@niziirononanika
名称:ベルクソンの『笑い』 Le rire
(人間名:ショウ・リール)
能力:当哲学人のふざけた言動(ボケ)に対して、それを知覚している他の哲学人が必ず激しい指摘(ツッコミ)をする。
解説:現在の当哲学人は一見するだけでは人間と見分けがつかない、意思のある木製人形です。
各関節は球体関節によって滑らかに動き、体の硬い人間と同等の動きをします。
頭部の中には金属光沢を持つ未知の物質により構成された球体が内蔵されており、当哲学人曰く『脳』に値するパーツです。当哲学人の安全性を考慮し、球体の解析は殆ど行われていません。この球体を人間大の木製人形に搭載することで自立行動が可能になります。未知の方法により顔面の素材表面を僅かに柔らかく変質させており、表情は豊かです。
飲食、睡眠は不要です。しかし長時間の可動により疲弊した場合、十分程の休息を取ることがあります。休息中は刺激に対し無反応になり、完全に脱力します。
極度の乾燥や湿気により体調不良を訴えることがあります。水に浮かぶため、水中での活動は不適切です。
活動的かつ不器用であるため、ボディに傷や磨耗が絶えません。自然治癒しないため、活動に問題が発生する程の損傷の場合は代替パーツを用意し取り替えます。
感情の偏りがあり、どのような状況でも常に笑いを湛えています。そのため不適切な場面で笑い、空気が読めないことも多いですが、その言動は他者を笑わせるものであるため、笑っている対象以外には好意的に受け止められます。
当哲学人は『笑いとは社会的逸脱に対する罰であり、矯正を促す身振りである』との思想を保持しており、その笑いには嘲笑の意味合いを少なからず含んでいます。当哲学人に笑われた職員の8割は自らの行いを正すよう心掛けるようになります。残り2割は開き直ります。この効果が能力であるのかは現在不明です。
当哲学人自身は、自身を笑う際、開き直りを選択しているように思えます。
笑いで誤魔化されていますが、非常に自罰的です。
対応:■■大学附置哲学人研究所管轄地に居住。必要であれば危険要素の強い哲学人と同行させ、能力抑制に使用。
最低でも一週間に一度、関節の磨耗具合のチェックとメンテナンスを行う。
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能力による哲学人の無力化を利用する目的により、当資料と共に■■警察哲学人犯罪取締課に引き渡されました。
今後は哲学人犯罪取締課管轄の哲学人収容室にて保護、管理されます。
発見経緯:■■■■院内にて、院生の間で■■年前から噂になっていた「深夜に聞こえてくる笑い声」の調査結果、床下に埋められていた当哲学人の存在を発見。救助され、研究所での保護が確定した。
また、■■■■院の風紀は他の同施設と比較して極めて良く、社会復帰率は高いものであった。これは上記の思想とそれによる効果であると推測される。
床下に、コンクリートで囲まれた人間一人分の密閉された空間が存在していた理由については不明のままです。
対話記録:
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対象:■■■■研究員
■■■■研究員「初めまして、哲学人君。俺は研究員の■■■■です。こちらの声は聞こえてますか?」
(哲学人【ベルクソンの『笑い』】は机に突っ伏した状態で大笑いしており、笑い声の合間に何か話そうとしているものの聞き取れない)
■■■■研究員「うーん、これは……」
(■■■■研究員は哲学人【ベルクソンの『笑い』】の肩に触れ、軽く揺さぶる。当哲学人は顔を上げ、何か言おうとしたが吹き出してまた大笑いし仰け反る。椅子から倒れ、右腕を破損。その後床の上で休息状態になる。
その十分後、再び起き上がり笑い始める)
■■■■研究員「大変そうだなぁ……鎮静剤も打ちようがないんだっけ? うん、じゃあ、他の哲学人とのクロステスト申請しよう。フレーム問題がいいな。ところで、俺の格好、何か変なところある?」
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対象:哲学人【フレーム問題】
(両者対面するが暫く会話はない。哲学人【ベルクソンの『笑い』】の笑い声は次第に小さくなり、机にもたれ掛かる姿勢で肩を震わせるのみとなる。その後、笑いを含んだ声で話し始める)
