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救救8.6 千里

全体公開 6709文字
2020-06-24 18:37:52
Posted by @alkalion18

Stage 1 これぞ(意思)高速化社会
 柯北四丁目


千里「やっくんが来るまで家の周りを見ておこうと思ったけど……やっぱり他の人も動物化してるなぁ」

千里「近所のおばあちゃんもたれ耳兎になってたし、お子様も長い尻尾生えてたし」

千里「これって動物化する異変なのかなぁ?」

???「あっ」



史美「おはようございます、壱道さん」

千里「あれっ、史美ちゃん! また遊びに来てたんだね」

史美「はい。昨日は日山さんのところでお世話になって、今日も柯北をまわって帰ろうと思っていたんですが」

史美「その……こんなことになってしまって」

千里「獣の足だね。やっぱり史美ちゃんもか」

史美「ツブヤイターを見たらいろんな人が、体の一部が動物になったり生活サイクルが変わったりしているみたいです」

千里「地味に大事(おおごと)だなぁ。早く原因を見つけないと」

史美「それはそうと。私、今日なら壱道さんに勝てる気がするんです」

史美「なのでぜひ、私と勝負してくれませんか!」

千里「すっごい唐突ぅー!」


(撃破)


史美「ちょっと気が早かったですね……でも次こそは!」

千里「急にどうしちゃったのさ。慎重な子だと思ってたけど、案外熱いんだね?」

史美「なんだか勇ましい気分と言いますか、壱道さんに勝ちたいという気分だったと言いますか」

史美「考えるより先に動いちゃいましたね。今日の私は足も速い、手も早い、ですから!」

千里「うん、やっぱり危険だねこの異変」



Stage 2 星も空から落ちる
 平行世界、森


千里「平行世界に到着! さあ異変の原因を探すぞ!」

千里「……と思ったんだけど、んん? 柯北にいた時と気配が変わらない?」

千里「とりあえず異変の手がかりになるものを見つけないと。うーん、見つかるかなぁ」

???「おい、そこの猫っぽいお嬢さん!」



???「私の相手をしろ! そしてあわよくば果物を、寄越せぇ!」

千里「うわっ、カツアゲ? 果物なんて持ってないよ! おやつは持っているけど」

ルナ「バナナはおやつに入るので、つまり持っているということだな!」

千里「いや飴ちゃんだけど!?」

ルナ「キャンディーアップルって知ってるか?」

千里「確かにりんご飴には林檎入ってるけど、何でも果物に結び付けるんじゃありませーん!」

ルナ「とにかく私は腹が減っているんだ。お前の持っている食べ物をくれたら、通してやらんこともな」

千里「弾き飛ばすよっ!」


(撃破)


