ナンバーズ100枚揃った記念!
遊戯王ZEXALサードアニメ化企画
全50話で全OCGナンバーズを出そう企画!
遊戯王ZEXAL 4th【ナンバーズ・フォース・リバイバル!】
旧ログ→ https://privatter.net/p/4606088
@fu_re_re_ra
遊戯王ZEXAL 4th 〜 Numbers force revival!
ナンバーズの力、再襲!

【予告編】
アストラル世界の新たな危機を乗り越え
日常に戻った遊馬たち。
遊馬は、アストラルとの別れを胸に
かっとビングする毎日だった。
「だから、あいつに胸張って、オレは元気にやってるぜ、って言えるように」
遊馬は空を見上げて、笑った。
「これからも、かっとび続けるって
オレ、決めたから」
そんなとき
子供を助けようとした遊馬は、暴走するトラックの前に飛び出した。
悲鳴をあげる小鳥。
迫る激突。
遊馬は目をつぶるが、そのとき遊馬の全身を光が覆った。
顔をあげた遊馬の目に飛び込んだのは
遊馬めがけて飛び込む、アストラルの姿だった。
『遊馬。まだキミは、こちらに来るべきではない』
「アストラル…!!」
出会ったあの日の焼き直しのように
飛び込んだアストラルと、手を伸ばした遊馬は
指先が触れ、激突する
遊馬とアストラルがぶつかった瞬間
そこから、カードの形の光が
多数、空に散らばった!
ハートランドのあちこちで
光の筋を見上げる、凌牙やカイトや七皇たち。
光のあふれる空間で
ゼアルをはたした遊馬の体は
セカンドともサードとも違う
全く異なるゼアル体に変化していた。
「遊馬。キミには試練が訪れる。キミはそれを、わたし抜きで乗り越えねばならない」
光のあふれる空間で
アストラルは遊馬に目を細めた。
「だが、わたしは信じている。遊馬、ひとりではない。キミと、キミのかっとビングなら、きっと────」
指先の離れる感覚と共に
気付けば遊馬は、トラックに激突したはずの場所で
無傷で立っていた。
トラックは近くの塀に激突し、潰れていた。
小鳥は、トラックの中を覗いて、蒼白になる。
「え…? だれも、乗ってない…?」
遊馬に猛スピードで突っ込んできた暴走トラックは、無人だった。
その晩。ハートランドのあちこちで
見たことのない「新たなナンバーズ」が
次々に出現する
《ナンバーズ》は、再びバラまかれた。
ハートランドに散らばったカードは50枚。
「新たなナンバーズ」を手にする敵と
相対する凌牙、カイト。
遊馬と仲間たちは
50枚のナンバーズを巡る
戦いと謎に、挑んでいく。
「遊馬。キミの覚醒が近付いている」
ナンバーズ大戦、再襲!
「かっとビングだ、オレ!!!」
【遊戯王ZEXAL 4th ナンバーズ・フォース・リバイバル】始動!
「カイトてめえ!」
「誇りを捨てたかカイト!そんな奴の軍門にくだるとは!」
「カイト、なんで……! なんでだよ!」
「オレは、罪をそそぐために、」
ギラリと睨むカイトの手には、禁忌の龍
「新たな罪を、重ねる」
第三の銀河眼
No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマタードラゴン
「懺悔の用意はとうにできた」
カイト離反!!
To be continued ‼︎
【第一話 次回予告 by遊馬】
アストラル世界の危機を乗り越え
平和な日常を送っていたオレたち!
けど、最近なんかおかしいんだ。
ハートランドのあちこちでおかしな事件が…
え、カイトが謎のナンバーズ使いに襲われたって!?
シャークまで、そのカード…まさか、新しいナンバーズ!?
「遊馬、キミの覚醒が近付いてる」って
どういうことだよ、アストラル!
次回、No.78!
「覚醒、ナンバーズアーカイブ」
かっとビングだ、オレ!
◇ ◇ ◇
※ここまでのお話
アストラル世界での戦いを終えた、日常の中で。
その日、遊馬は不思議な夢を見る。
「遊馬、キミの覚醒が近付いている」
アストラルの声だけが記憶に残る中
その日、遊馬は、突如突っ込んできたトラックにはねられる。
「遊馬、キミはまだ『こちら』に来るべきではない」
アストラルに助けられ、目覚めたとき
そこには『無人の』トラックだけが残されていた。
ハートランドで起こり始める不可思議な『事故』
そして凌牙とカイトの前に現れた、『ナンバーズ』を操る新たな刺客。
苦戦した凌牙は、自分のデッキの中で輝く
見知らぬナンバーズ『No.47 ナイトメアシャーク』を手に辛勝するのだが────
◇ ◇ ◇
遊馬の体はふわふわ浮かんでいた。
不思議な場所だった。美しい金の装丁に囲まれた、図書館のような。
丸い筒状の本棚がたくさん宙に浮かんでいる。
遊馬も、フワフワと、一緒にそこに浮かんでいた。
(……ここ……は……?)
下が見えないくらいに高い場所。上から下までぐるりと覆う筒状の壁には、びっしりと本が並び、金字が書き込まれていた。
ひどく眠かった。
キラキラと輝く金色の図書館。
筒状の本棚のタイトルを、遊馬は見たことがある気がした。
幾何学的で美しい、その文字は。
フワッと一冊の本が、遊馬の前に現れて、風もなくパラパラと勢い良く開いた。
厚い表紙に、蒼く発光する文字が、大きく浮かび上がる。
文字が───数字、が。
《78》と。
(ナンバーズ……?)