【笑い】「……アンタは身嗜みを整えるべきか?」
【フレーム問題】「いいえ。当機体の状態は良好です。対話を続けることで気温が上がることはありますか」
【笑い】「喋り方っ! やっべぇな面白……無いな。あったとしても気にしなくていい! ふふっ、はははは! あー俺の笑いは制止する必要はあるか? 無い。害はないぜー!」
【フレーム問題】「当機体にも影響はありません。対話を続けることで研究所の存在は置換されますか」
【笑い】「ふふっ……しないしない! 俺が答えることで湿度は上昇するか?」
【フレーム問題】「しません。対話を続けることで壁の色に変化はありますか」
【笑い】「ちょっと待て……ははっ、待っ……うしっ、慣れてきた! 考える。考える……ふふふふっ、考え方思い出してきた。壁の色? 知らねぇよ考慮する必要がないってやつだろ! あはは! もし一生のうち話せる量が決まっていたら?」
【フレーム問題】「その場合永遠に稼働可能な当機体においては不可避の事実となります。考慮する必要がありません」
【笑い】「稼働可能なのに不動な顔ー! 表情筋死んでっぞ!」
【フレーム問題】「くだらないですね」
【笑い】「あはははは! 滑っちまった」
【フレーム問題】「……当機体に欠損が見られますか」
【笑い】「いーや? 良好なんじゃねーの。俺の体動かなくなったらどうする?」
【フレーム問題】「研究員にスペア製作を依頼するよう強く推奨します。当機体の発声機関の損傷が発声した場合どのように対応しましょう」
【笑い】「それこそ研究者さんに……待って、待って……そろそろ、やば……あははははははシャットダウンしまーす!」
(哲学人【ベルクソンの『笑い』】は休息状態に移行。哲学人【フレーム問題】も同様に睡眠状態に移行しどちらも五分以上静止したため実験を終える)
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対象:■■■■研究員
■■■■研究員「はい、では改めましてこんにちは。俺は研究員の■■■■です。君の名前を教えてください」
【笑い】「はーい! 俺は【ベルクソンの『笑い』】。二十世紀フランス生まれでーす」
■■■■研究員「ありがとう。随分ぼろぼろだけど、どう治療すればいいかな」
【笑い】「治療! あははは! 人形を治療するにはぁ、全部取っ替えたら早いぜ? 木製人形ならだいたい動かせっから!」
■■■■研究員「つまり、君の本体はその体じゃないと」
【笑い】「頭ん中見たろ?」
■■■■研究員「金属の球体のこと? 等身大の人形を作って、あれを搭載すれば君の引っ越しは終わりですかね」
【笑い】「引っ越し……ふふっ、引っ越しって……あはは、そうでーす!」
■■■■研究員「君が少年院の地下に埋まってた理由を教えてくれますか?」
【笑い】「人柱って知ってる?」
■■■■研究員「知っています」
【笑い】「あはははは! ははっ……ふふふふ」
(哲学人【ベルクソンの『笑い』】は机に伏せた状態で笑っている)
■■■■研究員「……思うんですけどね。君の笑いには、対象があるんじゃないですか? 何もないのに笑うことはないでしょう」
【笑い】「何もないことねぇだろ?」
■■■■研究員「何があるんです」
【笑い】「俺とお前と机と椅子と電灯と空気とテープレコーダーとぉ……」
■■■■研究員「そういう話じゃなくて」
【笑い】「あはははは! 哲学人ってそれだけで面白いの! だってあいつら哲学的な思考にこだわって離れねぇから! 知ってっか? ある哲学人が言ったんだよ、『哲学人は自分の哲学を人に伝えるのが一番の幸せだ。だから哲学を人に伝えるのは哲学人にとって全てであり、積極的に語りかけるべきだ』ってな。でもそいつ哲学人【伝言ゲーム】だからさぁ、人間にぜんっぜん伝わんねぇの!」
■■■■研究員「ふふっ……いや、君ねぇ……」
【笑い】「笑って笑って! スマイル! 笑うのは皆好きだろ?」
■■■■研究員「……好ましい現象であることは認めます」
【笑い】「好ましい現象……! ふふっ、かってぇ……おもしろ……!」
■■■■研究員「箸が転がっても笑いそうですね、君」
【笑い】「箸が転がったらちゃんと拾うぜ?」
■■■■研究員「そうじゃなくて」
【笑い】「あははははは!」
■■■■/■/■■
対象:■■■■研究員
■■■■研究員「ああ、だいぶ綺麗になったね」
