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目が覚めたらエツィオに生れ変わっていたので、家族生存目指します!

全体公開 8279文字
2020-12-14 19:02:58

最終話「俺たちの戦いはこれからだ!」

Posted by @acbh_dmc4

少し回復した父上とフェデリコと共に、モンテリジョーニへと帰還した。
父上は静養の為に長期で休暇を取る事になっている。
あの事件後、そのまま進んでいれば父上はもう二度とメディチ銀行へ戻る事はなかったのだから、ちょっと長く離れるくらい、問題ない。
父上を気遣いながら馬車から降りると、待ちわびていたと言わんばかりにクラウディアが出迎えてくれた。

「漸くお帰りになったのね、エツィオ兄さま。私達がこちらに着く前に出かけてしまうなんて酷いわ!」
「すまないクラウディアフィレンツェへ緊急の仕事だったんだ」

フェデリコと俺で父上を補助しながら馬車から降りると、クラウディアは驚いてフィレンツェで何があったのかと詰め寄った。
先ずは父上を休ませたいと断って、ヴィラへとゆっくり移動する。領民たちも、父上の満身創痍な姿に心配そうな視線を寄せた。
漸くヴィラへ続く階段を登り切ると、入り口前で母上が俺たちを出迎え、父上の姿を見て息を飲んだ。
それもそうだろう。別れ際には元気だった夫が、顔色を無くして弱り切っているのだから。
母上は気遣うようにそっと父上に寄り添い、蒼白な顔をして手を取った。

「ジョバンニ、一体何があったの?」
「ああ、マリアちょっとした、事故があってねだが、心配ない。私も暫く、ヴィラで養生するから

父上と母上は熱く見つめ合い、母上の細い身体を引き寄せて確りと抱きしめた。
母上を抱きしめる父上は、漸くホッとしたように顔を綻ばせ、そして気が緩んでしまったのか、グラリと体が傾いで倒れかけた。
咄嗟に俺とフェデリコが父上を支え、突然の事に動転した母上はマリオ父上に宥められ離された。

「ジョバンニ!ジョバンニ!ああ、誰か!お医者様を!お医者様を呼んで!」
「マリア、心配ない。既にヴィラに医者は手配してある。エツィオ、フェデリコ、ジョバンニを客室へ運んでくれ」

気が抜けて倒れてしまった父上を、フェデリコと二人で運ぶ。
馬車での半日の移動は相当堪えていたらしく、医者の問診を受けた後は眠ってしまった。
母上が父上の傍で様子を見ていると、クラウディアはフェデリコの耳を引っ張り、隣の部屋へと移動して父上の事を問い詰め始めた。

「これは一体どういうことなの?!ちゃんと説明してちょうだい!」
「いたたた、クラウディア!ちゃんと説明するから!ちょっと離せって!」

フェデリコの前で仁王立ちしているクラウディアを落ち着けて、近くの椅子に座らせる。
こちらも長旅での疲れを癒す為、召使に飲み物を頼んでからこれまでの事件を掻い摘んで話す事にした。

「パッツィ家居るだろ?その家と取り巻きが父上を排除しようと動いてな。でっち上げの裁判を起こしたんだ。それで無実の罪の告白をさせようと酷い暴行を受けてしまったんだ」
「なんてことエツィオ兄さまがフィレンツェに戻ったのはその報せを聞いて駆けつけたのね?」
「ああ、そうだ」

どの道フィレンツェに戻れば裁判の事など町中に知れ渡ってしまっている事だ。
町民が目撃した事より少しだけ詳しく、事の経緯を話せばショックを受けつつも納得してくれた。

「まさか、あの判事様がお父さまを陥れるだなんて
「金に目が眩んだのだろう。本人もそう自供していたと聞く」
……きっとフィレンツェに戻ったら野次馬根性の人たちに質問攻めにされるわね」

憤慨しつつ、今後の事を憂いてため息を吐くクラウディアに、今後しばらくはフィレンツェの生家には戻れないことを話した。
家が酷く荒らされていると言えば、先ほどの比ではない位にショックを受けたようで、血の気の失せた顔で俯いた。

