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目が覚めたらエツィオに生まれ変わっていたので、家族生存目指します!

全体公開 8446文字
2020-07-31 15:43:54

第21話「愛しの我が家」

Posted by @acbh_dmc4

ヴィエリの忠告通り、モンテリジョーニへと続く道にはテンプル騎士の待ち伏せが各所に配置されていた。
気配を悟られぬよう、木立の多い場所は斥候をやり、待ち伏せを確認したら静かに迂回した。
どうしてもテンプル騎士と対峙しなければいけない所や、見つかってしまった場合は皆殺しにし、少しでもボルジアに俺たちの行動を知られないよう進んだ。
そうして通常より何倍もの時間を掛け、モンテリジョーニを目指し、あの王冠のような要塞が見えた時には心から安堵した。
予め知らせを受けていたのだろう、モンテリジョーニの壁門前で伯父上が力強い抱擁と共に出迎えてくれた。
ようやく帰って来られたのだ。ヴィラへ向かう道すがら、領民から帰還の労いを口々にかけられ、それに笑顔で応える。
その様子を心配そうに見つめていた伯父上が、一通りの挨拶を終えると申し訳なさそうに話を切り出した。

「エツィオ、大変だったな。何があったかまでは詳しく知らんが、お前の身が危ないからこちらへ帰すと聞いた。フィレンツェで何があったのか詳しい状況を聞きたい。旅から帰って来たばかりで疲れているとは思うが、いいか?」
「勿論です、伯父上。これからの事も早めに対策を立てねばなりません」
「うむ、ではこちらに来い」

出迎えてくれた伯父上に続き、地下の大広間で話し合う事にした。
あの場所ほど密談に適した場所もないため、隠し戸を閉じ、内側から鍵をかけて俺の初任務であったことを話して聞かせた。
ボルジアが既に俺をマークしていたことを話せば、伯父上は厳しい顔をして考えを纏めているようだった。

「モンテリジョーニの発展は隠しようもない事だ。急激な発展を怪しんで内通者を寄越されてもおかしくはない」
「ええ。これから内通者を探し出します。そして安全が確保されたら、俺の正体はバレてしまっていますし、これからは心置きなく勢力の拡大を進めようと思います。手始めにサン・ジェミニャーノの傭兵隊長をしているロベルト隊長を勧誘したいと思っています」
「ロベルト?しかし今はパッツィ家についている。まぁ、金の上での契約だろうが」
「であれば、倍出す事を約束すればこちらにつくでしょう。その上でテンプル騎士の密偵としてサン・ジェミニャーノの隊長を続けてもらいます」
「分かった。では、俺が直接勧誘をしてこよう。昔馴染みだから話も早いだろう」

そこで会話が一区切りすると、伯父上は先程からずっと気にしていた、俺の左腕に装着されている小手について問うた。
皮の小手は父上の物よりは簡素なデザインだが、その形状はアサシンブレードを固定する籠手に酷似していたのでピンと来たのだろう。
俺は左袖を捲り上げ、装着していた武器を露わにした。鋭く鋭利に尖ったブレードが飛び出すと、伯父上は「おお!」と感嘆の声を上げた。

「父上のアサシンブレードと写本を借りて、俺用に作ったものです。これを作成したのは例の芸術家の青年です」
「よっぽどお前はその青年を信頼しているのだな」
「ええ。彼の才は本物ですし、これからも彼には武器を注文したい。その為に、フィレンツェのアサシンには密かに彼を護るように伝えてあります」
「短い間でも少しは得るものがあったようだなだが、エツィオ、すまないな子供らしく、自由に生きる時間を与えてやれなかった」

フィレンツェを発つ前の狐のように、まるで悔いる様に慰められる。
俺としてはデズモンドの記憶を思い出してから、こうなる事は覚悟の上だったし、それに今回の件は自分の迂闊さのせいだ。
しかし気にしないよう言った所で、伯父上も俺への愛情から申し訳なく思ってくれているのだ。俺はその事が心苦しくも、嬉しく感じた。

「では、若い内から教団に尽くしたのですから、引退は早くにさせてもらいますよ」
「お前ほどの有能な者は、いつまでも頼りにされると思うがなぁ」
「それなら俺がおらずとも立ち回れる教団を作り上げましょう」
「はは、お前ならばやれそうな気がするな」