体が逆さまに落下する感覚
不思議な図書館が遠ざかっていく。
指先を伸ばしたとき
頭のてっぺんを叩きつける激痛で目が覚めた。
「いっっっってえええええ!」
叫んだ遊馬は、がばりと起き上がった。
揺れるハンモック。見慣れた土産の山。
宝物にあふれた遊馬の屋根裏部屋は、いつもと同じように朝陽を浴びていた。
「……あれ? 夢?」
「こぉらぁ遊馬ー! さっさと起きなさーい!」
下から姉の怒鳴り声がする。
遊馬は慌てて「いっけね、遅刻する!」と飛び出した。
テーブルに広げた大事なデッキを、忘れずに引っ掴んで、リビングに飛び降りた遊馬の手の中。
一枚。不思議な光が、デッキの中で輝いていることを知らぬまま。
《No.78 覚醒、ナンバーズ・アーカイブ‼︎》
「ふ、わぁぁ」
遊馬は大あくびした。
遊馬は小鳥と並んで登校中だった。
遊馬は今日、珍しく寝坊しなかった。だから並んで、ゆっくり歩いて登校している。
「ふふ、遊馬が早起きなんて、明日は雪かもね!」
「う、うるせー! オレだってなあ!」
いつも通りの朝。いつも通りの日常。
だが、小鳥にからかわれる遊馬は、欠伸をしたまま浮かない顔だった。
小鳥は表情を曇らせて「ねえ、遊馬。なにかあった?」と尋ねた。
遊馬は「あっ」という顔をして「いや、元気元気、超元気!」と力こぶを作ってみせる。
「や、変な夢みちまってさ! だから目さめちまって」
「夢?」
「ああ、なんか……」
遊馬はそこで、口をつぐむ。
遊馬の脳裏に、光景が浮かぶ。
カイトと凌牙が、ナンバーズを手にする夢。
そして自分は、不思議な場所に浮いていた。
金色の光のあふれる、不思議な場所。
周囲にたくさんの本が並んでいて、自分も本棚も浮いていた。
まるで、幾何学的な図書館のような…
「……ぅま……ゆうまってば!」
ハッと我を取り戻した遊馬は、心配げに見つめる小鳥に、心配をかけまいと
「なんでもない!ないないない!」
と明るく笑った。
(考えすぎだよな)
そう、後から話を聞いたから、そんな夢を見たのかもしれない。
ただ、あのとき、なにか、思った。
(そう、おれはただ、もう、────たくないって)
そんな時、小鳥が突然、通学路の真ん中で素っ頓狂な声を上げた。
「えっ!?鉄男くん、それどうしたの!?」
物思いに耽っていた遊馬も顔を上げて、『それ』を見てギョッとした。
「て、鉄男ぉ!?」
「たははは」
包帯まみれのボロボロで
鉄男は通学路の真ん中で、照れくさそうに頭を掻いた。
◇ ◇ ◇
「「シャークに弟子入りぃ!?」」
へへ、と鼻を擦った鉄男を前に、遊馬も小鳥も、キャッシーも徳之助も等々力も、みんな揃って声を上げた。
朝の教室。包帯まみれのボロボロで現れた鉄男に
「ど、どうしたんだよ鉄男!」
と遊馬を始めとして、皆がざわめいた。
注目を浴びながら、鉄男は、腕を包帯で吊ったままふくよかな胸を張って
「強くなるんだ、オレも!」
と迷いなく宣言した。
最近の「謎のナンバーズ連続出現事件」を受けて、強くなりたいとシャークに押しかけたらしい。
だが、シャークは毎回返り討ちにして断っているようだ。諦めない鉄男は連敗中、ボロボロになっても、まだまだまだまだ挑み続ける。あえて手酷く断れば諦めるかと思っていた凌牙は、誤算に呻いているようだ。
「こいつが勝手に言ってるだけだ。俺は許可した覚えはねえ」
凌牙は頭を抱えて、にべにもなく切って捨てた。
何でも、金土日の三日間、行く先々どこにでも湧いてきて「シャーク!弟子にしてくれ!」と来たものだから、そのつど追い返したそうな。
ある時は両手に木の枝を持って茂みから顔を出し「シャーク、いやお義兄さん!弟子にしてくれ!」
路地裏に逃げればゴミ箱の中から「お義兄さん!」である。
もはや半分ストーカーじみた執念に身の危険を感じた凌牙は、反射的にゴミ箱のポリバケツを蹴り飛ばし、「アアアアアアアアアアア」と坂道を転がっていく鉄男を見送ったのだそうだ。
「あれだけこっぴどく突っ返したってのに、めげやしねえ。誰かさんのしつこさが移ったみてえにな」
凌牙が「はー」と深いため息で、片手で顔を覆う。
「あれだけやりゃあ、諦めると思ったんだがな。どうやら本気らしい」
まいったな、と凌牙は頭を抱えた。昼休み開始のチャイムが鳴る。
「お義兄さん!弟子に!してくれぇぇぇぇ!」
「しまったな、初手をしくじったかもしれねえ。こいつは長引きそうだ」
チャイムと同時に、めげずに猛然と追いかけてくる鉄男。逃げる凌牙。階段を飛び降りながら、凌牙はごちた。
「勘弁しろよ。こっちはそれどころじゃねえってのに……」
凌牙は腰のデッキケースの中の
見知らぬナンバーズを取り出しながら、憂い顔を見せた。
◇ ◇ ◇
「ねえ鉄男くん、ちょっと、大丈夫?」
「大丈夫だいじょー…イテテ」
昼休みの保健室で。今日もめげずに追い返された鉄男の頬に絆創膏を貼りながら、小鳥が心配そうに表情を曇らせた。
「たはは、悪いな小鳥。でもさ、シャークと何度もデュエルして、少し強くなれた気がする! まだまだ、だけどな!」
「ねえ鉄男くん。そんなボロボロになりながら、無理にシャークとデュエルしなくても、遊馬とデュエルして一緒に強くなれば……」
「それはダメだ」
鉄男は困ったような表情を瞬時に引っ込めて、キッパリと小鳥に言った。
「なあ小鳥。最近のハートランドは、なんかおかしい」
小鳥はびっくりしたように手を止めて、鉄男を見上げた。
「変な事故が多かったり、急にまたナンバーズまで出てきて」
「……うん」
「きっと、遊馬はまた、戦いに巻き込まれちまう」
小鳥は表情を曇らせた。薄々、小鳥も感じていたことだった。
「そう、ね……」
「だから、遊馬を頼るわけにはいかない。前の戦いじゃ、アイツに何もしてやれなかったからさ。オレはアイツの親友なのに」
ぐっと拳を固く握りしめた鉄男に、小鳥が瞳に心配を乗せた。
「鉄男くん……」
「あの時、オレは絶対、璃緒さんを遊馬の所に連れ戻さなきゃいけなかった。でも、オレが弱かったから。オレがもっと強かったら、遊馬はあそこまで苦しまなくて済んだかもしれない。今でも思うんだ、遊馬も、璃緒さんも、時々辛そうな顔をしてる。だから、今回はオレがやらなきゃいけないんだ。遊馬のためにも、璃緒さんのためにも」
カタン、とドアが鳴る。
小鳥はふっと顔を上げて、ドアに嵌った窓から、一瞬だけその後ろ姿を見た。
(あれ、今の……?)
保健室のドアの外で、静かに立ち去る璃緒に、他に気付いた者はいなかった。
◇ ◇ ◇
「なあ。妹シャークさ、なんか最近暗くねえ?」
遊馬が困ったように凌牙にささいたのは、鉄男の「シャーク弟子入り宣言」から一週間ほど経った頃だった。
凌牙は眉根を寄せた。確かに璃緒は、このところ日に日に塞ぎ込んでいる。凌牙は心当たりがあった。璃緒の視線の先には、ボロボロになりながらめげずに突進する鉄男の姿があったからだ。
遊馬が言うには、遅刻した際にいつもならノリノリで罰の掃除を言いつける璃緒が、今日はぼうっとして何も言わなかったそうだ。風紀委員としてバリバリと仕事をこなす璃緒らしくないことだった。
「小鳥も、最近ずっと妹シャークのこと心配してるし……なあシャーク、お前なにか知ってる? なんかオレに、できることねえ?」
瞳に案じる色を乗せて、凌牙にそう言った遊馬に。
凌牙は「相変わらずお節介なヤツだな」と困ったように苦笑を返した。
「心当たりはないでもねえ。だが、アイツの問題だ」
「鉄男はボロボロだし妹シャークは元気ねえし、オレ、見てらんねえよ」
「分かってる。俺も、そろそろ何とかしねえととは思ってた」
凌牙はため息を吐いて、眉間の皺を揉んだ。
「こっちはいい。お前は小鳥連れて気分転換にでも行け。心配してんだろ」
「……わかった。でも、何かできることあったら、絶対言えよな!」
遊馬は、パッと明るく笑ってみせて、ふいに凌牙の手を握った。
「オレたち、仲間なんだからさ」
「わかってるよ」
目元を和らげた凌牙に、遊馬は破顔した。
手を振って去っていく遊馬を見送って、凌牙は、遊馬の姿が完全に視界から消えると、ため息と共にDゲイザーを取り出した。
「正直この手は使いたくなかったが、そろそろ荒療治だな」
呼び出したのは、鉄男の番号。
秒速で電話に出た鉄男が、感極まったように『お義兄さん、ついにオレを認めて…!』と言い出すので「誰がお義兄さんだ!」と怒鳴り返してきっちり釘を刺す。
「お前、璃緒 を連れ出せ」
◆ ◆ ◆
【次回予告】
鉄男がシャークに弟子入り!?