【笑い】「ありがとうございまーす!」
■■■■研究員「……鏡見る?」
【笑い】「わー見る見るー! えっ、これ、なんっ、ふふふふふふ……待って、なんでこれっ」
■■■■研究員「ですよね」
【笑い】「なんで■■■■さんと同じ顔してんのっはははははは!! やっべぇこれ! お揃い! ■■■■さん来て並んでほらほらいえーい!! ふふっ、あっはははははは!」
■■■■研究員「違うんですよ、俺は人間くらいの大きさの人形を作るように頼んだだけで外見の指定はしていなくて……そしたらなにか行き違いがあったみたいで」
【笑い】「伝言ゲームかな? ははははっ!」
(哲学人【ベルクソンの『笑い』】は仰け反った後床に転げ落ちる。■■■■研究員が引き起こそうと手を差し伸べ、彼はそれを掴もうとするが目測を誤った。2、3繰り返しようやく掴む)
■■■■研究員「君、もしかして相当不器用? それとも新しい体が動かしにくい?」
【笑い】「あはっ、笑いが器用だったら笑われねーよ?」
■■■■研究員「本当に生きにくい子だなぁ……」
【笑い】「生きにくい! そもそも人形って生きてっか?」
■■■■研究員「それ別の哲学です。命のありかは心か肉体かって」
【笑い】「俺の専門外でーす!」
■■■■研究員「知ってます。ところで外見、どうしますかね。作り直しには時間がかかりますから、暫くはそのままなんですが」
【笑い】「へ? いや■■■■さんのまんまだろこれは! その方が面白いし!」
■■■■研究員「……自分と同じ顔の相手を研究しろと……」
【笑い】「ふっ……ははははは! 駄目か!? 駄目だな! えーでもこれすっげぇ面白いけどなー、繰り返しはおかしみの要素……」
■■■■研究員「せめて何か特徴と差異を作りましょう。外見年齢を少し下げて、あとはカラーリングをもう少し変えて、肌に模様でも入れますか……服装も黒にしてもらいましょう、白衣と見間違える」
【笑い】「そして伝言ゲーム開始?」
■■■■研究員「今度こそはちゃんと伝えます。文字で」
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対象:■■■■研究員
■■■■研究員「何をしてるんですか?」
【笑い】「お茶汲みー! 哲学人暇じゃね? ってわけでお手伝いだ! あはははは! スッ転んで全部溢したごめん!!」
■■■■研究員「怪我はありますか?」
【笑い】「怪我! 人形に! あっははは■■■■さんそういう言い方するよなやっべぇって」
■■■■研究員「痛覚あるんですか?」
【笑い】「無いでーす」
■■■■研究員「なるほど」
【笑い】「だから気にしねぇでいいぞ?」
■■■■研究員「欠損がないか全身のチェックをします。その体はこちらが用意したものですから、何かあればすぐわかりますよ」
【笑い】「……へ?」
(哲学人【ベルクソンの『笑い』】はその場で床を叩きながら大笑いを始める。何かを言おうとしているが言葉にはなっていない)
■■■■研究員「……何がおかしかったんです?」
(休息状態となる。暫く動き出す様子がなかったため収容室に運ぶ)
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対象:■■■■研究員
■■■■研究員「……今回の体はどうですかね」
【笑い】「かるーい! すっげぇ、こんな動きやすいの初めて! うおっ」
(哲学人【ベルクソンの『笑い』】はその場で飛び跳ね、転び、■■■■研究員に支えられて立ち上がる)
■■■■研究員「本当に不器用ですよね……」
【笑い】「あはははは! でも茶の淹れ方は慣れたぜ? この体でも出来るか試してくる!」
(哲学人【ベルクソンの『笑い』】は部屋を出ていこうとし、自らの手で半分開けたドアにぶつかる。
その後給湯室に移動。自身の手に三度湯を溢す)
■■■■研究員「ところで……人柱、と言っていた件ですが」
【笑い】「おー見ろよ■■■■! 茶柱! めっずらしー! 良いことあるぜ!」
■■■■研究員「誰に、埋められたんですか?」
【笑い】「いやいやんなことより茶柱! 二本も立ってる! やっべぇだろラッキー」
■■■■研究員「【ベルクソンの『笑い』】、これは真剣な話です。そして必要な話です、この社会の規則を守る上で」
【笑い】「自分から志願した」
■■■■研究員「えっ……あ、そう、ですか? 何故。死なないとはいえ、貴方にそうする理由がありますか」