俺の楽観的な軽口に毒気を抜かれたように苦笑する。どうやら少しは俺に対する罪悪感を軽く出来たようだ。
伯父上への報告を終えると、俺は漸く自室へと戻り、早めに休む事にした。
先ずは体の汚れと疲れを癒すため、使用人に頼んで湯を沸かしてもらった。
自室にある湯船に肩まで浸かり、体の芯から暖まっていくのを感じる。
デズモンドだった頃は、体を清める為に軽くシャワーで済ませていたものだが、エツィオとして目覚めてから湯に浸かる気持ち良さにも目覚めた。
疲労感が抜けていくようで思わずうとうとしていたら、ばしゃりと湯船に顔を突っ込んでしまって慌てて飛び起きた。
重要な時期に自室の風呂で溺死するわけにはいかない。心地よさに後ろ髪を引かれながらも、湯から上がって寝巻きに着替えてからベッドへと潜り込んだ。



***


翌日から早速信用のおける幾人かの傭兵を集め、秘密裏に領内の者の調査を始めることにした。
内通者の目星はついていた。ヴェネツィア盗賊団員の一人、パガニーノ。
本来の裏切る時期は俺がエミリオ・バルバリーゴを追い、ヴェネツィアに渡った頃にボルジアに買収されるはずだが、ここモンテリジョーニで既に奴の姿が確認されていた。
記憶の奴とは違い、スキンヘッドだった頭には短く切りそろえられた髪があり、片目も黒の眼帯には覆われていなかった。
しかし、どこかオドオドと自信の無さそうな所作と、人を信用していないのか仲間とも一線を引いているような態度で盗賊団でも浮いている。
あれでは満足に密偵などできないだろうと思った俺は、パガニーノの動向を探らせ、他に内通者が居ないか確かめるために暫し泳がせることにした。

「エツィオ様、どうやらパガニーノの外にも内通者がいるようです。その者達は傭兵です。また、パガニーノは家族を人質に取られ、仕方なく付き合っているようです」
「そうか。ならパガニーノの家族を取り戻す事は可能か?それから、他の内通者もテンプル騎士団から寄越されたものか?」
「ええ、傭兵達は元はサン・ジェミニャーノの傭兵団から抜けてきた者達ですが、パガニーノ共々テンプル騎士団側なのでしょう」

俺の剣の師であるオラツィオの話を一通り聞き、俺はヴェネツィアのアサシン教団に協力要請を出す事にした。
パガニーノの家族をテンプル騎士団側から奪取し、そしてパガニーノと共にここイタリアから追放する。
どの道、将来的には金で教団を裏切るような奴だ。信用出来ぬ者を置いておくわけにはいかない。
他の密偵に関しては恐らくロベルトが関与しているだろう。
そちらはロベルトの身の振り方を見てから、殺すかサン・ジェミニャーノに戻すか検討すればいい。
引き続きモンテリジョーニ中の者達を秘密裏に調査し、身元の怪しい者が居ないか洗い出させた。


領内の調査を纏め、伯父上へ報告をしている最中、父上からの急使でガレアッツォ・マリーア・スフォルツァ公爵の暗殺の報が齎された。
フィレンツェで父上との任務後、加勢に来てくれたアサシンがボルジアと一緒に居た者の一人を拘束し尋問を行った。
そこで掴んだのはサント・ステファノの祭りの真っただ中でミラノ公を暗殺するという計画だった。
急ぎ父上はミラノへと発ち、ミラノ公の暗殺を阻止するために動いたが、一歩及ばず、計画を阻止することが出来なかったのだ。

これでメディチ家の大きな後ろ盾が一つ潰されてしまった。
この件に関して、今更ながら思い当たる事があった。アニムスで父上たちが処刑される直前に、フランチェスコ・デ・パッツィに殺人の容疑が掛けられていた事を思い出したのだ。
エツィオはその情報が書かれた手紙をロレンツォ・デ・メディチに届け、しかしロレンツォ殿は寸での所でカレッジへと赴かれて結局手紙は渡せなかった。
当時のエツィオは父上の裏稼業も何も知らなかったが、手紙を託される際、ミラノ公の暗殺に関して少しだけ内容を聞いていた。
ああ、今更こんなことを思い出すなんて薄れていた記憶が、鮮明に思い起こされるギリ、と爪を噛み、苦々しく思っていると伯父上が優しく俺の肩を叩いた。