妹シャークのために強くなるって…おい鉄男、ボロボロじゃんか!大丈夫かよ!無茶すんな!
妹シャークも最近なんか暗いし…あーもう!どうなってんだよ!
そんな時、ショッピングモールでまたナンバーズの事件が。
デュエル大会の参加者が次々眠っちまった!なんだよコレ、酒くせえ!
大会ゲストに来てたⅣまで入って、大騒ぎになっちまった!
「ちょっと待て璃緒!なんでオレがこいつと組まなきゃならねえんだ!」
え、妹シャークお前、もしかして酔っ払ってる!?
次回!No.41!
「鉄男とⅣがタッグデュエル!? ブチ切れ璃緒と泥酔 魔獣バグースカ!」
「オイオイオイ頼む待て! 話を聞け!」
「あんたたち……そこに並びなさい!!凍らせるよ!!」
緊張のあまり、鉄男の声は、裏返った。
「い、行きましょう璃緒さん!」
「ええ」
璃緒の涼しげな私服のまばゆいこと。
鉄男はくらりとめまいを起こして、心の中で「生きてて良かった!」と叫んだ。
璃緒と鉄男は、二人きりで遊びに来ていた。
新しくできたばかりの、ショッピングモールだ。
(こ、こここここ公認デート……!)
右手と右足が同時に出ている。
鉄男は、真っ赤でカチコチに固まったまま、璃緒の隣を歩いていた。
「ショッピングモール、ですの?」
「あ、あああああ、あの! 新しいカードショップとか! 服とか! あるらしくて!」
緊張で全身から汗が噴き出した。
鉄男は、今までの人生の中で一番緊張しながら、必死に口を動かした。
「つ、次の日曜、遊びに行きませんか!」
「俺が言っても聞きゃしねえ」
そう凌牙は、鉄男に璃緒を連れ出させた。
名目は塞ぎ込んだ璃緒の気分転換。
本当は、璃緒から鉄男に話があった。
「それって、公認デート…!」
浮かれた鉄男に聞こえないよう、凌牙は小さくため息をついて、小声で呟いた。
「璃緒からも、テメーに話があるだろうよ」
「え? お兄さん何か言いました!?」
「お兄さんって呼ぶな、うぜえぜ!」
殴れない電話口の鉄男の代わりに、廊下の壁が回し蹴りの被害者となった。
隣で関係のない生徒が、「ヒッ!」と悲鳴を上げた。
一方その頃。
同じショッピングモールで、通りかかった小鳥が、ふと立ち止まった。
「あれっ? 鉄男くんと璃緒さん? 二人っきりって、もしかして……」
「あっ! 鉄男と妹シャークじゃん! おーい……」
手を振って声をかけようとした遊馬は、慌てて小鳥に口を塞がれた。
「だ、ダメよ遊馬!」
「へ?」
「もう!鈍感なんだから! 鉄男くんと璃緒さん、二人っきりにしてあげなきゃダメ!」
「……あー!そっか、鉄男、いつもならオレたちも誘うもんな!」
うなずいた遊馬は、納得したように破顔した。
「そうだよな、学校じゃ話せないこともあるよな!」
「……この微妙に分かってない感じ、ほんと、バカなんだから……」
慌てて植え込みの影に隠れた小鳥と遊馬は、連れ立つ二人をそっと後ろから見守る形になった。
鉄男が一瞬キョロキョロして、「今、呼ばれたような……気のせいかな」と首を傾げた。
「鉄男さん?」
「いや、なんでもないです!行きましょう!」
そんな二人を、小鳥は顔を赤くして興味津々に覗き込んだが、遊馬は「盗み聞きしたら悪いし、行こうぜ」と踵を返した。
「ちょっと心配だけど、大丈夫だって。鉄男はいいヤツだからな。きっと妹シャーク、元気になるさ」
小鳥はパチリと瞬きして、恥ずかしそうに「そうよね」と植え込みから離れた。遊馬のそういう、相手をちゃんと信じて尊重する所も、小鳥は昔から好きだ。
「それに、えーっと、なんだっけ、名前忘れたけど、行きたい店があるんだろ?」
「うん! 璃緒さんたちのことは、そっとしときましょ」
「でもなー。妹シャーク、すっげえ気が強ぇからなあ」
「それは遊馬が何度言っても遅刻して迷惑かけるからでしょ」
「たはは」
何度も痛い目を見ている遊馬は苦笑して、頬を掻いて笑った。
「シャークそっくりでいじっぱりだからなあ、妹シャーク。素直になれるといいな」
◇ ◇ ◇
一方、璃緒は暗い顔だった。
璃緒は、スカートの裾を握りしめた。
璃緒は、メラグとしての鉄男との戦いを思い出していた。
鉄男がこんなにも必死に強くなろうとしているのは、あの戦いがあったからだ。
「鉄男さん、その、どこかで休みませんか」
「つまらないですか!?」
「いえ、そういうわけではないのですけど…、その」
鉄男の指に巻かれた絆創膏を見て、璃緒は俯いた。
「鉄男さん、あの……わたくし、」
ワァァァァァ
その時、ショッピングモールの一角が湧いた。
声をかき消された璃緒は、口をつぐんで、鉄男は首を傾げた。
「璃緒さん、どうしました?」
「いえ、なんでもありませんわ。それより、何かしら」
見れば、近くの柱に貼り紙がある。トークショーらしい。
壇上は人が多すぎて見えないが、チラシには「シークレットゲスト!なんとあのプロ決闘者が…?」
と書いてある。
ゲストの登場に観客の女性たちが湧いたようだ。
「ちょっと見ていきましょうか」
そういって集団に近付いた鉄男は、ステージを見ようとして、「ちょっとすみませんー!」と前の人を軽く押した。
途端、押された女性が崩れ落ちた。鉄男はぎょっとした。
「えっ!?」
眠り込むように突然床に転がった女性。周囲が次々同じように崩れ落ちていく。
寝転がって高いびきを掻き出した者までいて、鉄男は慌てた。
「な、な、なんだ!? どうしたんだ!?」
周囲に満ちる酒の臭い。
素早く鼻をつまんだ鉄男は、「うっ」と身を引いた。
「みんな、寝てる……? なんだこれ、すげえ酒くさい……」
ドミノのようにバタバタ人が倒れ、最終的に起きているのは鼻を摘んだ鉄男だけだった。
鉄男が困惑していると、人の倒れた壇上から同じく困惑したような声がした。
「どうなってやがんだ…?」
同じように鼻を摘んだような、くぐもった声。
鉄男は顔をあげて、目を見開いた。
「……え!」
「ん?お前、たしか……あのときの」
壇上で同じように鼻をつまんでいるのは、Ⅳだった。
互いを認識した鉄男とⅣは、驚いたように目を見開いた。
「Ⅳ!? ゲストってあんただったのか! これ、どうなってるんだ!?」
「オレが知るかよ!……いや。これは、まさか」
Ⅳが急激に表情を厳しくしたのを受けて、鉄男もハッとした。
「これってもしかして…!」
最近の連続ナンバーズ出現事件。
思い至って、鉄男はガバリと振り向いた。
「璃緒さん、離れて!ここは危険……」
その時。鉄男の背後で「ひっく」
と声がした。
「え…?」
ブン、と鉄男の巨体が
一本背負いされた。
壇上のⅣの上にぶん投げられる鉄男。
「ぐえ!!」
と鉄男の尻の下でⅣが潰れた。
「ひっく…あなたたち、そこに直りなさい!!!」
怒号に飛び上がった鉄男とⅣ。
顔を真っ赤にして、ふらふらと千鳥足で。
璃緒は、赤い瞳をさらに赤く潤ませて、鉄男たちを睨んでいた。
「え、璃緒さん、まさか酔っ払ってる…!?」
「……うそだろオイ」
完全に酔っ払った璃緒を前に、Ⅳが顔を引きつらせた。
璃緒がギロリとひと睨み、漂ってくる酒気。
鉄男に潰されたまま、Ⅳは後退しようともがいた。
「そ…そういや、凌牙が酒豪の家系だって言ってやがったような…」
「えっ!? 璃緒さんのあれ、怒り上戸!?」
泥酔した璃緒を止めるべく、Ⅳと鉄男は組む羽目になる。
「なんでオレがこいつと組まなきゃならねえんだ!」
璃緒 vs 鉄男・Ⅳタッグ
デュエル、開始!
