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目が覚めたらエツィオに生まれ変わっていたので、家族生存目指します!

全体公開 5102文字
2020-06-04 12:45:50

第20話「さらばフィレンツェ」

Posted by @acbh_dmc4

父上の書斎にフェデリコ、狐、パオラとマキャベリ家のアサシンが揃った。
俺を囲むように立ち、父上は落ち着きなく書斎をうろうろしてこれまでの事を皆に伝えた。

「では、敵の総領の目的はエツィオだったと?」
「もともとその騎士団の会合に坊ちゃんを引き入れるつもりだっただって?ジョバンニ、坊ちゃんの正体を既に知られているという事は、我らの教団に裏切り者がいるという事だ」
「ああ、迂闊だった。モンテリジョーニの発展は、エツィオの便りがなくとも聞こえて来た事だ。既に目をつけられて、刺客を放たれていてもおかしくはなかった」
すみません。早くから備えておけば伯父上を護れると思って
「今後、エツィオ様はテンプル騎士団に狙われるという事ですのねでは、一度身を隠した方が良いのでは

パオラの懸念に咄嗟に「それは駄目だ!」と反対の声を上げた。
俺がここを離れている間に、もしも家族の処刑を行われてしまってはしかし、父上は厳しく俺を見やってから説得するように話し始めた。

「エツィオ、家族の身を案じるのは分かるが、こうなっては私よりもお前の方が危ない。お前の予言がある限り、奴らは後手に回ってしまうのだから」
「それに、予言がなくとも坊ちゃんなら奴らを掃討する事が出来るだろう。お前の能力込みで連中には目障りなはずだ」
ですが、」
「エツィオ、ここは寧ろ我々が罠にかかった風を装うのはどうだろうか?ロレンツォ殿がヴィラへ行った隙に処刑が行われるのだろう?その状況を作り出し、公開裁判の当日に反証をロレンツォ殿に持ってきてもらい阻止する。フェデリコ、ロベルトの動向はどうだ?」
「はい。エツィオの予言通り、テンプル騎士として名前の上がっているアントニオ・マフェイやベルナルド・バロンチェッリ等と接触し何やら文を交わしている様子でした。恐らく、既に敵側でしょう」

父上はフェデリコの報告に頷くと、狐にここしばらくのフィレンツェの情報収集を強化するように指示し、パオラにもフィレンツェの高官から情報と、さりげなくメディチ家へ支持が向くように噂等を流してもらうよう指示した。
父上の命令で皆の前で今一度処刑までの流れをより詳しく説明する。
直接俺の口から未来の事を聞く事のなかったパオラ達は、始終目を白黒させて俺の話に聞き入っていた。


「念のためマリアとクラウディアとペトルチオには、その時期にお前の下に送る。最悪、私が敗れたとしても、お前の予言通りマリア達は助かる」
「どうしても、俺はモンテリジョーニに帰らねばなりませんか?」
「エツィオ、お前には別の任務がある。お前の行動をボルジアに知らせた裏切り者を見つけ出し、処理する事だ」
それは、分かりました」
「お前にはマリア達を護る使命がある。こちらの事は気にするな」
「坊ちゃんは直ぐにでもモンテリジョーニに送る。明日の朝までに荷物を纏めておいてくれ」

現時点で俺がいる方が家族にとって危険になりうることは理解できる。自分の心の安寧の為に我が儘を言う訳にはいかない。
腹の底で燻る焦燥感を抑えながら、出来うる限りの対策を考えて、それを父上たちに伝えておこう。
モンテリジョーニに潜む裏切り者については、かなり時期は早いが、心当たりがある。もしあの盗賊が既にモンテリジョーニに入っているとしたらその者に違いないだろう。
その盗賊が居なければ、俺の動向を不必要に見張っている人物を探せば良い。
そしてモンテリジョーニに出入りする民衆にも危険が降りかかるかもしれない。その為には傭兵団の練度を高め、道中の警備も強化しなければ。
俺が目をつけている機敏な動きをする傭兵達を、アサシンとして教育する事も進めたい。
モンテリジョーニの安全が確保されたなら、秘密裏にまたフィレンツェへ戻り、陰で父上をサポート出来るようにもなるだろう。
こうなったらもう開き直って勢力を拡大していくだけだ。