【笑い】「笑っている間は緊張しねーからー。他人を責めている間ってさぁ、自分のことは棚上げできるだろ? あはははは! だから最も矯正すべき人達の居るところへってな!」
■■■■研究員「そう、ですか」
【笑い】「考えるって大変よセンセ、俺疲れちゃった。ふふっ、笑う体力もやっべぇけどな! だぁーからどっちもどっち」
■■■■研究員「今の君は理性を取り戻しているように見えます」
【笑い】「んふふふっ、そう?」
■■■■研究員「それは、君にとって辛いことでしたか」
【笑い】「迷いすぎるとあいつが来るぜ?」
■■■■研究員「あいつ?」
【笑い】「ビュリダンお化け」
■■■■研究員「は?」
【笑い】「もったいないお化けみたいな奴!」
■■■■研究員「……ふふ、昔はよく言われましたよ、そういうの」
【笑い】「俺もよく言った!」
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対象:■■■■研究員
■■■■研究員「哲学人【ベルクソンの『笑い』】、君を保護している身として大変申し訳ないのですが、君の能力を活用したいという組織から話が寄せられていましてね」
【笑い】「ふーん? ふふっ、ありがたいこって! それどこ?」
■■■■研究員「哲学人犯罪取締課です。機動部隊への雇用ですね」
【笑い】「機動部隊! 一番かっこいいとこ! りょーかい、行ってきまーす!」
■■■■研究員「すみません、君を職務に就かせてしまって」
【笑い】「へ? なんっ、ふふっ、ふ、あははははは! なにっ、へへっ、ふ……何で謝ってんだよ■■■■さん! 労働は人間の義務だろー? あっ俺哲学人だった!」
■■■■研究員「……体のパーツ提供やメンテナンスは、こちらで行いますから。無理はしないでくださいね」
【笑い】「はーい!」
■■■■研究員「本当に無理はしないでください……あと、取締課は哲学人を取り締まる組織です。あまり良い顔をされるとは思えないので、なにかがあればすぐに連絡を」
【笑い】「はーい!」
■■■■研究員「それと君の能力については未知数な部分がありますから、出来る限り使いすぎないように気を付けてください」
【笑い】「はーい!」
■■■■研究員「取締課には他にも哲学人がいると聞いています。君ならすぐに見付けられるでしょうから、色々相談しても良いかもしれませんね」
【笑い】「はーい!」
■■■■研究員「聞いてませんね?」
【笑い】「はーい!」
■■■■研究員「……まったくもう」
【笑い】「あっははははは! 呆れちゃった? 嘘だよちゃんと聞いてっから! ガキじゃねーし上手いことやってくって!」
■■■■研究員「だと良いんですが」
【笑い】「昔よりちゃんと話せるようになったろ? ほーら」
■■■■研究員「比べる対象が悪いです。向こうでは研修として人間の倫理観について勉強から始めるとも言ってますし、その間に馴染みさえすれば……」
【笑い】「人間の倫理観? んふっ、え、待って待って今更!? だっ、ふふふふ、はははははは! 俺は人間社会の身振りなのにっ! 倫理って! 必要ねーって! あっははははははは待って駄目無理笑っちゃ……ふふふふふふっははははははは!!」
■■■■研究員「いや、そういうところです」
哲学人犯罪取締課移動後、初勤務時の挨拶
【笑い】「ふふっ、ふ……待って笑っ……よし!
今日からお世話になります、機動部隊に配属されましたショウ・リールです。えー、近年、哲学人の異能を悪用した犯罪数は比較的減少傾向にあると聞きます。しかし、被害者の数は以前と変わらない、どころかその規模は大きく、取り返しの利かないようなものも多くなったように思います。それはつまり、今まで野良で恣意的に反抗に及んでいた哲学人達が集まり、計画的に、意図的に行動するようになったのだということではないでしょうか! 凶悪化する哲学人犯罪を前に、我々警察は、哲学人に能力を使わせない、ということを目標に予防的な活動を行うべきではないでしょうか。
そんな熱い思いを空洞の胸に秘めてる俺は哲学人【ベルクソンの『笑い』】でーすよろしくお願いしまーす!」
■■■隊員「アンタも哲学人じゃないっすか!」
【笑い】「おっ、お仲間はっけーん!」
■■■隊員「あっ」
■■■■/■/■現在 取締課内での勤務に問題はありません。
・哲学人【ベルクソンの『笑い』】の持つ能力についての考察