ルナ「うきゃーッ!? わ、悪かった! 降参だー!」

千里「もう! お腹が減っているなら最初から素直に言ってくれればよかったのに。はい、飴」

ルナ「優しいかよ……あぁ甘い、幸せー」

ルナ「今日は散々でさ。家を知らん奴に荒らされるわ、おかげで飯は無いわ、腹が減るわで」

ルナ「おまけにお菓子を食べても、果物じゃないと駄目だって思っちゃって」

千里「今回の異変の影響かな? 君は何の動物だろう」

ルナ「動物? ……って、とっぴろきー!? 尻尾が生えてら!」

千里「今気が付いたのかい……



Stage 3 羽と情報のバーゲンセール
 平行世界、どこかの上空


千里「こっちの人にも影響が出ているとなると、いよいよもってわからなくなってきたぞ」

千里「誰がどんな理由で起こしているのかわからないけど、生活に支障が出るのは頂けないし」

千里「あー、ヒントが飛んできてくれたらいいのにー」

???「おや?」



レオナ「もしやいつぞやの、空飛ぶ人間ではありませんか!」

千里「あ。確か新聞記者の人だっけ」

レオナ「覚えていただき、光栄です! しかし記憶違いでなければ、あなたに耳はなかったような」

千里「これ今日生えたんだよねー。それを言うなら、君の羽もそんなだったっけ?」

レオナ「実はそうなんですよ。今日は翼が大増量中なんです」

レオナ「おかげで重たくていつものスピードが出ません……私は速さが売りなのにー!」

千里「大変だろうけど、こっちからしたらいつもより撒きやすいってことだよね!」

レオナ「寂しいお言葉が聞こえました……ですが、これを聞いても逃げようとしますかねぇ」

レオナ「私はこの現象の手がかりを握っています。何せ独自の情報網と知識がありますから」

千里「おっ、これは勝って情報を得るタイプのイベント! そうと決まれば負けないよ!」

レオナ「その言葉が聞きたかった! さあ、始めましょう!」


(撃破)


千里「よし! 情報ちょうだいー♪」

レオナ「いやぁ敵いませんね。前よりも強くなっている気がしますよ」

レオナ「ええ、今回の件ですが。世界中で体の一部が別の生命体になってしまう現象が起きているようです」

レオナ「翼が生えた、手が獣のようになった、ツノが生えた……これには人間も妖怪も関係ありません」

千里「この動物になりたい、とか願ったわけではないんだよね」

レオナ「それはないでしょう。現に望まずして変化している例がほとんどです。そしてここからが本題なのですが」

レオナ「この変化が起こる前に黒いもやを見た、という声がありましてね。仲間も目撃しています」

レオナ「私はこれが兆候だったのではないかと踏んでいるのです」

千里「黒いもや。それはどこから現れたの?」

レオナ「どこからともなく、です。ただ、これに関してある協会が動きを見せています」

レオナ「おそらくそちらに向かえば、確実に手がかりが手に入るかと!」

千里「そこまで聞けたら充分だよ! ありがとう!」

レオナ「いえいえ。では次に出る新聞をお楽しみにー♪」

千里「ちゃっかり取材されてたー!」



Stage 4 いざ、異変の膝元へ
 封術協会


<道中>


???「ちょっとそこの人! 今建物に入るのはやめてください!」



蓮「これから大きな術を使うので、危険ですから!」


(撃破)




千里「大きな術かー。何だかわくわくしてきた!」

蓮「こっちは未知数でドキドキだというのに……

千里「あ、追いかけてきたんだ。──思い出した! 前に桜の木の封印をしてくれた人だね」

蓮「桜の木? もしや蘇の楽園のことでしょうか。そういえば、あの地で会った人にどことなく似ていますね」

???「なんだ、蓮の知り合いだったの」



???「うちの蓮がお世話になっておりますー」

千里「こちらこそー。ところでどちら様?」

霖「僕は蓮のお兄ちゃんをやっている、霖という人です。なにとぞー」

蓮「兄さん! 油を売っていないで、早く準備を進めないとこの事態は収まりませんよ!」

霖「ご挨拶は大事かなと思って」

千里「えぇっと。その大きな術と今回の異変……動物化しちゃう現象って関係あるよね?」

霖「うん。世界の狭間に入って、時間内にその原因を確定させること、封印に綻びが生じていないか確認することが目的」

千里「世界の狭間……!? だから柯北でもこっちでも、気配が変わらなかったんだ」

蓮「き、機密事項ですよ兄さん! おいそれと話してはいけません!」

霖「ごめんね?」

蓮「いえ謝って済むことでは」

千里「ねえねえ、それ僕が行っていいかな!」

蓮「あなたも何言ってるんですかぁ!?」

霖「定員は一人なんだけど……君にそれだけの力があるかどうか、見せてもらおうか!」

蓮「…………もういいです」


(撃破)