「そう悲観するな。壁紙とか装飾品を新しく出来るし、ここに来るまでにエツィオが最低限の改修を頼んでくれた。改装してくれる職人からは定期的に報告が入るから、希望があったら職人に指示すればいい」
「で、でもお母様が大事にしていらした絵画とか装飾品は壊されてしまったんでしょう?私のドレスも
「全部が駄目になった訳ではないよ。それに、ドレスは俺からも贈るよ。元気を出してくれ、クラウディア。もう、大丈夫だから」

俺とフェデリコで慰めれば気丈に頷き、母上達を気にして隣部屋への入り口を見つめた。

「お父さまは大丈夫かしら」
暫くはベッドでの生活になると思う」
「もしかして、こうなるとわかっていて私とお母さまをここへ寄越したの?急に家族でヴィラに行こうなんて言い出してそれにお父さまは別れ際、様子が変だったもの」

クラウディアの勘の良さに、俺とフェデリコは顔を見合わせる。
完全に隠し通せるかは少々疑問だが、今世ではアサシンの道に妹を巻き込みたくない。
だが、あまり隠し過ぎてもクラウディアのような賢い者には逆効果となるだろう。それをフェデリコも悟ったのか、渋々といった体で「まぁ、事前に情報は入ってたかな」と呟くように同意した。


クラウディアの烈火の如くの追及を躱し、夕飯を終えて俺とフェデリコはマリオ父上の書斎へと向かった。
探求心旺盛なクラウディアとペトルチオはこっそり俺たちについて来て、書斎の前で聞き耳を立てているようだったので、隠し通路を通って地下の聖域で話し合うことにした。
林檎の事や、アルタイルの鎧についても話しておくいい機会だと思ったのもある。
フェデリコは興味深そうに広場を一望すると、周囲に鎮座しているアサシン像をじっくり見て周った。
中央に位置するアルタイル像の保管庫の前までくると、感嘆のため息を零した。

「歴代の偉大なアサシン達の像か。これは、壮観だな
「ああ。それにアルタイルが残した鎧もある。今のフェデリコにはぴったりのサイズじゃないかな。持って行くか?」
「いいや、これを開けたのはお前なんだろう?ならお前が身に着けるべきだ」

フェデリコは即座に申し出を断ると、俺とマリオ父上に向き合った。
これからフィレンツェであった一部始終を双方からマリオ父上に報告する。
フェデリコの報告は、アニムスで見たエツィオと同じような行動を取っていたようだ。
淡々と話しているが、フェデリコの表情は見た事もない位真剣そのもので、彼の任務に対する姿勢が伺えた。今回の出来事で、楽観的であった彼の心は変わったのだろう。
任務をこなしていけば、いずれは同じようにアサシンとして研ぎ澄まされていくだろうが、それが早まれば教団の為になる。
狡猾なボルジアはいつどんな手を使って俺たちを排除しようとするか分からないのだから、兄には力をつけて貰わねば。
恙無く報告が終わると、今後の計画について話し合う。油断はできないが、暫くはテンプル騎士団の動きはないだろう。

「伯父上、俺がここに居る間、俺もエツィオと一緒に訓練を受けたいのですが」
「ああ。構わない。今ではエツィオがアサシンの育成をしているから混ぜてもらうと良い。エツィオ、フェデリコにも稽古をつけてやれ」

マリオ父上にはそう言われたが、フィレンツェでの戦闘を見る限り、父上からの英才教育を受けていたフェデリコの戦闘技術は既に完成されていた。
俺から教えられることは殆どないと判断し、フィレンツェでは学ぶ機会もなかった方面を延ばす方が良いと考えた。

「マリオ父上、フェデリコはオラツィオの傭兵団で兵を纏め上げる訓練をするのが良いかと」

そして俺としても父上の訓練は是非とも教えを請いたいところだ。フェデリコには俺と共に手合わせと、弟子たちへの指導を一緒に行う事で同意してもらった。






翌日の朝、父上と母上は寝室で、兄弟妹達とマリオ父上は食堂で朝食を取っていた。
俺が不在にしていた1週間ほどの間、何か不便がなかったかとクラウディアに尋ねる事にする。足りない物などあれば、彼女の要望通り意見を取り入れたかった。