「フィレンツェにとってミラノ公の死は痛い所ではあるが、後悔したところでどうしようもない。あまり自分を責めるな」
はい。今後はもっと情報を集めねばなりませんね。未来に起こるだろう事も、俺の持つ記憶を当てにしていては、もっと大事な事象を見逃すやもしれません」
「そうだな。テンプル騎士団は昔から油断ならない連中だ。少しも隙を見せてはならん」

伯父上は重々しく頷き、この話は終いだとばかりに先程まで報告していた内通者への対処について話すよう促された。
気を取り直し、ヴェネツィアのアントニオから齎された手紙と領内の調査結果を伯父上へと提示し、現在の状況を整理する。
先のミラノ公以外は概ねこちらの計画通りに事は運んでいるようだ。

「伯父上、ヴェネツィアの教団からパガニーノの家族を保護したと連絡が来ました」
「そうか、こっちもロベルトからアサシンに協力すると連絡が入った。どうも最近パッツィ家が無茶やってるみたいでな、嫌気がさしていたらしい。パッツィの倅が指揮を執っているらしいんだが、指示も無茶苦茶、気分を害したと言っては兵士を痛めつけたりもしているらしい」
「まさか、もうヴィエリがサン・ジェミニャーノを任されたのか?あの地を任されるには随分早いのですが
「お前の勧誘が失敗に終わった今、奴らも必死なんだろうさ。テンプル騎士団というよりは、フランチェスコ・デ・パッツィが、だろうがな」

定期的に狐からパッツィ家に関する報告が上がってくるが、俺がフィレンツェを発って後、フランチェスコは以前にも増して横暴になっているようだ。
その影響は家族にも及んでいるらしく、特にヴィエリは前以上に父親から辛く当たられているらしい。
そして本来ヴィエリがサン・ジェミニャーノを任されるのはあと2~3年は先の筈だが、大方俺の勧誘に失敗したことをヴィエリの所為にして、名誉挽回をさせるつもりで指揮を任せているのだろう。
厄介払いをされたと勘違いしたヴィエリは、サン・ジェミニャーノで荒れに荒れ、横暴の限りを尽くしていると言った所だろうか。
まともに指揮を取れない状態のヴィエリの圧政に耐えかね、モンテリジョーニに潜む内通者達も、こちら側に寝返ろうかと算段を立てているらしい。

こんな事では悪循環だろうに、フランチェスコは何を考えているのやら。
我が教団としては、ここで奮起し、まともに実績を上げられるよりは良いのだが、ヴィエリの心中を思うと不憫でならない。
ここは今一度説得して、こちら側につくように話し合いを設けるか。
父親に見放されたと勘違いさせれば、こちらに引き込む事も可能かもしれない。

「サン・ジェミニャーノのロベルト隊長には、フランチェスコとヴィエリの溝を作るよう動いて貰いましょう。戦わずサン・ジェミニャーノを奪還できるならそれが良い。出来ればパッツィ家の他の家族も確保できるよう、狐に連絡を取ってみます」
「パッツィ親子を仲違いさせてこちら側に引き込むのか?それは、うまくいったとしても、お前はそれでいいのか?パッツィの倅とは交友を取っていたんだろう?」
「非道な事とは思います。ですが現状見る限り、ヴィエリは心からテンプル騎士団に属しているわけではなさそうですし。ならばせめてテンプル騎士団から離せればと考えております。でなければまた死ぬだけだ。無論、アサシンにしよう等とは考えておりません。保護するだけです」
「ふむ。まぁ、アサシンに迎える訳ではないのなら良いかサン・ジェミニャーノを見る限り、使えるとも思えん」

伯父上は物言いたそうにしていたが、しかし俺の計画を否定する事もなく、ヴィエリに関しては一任すると言ってくれた。
後は内通者への対処をする段階になった。オラツィオを呼び、これからの任務を告げる。