千里「か、勝手に進めてごめんね、弟くん」

霖「弟よ、気を落とさないでね」

蓮「兄さんと波長の合う人が場に居てはならないということを学びましたよ」

千里「それで、試験は合格?」

霖「おっけ」

千里「かるぅい」

蓮「……本当にいいんですか? 危険だと思いますが」

霖「うん。だって僕ぶっちゃけ行きたくなかったもん」

蓮「ええ!? ってそうじゃなくて、あなたですよ!」

蓮「協会が計り知れないとしている場所です。時間は限られていますし、相手も未知数ですし」

千里「そういえば原因って、大体予想はついているの?」

霖「何百年も前のご先祖様の話なんだけど。人々を脅かした存在がいて、それを退治、世界の狭間へ封印したらしい」

霖「文献が古くて読めない部分も多かったんだけどね。それが現れる時は、黒いもやが出るそうだよ」

千里「なるほど、目撃情報と同じだね。人々を脅かした存在か……

千里「気を引き締めて行ってくるよ! 術のことはわかんないから、そっちはよろしく!」

霖「狭間への扉は一度閉めるけど、滞在限界が来たらもう一度開けるから、その時戻って来てね」

霖「気をつけていってらっしゃいー」

蓮「……あの蘇の楽園の異変を止めた人ですもんね。健闘を祈ります!」



Stage Final 汝は我を知る者なりや
 世界の狭間


千里(……最初は目が痛いくらい彩度が高かったけど、ここは違う)

千里(真っ暗で音がしない。静かで、誰もいない)

千里(ここに封印されるって、すごく寂しいことなんじゃないかな)

「ひょおぉう……

千里「む! おぉーい! 誰かいないかーい!?」

「ひょおおぉぉう」

千里「聞こえているよー! だから返事をして!」

???「…………うん?」

???「まさか。まさか本当に、辿り着いた者がいると?」

千里「いえす! ようやく会えたね、異変の原因さん!」

???「おぉ……おぉ!」



???「愛しき来訪者よ! 我は待ち望んでいたぞ!」

千里「お待たせしました! って、勝手に決めつけちゃったけど、君が異変の原因なんだよね?」

???「異変とな?」

千里「体の一部が動物化するっていう異変だよ。僕にもほら、耳と尻尾が生えているでしょ」

千里「何のためにこんな異変を……って、おわぁ!?」

???「ああ、愛しいなぁ、可愛らしいなぁ。生きものとはこれほどに尊いものだったか!」

千里「んにゃあー! 可愛いのは認めるけど頬擦りしないでー! ちょっと痛いー」

???「おっとすまんな。いやぁ、嬉しくてつい」

千里「ま、まさか異変の主に抱きしめられるとは思わなかったよ」

千里「話を戻すけど、どうして異変を起こしたの?」

???「ここには何も無いからなぁ。ちょいと力を使ってみただけのこと」

千里「ちょいと、で全世界の住民に影響出るって。人々を脅かした存在と言われるだけあるね……

???「うむ。そのことなのだが」

???「なあお前、我をどこまで知っている」

千里「へ?」

???「我は狩人によって討たれ、この空間に封印された……らしいな」

???「あまりにも長い時が経ったせいか、我はその記憶が曖昧だ。まるで他人事のようでな」

???「そして己の名すら思い出せない」

千里「……じゃあ、異変を起こした本当の理由は」

???「力を使って騒ぎを起こせば、我を知っている者たちが嫌でも教えてくれると思ったのだよ」

???「ま、そう上手くはいかんかったなぁ!」

千里「数百年前の存在だったっけ。動物に関係ありそう? ううん、僕の知識じゃ……ごめん」

???「謝罪など要らん。それより我と遊んでおくれ」

???「なに、退屈はしていたのだ。我のもとへ辿り着いた者がいる、それだけで動いた甲斐があったというもの」

千里「そりゃあ、全力で勝負するけど……!」

???「ならば話が早い! 体が鈍っているだろうからお手柔らかに、な」

???「さあ、我が同胞と化した人間よ。我を探し当て、対峙したことに敬意を表して──」

???「いざ勝負!」





EDへ




???「うはははは! 良い! 良い戦いだったぞ人間!」

 千里は”それ”との勝負に勝った。”それ”は楽しそうに笑い転げているが、千里の気持ちは晴れない。

千里「君の名前さえわかれば、納得のいく形になったんだけど」
???「何だ、気にしていたのか?」
千里「だって君の望んだものは、手に入らなかったじゃないか」
???「退屈しのぎも我の願いだぞ。誰も訪れない結末より、どれだけ良いことか!」