「クラウディア、この屋敷は快適かな?足りない物があればメイドに言いつけてくれれば揃えるから」
「ええ、兄さま。来るたびに思うのだけど、年々立派になっていくわね。最初にこのお屋敷に来た時なんて、まるで幽霊屋敷だったもの!私の部屋も比較的過ごしやすいわ。でも屋敷に女主人が居ないからやっぱり無骨ね。伯父さまは奥様を迎える気はないのかしら」
「ゴホッゴホッ!ま、またそれか、クラウディア、私も忙しい身だ。しょっちゅう家を空けるのにこんなところに嫁ぎたい者もおるまい」
「良い人が居ない訳でもないのでしょ?奥様を貰って実子でも作ればエツィオ兄様を返してもらえると思ったのに、残念ね」

悪戯っぽくそう言い放つクラウディアにマリオ父上共々目を白黒させる。
これでも召使と相談して壁紙を変えたり、目一杯美術品を集めて屋敷を飾り立てたのだが、クラウディアの目には不十分に写るらしい。
確かに、アニムスではクラウディアは商売はおろか、屋敷の管理も立派にこなしていて、ヴィラに帰る度にホッとしていた気がする。
対して、この屋敷は俺や、雇っている執事や使用人と相談しつつ管理しているが、遠征から帰ってもホッとするとは程遠い。帰りたい家というよりは仕事場の延長だ。
思わず閉口してしまうと、それを見たクラウディアは嬉々としてヴィラの改装をしようと言い出した。
更にはこの屋敷の帳簿を確認したいと言われて、ドキリとしてしまう。そんなものを見せては、将来は自ら商売をしたい等と言い出しかねない。
結婚だけが女の幸せとは思わないが、もしも教団に入りたいと言われてしまったら、アニムスのエツィオのように俺もきっと反対するだろう。
わざわざこんな危険な人生に身を置く事もないのだから。そう憂いていた矢先に更に爆弾を落とされた。

「私も兄さまの所に来ようかしら。あまりフィレンツェに戻られないでしょうし」
「い、いや、実はこの間みたいにモンテリジョーニも度々出る事になるから
「エツィオ兄さまはちゃんとお休みされているの?伯父さまったら!兄さまにばかり働かせているんじゃないでしょうね?!」
「いやいや、そんなことはない!マリオ父上も忙しく飛び回っているし、純粋に手が足りないだけなんだ」

ふぅんと半目で流し見られ、内心で盛大に焦ってしまう。
「兄さまがそんなに野心家だったなんて知らなかったわ」と拗ねたように零すクラウディアは、俺の事を本当に心配してくれているのだろう。
愛しさが胸を満たして、小さな子供にするようによしよしとクラウディアの頭を撫でた。

「エツィオ兄さま?私ももう立派なレディなのよ!いつまでも子ども扱いしないで欲しいわ」
「ああ、知っているさ。昔からクラウディアは素敵なレディだよ」
「ああもう!エツィオ兄さまの所為で、益々理想が高くなっちゃう!そう言う事を所かまわずしないで欲しいわ!」

照れながらつっけんどんに話すクラウディアに苦笑しつつ、和やかに朝食を摂り、各々お穏やかな時間を過ごした。

モンテリジョーニはフィレンツェとは違い、ごく小さな街だがそれなりに活気がある。
物々しい外観とは打って変わって平和的な空気の流れるこの街は、都会っ子のクラウディアには少々退屈なようで、この1週間で既に暇を持て余してしまっていたようだ。
毎年遊びに来ているのもあり、クラウディアが長い休暇を過ごすのにはあまり向かない。
パッツィ家に支配されていなければトスカーナ地方を巡遊しても良いのだが、サンジェミニャーノ周辺は治安が悪くなっている。
どうしたものかと考えあぐねていたら、今朝話していたヴィラの内装の見直しや、フィレンツェの自宅の改装について決める事になった。
意外にそちらの仕事が気に入ったようで、熱心に報告書や予算などを確認し、モンテリジョーニの職人の工房に壁紙を見に行ってしまった。
ペトルチオはモンテリジョーニに出来た友達と、元気に外で遊んでいるようで不在だ。
丁度良く皆方々に用事が出来た為、フェデリコをオラツィオに紹介する事にした。
傭兵にしては物腰の柔らかく、誰に対しても分け隔ての無い気の良いオラツィオとフェデリコは会って直ぐに打ち解けたようだ。