神代璃緒 vs 武田鉄男・Ⅳ LP4000
【TURN1】
壇上に仁王立ちした璃緒の迫力たるや、吹雪を背負った般若である。
明らかな怒気を振りまく璃緒に、鉄男もⅣも、鋭く睨まれて冷や汗をかいた。
「お、おい肉ダルマ、お前アイツに何しやがった」
「オ、オオオレは何もしてない! 璃緒さんに何かしたのはアンタだろ!?」
「ぐっ」
他意のない鉄男の発言に、ドスッと胸を刺されたⅣが押し黙った。
ひっく、と赤く上気した頬で、璃緒が男二人を見下ろしてディスクを構えた。
「完全に目ぇ据わってやがる」
「怒った璃緒さんも素敵だ…」
「お前マジかよ?」
ヒクッ。口角を引きつらせたⅣが一歩足を引いた。
「てめえの色ボケなんざ興味ねえがな」
フラついた璃緒が一転、ギンッと前を睨み付けて
縦に鋭くカードを引き抜いた。
「《ブリザードファルコン》召喚! 吹き荒れなさい、《幻影の吹雪》!」
「アイツは手加減してくれるような女じゃないぜ! 来るぞ!」
「《ブリザードファルコン》と、レベル4となった《幻影の吹雪》でオーバーレイ! 二体のモンスターで、オーバレイネットワークを構築!」
振り上げた璃緒の指先で、幻影の吹雪が渦を巻く。
氷の鳥が、氷鏡に映り込んで、美しく二体で飛翔した。
「エクシーズ召喚!」
吹雪が舞う。
ショッピングモールの商品がぶわりと揺れた。
何もない空中、璃緒の上空に
雪が積もって、丸い形を炙り出した。
「私に力を貸しなさい、あの分からず屋たちを制裁してあげるわ! 現れなさい、ナンバーズ41!!」
全てを凍らせる勢いで広がる雪が
隠れているモンスターを無理やりあぶり出す。
「出てきなさい! 泥睡魔獣バグースカ!」
璃緒の吹雪に押し出されるように
空中に丸い動物が現れた。
【No.41 泥睡魔獣バグースカ】

エクシーズ/効果
ランク4/地属性/悪魔族/攻2100/守2000
レベル4モンスター×2
このカードのコントローラーは、自分スタンバイフェイズ毎にこのカードのX素材を1つ取り除く。
取り除けない場合、このカードを破壊する。
このカードは「No.」モンスター以外との戦闘では破壊されない。
吹雪でぶるっと震えた黒いバクが
抱えた大酒瓶をかっ喰らって、真っ赤になって
ごろん、とまた宙空に寝転がった。
「アレが、璃緒さんを酔っ払わせたモンスター……?」
「小ザメちゃんかと思ったら、とんだ大トラ起こしちまったみてえだなぁオイ」
璃緒が三枚のカードを場に伏せ、ターン終了を宣言する。
じっと見つめるⅣは、しばし目を伏せた。
「まさか、またアイツとやるハメになるとはな…ついてねえ」
Ⅳは一転、煽るように口角を吊り上げた。
五枚の手札を、バッと扇状に開く。
「こりゃサッサとおねんね頂かないとなぁ! オレのターン!」
颯爽とドローしたⅣは、流れるようにカードをセットした。
「来い!《ギミックパペットーハンプティダンプティ》! 効果発動!」
「! アレは」
「召喚に成功したとき、手札からレベル4以下のギミックパペットを特殊召喚する!」
(モンスターが並ぶ! エクシーズ召喚が来る!)
ふらりと覚束なく肩を揺らした璃緒は俯いて
赤い顔で、前髪の下からギンッと睨んだ。
「バグースカの効果! このカードが守備表示のとき、全てのモンスターが守備表示になるわ!」
「かわしたつもりか? ジャイアントキラーの効果を忘れたか!」
鉄男の脳裏に、Ⅳとの悪夢の一戦が蘇った。
(そうだ、Ⅳのモンスターは、効果で相手を破壊してダメージを与えられるんだ…!)
「行くぜ! ハンプティダンプティ!」
Ⅳが効果を宣言する。
シン…と沈黙が降りる。デュエルディスクが応答しない。
「なに!?」
見ると、ARビジョンのハンプティダンプティが
真っ赤に酔っ払ってひっくり返った。
「ハンプティダンプティの効果が発動しない!?」
「バグースカの効果!このカードが守備表示で存在する時、フィールドの守備表示モンスターの効果は無効ですわ!」
「チッ、厄介な」
舌を打ったⅣが、パンッ、と高い音を立ててディスクにカードをセットした。
「オレはカードを一枚セットしてターンエンド!」
【TURN3】
鉄男は手札を開いて、顔をしかめた。
(今は璃緒さんのモンスターを突破できない…ドローに賭けるしかない)
「オレのターン、ドロー…!」
引いたカードに目を向ける。鉄男は落胆した。
アースクエイク。モンスターを守備表示にする魔法カードだった。
(モンスターを守備表示にするバグースカの前じゃ意味がない!)
