La fine del mondo、Eden、l'uccello di fuocoの後の話しで受肉後の話し。※没文なのでこれ以上は続きを書かない予定です。本筋の方はエツエツにはしませんので、この話しは別軸です。添削前です…(言い訳)
@acbh_dmc4
アブスターゴを抜け出し、数年が過ぎた。
最初の1年はあらゆる土地を転々とし、アブスターゴとアサシンの追跡を逃れるようにひっそりと行動していた。
何度も名を変え、男は一人夜に出ていっては幾日も帰ってこないことが暫くあった。
その度、俺は廃屋のような部屋で大人しくしているように言われ、一人男の帰りを待った。
食事や衣服等は十分に与えられ、帰ってくれば綺麗なモーテルに宿泊し、またその地を離れて同じような事を繰り返す。
今の俺の体はどう見ても子供そのもので、対するあの男はせいぜい10代半ば程度の年齢だったが、後ろ暗い仕事で逃亡資金を稼いでいたのだろう。
元々裏家業に長く身を置いていたのだ、この時代でも上手く立ち回る事は出来たらしい。
現在俺達はエツィオ・アウディトーレの名を捨てて、俺はドメニコ、あの男はマルチェッロ・デ・カストロノヴァという名前で平穏な生活をしていた。
この時代ではおれもこの男…マルチェッロも「子供」という範疇にあるようで、「大人」の庇護を必要とする立場であった。
だが、マルチェッロはどうやったのか早々に稼ぎ先を見つけ、生活していくに不足のない…いいや、寧ろ贅沢と言っていい上等な暮らしを送っていた。
郊外のそこそこ広い一軒家にはハウスキーパーが二人、それぞれ世話をしてくれているし、“社会勉強”と言われて買い与えられたパソコンやタブレット、スマホ等、決して安くはないものを自分用とおれ用にそれぞれ持っていた。
またここは英語を使う地域のようで、主に外に出る時やハウスキーパーとして通ってくれる者たちの前では英語を使っている。
マルチェッロと話す時だけは母国語だが、練習だと言っては時折英語での会話をしていた。
そして彼は、普段俺を本当の弟のように可愛がってくれていた。
彼や俺の念願であった失った人生を、家族との時間を取り戻す様に寄り添って生きていく。
アニムスの中にいた時はあんなにも邪悪で、恐ろしい奴だと思っていたのに…
「ドメニコ、ケーキを買って来たんだ。一緒に食べよう。どれが食べたい?」
「チョコレートを一つ」
マルチェッロがふわりと柔らかい笑みを見せる。
アニムスの世界で見せた含みのある笑みではなく、心からの穏やかな微笑みだ。
俺は皿とカップを用意して、マルチェッロは豆を挽いてコーヒーメイカーにセットする。
ミルクや砂糖を取り出してテーブルに並べれば、午後のティータイムの完成だ。
マルチェッロが俺の前にチョコケーキとクッキーシューを取り分けてくれる。
珍しい食べ物とか、美味しい物は大体俺を優先して甘やかしてくれるのだ。
椅子に行儀よく座り、ケーキとラテを楽しんでいると、マルチェッロがパンフレットをテーブルに広げて嬉しそうに微笑み顔を上げた。
「ドメニコ、来週から1か月イタリア旅行に行かないか?ローマ、ベネツィア、モンテリジョーニ、最期にフィレンツェ…そろそろ故郷を見て周っても良いかなと思うんだ」
「イタリアに?」
「調度ベネツィアのカーニバルも始まる時期だ。向こうで仮面を選ぼう」
楽しそうにあれこれ計画を話す。
なんでもないそんな日常を、どこか他人事の様に感じつつも、不思議な気持ちで享受する。
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「ホラ、ドメニコ」
マルチェッロが手を差し出す。
迷子になったら困ると言わんばかりに手を繋がれる。
そもそもこの地で迷う事はないし、はぐれたとしても電話で連絡を取りながら、待ち合わせ場所を指定すれば良いだろうに。
俺自身、中身は40を超えたいい大人なのだから、こんな風に子ども扱いされると落ち着かなくなる。
不満が顔に出ていたのだろ、マルチェッロが苦笑して首を振った。
「お前みたいに愛らしい子は、誘拐されないとも限らない。いい子だから手をつないでいてくれ」
「まるっきり子ども扱いじゃないか」
「ふむ。俺の立場になったらお前だって同じことをすると思うぞ…そうだな、ほら、あそこを見てみろ」
マルチェッロに指をさされてそちらを見る。
大きなウィンドウに俺とマルチェッロが写り込んでいる。
しゃがんだマルチェッロと俺は、調度同じくらいの背丈で、自分の体が正しく子供であるという事を見せつける。
「自分を見て、どう思う?」
「8歳くらいの子供に見える」
「まるで地上に舞い降りた天使の様だろう?」
「…は?」
思わずマルチェッロの顔を凝視すれば、ニコニコと微笑み返された。
いや、まぁ…自分の見目がそこそこ良いという事は理解しているが…地上に舞い降りた天使とは…
なんか揶揄われているのだろうか?
「人さらいに狙われて当然だ。こんなに愛らしいのだから。だから絶対にはぐれないように手を繋ごう。抱っこでも良いぞ。ああ、寧ろ抱っこした方が良いな!おいでドメニコ」
「…手を繋ぐ」
女性も思わず蕩けそうなとてもいい笑顔で両腕を広げて抱っこ待ちをする。
背後で男女問わず黄色い歓声が上がるのを苦々しく聞きながら、男のあまりの過保護ぶりに少々引いてしまった。
まぁ、抱っこで移動は確かに楽そうだが、しかし気持ち的に落ち着かない。
相当に疲れていたら利用しないでもないが、久々の故郷の地、自分の足で歩きたい。
しかたがなく手を繋いで歩けば、皆微笑ましいものを見る様に俺たちを振り返った。
「俺だってあと5、6年もすれば、あんたみたいに女の子の視線を独り占めできるのに…」
「…まぁまぁ。入れる個体も限られていたしな。俺の体も、可能な限り成長させたが、それでもこの時代では子供だ」
申し訳なさそうに笑うマルチェッロに、駄々を捏ねた事を覚って羞恥に顔が熱くなる。
悔しさに歯噛みして恨みがましくいってしまったが、これは俺自身も合意した事だったではないか。
なんでも卒なくこなす目の前の男が、アニムスの世界同様万能なわけではないのだ。
彼は最大限尽力して蘇りを達成させ、そしてあの施設から抜け出して尚贅沢な日常を齎してくれた。
こんなに不自由のない生活を送れているのは、目の前の聡い男のおかげだ。
だがこの男は自分の手だけを汚し、俺を過保護に護り囲っている。
一緒に時を過ごす内、確かに信頼と親愛を感じていた。俺とてマルチェッロの力になりたい。
俺を蚊帳の外に置いて除け者にしないでほしい。
「歩き辛くないか?視点が低いとやっぱり不便だもんな」
「もう慣れたから大丈夫だ。それに、あっちの世界と違って子供に戻れる体験なんて現実では出来ないんだから、精々楽しむさ」
マルチェッロが少しだけ申し訳なさそうに俺に微笑みかける。
そんな顔をさせたいわけではないのに、俺はやはりままならない現実に内心で唇を尖らせた。
日中は街中を観光して歩いた。
町並みは現代的な看板や装飾が飾られている以外は、俺たちが生きていた15世紀とそこまで大きく変わりなく、懐かしさと寂しさが心をせめぎ合った。
それはマルチェッロも同じだったようで、彼の気を紛らわすためか、やたらと甘く俺に構ってきたので正直辟易した。
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