自室へと帰り、早々に荷造りをする。
いつでもフィレンツェを出られるように作業に没頭していると、窓に小石の当たる音が聞こえた。
音の鳴った窓の壁に寄り、そっと顔を出しすぎぬように外の様子を覗き見る。
屋根の上には警護らしきアサシンの姿が1人だけ見えた。そのアサシンが、建物の陰に隠れようとする男を追うのが見える。
恐らくすぐに捕まるだろう。そして他に騎士団の姿はないか一通り周囲を確認してからそっと部屋を抜けてアウディトーレ邸の裏口へと回った。
きっと先ほどの逃げて行った者をあのアサシンが連れてくるはずだ。
それから間もなく裏口から揉み合う音と、男の怒りを押し殺した問答の声が聞こえて来た。

「離せっ!俺は、エツィオに用があって来たんだ!!」
「フン、大方坊ちゃんをおびき寄せて殺そうとでも企んでいたのだろう。洗いざらい話せば、多少は考慮して楽に死なせて貰えるだろうさ」

盗賊の格好をした男がヴィエリの首根っこを掴んで引き摺って入って来た。
内心で驚いたが、俺は二人の前へと出ていくと、盗賊の男に父上の所へ行く前にヴィエリと話せるよう頼んだ。

「坊ちゃん。坊ちゃんに近づく怪しい奴は直ぐに旦那の元に連れて来いって命令なんだ」
「ああ、分かってる。でも少しで良いから彼と話させてくれ。でなきゃ俺も父上の前に一緒に行くよ」
「はぁ、手短にしてくださいよ。あと、坊ちゃんに何かあっちゃなんねぇ。俺もここに居させてもらいますよ」

困った顔をする盗賊に礼を言い、ヴィエリに向き合う。
俺が出て来てからむっつりと黙り込んで、拗ねた子供のような顔になっていた。

「ヴィエリ、何故ここに来たんだ?まさか一人じゃないよな?危険だと分かってたんだろ?」
「お前、直ぐにフィレンツェから出ていけ」

まるでこの間の喧嘩の続きでもあるようにそう言い放つ。だが、クリスティーナの事だけであれば、わざわざこんな深夜に尋ねてくるはずはない。
まして護衛もつけず、単身それだけを言いに来るなんて。
気まずげに視線を逸らして足元を見るヴィエリの姿に、俺は内心でかなり驚いていた。もしかしたら、こいつは俺の身の危険を知らせに来たって言うのか?

「学園にも、もう来るな。俺様の目の前から永遠に消えろ!いいな!明日にはフィレンツェから消えろ!分かったか!」

何かを振り切るように言い切り、俯いていた顔を上げたヴィエリは真剣な眼差しをしていた。
俺は盗賊に向かい、何とか二人で話せないかと交渉する事にした。

「なぁ、アンタヴィエリとはこないだ喧嘩したんだ。唇のこの傷、こいつに着けられてな。こんなことで父上の手を煩わせるわけにはいかない。ここは見逃してもらえないか?」
「いや、坊ちゃん、それはなんねぇ。そいつ、パッツィだろ?それじゃあ」
「これでどうだ?」

盗賊に金を握らせる。馬鹿にするなと叱責されそうだとも思ったが、盗賊は一瞬嬉しそうな顔をして、しかし渋々と言う体で引き下がった。

「すまないが、外で待っていてくれ。それから話が終わったらヴィエリを送ってってもらえないかな。もう少し上乗せするから」
「分かりましたよ。どの道交代の時間でしたし。でも早くしてくださいよ」

そう言って裏口から出て行った。

「ヴィエリ。俺は直ぐにでもフィレンツェを出る。忠告有難う」
「ふん、二度と戻るな」
「ヴィエリは、これからどうするんだ
「お前には関係ないだろ」

ヴィエリの声が沈み、投げやりなものになる。
ボルジアがヴィエリの名を出していたことを考えると、既に接触はあるのだろう。俺の存在のせいでそれが早まったとも考えられる。
俺がアサシンとして活動を始めたことと同様、ヴィエリも本格的にテンプル騎士団として活動に加わってしまうのであれば、どうにか止められないだろうか。