いま必要なカードは、バグースカを突破できる強力な除去カードだ。
ナンバーズはナンバーズでしか倒せない。守備を固めても意味がない。
(何とか突破口を作らないと…そのためには)
手札の『エクシーズ・トレジャー』に目をやり、鉄男は顔を上げた。
「おいそこの肉ダルマ。オレの伏せたカードをちゃんと…」
「オレは《アイアイアン》を召喚、レベル4のハンプティダンプティを素材にエクシーズ召喚!」
「!? オイ!このポンコツ!」
Ⅳのハンプティダンプティが紫色の球体となり、黒色の渦を作り出す。
「出てこい、発条装甲ゼンマイスター!」
ぜんまい仕掛けのロボットが、手足のネジをくるくると回しながら浮上する。
空中でホバリングしたモンスターは、けれど途端に真っ赤になって
フラフラ体を丸めて守備表示で着地した。
それを見てⅣはいきり立った。
「効果使えねえのになに出してんだ、しかもオレのカード勝手に使いやがって!」
「俺には俺の作戦があるんだ! 魔法発動、《エクシーズ・トレジャー》!」
場のモンスターエクシーズの数だけドローするカード。
相手のナンバーズと、出したゼンマイスターの、合計は二体。
光の球体が、二つ、宙を舞う。
「これで二枚ドロー! 切り札を引いてみせる!」
「! 待て、迂闊にカードを、」
「トラップ発動ですわ! 《精霊の鏡》!」
「ちい! 言わんこっちゃねえ!」
璃緒の前に出現した大鏡。
鉄男を、そして手にしたカードを反射した璃緒は、
ブンッと指を振り抜いて、鉄男の手に収まりかけた光球を奪い取った。
「ああっ!」
「《精霊の鏡》は、相手の効果を写し取って奪い取る! ドローはわたくしがさせて頂きますわ!」
「しまった…!」
「おいこの無能ダルマ! 冷静になれ! てめえの脳みそは飾りか! もっとイイ手があるだろ! ちゃんとカードを見ろ!」
手札のカードに目をやって、ハタと鉄男は立ち止まった。
(あっ…)
手の中にはドローソース。鉄男の呼んだモンスターだけでは条件を満たさない。しかし。
(しまった、ギミックパペットーハンプティダンプティは機械族なんだ! アイアンドローが使えたのに…俺、何やってんだ)
璃緒が高らかに「私のターン!」と宣言する。
頭上で黒いバクは酒瓶を抱えて、鼻ちょうちんをパチンと弾かせた。
「バグースカの効果。このカードは毎ターン、オーバレイ・ユニットを取り除かないと破壊されますわ」
「ってことは、あと2ターン、なんとか耐えれば…」
「それまでのんびり待ってくれる相手じゃないぜ、あのじゃじゃ馬姫サマはな!」
璃緒は鋭く指をかざした。
頭上の黒いバクが、パチンと目を覚ます。
「行きなさい、バグースカ! ゼンマイマスターを破壊!」
「ああ!」
なすすべなく破壊されたゼンマイマスターが、歯車まで分解されて消え去った。
からん、からんとぜんまいネジだけが地面に落ちて、粒子になって消え去る。
これで場は再びガラ空きだ。
「ちぃ、余計な真似しやがって」
璃緒が鋭くカードを伏せてターンを終えるのを尻目に、Ⅳがカードを振り抜き、「オレのターン!」と苛立たしげに宣言する。
ドローしたモンスターを見て、Ⅳは口角を上げた。
「オレは《ギミックパペットーマグネドール》を特殊召喚!このカードは、相手の場にモンスターエクシーズが存在し、自分の場にモンスターが存在しない場合に特殊召喚できる!」
磁石で吊り合わされたような不気味な人形が、地面から這い出した。
「まだだ! オレは手札から効果発動!
《ギミックパペットービスク・ドール》!
こいつは手札のギミックパペットを墓地に送ることで特殊召喚できる!来い!」
マグネドールの手の中に落ち込むように、美しい喪服を纏った美麗な人形が現れる。ヒビの入った顔を向けて、生気のない首がカクリと傾いた。
一瞬で展開した高レベルモンスターに、鉄男は瞠目した。
「レベル8のモンスターが並んだ!」
ニィ、とⅣが口角を上げた。
「そろそろオレのファンサービスを見せてやろうか。酔い冷ましだ! ちょいと痛くても我慢して貰うぜ!」
Ⅳが笑みで歪めた片目。
周りをかたどる紋様が、紫色に不気味に光を放った。
「レベル8、ギミックパペットービスク・ドールとマグネドールでオーバレイ! 二体のモンスターでオーバレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!」
腕を振り上げたⅣの頭上。
闇色の渦から、大剣を持つモンスターが降臨する。
「現れろ、ナンバーズ40! ギミックパペットーヘブンズ・ストリングス!」
大剣をピタリとかざして、矛先を璃緒に構えた。けれど、頭上の酒酔いモンスターにずらして構え直す。
「さあ、攻撃力3000を食らいやがれ! ヘブンズ・ブレード!」
「させませんわ!」
璃緒は手をかざし、伏せカードが立ち上がった。
「月の書を発動ですわ! ヘブンズストリングスを裏守備表示に!」
「さすがにそう簡単には通させてくれねえか。カードを一枚伏せてターンエンド!」
ギラギラと睨む璃緒。
LPを削れないままターンを渡したにも関わらず、まるで安堵したように、Ⅳは詰めた息を、ほっと吐き出した。
【TURN6】
(まずはバグースカを倒さないと…)
守備表示の時に相手まで問答無用で守備表示にする効果は強力だ。
だからこそ、攻撃するチャンスは、攻撃表示の今しかない。
(いや、ダメだ。璃緒さんがそんな隙を作るはずがない。誘ってるんだ)
鉄男は深呼吸して、伏せカードに狙いを定めた。
(場にはまだ攻撃力3000のヘブンズストリングスがいる。璃緒さんの場には伏せカードが二枚…あの伏せカードさえ削りきれば、ヘブンズストリングスでバグースカを倒せる!)
鉄男は手札からカードを抜き出した。
「俺は魔法発動! 《サイクロン》! 右の伏せカードを破壊!行け!」
カードが竜巻に粉々に粉砕される。
風から顔を庇った璃緒は、腕の下から鋭く眼光を光らせた。
「トラップ発動ですわ、《猛吹雪》!自分の罠が破壊されたとき、相手の魔法・罠を破壊!」
「!? 攻撃はブラフ!? 誘ってたのはこっちだったのか!?」
ブワッと目の前を覆う雪が、視界の全てを奪う。
吹雪は鉄男だけでなく、Ⅳを襲った。
「伏せカードを破壊!」
「ッち、オレのリペア・パペットが…!」
Ⅳの場にはリペア・パペット。ギミックパペットが破壊された時に、同名カードをデッキから呼び出せる展開カードだ。
地獄人形は後の手を好む。カードが破壊されてからが真骨頂。ダメージを恐れて守備だけ固めていてはジリ貧だ。
Ⅳは舌を打った。
「だいたい、さっきだってテメエがオレのハンプティダンプティに余計なことしなけりゃ、とっくに発動できてたんだ!」
「くそ……いや、まだだ! これでもう、バグースカを守るカードは無い!」
手元のDパッドを表示する。
場を確認した鉄男は、Ⅳが伏せていたカードが、この場でバグースカを突破できる力を秘めていることに気付いた。
(! サンダー・ブレイク! これならバグースカを破壊して、ダイレクトアタックできる!)
「俺は、手札の《ネジマキシキガミ》を墓地に送って発動! 《サンダーブレイク》!場のカードを1枚破壊する!」
「待て! 不用意に使うな!」
「攻撃表示のバグースカのさらなる効果発動ですわ! 効果で破壊されず、対象にもならない!」
「なんだって!?」
雷が、落ち先を求めて宙に浮く。
「しまった! サンダー・ブレイクは自身を対象にできないから…」
鉄男は蒼白になった。
今、唯一、場に残っているのは。
「ヘブンズ・ストリングスが対象になっちまう!」
「自滅なさい!」
ブワッと
雷がヘブンズストリングスの頭上に叩き落ちた。
「ぐあっ」
至近距離に落ちた雷に、Ⅳは吹っ飛ばされた。
砂埃が晴れたとき、そこには無残に破壊された地獄人形がいた。
「オレのヘブンズストリングスが…!」
瞠目し、そしてやがて俯いて肩を震わせる。
ブチッ、と血管の切れる音がして、ガバリと鉄男の襟首を掴み上げた。
「てめえ、足引っ張ってんじゃねえぞ!」
「わざ…わざとじゃない!」
ドンッと突き放され、けほっと鉄男は咳き込んだ。
「チイッ!疲れるぜ、お荷物抱えてデュエルなんざ。よりによって…」
口ごもったⅣは、くそっ、と悪態を吐いた。
「せめて凌牙が相手なら、こんなに手こずることもなかったのによ!」
グサリと刺さった。
(くそう、あんなに特訓したのに…やっぱり俺には無理なのか? シャークや遊馬みたいには…!)
相対する璃緒の鋭い眼。
そこに重なる面影がある。
鋭く、自分を射抜く璃緒の──メラグの目の中には。あの時。
確かに、深い哀しみが横たわっているように見えたのに。自分は。
(こんなんじゃ、また…!)