ここいらで模擬戦をしようと俺から誘うと、フェデリコは嬉しそうに歯を見せて笑い、「コテンパンにやっつけてやる!」と豪語した。

刃を潰してある模擬刀を手に、中央の鍛錬場で互いに睨み合う。
なんだかんだとフィレンツェに戻ってからはフェデリコと手合わせ出来ずにいたので、互いの実力を知るいい機会だ。

「さて、どの程度成長したのか見せてもらおう」
「余裕ぶっていられるのも今の内だぞ。兄貴の尊厳を見せてやる!」

自信に満ちた笑みを見せて、フェデリコが剣を構える。まずはお手並み拝見と行くとしよう。

オラツィオの審判で手合わせの開始が告げられる。
最初に動いたのはフェデリコだった。
素早い動きで剣を打ち込んでくる。俺は剣の腹でその打撃を受けたが、体格の良いフェデリコの打撃の重さは相当なものだ。
俺も傭兵の中で鍛えてそれなりに力はあるが、フェデリコも引けを取らない。
その打撃を滑らせながら弾き上げると、持ち前の素早さで電光石火の如く突きで応戦する。
畳みかける様に何度も角度を変えて剣を打ち込む。
速さと手数の多さにフェデリコは最初苦戦していたようだが、俺の剣を幾度か受けている内にペースを掴んだらしく、次第に打ち返せるようになっていた。
俺が突き出す動きをすれば、先ほど俺が見せたように剣の腹で剣先を受け止め、刃をずらして俺の刃先を滑らせて弾く。
次第に反撃まで出来るようになり、俺はフェデリコから繰り出されるパンチを寸でで交わすと、一度後ろに飛のいて距離を開けた。

「エツィオ、これは模擬戦だろう?何俺に指導つけているんだ?本気を出せ!それとも本当にその程度だったのか?」
「まいったな。一応本気だったんだが」

軽口まで叩ける余裕があるらしい。
実力を見る為に弟子たちの指導よろしく本気と言いつつ様子を見たのは事実だ。ここからはフェデリコの期待に応えて勝ちに行くとしよう。
やや力押しのフェデリコの剣を弾き、素早くその懐に飛び込むと、慌てて身を翻して距離を取る。
だが俺よりも体格もよく、筋肉質なフェデリコは力こそ俺よりも上だが素早さは俺がはるかに勝っていた。
フェデリコが横に流れようとしたのを足を踏ん張り、瞬発力で俺も同方向に飛び、剣の柄で胸目掛けて殴りつける。
フェデリコは咄嗟にそれを受け止めて俺の腕をしっかりと掴むと、同じように剣を持つ手を俺の脳天目掛けて振り下ろした。
咄嗟に腹に一蹴り浴びせると、うっと詰まった後、ヨロリと後ろに下がり、畳み掛ける様に手元の武器を弾き上げて足払いをかけてやった。
フェデリコは無様に倒れ込むような事はなく、たたらを踏んで踏ん張ったが、隙だらけのその首筋にぴったりと刃を突きつければ、オラツィオの「そこまで!」という鋭い号令が響いた。
フェデリコは悔しそうな顔をして体勢を立て直し、心を落ち着ける様に息を吐くと、残念そうに笑みを見せた。
負けず嫌いの兄の事だ、悔しさをバネにこれからもっと追い上げ、俺の実力を超えに来るだろう。

「手も足も出ないとはな
「剣の腕は直ぐ俺を抜くと思う。オラツィオ、そうだろ?」
「ええ。力強く良い剣でした。フェデリコさまならすぐにでも傭兵団一の剣術を身に着けられるでしょう」

見学していた傭兵達が俺相手に健闘したフェデリコに対してワッと歓声を上げる。
模擬戦自体はそれほど時間はかからなかったが、フェデリコの実力をみて、頼もしい新人が入って来たと皆関心仕切のようだった。