「今夜内通者がサン・ジェミニャーノへ向かうはずだ。オラツィオ、信用のおける傭兵を集めておいてくれ」
「承知しました」

計画を纏め上げ、密かに兵を集めて任務内容を告げると、今夜の大仕事に備え、各々休息を取った。


***


サン・ジェミニャーノへ続く道の途中にある納屋周辺に、俺を含む傭兵団が潜み、内通者たちが近づくのを待った。
月のない真っ暗な中を気配を殺し、耳を澄ませて標的を待ち構える。
暫くの後、人気のない通りを何の警戒心もなく、やる気がなさそうに向かい来る人影を確認した。
なにやら少々揉めているようで、その男たちの会話がそれなりに離れている俺たちにも聞こえてきた。

「パガニーノ!もたもたするな!お前の指示でこんな勝機の無い作戦をやる羽目になったんだぞ!ったく、サン・ジェミニャーノにしたって暴動寸前だってのに、やってられねーよ」
「じ、じゃあパッツィ家を裏切るのか?お、俺だってもうこんなことは沢山だだが、パッツィの後ろにいる奴らは強大だパッツィを裏切ってそいつらに目をつけられたら、一族郎党殺されちまう
「チッお前は今一信用ならねーんだよ確かにモンテリジョーニのお偉いマリオ様がそのテンプル騎士団とやらを目の敵にしてるみてーだが、不利なのはそのテンプル騎士団って方じゃないのか?ここを落とせる強力な勢力なんているもんか。俺としちゃ、エツィオって餓鬼の方が空恐ろしいぜ。あのガキがここに来てから敵なしだ」

声を潜めようともせず堂々と陰口を叩く傭兵を静かに取り囲む。
急に己達を取り込む集団が出てきてリーダーと思わしき男が途端に狼狽え、腰に吊るされていた剣を抜こうと柄に手をかけた。
刃を抜くのを待たず、傭兵の手を撥ねつける様に長剣の腹で弾き、剣の切っ先を首に突き付けた。
傭兵はその鈍い痛みと喉に突き付けられた剣を見て息を詰まらせた。

「その恐ろしい餓鬼にいつまでも感ずかれないと思っているのだったらおめでたいものだ。俺が帰ってきた時点で逃げなかったところを見ると、うちに取り込んでも使い道はなさそうだな」

乱入者の正体を明かす様に言い放てば、途端にその男は息を飲んだ。

「エ、エツィオさま?」
「大人しく投降すれば慈悲をかけてやってもいい。他のお仲間はどうした?あと2人は仲間がいたはずと思ったが。素直に口を割った方が身のためだぞ」

多勢に無勢で自分の命を賭ける気概もない傭兵のリーダーは、早々に降伏し両腕を顔の近くまで上げると苦し気に言い訳を始めた。

「金に目が眩んで引き受けたが、ここに来た時点でパッツィ家に勝機がないのは直ぐに分かっていた。モンテリジョーニに潜んでいる内通者を全部言うから命だけは助けてくれ!」
「そうだな。イタリアから出ていくのなら考えても良い。それから、テンプル騎士団に勝機はない。どの土地に行くにせよ、そことは関わらない方が身のためだぞ。俺がいる限りはな」
「ああ!いう通りにする!」

あっさりと命乞いを始めた傭兵と、その背後で青ざめ震えているパガニーノを拘束するために傭兵に指示を出す。
するとパガニーノは半狂乱で懐から取り出したナイフを振り回し始めた。

「く、来るな!!き、来たら、こ、殺してやる!」
「パガニーノ、お前に倒せる傭兵などここには居ない。それと、お前の家族はヴェネツィア盗賊団が身柄を確保している。人質を取られているのはお前の方だぞ」
「な、なんだって?!か、家族に、な、何をした?!」
「お前が大人しく俺の命令に従うのならば危害は加えない。まぁ、お前の家族が無茶をしていなければ、の話だが」

ボルジアの庇護の下贅沢を知ってしまった人質が増長し、教団に監禁されている状態でも態度が酷いと言う報告は上がって来ていた。
出来れば盗賊団の方も長くパガニーノの家族を拘束しておくのは勘弁願いたいようで、俺の指示の下、現在モンテリジョーニまで移送中だ。
だが途中で逃げ出せばそれ相応の代償は支払う事となる。