「璃緒さんは俺が守るんだ…!」
「実力もないのにしゃしゃり出てんじゃねえ! 足手まといは引っ込んでろ!」
「うるさいですわ!!!」
怒号。
ビリビリ震えるような怒鳴り声に
睨み合っていたⅣも鉄男も飛び上がった。
シン…と静まり返ったステージで
ポタッ
床に落ちた水滴に
ギョッと目を剥いた。
涙のあふれる目で睨まれて
Ⅳは狼狽えたように足を引いた。
璃緒が睨む先に、頬の傷。
視線が下がる。
鉄男の指先を注視する視線に
鉄男はハッと、指先の包帯を隠した。
「なによ、いつもいつもいつも、人を守って傷付いて」
キッと睨んだ。
「わたしはそんなに弱くないッ!」
璃緒は腕を振り上げた。
振り上げた手札が、吹雪を巻き起こして渦を巻く。
「だから証明するの、あなたたちの助けなんか要らない! わたしは!」
散った涙が、床で氷のように弾けて、砕けた。
「誰の足枷にもならない! 貴方たちにも、凌牙にも!!」
「璃緒、さん、貴女は」
国王がボロボロになっていくのを
ただ、見ていた
あのときのようなことは、もう二度と
「私のターンッ!!」
凍えるように哀しい目で
璃緒が苛烈に叫んだ。
「永続魔法発動ッ! 《燃えさかる大地》!」
「……ッ!!」
息を呑んだ音は誰だったのか。
バグースカがばらまいた酒瓶が
周囲に散らばって引火して
加速度的にARが燃え上がる。
「このカードは! 全てのプレイヤーのターンの始めに、ターンプレイヤーのライフに500ダメージを与えるわ!」
「! これって、璃緒さんもダメージを」
「構いませんわ!」
鉄男の言葉をはねのけるように、璃緒は涙ぐむように叫んだ。
「分からず屋なのは貴方たちよ! だから教えてあげる、私はか弱いお姫様じゃない! 助けなんか要らない!」
場はガラ空き。
璃緒は手札をディスクに叩きつけた。
「私のせいで、誰かが傷付く所なんてもう見たくない!」
ダメージも痛みも厭わず、璃緒が腕を振り上げた。
「《ブリザード・サンダーバード》召喚!」
指先がピタリと、鉄男を射抜いた。
ブリザード・サンダーバードが鉄男を、ナンバーズがⅣに狙いを定める。
「ブリザード・サンダーバード、バグースカでダイレクトアタック!!」
「!!うわぁ!」
「ぐぁぁ!」
LP → 鉄男 4000→2400
Ⅳ 4000→1900
ダイレクトアタックに吹き飛ばされたとき
なんて悲しい攻撃なんだろう、と思った。
(璃緒さん、そんなふうに考えてたのか…)
思いつめた瞳。
酔って出た、これは本音だ。
ずっと押し込められていた
誰かが傷つくことに、傷付く目
(俺が、間違ってた)
ポケットに手を伸ばして
ハンカチを、取り出して見つめた。
転んだ鉄男を手当てしてくれた
力強いその下の
優しさに惹かれた。
(璃緒さんは、誰かが傷付くのを、見てられるような人じゃなかった。きっと、Ⅳのことも……)
隣で放心したように目を見開いた
Ⅳの十字傷を目の当たりにして、ようやく
実感した。
(タッグは、相手を信じないと勝てない)
俺がやらなきゃ、俺が、って。から回ってたんだ。
タッグデュエルは競争じゃない。
俺にできなくても、ライフに手は届く。
伏せたままの魔法カード。
今は使えない。けれど。もしかしたら。
(託すしかない。俺に出来る全部で)
顔を上げた。
(俺にできるのは……!)
「Ⅳ!そっちに俺の……Ⅳ!?」
目を向けて、鉄男はギョッとした。
さっきまで飄々としていたはずの
Ⅳの様子が、一変していたからだ。
炎のARに包まれる璃緒を
瞠目して見つめながら
微動だにしないⅣの
呼吸がおかしい
青紫色の唇を震わせながら
微動だにせず、限界まで見開いた目で硬直し
璃緒から目をそらせずに
蒼白で
息を浅く繰り返している
「はっはっ、はっ」
睨む璃緒、揺れる陽炎、燃える炎
Ⅳと璃緒の視線が、鮮烈に交わったまま
目の前に、同じ光景が、流れる。
「…ッ」
「貴方のターンでしてよ。さあ!」
追い立てるように叫んだ璃緒の
声も届かぬように、Ⅳは瞠目したまま
赤文字で宙空に
ドローカウントが、ドローを急かしている。
微動だにしないⅣに、鉄男が叫んだ。
「使ってくれ、Ⅳ!」
至近距離で叫んだ鉄男に、Ⅳがはっとしたように顔を上げた。
汗だくで荒い息のまま、Ⅳが胡乱な目を向ける。
鉄男が伏せたままの二枚のカードに、Ⅳは顔をしかめた。
「てめえの……下手な、手だしなんざ余計、」
「アンタと璃緒さんの間に! 何があったのか俺は知らない! けど!」
ビリビリ震えるような大声に、Ⅳは思わず黙って顔を上げた。
鉄男は拳を握りしめて、肩を震わせた。
「悔しかった。シャークに負けて、アンタに負けて、遊馬はどんどん強くなって、けど、そうじゃない、一番悔しかったのは…!」
キッと顔を上げる。
「自分だ、自分が何より情けなかった。俺がもっと強かったら!遊馬にあんな苦しい思いさせなかった!親友なのに、俺はアイツの戦いに何もしてやれなかった!
璃緒さんを連れ戻せてたら、きっとあんな哀しい目をさせなくて済んだ! 俺は親友にも大切な人にも、いちばん大事なときに力になれなかった!!」
Ⅳは目を見開いて、初めて隣の鉄男を正しく認識したみたいに、顔を上げて正面から見た。
「もう璃緒さんに、あんな哀しい目をさせたくないんだ!! あんなに心を尖らせて、全部を拒絶するような目をしてほしくない! 璃緒さんは強くて凛として美しくて…でも、本当は傷付きやすい人なんだ、だから…!」
鉄男の視線が、迷いなくⅣを打つ。
「アンタならできるんだろ! 極東エリアのチャンピオンで、シャークに一目置かれたアンタなら!」
雷に撃たれたように正気付いたⅣが
己の名を思い出したみたいに、顔を上げた。
「今それが出来るのは俺じゃない! アンタしかいないんだ!だから、俺は俺に出来る全部を託す!」
鉄男はパッと顔を上げて璃緒を見つめた。
(俺は貴女に、笑っていてほしいだけなんです)
脳裏に浮かぶ
凌牙の隣で、花のように笑う璃緒の笑顔を
(隣が俺じゃなくても構わない、貴女が笑っていられるなら…!)
