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哲学人資料『エロティシズム』

全体公開 6017文字
2019-09-29 13:42:02


名称:エロティシズム Eroticism

外見:15歳程の少年。前髪は目を隠す長さで維持されている。
 身長167cm 体重55kg

対応:一般的な収容者と同じ生活サイクルを適用。

■■■■/■■/■■ 改訂
 昼の自由時間に哲学人【永劫回帰】との対話を設ける。音声は記録し、会話が回帰されていることを確認すること。

 職員は単独で収容室に入らず、またどのようなときもエロティシズムとその他人間、哲学人が個室で一対一にならないよう行動させる。
 接触時は視界を遮る専用サングラスを着用し、裸眼で直視しないこと。
 エロティシズムに対し劣情を催した場合、即座にその場を離れること。この時絶対にエロティシズムに触れてはならない。

 収容室内の備品が溶解した場合、抗哲機により修復を試みる。24時間経過しても元に戻らなければ処分する。その後新たな備品を補充すること。
 ※人員の場合は観察期間を1週間とする。

 逃亡が判明した場合は三人以上一組で行動し捜索と説得を行う。

 一度でもエロティシズムの能力により溶解もしくは融合した経験のある職員は担当から外し、接近させないこと。エロティシズムの快楽の前で自制心は無意味である。

注意点:■■年現在、エロティシズムが溶解・融合不可能な物質は発見されていない。

収容経緯:■■年■月■日 ■■大学附置哲学人研究所にて研究員との対話中に暴走。
 当時施設内の一室に居た■■名と機材■種が溶解し、内■名が死亡。また他の哲学人の脱走を招いた。
 その後の説得により沈静化したが、能力使用に対し積極的な性格であり、そして研究に対して否定的な態度であったため研究所では対応不可能であると判断され取締課へ搬送される。

+取調記録を見る

■■■■/■/■
調査官「こんにちは。何故君がここに連れてこられたかわかる?」
当哲学人「うーん、今の人間は奴隷化が進んでいるから、かい? だから僕という人間らしさを忌避している」
調査官「うん、違うねぇ」
当哲学人「そ。じゃあ、教えてくれるかい? 君が僕を連れ込んだ理由をさ」
調査官「私が連れてきたわけじゃない。君が研究に非協力的で、なおかつ攻撃的だから何も得るものがないと判断されたんだ」
当哲学人「性とは他者と自身を消滅させようとする暴力だからね。そう受け取られるのも仕方がないさ」
調査官「……それで、君さえ反省して、社会的に問題を起こさないのなら、研究所に戻れるんだと伝えておくよ。警察にいるよりはあちらの方が自由に能力を行使できるだろうから、どちらの方が君にとって有益か考えてほしい」
当哲学人「有益かそうでないかで語るのはエロティックじゃないなぁ。それは学問や芸術や政治の考え方だ。夢も希望も、人間らしさもない。もっと本能のままに、損得なんて二の次に、ありのままに行動することが実存なのさ。わかるかい?」
調査官「……わからないね」
当哲学人「自由がないなんて、僕にはあり得ないってことさ」
調査官「やめなさい! 手を離っ……

(監視員が【エロティシズム】と調査官を引き離す。調査官の手首は一部溶解していたが、痛みはなく、数分で元に戻った)


■■■■/■/■
調査官「こんにちは。今日は、君の哲学としての話を聞きたい」
当哲学人「聞くまでもなく知っているはずさ。しかしまあ、言葉にした方が自覚に繋がるのは確かだね。素晴らしい試みだよ」
調査官「哲学、エロティシズムとは?」
当哲学人「連続性を求めること。非連続性であり、他人と繋がりを持てない人間が繋がろうとすること。または非連続性を捨てること。別存在である精子と卵子が融合し一つの連続性を得た存在になるように。もしくは誰かに対して欲情すること。エロティックとは相手と一つになりたいという思いさ。つまり相手が居ない自慰的な欲情はエロティックではないんだよ。それはただ本能だ」
調査官「……その中から、君が得た性質は?」
当哲学人「溶解と融合を体験してもらうことさ。つまりは君達が求める連続性の体験さ。その行いこそがエロティシズムなんだからね」
調査官「■■大での件だけど、溶解した人や物の殆どは数時間で元に戻ったね」
当哲学人「うん。エロティシズムはあくまでも、達成困難な現象、連続性習得への安全な疑似体験なのさ。人間は精子と卵子のように一つになることはないからね」
調査官「戻らなかった者は」
当哲学人「……束の間の連続性を得たとき、非連続性を捨てたのさ。死に向かったんだ。それは僕の能力じゃない。彼らがそう望み、溶解したその時に自殺しただけだ」
調査官「そう。それじゃ、君の能力の影響を受けなかった二名は」
当哲学人「運命と思う相手。愛する人が既にいるなら、愛する相手以外との融合は嫌悪されるだろう?」
調査官「ああ、そう……
当哲学人「そもそも死と性とを嫌悪しすぎている人も居たけど……まあ、要するに、僕は嫌われちゃったわけさ」
調査官「そんなものなのか」
当哲学人「君にはわからないさ。だって君は、僕を受け入れてくれるだろう?」
調査官「……今日の聴取はこれで終わりだよ」