「今更と思うだろうが、俺はお前を友人だと思っている。お前もだから知らせに来てくれたんだろう?」
「そんなわけあるか!」
「なぁ、お前の家族をモンテリジョーニで匿うことだってできる。ヴィエリ、争う必要なんてない。そうだろ?」
ならお前は、俺の家がお前を護ると言ったら、こちら側についたのか?」

今のヴィエリは俺と同じようなものだ。互いの家族の命がかかっている。
父親を置いて、裏切って家族が死ぬかもしれないのを知らぬ振りなど出来ない。
ヴィエリを止めるには、フランチェスコを説得するしかないが、あの男は民衆を軽蔑している。
とてもではないが、俺があの父親の意識を変える事などできないだろう。
何とも言えず、俺は俯く事しかできない。その様を、無感情に見据えたヴィエリは、静かに呟いた。

「俺とお前は敵同士だ。最初から友人になど、なれるはずなかった」
「変えられると思ったんだもしかしたら、と」

俺の言葉に傷付いたように顔を歪め、そして胸倉を掴まれて引き寄せられた。
殴られるのかと思ったが、ヴィエリは押し殺したような、苦々しい声色で告げた。

「モンテリジョーニに行くなら、通常の道は通るな」

突き放す様に腕を離し、俺に背を向け裏口の戸を開けて出て行った。



数時間の仮眠を取って日も登らぬ早朝に俺は屋敷を出た。
既に狐が俺を待っていて、フィレンツェを出るまでの護衛をしてくれるらしい。
注意深く辺りを見回してから狐が俺に近寄り、挨拶もそこそこに出発となった。

「必要な物だけ持って行け。他は事が落ち着いたら後々届けてやる」
「ああ。このブレードがあれば他は良い。この荷物は食料とかだ。ここにきてそんなに経っていないから、荷物も増えてないしな」

腕に嵌めたブレードを狐に見せて微笑む。
元々フィレンツェにやって来る時の荷物はそう多くなかった。
それは直ぐにモンテリジョーニに戻る想定だったからだが、俺の返答に気の毒そうな顔をして、気遣う言葉を掛けられた。

「後悔しているか?」
「まさか。家族を死なせてしまう方が何倍も後悔する。あんな想いを現実にはしたくない」
「予言ってのは、人生を一度体験するようなものなのか?お前と話していると、もう何回も人生を生きている者のように思える」

狐が未知の生物でも見る様な珍妙な顔で、冗談めかして言う。
エツィオの人生は“体験”したものであるから、実際に生きたとは違う気もするが、アニムスが俺に与えた影響はとても大きいのは確かだ。
なんと言ったものかなと思い、少しだけ悩んでいると、またも鋭い指摘を受けた。

「もしかして他にも予言を持っているんじゃないか?」
「鋭いな。実は皆に伝えた以外にも予言はある。まぁそれは、200年とか500年後の未来についてだから、今は活用しようもないんだけどな。人生を生きたとは微妙に違うが、その一部を体験しているんだ」
「では、その予言も遺せば後世でとんでもない有名人になれそうだな」
「はは、だがそれがテンプル騎士団に見つかってしまうとまずい事になる。実際、俺の生きている内はアサシンが優勢だが、500年後はテンプル騎士が優位だ。アサシンは壊滅状態なんだよ。俺が予言を授かったのはそのテンプル騎士団のお陰だし」
「ふぅん。なんだかややこしい話だな。おや、坊ちゃんの興味深い話をもっと聞きたいものだが、もう辿り着いてしまった。ここからは傭兵団がお前を援護する。エツィオ、道中の無事を祈る」

モンテリジョーニの国境門の外に傭兵が馬を率いて俺たちを待っていた。
狐は傭兵達に指示を出すと、俺に礼をとって見送ってくれた。
今一度フィレンツェを振り返り、目に焼き付ける様にその美しい街並みを眺める。
ボルジア家のスパイを見つけて、諸々の処理を早急に終えたら、何としてもまたこの街に帰ってくる。
そして、なんとしても、俺が家族を救う。
決意と共に、馬の手綱をとり、モンテリジョーニへの道を駆けて行く。
本格的な俺の人生をかけた戦いが、ここから始まったのだ。


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