 おそらくこれからも、この空間に閉じ込められたままだというのに。”それ”は拍子抜けするほどに明るい表情をしていた。どうしてそんな顔ができるのだろう、と胸が苦しくなる。
 その時。波が立つような大きくて低い音が轟いた。空間が揺らいでいるところを見ると、術が発動したのだろう。狭間に滞在する限界が来てしまったようだ。

???「なあ、お前の名前を教えてくれないか」
千里「僕の名前を?」
???「ここを訪れる人間もそういない。どうせ忘れるだろうが、一応よ」
千里「……千里だよ!」

 千里は真っ直ぐに”それ”の目を見て、名前を伝えた。

千里「百年なんて待たせないから! 今度は君のこと調べて、また勝負しに来るから!」
???「おお、それは楽しみだなぁ。気長に待っているぞ、センリ!」

 我がしびれを切らして、また異変とやらを起こすかもしれないがな! ”それ”はからからと笑って、千里を送り出す。その場から動く気はないらしい。緩く手を振る”それ”に、千里は大きく手を振り返した。



 平行世界へと戻った千里の体には、耳も尻尾も残っていなかった。つまり異変は解決したのである。協会は異変の元凶を鎮めたとして千里を称えたが、千里はそれどころではない。疲れきって萎れている霖のもとへ駆け寄って、「もう一回来るから、それまでに術の準備をしておいてほしい」と伝えると、霖は口を尖らせながらも、渋々話を聞いてくれた。
 術の使用は回数が限られていて、必ず協会の近くに転移できるわけでもなく、あの存在の正体を知ることができるかもわからない。それでも千里は、もう一度会いに行きたかった。

千里「うーーーん、今までで一番もやもやした異変解決だーっ!?」



NORMAL ENDING 数年後のリベンジへ
 ──これが普通のエンディング、だと……




千里「とっても強い……っ」
???「うはは! 良い戦いだったぞ!」

 千里は”それ”との勝負に負けた。ぐったりと伸びていると、”それ”は怪しい笑みを浮かべて、わざとらしく唸る。

???「ううん。ま、我の目的の一つは達成したことだし? 人間も大したことなかったし? これでお開きとするかぁー」
千里「ぐっ……雷で撃たれたかのようなすごい敗北感が……!」

 このままでは終わってしまう。いや異変が解決するのは良いのだが、納得のいかない解決になってしまう。それは嫌だ。千里は苦し紛れの案を考えに考え、そして思いついた。勢いよく”それ”へと縋りつく。

千里「ぼ、僕の仲間だったら君のことわかるかもしれない! 僕も認める強さだし、待ってみてもいいんじゃないかな!?」
???「えー」
千里「そこをなんとか!!」
???「仕方ないな。もう少しだけだぞー?」

 我ももうちょっと遊びたかったし! と、なり振り構わず必死に頼み込む千里の案を満面の笑みで了承した。

???「ただし」
千里「何でしょう!?」
???「その手札が来るまで、我に可愛がられる刑だ! うはははは!」
千里「またかーーーっ!」

 完全に遊んでいる”それ”に抱きすくめられながら、来るかもわからない藪彦の到着を待つ千里であった。



BAD ENDING 巫女の運命やいかに!?
 ──どうでもいいけど、もふもふしそうだよねラスボスさん。







さあ、助けに行こうか!
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