俯いたⅣの、伏せた前髪の下から
はっ…と、笑い声が漏れる。
「そういやコイツ、昔オレのファンだったか…」
小さな呟きに、鉄男は顔を上げた。
「え…?」
「まさかこんなヤツにケツ叩かれるたぁな…笑っちまうぜ」
顔を上げたⅣは、先ほどまでの様子を拭い去り
口角を上げた、自信あふれるチャンピオンの顔をしていた。
「目が覚めた」
「休戦だ」
Ⅳはザッと足を鳴らして向き直り、頬の傷を掻いた。
「女泣かせたままじゃ、決闘者以前に男の名折れだ」
「Ⅳ…!」
「見せてやるよ、こっからがオレのファンサービスだ!」
【TURN8】
《燃えさかる大地》が発動する。
Ⅳのドローと共に、炎がⅣを襲った。
Ⅳは片腕で目を庇うような仕草をした。
Ⅳ:LP1900→1400
「ぐっ…! オレのターン! 傀儡儀式ーパペット・リチューアルを発動! 甦れ、ハンプティダンプティ! 効果発動!手札からボムエッグを特殊召喚だ!」
並んだ二体の地獄人形。
バッと手のひらを地にかざす。
「使ってやるよ、てめえのカード!機械族が場に二体いることで発動! アイアンドロー!」
二体の地獄人形から、金属音がキィンと鳴り響いた。
Ⅳのデッキが光を纏う。Ⅳの指先が、デッキに掛かった。
「さぁ、オレの手札に舞い込め、地獄人形!」
迷いなく引き抜いた二枚の手札。
眼前にかざして、Ⅳは
ニイィ、と笑った。
「来たぜ、この状況をぶっ潰すカードがな!」
ガバリとカードを空に掲げ、Ⅳが高らかに叫んだ。
「現れろ、ギミックパペットーテラー・ベビー! こいつは召喚した時、墓地のギミックパペットを蘇生できる!現れろ、ネクロドール!」
ケタケタケタ
不気味な笑い声と赤子の泣き声がこだまする。
グロテスクなベビーカーが、パックリ口を開けて牙をむき出しにした。
中には、ケタケタ笑う赤子と、赤子を抱いて笑う包帯人形。
「すげえ……! 一瞬でギミックパペットが四体も…!」
場には、レベル4のモンスターが3体、レベル8のモンスターが1体。
レベル8のモンスターは揃わない。
「でも、まだコレじゃ…!」
「いつオレが、ランク4エクシーズができないなんて言った?」
ハッ、と鉄男も璃緒も顔を上げた。
Ⅳが見せつけるように口角を上げた。
「4はオレの専売特許でな! とっておきを見せてやるよ!」
Ⅳが腕を振り上げる。レベル4のモンスターが光りだす。鉄男は瞠目した。
「ランク4のギミックパペット!?」
ボムエッグとハンプティダンプティ。嘲笑うように高らかに、キャシャキャシャ耳障りな音を立てて不気味に宙へ跳んだ。
「レベル4《ギミックパペットーボム・エッグ》《ハンプティダンプティ》の二体でオーバーレイ!!
打ち捨てられし人形たちよ! 今こそ集い巨人となりて敵を蹂躙せよ!
現れろ、ランク4!! ギミックパペットーギガンテス・ドール!!」
ハンプティダンプティの顔面が、ギョロンとこちらを見て
複数の腕がツギハギされたような気色の悪い巨人が立ち上がった。
鉄男は、ひ、と思わず一歩身を引いた。
思わず引きつった声を出す。隣のⅣはノリノリだった。
「う、うわぁ……相変わらずⅣのモンスターって……」
「この良さが分からねぇたぁ不幸なこった! 《ギガンテス・ドール》の効果発動! このカードは自ら自壊し、璃緒、お前のモンスターを二体とも奪い取る!」
「ッ何ですって!?」
ハンプティダンプティの顔をした巨人人形が
バラバラと崩れ落ちた。
中から現れたのは、シザーアーム、ギア・チェンジャー、ナイト・ジョーカー
四体の地獄人形が、璃緒のカードに取り憑いてケタケタ笑い出した。
地獄人形の笑い声がこだまする。
そのまま璃緒のモンスターを連れ去ろうとする地獄人形たちに
璃緒は冷や汗を一つ落として叫んだ。
「ッでも、バグースカは攻撃表示の時、効果の対象とならない! バグースカは奪われない!」
「あいにく、狙いはそっちじゃねえ!」
地獄人形たちに連れ去られたブリザード・サンダーバードが、まるで地獄人形の仲間入りをするかのように、不気味な関節人形に作り変わっていく。
「ブリザード・サンダーバードが…!」
「ギカンテス・ドールは、奪ったモンスターを含め、このターン全てのモンスターのレベルを8にする!」
「!! レベル8のモンスターが並んだ!」
「オレはレベル8、奪った《ブリザード・サンダーバード》と《ギミックパペットーネクロドール》でオーバーレイ!二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!!」
璃緒のモンスターが糧となり、黒の渦を呼び醒ます。
「現れろ、ナンバーズ15! 地獄からの使者、運命の糸を操る人形……ギミックパペットージャイアントキラー!」
糸に吊られた傀儡人形。
璃緒は巨人なモンスターを見上げて、瞠目した。
「ここで、ジャイアントキラー…!? どうして……」
ジャイアントキラーを前に、璃緒はやがて、キッ、とⅣを睨んだ。
「プレイングミスね、ジャイアントキラーの攻撃力はたった1500……それでどうやってバグースカを倒すつもり!? このカードが攻撃表示な限り、貴方のジャイアントキラーの効果は受けないわ!」
「あぁそうだ。そいつは攻撃表示の時は効果を受けず、守備表示なら攻撃を封じる強力なカード……だがな、璃緒。もうお前に次のターンは来ない」
「!?」
「コイツがオレのラストファンサービスだ」
目を閉じ、顔の前で掲げたカードを、Ⅳは高らかとセットする。
「おい! そこの肉まんじゅう!」
「!? はいィ!?」
「いいか、よく聞け」
「さっきのミス、もう一回やれ」
「はぁ!?」
「考えろ。てめえには逆転の一手があるはずだ」
真剣な言葉。一点の曇りもない、鋭い切り込み。
Ⅳは眼前を真っ直ぐ見据えたまま、璃緒から目を逸らさなかった。
(なんだ、Ⅳは俺に何をさせようとしてるんだ)
場に残ったモンスター。ギミックパペットーテラー・ベビーが、効果を終えてレベル8から4に戻ったとき。
鉄男は、はた、と気が付いた。
────ここでジャイアントキラー!? どうして!?
────てめえには逆転の一手があるはずだ
(…!! そうだ、Ⅳはレベル8のモンスター3体で、もっと強力なデステニーレオを呼べたんだ。なのに、俺にレベル4モンスターと、ジャイアントキラーを渡してきた…)
Ⅳが伏せたラストカード。
鉄男は、その効果を確認した瞬間、電気が走ったように震えた。
(もしかして…!)
「気付いたか」
Ⅳがニイッと口角を引き上げて、腕をブンッと振り抜いた。
「これがオレのファンサービスだ、使え!」
「ッ!! 俺の、ターン!!」
【TURN9】
襲いかかる炎をかき分けてドローする。
発動した《燃え盛る大地》で、ライフを容赦なく炎が削っていく。
手札に舞い込んだ二枚目の「ブリキンギョ」を見て、鉄男はようやく実感した。
カードを持つ手が熱かった。
(そうか、とっくに切り札は来てたんだ。俺が気付かなかっただけで……デッキはずっと応えてくれてた!)
迷いはもう無かった。
顔を跳ね上げ、まっすぐ璃緒を射抜いて叫んだ。
(これが、貴女の心を揺さぶる切り札!!)
「俺は魔法発動!《アースクエイク》!! 全てのモンスターを守備表示にする!」
燃える大地がぐらぐら揺らぐ。
酒瓶を抱えて寝こけたナンバーズが、ぴゃっと跳ねた。
大地が割れて、燃える地面からマグマが吹く。
璃緒は気圧されたようによろけて、けれど睨むように鉄男を射抜いた。
「無駄ですわ! バグースカが守備表示のとき、どんな攻撃も届かない!」
「いいえ、コレが」
スッと、鉄男は迷わず顔を上げた。
「逆転の切り札です、璃緒さん」
「…!?」
「答えはすぐ近くにあったんだ、最初から。俺がずっと探してた答えが…!」
璃緒の瞳に、凛と見つめる鉄男の姿が映りこむ。
「デッキが教えてくれた! 俺は見失ってた。なにより大切なこと、デッキはずっと訴えてたんだ。もう一度、自分を信じろって!」
璃緒は瞠目した。
璃緒の脳裏に、自分の背を押した声が蘇った。
────諦めちゃダメです! 自分を信じて、璃緒さん!!