「安易に毒蜜に飛びつくからこのような事になるんだ。洗いざらい敵の情報を渡し、この国から出ていけ。でなければ命の保証はせん。勿論ボルジアの下に戻っても、失敗したお前に待っているのは惨たらしい死だけだ」
「この、悪魔めっ!」
「金で仲間を売る貴様に言われる筋合いはない。それに、これ以上ない程に慈悲はかけてやっているだろう?」

記憶の中の此奴の所為で父親も同然の伯父上を殺されたのだ。
同じように蹂躙し、首を切り落として曝さないだけ良心的なものだ。
項垂れるパガニーノを傭兵達が取り押さえてモンテリジョーニへと引き返す。
俺もその後に続こうと歩みを勧めると、急にパガニーノが傭兵達を振り切って、もう一つ懐に隠し持っていた装飾用の華美なチンクを取り出して俺に襲い掛かって来た。
ある程度の反撃など予想済みで俺はパガニーノの腕と太股を長剣で引き裂いてから、倒れ込んだパガニーノの項を足で抑え、舌を噛まれては敵わないので投げナイフの柄を口に噛ませた。
慌てて傭兵達がまたパガニーノを拘束し、今度は確りと後ろ手に腕を縛り上げると、即席の猿轡を噛ませてから引っ立てて行った。

「エツィオ様、お怪我は?」
「大丈夫だ。それよりもパガニーノが自害する事も考えられるから慎重に行動してくれ。尋問には俺も参加する」
「承知しました」

どうせ奴らは末端の者だ。大した情報など持っていない。
尋問とは名ばかりの、今後イタリアへ足を踏み入れようならば容赦はしないという脅しを散々浴びせるだけだ。
そしてしっかりとテンプル騎士団は失敗した駒を生かしてはおかないことも忠告する。
その後、パガニーノと幾人かの内通者に国外追放を言い渡した。
これで暫くは平穏な日々がモンテリジョーニに齎されるだろう。

俺はオラツィオと共に伯父上にも事が終わったことを報告した。


「エツィオ様の活躍は兵舎でも持ちきりですよ!尋問の時など、とても10代とは思えぬ気迫でした」
「ああ、エツィオを前にすると賢者でも相手にしているようだからな。これで若造と侮る様な者は今後居るまい」
「だといいのですが、伯父上」

誇らしそうに俺を褒めたたえていた叔父上が、ジッと俺を見つめると、探るように口を開いた。

「それはそうと、エツィオ。そろそろ父と呼んではくれないか。いつまでも息子に伯父と呼ばれたんじゃ寂しいからな」

伯父上から何処と無く自信無さげにお願いをされ、思わず目を丸くしてしまった。
伯父上との養子縁組はフィレンツェから帰った後、滞りなく済んでいるが、今までそれについて話をする機会がなかった。
此方に来たときから俺を息子にと望んでいただけに、ずっと気にしていたのかもしれない。

「それもそうですね。その、改めてよろしくお願いします、父上」
「勿論だとも!息子よ!」

なんとなく照れてしまって、はにかみながらそう呼ぶと、伯父上いいや、父上はとても嬉しそうに破顔して、俺の頭を力いっぱい撫でてくれた。
やり取りを眺めて居たオラツィオも微笑ましそうに父上に「良かったですね、マリオ様」と声をかけた。
どうやら中々父上と呼ばれないことを時折オラツィオに愚痴っていたらしい。
ボルジアや内通者騒ぎでタイミングを逃していたとはいえ、もうちょっと早く父上と呼んであげればよかったと申し訳なく思った。
しかしちょっとした問題がある事に気付き、どうせなら後々困るよりはと父上に相談する事にした。

「あの父上、フィレンツェの父上にも会ったら変わらず父と呼ぶように言われたのですが、呼び分けはどうしましょう?父上と呼んだらどっちも振り向きますよね
「ジョバンニの奴めまぁこんなに将来有望な息子を手放したくない気持ちも分かるがな。そうだなジョバンニの前ではマリオ父上とでも呼んでくれ。ただの“父上”はたまにはジョバンニに譲るとしよう」

仕様がないと呆れたように苦笑をこぼすマリオ父上に、俺も思わず失笑した。
こうして俺の2回目の任務は、無事完了となった。


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