「流石、あの凶悪なエツィオ様の兄上なだけあって、こちらも化け物だ!」
「十分お強い!ここに居る傭兵達の何人がフェデリコ様に勝てるかって話だ!」
「オラツィオ隊長位じゃないか?」
「おいおい、別に俺は慰めは要らないぞ。確かに負けたが、同時にやる気が湧いてきた。今にエツィオをやっつけてやるさ!オラツィオ、これからよろしく頼む」

苦笑してオラツィオに手を差し出し、力強く握手する。
その瞳には闘志が溢れ、今すぐにでも訓練を始めようとまで言う程だった。だが、まずはモンテリジョーニの教団の施設から案内する事にする。

模擬戦では暗殺部隊の者も、町民に紛れて見学していた。その者たちに合図でヴィラの裏庭へ集合するよう指示し、傭兵達への挨拶を済ませると、そちらへ向かった。
裏庭へと赴けば、アサシン衣装に着替えた弟子たちが集合していた。
今ここに居る弟子たちは、まだフィレンツェで任務に就いている者達よりも若く、また技術も未熟な者達だった。

「彼が俺の3つ上の兄弟でフェデリコ・アウディトーレだ。既にアサシンとして活躍している。これから暫くはフェデリコも指導してくれる」
「ああ、俺がエツィオには教えられない、博打の撃ち方やナンパの極意をしっかりと指導しよう!」

フェデリコの茶化しに、主に男の弟子たちが期待の籠った目で今すぐ教えを請いたそうにソワソワしていた。
フェデリコのおふざけ発言はともかく、俺とも恋愛相談やら息抜きの方法やら散々話してきて、今更フェデリコに教えられることも無いだろう。俺は憮然としながら弟子達と言うよりフェデリコに向かって言い返した。

「おい、ナンパ位俺だって教えられるぞ」

フェデリコはわざとらしく大袈裟に驚いてみせると、弟子達は言い難そうに口を開いた。

「マエストロのお話は大部分は有意義ですが、ナンパや息抜き方法に関してはそれほど役に立ちません
「そうですよ。だって長はまず『顔が良い、そして金持ち』って前提ありきですし」
「おい、それじゃあ俺が顔で釣れてないみたいじゃないか!」

弟子たちの言い分に、笑顔を引きつらせながらフェデリコが突っ込むが、そんなもの構わず弟子たちは言いたい放題だ。
曰く、フェデリコも男前の部類だが、俺とはまた違ったカテゴリらしく、顔で人生を渡っているらしい俺とは説得力が違うという事だった。
まぁ、自分から声をかけるよりもかけられる方だから仕方がないか。そうこっそり納得しているとフェデリコに頭を叩かれた。

雑談もそこそこに、手合わせをやりたそうにしている弟子とも模擬戦をと言ったところで、突如裏庭に飛び出す影があった。
そして同時に叫ばれるその言葉に、俺たちは笑顔を凍りつかせる事となった。


「マエストロ!フィレンツェの監獄にいたフランチェスコ・デ・パッツィが消えたようです!」

伝令で駆けつけた弟子の一人が、慌てた様子で俺に手紙を差し出してくる。
急いで弟子から齎された手紙を開封し、中を改める。
そこには狐の見慣れた文字で、事の次第ができるだけ詳しく書かれてあった。俺と一緒にその報せを読んだフェデリコは憮然とした顔で俺に目配せをする。
即座に俺はフェデリコを伴い、マリオ父上の元へと知らせを持っていった。
これから俺達はこの最悪な報せをもとに、話し合わなければならない。

どうやら父上にフランチェスコの犯した罪を被せることが叶わないと知るや、直ぐにもボルジアの手のものがフランチェスコの逃亡に手を貸したらしい。
確りテンプル騎士団は失敗した後の事も考えていたというわけだ。

そして当然、家族が助かったとしても、俺の人生はここで終わりじゃない。テンプル騎士団はまだ勢力を誇っているし、何よりロドリゴ・ボルジアやチェーザレ・ボルジアはまだ生きている。
寧ろ、これからの人生いいや、これからのテンプル騎士団との戦いの方が長いのだ。


俺はデズモンド……いや、エツィオ・アウディトーレ・ダ・フィレンツェ。
これは俺の物語だ。


    ―――ご先祖転生第1部、終幕。


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