「鉄男、さ…ん」
「このデッキは、貴女に届く!! これが俺のかっとビングです、璃緒さん!!」
鉄男は迷いを捨てて腕を突き出した。
「場のジャイアントキラーの効果発動!! 相手フィールドのモンスターを破壊する!」
「! 無駄ですわ、守備表示になったことで効果発動! ジャイアントキラーの効果は無効に──」
「いいえ! ジャイアントキラーの効果は無効化されない!!」
「!?」
Ⅳが残した伏せカードに、鉄男は迷わず手をかざした。
「トラップ発動! 《闇よりの罠》! ライフを1000払って、墓地のトラップを発動する!」
「! 墓地からトラップを!?」
「俺が選ぶのは───サンダーブレイク!」
がばりと振り返った。
「しまった、バグースカを破壊するつもりで…!」
「いいえ璃緒さん! 俺が破壊するのは……ジャイアントキラーです!!」
「なんですって!?」
ジャイアントキラーに雷が叩き落ちる。
地獄人形が断末魔を叫んだ。璃緒は瞠目した。
「どうして……!」
「ソイツの効果が、『フィールドに存在する』守備表示モンスターだからさ」
はっと、璃緒は振り返る。
ニィ、と唇を吊り上げたⅣが笑っていた。
「あいにくだったな、ナンバーズ。てめえは『守備表示で存在する』カードの効果を無効にする。そうだろ?」
Ⅳが視線を滑らせる。
鉄男がニッと笑い返した。
「破壊された瞬間、ジャイアントキラーは守備表示で存在しなくなるんだ!」
「フィールドから離れたジャイアントキラーに、てめえの効果は届かねえよ、ナンバーズ」
Ⅳが唇を舐め、流暢に、見せつけるように発音した。
「it’s the sacrifice escape,isn’t it?」
(サクリファイス・エスケープ、だぜ?)
璃緒は目を見開き、意味に気付いてがばりと振り返った。
「いけない、バグースカの攻撃力は…!」
攻撃力、2100。
バグースカが捕らえられ、ジャイアントキラーの腹に呑み込まれていく。
「もうバグースカの効果無効は使えない! 《ブリキンギョ》召喚! 効果で手札から二体目のブリキンギョを召喚!」
鉄男が叫ぶ。
隣でバッと両手を広げ、Ⅳが高らかに宣言した。
「さあ墓地からファンサービスといこうか! 地獄の使者の力を食らいやがれ!」
「レベル4、二体のブリキンギョとⅣのギミックパペットテラー・ベビーでオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」
ジャイアントキラーの砲台に並んで、ブリキの大公が降臨する。
「ジャイアントキラーは破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!デストラクション・カノン!」
「ブリキの大公でトドメだ!行けーッ!」
二人のモンスターの攻撃が
瞠目する璃緒を貫いた。
ダメージ:2100+2200=4300
LP4000→0 璃緒:LOSE
試合終了のブザーが鳴り響く。
降り注ぐ緑の数字の中、ARビジョンが消えていく。
破壊されたバグースカ。
ナンバーズの影響が消えていく。
璃緒は、くらりと頭を傾がせた。
「!! 璃緒さん!」
鉄男は慌てて飛び出した。
だが、遠い。あと一歩、届かない。
ギリギリまで手を伸ばした鉄男は、ドンッ、と背を押され「えっ」と目線だけで振り返る。
「おわっ!」
どーんとすっ転んだ鉄男は、綺麗に璃緒の下敷きになった。
Ⅳのアシストで、鉄男は璃緒に手が届いた。
「あたたた……はっ!璃緒さん!」
ぶつけた背中をさすりながら起き上がる。鉄男の腕の中で、璃緒は眠っていた。
「んん…」と身じろいで、目を覚ます。
「璃緒さん!よかった、気が付いたんですね!」
「鉄男さん? イタッ、いたたた…」
璃緒は頭を抱える。
「璃緒さん…?」
「わたくし、なにしてたのかしら…? なんだか、頭がすごく痛いのだけど…」
「ふ、二日酔い…?」
何も覚えていない璃緒に、鉄男は振り返るが、すでにⅣは、ヒラヒラと背中で手を振って、その場から立ち去っていた。
周囲の人並みも、酔いから醒めて目覚めはじめる。
登場するはずだったゲストデュエリストは、壇上から忽然と消えていた。
「……ねえ鉄男さん、ここ、さっきまで誰かいたかしら」
角を曲がったⅣは、ソレを見て肩をすくめた。凌牙は物陰で、腕を組んで、壁に背を預けて立っていた。
「見てやがったのか。過保護なお兄ちゃんですねえ」
鼻で笑ったⅣと、顔を顰めた凌牙。Ⅳは「はっ」と肩をすくめた。
「どいつもこいつもお節介な野郎だな。凌牙お前、オレが今日ここで仕事だって知ってただろ」
「さあな」
「しらばっくれやがって。あいにく、手のひらで転がされてやる趣味はねえよ」
「なんで会わねえ」
「どのツラで?」
皮肉げに口角を上げたⅣと、ため息を吐いた凌牙。
すれ違おうとした凌牙は、ガシッとⅣに肩を組まれる。
「さ、オニイサマはこっちだ」
「おい、ちょ、Ⅳ!」
「野暮だろ」
璃緒を伴っていく鉄男の後ろ姿に
背を向けたⅣ。
凌牙は振り返って、盛大なため息を吐いた。
「どいつもこいつも、イラっとするぜ」
「璃緒さん。オレ、強くなりますから」
夕陽の中を帰る鉄男が、まっすぐそう告げる。
璃緒は痛みをこらえるように顔をしかめて
「鉄男さん、その…」と言いかけた。
鉄男は、夕陽の中で振り返る。
「でも、もう無茶はやめます。大事な人も自分も、傷付かなくて済むくらい、強くならなきゃ意味がないって、わかったので」
璃緒は夕陽の中で少し目を見開いた。
「だから、璃緒さん。オレが強くなるまで、見ていてくれませんか」
真剣な目で見つめる鉄男に、璃緒は少しだけ息を呑んで、やがて、ほどけるように柔らかく笑った。
「ええ。待っていますわ」
璃緒は、来たときとは違う、少し軽い足取りで、帰路に立った。
「ねえ、夕陽が綺麗ですわね。もう少し歩いて帰りましょうか」
璃緒の頬は、夕陽に照らされてほんのり上気している。
赤い色は夕陽か酒か、それとも。
翌朝、元気に登校してくる鉄男は、まだシャークへの弟子入りを諦めていない様子。
逃げ回る凌牙、追う鉄男。
「お兄さん!」
「兄貴って呼ぶんじゃねえ!」
「じゃあ師匠!」
「やかましい!」
鉄男が蹴り飛ばされた所で笑い声。
今日のハートランドは小春日和。
ところで、後日。
凌牙は、困惑する璃緒の肩を持って、やたら真剣に言い聞かせたとか。
「璃緒お前、酒だけは飲むな。いいな?」
「え、…え?」
璃緒のデッキに、ひっそり潜むバグースカ。ちらり。
【EDクレジット】
次回『トロンVS三兄弟!
覚醒、No.18紋章祖プレインコート‼︎』
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