日時不明(面会の許可申請なくおこなわれたもの。調査官である■■氏が消息不明となった■■■■/■/■■の翌日に発見された。)
調査官「お久しぶりです」
当哲学人「うん、久しぶり。今日は監視する人達が居ないんだね」
調査官「ええ」
当哲学人「二人きりだ」
調査官「ええ」
当哲学人「死にたくなったかい?」
調査官「違う!」
当哲学人「そう、良かった」
調査官「違うんだ、私は……私はただ……
当哲学人「心地よかっただろう? 自分の輪郭が消え、自分の範囲が消え、自分の非連続性が薄れ誰かと一体化するのは」
調査官「……私に、何をしたんだ」
当哲学人「君が知ることが全てさ」
調査官「嘘だ。精神汚染の能力を隠していたな」
当哲学人「心まで融合したことをそう言うのなら、そうかもね。しかしそれも、君という個体の溶解さ。始めに説明した通り」
調査官「何を……
当哲学人「君は僕を受け入れてくれたって、言ったじゃないか。僕はちゃんとわかってるよ」
調査官「わかって……
当哲学人「君が言ってくれたら、僕は君の願いを叶えよう」
調査官「……もう、いい。もういいんだ。もう我慢できないんだ。もう一度、ずっと、君と……
当哲学人「うん、喜んで。一つになろう」


+事件記録を見る

事案a ■■■■/■■/■
8:00頃 哲学人【エロティシズム】が収容室内から姿を消しており、急遽捜索が開始された。以下は担当職員■■■■が記録していた音声である。
哲学人【エロティシズム】と捜索隊は同日12:00頃に全員が復帰した。
(前略)
職員■■「見つかりました?」
職員■■「いや、居ないな。避難は終わったんだよな?」
職員■■「はい。施設内に居るのは我々だけです」
職員■■「壁に一体化されたらどうしようもないしな」
職員■■「それって壁伝いに施設外に出る可能性ありません?」
職員■■「もう出てるかもな……そういえば■■■はどうしたんだ? どこに行っ……
職員■■「え? 僕の後ろに……

[突如走り出す足音。同時に粘性の高い水の音がついて回る]

職員■■「■■■! 来るな! 来るんじゃない! エロティシズムのせいか!? やめろっ、触るな[悲鳴]腕が俺の腕が! 溶け」
職員■■「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい僕無理なんです無理なんですこういうの無理なんっ……


事案b ■■■■/■■/■■
12:30頃 哲学人【エロティシズム】が収容室内から姿を消しており、捜索が開始された。
以下は担当職員■■■が記録していた音声である。
(前略)
職員■■「こちら■■班。現在12:58、哲学人【永劫回帰】収容室内監視カメラに哲学人【エロティシズム】の姿を発見。突撃します」

[ノックの後入室する音]

職員■■「エロティシズム! ここに居るのはわかっています」
当哲学人「ああいいね! それでこそ恋さ! 自身も周りもなにも見えないどこまでも深く荒々しい衝動! それで? ■■■■■君はどうしたんだい?」
哲学人【永劫回帰】「二百回前の彼は僕を連れ出してくれました。その時の僕らはそれだけの関係にあったのです」
当哲学人「逃避行! 素晴らしい。その通り、恋を阻むものなど全て排除されて然るべきなのだよ!」

[興奮状態の哲学人エロティシズムと哲学人■■■■が能力を使わず談笑している]

職員■■「哲学人エロティシズム……ご自身の収容室に、帰還願えますか?」
当哲学人「ああ、もうそんな時間かい。では戻るとしよう、また今度続きを聞かせておくれ、永劫回帰君」


事案b以降、哲学人【永劫回帰】と哲学人【エロティシズム】の生活サイクルに一部変更が行われた。上記【対応】を参照。





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