話しとったやないか。心配あらへん」
顎に手を当てた柳宿がその場の空気を代弁し、翼宿がそれを活気づけるようにして見渡した。
……そうだな。あの箕宿とやりあった張宿だ。信じて待とう」
軫宿が思案する様子で静かに言った。

ぽつり、ぽつりと呟く仲間の声が聞こえる。
張宿が、なんて?
儀式のさ中に?単身で?
がたん、と椅子の足が鳴る。
気づかれぬよう抑えてはいたが、息を切らしていた小さな顔。
脚に、腕に、自重をかけて顰めた眉。
あの中に乗り込む?張宿が?
集中砲火を浴びるかもしれないのに?
「やっぱり……オイラ様子を見てくるのだ」
「待て」
走り出す井宿を軫宿が制止した。
「見てくるのは構わんが、その前に話がある」
静かな低音の迫力に、井宿は扉に手をかけたまま止まった。
翼宿と柳宿は無言で顔を見合わせ、黙ってふたりを見送った。

軫宿の部屋は、薬草の匂いがした。
「そこへ座れ」
軫宿が椅子を指す。有無を言わせない口調だったが、それより今は張宿が気がかりだ。
あの足で、あの呼吸で、無事にたどり着けるのか。
辿り着けたとして、心身ともに折れてしまわないだろうか。
「軫宿、すまないのだが今は張宿が心配なのだ。話なら後で聞くから」
「いいから座れ」
……
軫宿の重い態度に、渋々浅く腰掛ける。軫宿も対面に座った。
「張宿から聞いた。夜中に張宿の部屋に行っていたな」
……
「何をしていた」
……
「気を与えていたのか」
……
こういう時の無言は肯定だ。わかっているが反論できない。
俯いて黙り込む井宿に、軫宿が息を吸い、目をかっと見開いた。
「なにをしているんだ、お前は!」
それはいつも穏やかな軫宿の、初めて聞く怒鳴り声だった。
無意識に肩が震え、目が軫宿の視線をとらえる。
「お前が気を与えて、その状態で朱雀が封印されたらどうなるか……お前自身がどうなるか考えなかったのか?」

振り返れば、おそらく我を忘れていたのだろう、と思う。死なせてなるものかと。そのためにできることならなんでも、と。焦りに支配された頭の中で、自分がどうなるなどという思考はすっかり抜け落ちていた。しかし。
……すまなかった、のだ」
「昨日言っただろう。封印の危険があれば治癒力がいつまで持つかわからない。朱雀の力がなくなれば常人以上の体力もなくなる。だから張宿を完全には治せないが、封印されたとしても危険のないようにはしたから安心しろと」
深いところにある腑に落ちぬ思いを隠しながら、井宿は無言で視線を落とした。ぼんやりした視界に並んだ薬杯が映る。
「俺は医者だ。信用してくれ」
「そしてお前は大人だ。無茶をするな。自分を顧みろ。……俺に信用させてくれ」
軫宿の最後の言葉にはっと顔を上げると、軫宿は苦い顔で井宿を見つめていた。顔から怒りは消えていた。ゴツゴツした拳を膝の上で握りしめている。
「手当てならいくらでもしてやれるが、前のように治してはやれないんだ。昨日の張宿のようにお前や誰かが死にかけるようなことになっても、もう助けてはやれないんだからな」
焦る心の片隅で、井宿はすっと理解した。軫宿も戸惑っているのだ。使えた力が使えない。普通の人間になって、体に気持ちがついていかずに、焦りばかりがこみ上げる。申し訳なかった、と素直に思った。
「わかったのだ。すまなかった、軫宿」
「俺こそ、怒鳴って悪かったな」
「しかし今は、張宿のところに行かないと」
軫宿は立ち上がり、腕を組んだ。しばらく考えてから息をつく。
「それが安心だな。俺も近くに待機していたいが、目立つといけない。お前に任させてくれ」
信用、するぞ。言外の意図を汲み取り、頷いて扉を開ける。
「俺はここで用意して待っているから、何かあったらすぐに担いで連れてこい。張宿の作戦だ、くれぐれも見つからないようにな」
目線で了解を告げると、頷いた軫宿はすぐに薬品を選別しはじめた。
井宿は庭づたいに、影のように音を立てずに張宿の元へと急いで走った。


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